【将棋解説】
第3期叡王戦決勝七番勝負第1局 金井六段vs高見六段

目次

解説動画



【訂正】「初手▲7六歩、3手目▲2六歩」となっていますが、正しくは「初手▲2六歩、3手目▲7六歩」です。 投了時の説明で「後手の金井六段」となっていますが、正しくは「先手の金井六段」です。

対局情報

棋戦
第3期叡王戦決勝七番勝負 第1局
対局日
持ち時間
5時間(1日制)
対局者
金井 恒太 六段<先手>
高見 泰地 六段<後手>
対局場所
愛知県:名古屋城
戦型
横歩取り

局面解説

序盤

【将棋】第3期叡王戦決勝七番勝負 第1局 金井恒太 六段 対 高見泰地 六段の対局で18手指した局面
point
19手目:形勢判断と候補手
互角:▲3六飛、▲3六歩 など
18手目の△4二銀は実戦例の少ない手です。
多くの場合、左銀は△2二銀と上がって2筋を受けるために使います。

△4二銀の場合、2筋は歩を使って受けることになりますが、
銀は自玉に近いので遊び駒になりづらいという面もあります。

但し、△2二銀でも△4二銀でも、
早めに銀を上がると3二の金が離れ駒になります。

後手は3三の角を動いてしまうと、▲3二飛成とされて、
タダで金を取られてしまうので注意しましょう。

先手は後手の角をどかすために
▲3六歩~▲3七桂~▲4五桂のような指し方があります。

後手は△2二銀ならば△2三銀、△4二銀ならば△4一玉のように
あらかじめ金取りを受ける必要があります。




【将棋】第3期叡王戦決勝七番勝負 第1局 金井恒太 六段 対 高見泰地 六段の対局で22手指した局面
point
23手目:形勢判断と候補手
互角:▲3六飛、▲2八飛 など
後手の飛車が五段目にいる場合、
△2五歩と先手の飛車先を叩く変化がよく出てきます。

先手は飛車を下に引くか、横に回るしかありませんが、
どちらを選んでも1局となります。

下に引いた場合、後手に攻める権利を渡すことにはなりますが、
比較的安全に陣形整備ができます。

横に回った場合、飛車を狙われて激しい攻め合いになることも多いですが、
お互いの歩が伸びずに手詰まり模様となることもあります。



【将棋】第3期叡王戦決勝七番勝負 第1局 金井恒太 六段 対 高見泰地 六段の対局で29手指した局面
point
30手目:形勢判断と候補手
互角:△7二銀、△6二玉、△2四飛、△5二玉 など
後手は8四に飛車を引いてからは△2四飛という手が常に生じています。
2筋を突破できる訳ではありませんが、先手の駒組みを制限できます。

但し、すぐに先手から攻める手はないので、
△7二銀や△6二玉と美濃囲いを目指して陣形整備もしてみたいです。

本譜はバランスを取って△5二玉としました。



【将棋】第3期叡王戦決勝七番勝負 第1局 金井恒太 六段 対 高見泰地 六段の対局で32手指した局面
point
33手目:形勢判断と候補手
互角:▲7七銀、▲1六歩 など
対抗形や角換わりでは端歩を突き合うことも多いですが、
横歩取りでは端歩の判断が非常に難しいです。

横歩取りは飛車や角が交換になりやすいものの、
陣形のバランスが良いので打ち込む隙がないことも多いです。

しかし、端歩を突き捨ててから、香の頭に1歩叩いて吊り上げるだけで、
香の裏に桂香両取りで飛車を打てるようになったり、
香取りに角を打つ手が受けづらかったりします。

つまり、端歩に挨拶をしてしまうと、
相手の攻めを早めるお手伝いとなる可能性があります。




中盤

【将棋】第3期叡王戦決勝七番勝負 第1局 金井恒太 六段 対 高見泰地 六段の対局で40手指した局面
point
41手目:形勢判断と候補手
先手有利:▲2九飛、▲1六歩 など
後手は9筋に狙いを定めてきました。
受け切ることが難しいので、先手としては少し気持ち悪いですが、
後手の飛車が8筋に成り込んでくる形にさえならなければ
その後の反撃の楽しみは多いです。

