【将棋解説】
第32期竜王戦七番勝負第2局 広瀬竜王vs豊島名人

目次

解説動画



対局情報

棋戦
第32期竜王戦七番勝負 第2局
対局日
持ち時間
8時間(2日制)
対局者
広瀬 章人 竜王<先手>
豊島 将之 名人<後手>
戦型
相掛かり
主催
読売新聞社
公益社団法人日本将棋連盟
(棋譜利用問い合わせ済み)
対局場所
京都府:総本山仁和寺

局面解説

序盤

【将棋】第32期竜王戦七番勝負 第2局 広瀬章人 竜王 対 豊島将之 名人の対局で23手指した局面
point
24手目:形勢判断と候補手
互角:△7四歩、△8六歩、△9四歩、△1四歩 など
先手の飛車の横利きが二重に止まったタイミングで、
△8六歩と打って▲同歩に△同飛~△7六飛を狙う指し方は有力です。
但し、自陣の駒組みを進める有力な指し手が他に残っている局面で、
仕掛けが早すぎて攻めが軽くなりすぎるリスクを考慮する必要はあります。

▲3六歩に△8六歩という仕掛けは横歩取りで類似局面があるのですが、
相掛かりの場合は後手が手得をしていないため、
下手に動いてしまうと▲3五歩~▲3七桂のような速い反撃を受けてしまい、
△7四歩~△7三桂が間に合わなくなる恐れがあります。

本譜は△7四歩と突きました。
右桂の活用や△7五歩の仕掛けが生じるので、この歩は突いておきたいです。



【将棋】第32期竜王戦七番勝負 第2局 広瀬章人 竜王 対 豊島将之 名人の対局で34手指した局面
先後同型のまま指し手の真似っこが続きますが、
先に右桂を跳ねると右銀の活用方法が限定されることが大きいです。
桂頭を守りつつ、中住まいでバランスを取る必要もあるため、腰掛け銀にもしづらいです。
動かせる駒は少ないですが、なるべく多くの歩を突いておくことで、
上部を少しでも厚くします。




【将棋】第32期竜王戦七番勝負 第2局 広瀬章人 竜王 対 豊島将之 名人の対局で40手指した局面
point
41手目:形勢判断と候補手
互角:▲2二角成、▲4五歩 など
41手目で本譜は▲2二角成としました。
手順に△同銀と前進するので、これで先後が入れ替わる計算になります。

しかし、左銀の理想の使い方は、△4二銀~△4四歩~△4三銀、
あるいは△4二銀~△5三銀~△6五歩~△6四銀左の中央ルートです。
△2二銀~△3三銀と上がっても2筋の歩は交換済みですし、
桂跳ねが銀取りになるため、1手得がそのまま生きることはありません。

よって、どこかで後手から△8八角成とする展開も十分に考えられました。



【将棋】第32期竜王戦七番勝負 第2局 広瀬章人 竜王 対 豊島将之 名人の対局で50手指した局面
point
51手目:形勢判断と候補手
互角:▲3五歩、▲6六歩、▲5七銀 など
51手目で桂頭を狙って▲3五歩と突く手は有力です。
但し、△同歩 ▲3四歩に△2五桂と跳ねることができるので、
相手の対策が明白であることを踏まえると、喜んで指す手にはならないです。

本譜は▲6六歩と突きました。
△6五桂の活用を防ぎつつ、▲6七銀~▲7七桂の好形を目指します。



中盤

【将棋】第32期竜王戦七番勝負 第2局 広瀬章人 竜王 対 豊島将之 名人の対局で60手指した局面
point
61手目:形勢判断と候補手
互角:▲8六歩、▲9五歩
後手からは△2六歩~△2七歩成という攻めがあります。
先手がこれを受けようとして2筋に歩を打ってしまうと歩切れになりますし、
△3三銀~△2一飛ですぐに応援も来るので、受け切りは難しいです。

但し、攻めの速度は遅いので、61手目は手抜きが最有力です。
しかし、現局面では先手からの攻め方が少し難しく、
▲6六銀には△同角 ▲同飛に△6五歩~△6六桂で金銀を剥がされます

本譜は▲8六歩と突きました。
直接的な攻めが難しい場合は、相手の攻め駒を責める指し方が有力です。
後手の角は狭いので、ここを狙っていけば、後手は対応せざるを得ません。
6筋の攻めを誘発しますが、結果的に2筋の攻めを防ぐことはできます。



【将棋】第32期竜王戦七番勝負 第2局 広瀬章人 竜王 対 豊島将之 名人の対局で68手指した局面
point
69手目:形勢判断と候補手
互角:▲9四歩、▲6四歩、▲7九金
69手目で▲9四歩は有力です。必然的に△5七角成となりますが、
最初の猛攻さえ受け間違えなければ、徐々に駒得が生きやすい展開となります。

本譜は▲7九金と引きました。△6六桂のふんどしを避けつつ、
△8五飛~△8九飛成にも対応していて、味の良い受けです。



【将棋】第32期竜王戦七番勝負 第2局 広瀬章人 竜王 対 豊島将之 名人の対局で77手指した局面
point
78手目:形勢判断と候補手
後手有利:△7八銀
後手は角銀交換の駒損なので、それに見合った戦果を上げる必要があります。
▲8八歩と受けられてしまうような展開では、斬り込んだ角が報われません。

先手に受ける暇を与えないためにも、78手目は△7八銀と捨てる1手です。
更なる駒損ですが、△8九飛成さえ実現すれば、攻めは繋がります。



【将棋】第32期竜王戦七番勝負 第2局 広瀬章人 竜王 対 豊島将之 名人の対局で81手指した局面
point
82手目:形勢判断と候補手
後手有利:△6四桂
82手目で△9九竜と香を取れば、△6六香が狙えるので良さそうですが、
▲6四歩 △同銀 ▲6三歩 △同金 ▲7二角と絡まれて、攻守逆転です。

本譜は△6四桂と打ちました。「桂は控えて打て」で△5六桂を狙いつつ、
敵の打ちたいところに打て」で▲6四歩を防いでいて、絶好の攻防手です。



【将棋】第32期竜王戦七番勝負 第2局 広瀬章人 竜王 対 豊島将之 名人の対局で86手指した局面
point
87手目:形勢判断と候補手
後手有利:▲6九歩、▲4二歩
87手目で粘るならば▲6九歩が有力です。但し、底歩は香に対して弱いので、
後手が△9九竜と香を補充できる状況で長くは持ちません。

本譜は▲4二歩と打ちました。△同玉は▲7一角が金取りになるので、
取るならば△同金ですが▲4三歩~▲2一角と打ち込んでいくことができます。
本当は放置されて▲4一銀に△6一玉と余されるのが1番困るのですが、
優位に立っている相手ほど無難に見える指し手を選びやすいものです。




終盤

【将棋】第32期竜王戦七番勝負 第2局 広瀬章人 竜王 対 豊島将之 名人の対局で95手指した局面
point
96手目:形勢判断と候補手
後手優勢:△4六歩
96手目で△4四歩と打てば、銀を捕まえることはできますが、
次に△4五歩と銀を取っても詰めろにならないので、攻めとしては遅いです。

ここは△4六歩と打つのが手筋です。
▲同玉ならば△4四歩~△4五歩が王手になるので、攻めが1手速くなります。
また▲5七玉には△3三桂~△4五桂、▲5八玉には△7六桂や△6六桂で、
4六の歩が立派な拠点となります。



【将棋】第32期竜王戦七番勝負 第2局 広瀬章人 竜王 対 豊島将之 名人の対局で106手指した局面
point
107手目:形勢判断と候補手
後手勝勢:▲4四歩
次に△5六桂や△5六歩が厳しいので、飛車を逃げている暇はありません。
先手玉に詰めろはかかっていないので、107手目では最後の攻めを考えます。

▲4一角や▲4一銀は「王手は追う手」となり、
△6二玉の後に有効な詰めろがかかりません。
玉は包むように寄せよ」を狙って▲7一角は筋が良いのですが、
残りの持ち駒が銀なので詰めろになっていません。

よって、ここは「玉の守りの金を攻めよ」で▲4四歩と打つしかありません。
少し足りないですが、後手が間違えた時に、最も逆転しやすい絡み方です。



【将棋】第32期竜王戦七番勝負 第2局 広瀬章人 竜王 対 豊島将之 名人の対局で113手指した局面
point
114手目:形勢判断と候補手
後手勝勢:△5六歩
後手玉は▲6二銀あるいは▲7二銀からの詰めろとなっています。
無理に受けるとしたら△6一銀ですが、戦力不足に陥るうえに、
▲7三馬でも▲4三馬でも受けがなくなるので、
消去法で考えても、先手玉を詰ましにいくしかありません。

114手目の局面では先手玉に長手数の詰みがありました。
そして、読み切っているからこそ、後手はギリギリの形を選択できました。



【将棋】第32期竜王戦七番勝負 第2局 広瀬章人 竜王 対 豊島将之 名人の対局の投了図
126手にて、先手の広瀬竜王が投了し、豊島名人の2勝となりました。

投了図以降、詰め上がりまでの手順はまだまだ長いですが、
▲6七玉 △5七歩成 ▲7八玉 △6八と と迫って、先手玉を8筋に追い込み、
▲8九玉に△8八金から清算して、取った飛車を打ち込んでいけば、
6四桂・8五歩・9一香まできちんと働いて、先手玉は詰みとなります。


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