本譜は▲2五桂と積極的に動いていきました。



【将棋】第3期叡王戦決勝七番勝負 第1局 金井恒太 六段 対 高見泰地 六段の対局で41手指した局面
point
42手目:形勢判断と候補手
互角:△4五桂
42手目は△同桂と取ってはいけません。
▲同飛と取り返されると、先手の飛車が働いてくるうえに
歩切れなので飛車成りが受けづらいです。

2五の桂は先手の飛車先の負担になっているので、
△4五桂の跳ね違いが手筋です。

△4五桂は先手の玉頭を狙いつつ、歩を入手したら
△3七歩という攻め筋もあるので、とても味が良い手です。

但し「桂の高跳び歩の餌食」で簡単に桂を取られてしまってはいけません。
桂を跳ねる前には、すぐに▲4六歩と突かれた時のことを考えておきましょう。

本局では△3七角と打てば、駒損にはなりますが、
相手玉の近くに成駒を作りながら攻め込めるので後手優勢となります。



【将棋】第3期叡王戦決勝七番勝負 第1局 金井恒太 六段 対 高見泰地 六段の対局で46手指した局面
point
47手目:形勢判断と候補手
互角:▲3三桂成、▲9八歩、▲8五桂、▲3七桂 など
47手目に攻め合うならば▲3三桂成の成り捨てが手筋です。
桂を損するのは痛いですが、竜ができるうえに相手陣を乱しているので
バランスは取れています。



【将棋】第3期叡王戦決勝七番勝負 第1局 金井恒太 六段 対 高見泰地 六段の対局で50手指した局面
point
51手目:形勢判断と候補手
互角:▲2四歩、▲3七桂 など
51手目は▲2四歩と垂らすのが手筋です。
但し、歩を使った確実な攻めで、後手に受けがないので、
攻め合いになることを覚悟する必要はあります。

玉の守りの金を攻めよ」で▲2五桂も有力ですが、
持ち駒が少ないので、決め手以外ではなるべく桂を温存しておきたいです。



【将棋】第3期叡王戦決勝七番勝負 第1局 金井恒太 六段 対 高見泰地 六段の対局で59手指した局面
point
60手目:形勢判断と候補手
互角:△6二玉 など
60手目は「玉の早逃げ八手の得」で△6二玉と指してみたいです。

現状、▲3四桂のような手で4二の銀が攻められやすい状態です。
そして、その銀を支えているのは玉だけなので、
もはや囲いにはなっておらず、半壊していると言えます。

△6二玉の1手を指すと、
6二の銀と7一の金が美濃囲いとして機能してきます。
そして、4二の銀は外堀のような存在に変わり、
先手に取られてしまったとしても、手を稼ぐという役割を果たします。



【将棋】第3期叡王戦決勝七番勝負 第1局 金井恒太 六段 対 高見泰地 六段の対局で60手指した局面
point
61手目:形勢判断と候補手
互角:▲3四桂 など
後手玉が遠くなったので、先手からの早い攻めがなくなりました。
受け切りも考えたいですが、後手の持ち駒が多いので難しそうです。

結局攻め合うしかなさそうですが、遅くても確実な▲3四桂が有力です。
本譜は▲7五金と飛車を攻めにいきましたが、
後手にうまく飛車を捌かれた後、華麗な寄せがありました。




終盤

【将棋】第3期叡王戦決勝七番勝負 第1局 金井恒太 六段 対 高見泰地 六段の対局で65手指した局面
point
66手目:形勢判断と候補手
後手優勢:△7四桂 など
後手は自玉が安全なので、強く攻めていけます。

しかし先手陣はバランスが良いので、最初の攻め方が難しいです。
このような場合、なるべく安い駒で、相手の働いている駒を攻めると確実です。
本譜は△7四桂と打ちましたが、これが決め手となりました。
銀が逃げれば、5七への利きが減るので△3九角が厳しくなります。



【将棋】第3期叡王戦決勝七番勝負 第1局 金井恒太 六段 対 高見泰地 六段の対局で68手指した局面
point
69手目:形勢判断と候補手
互角:
本譜は銀を逃げませんでしたが、
今度は△8九角が大変厳しくなりました。

遠く2三の竜まで狙っているのですが、
先手は持ち駒に金駒がないため、適当な受けがありません。

最後は王手竜取りがかかって、
先手は攻防共に見込みがなくなりました。



【将棋】第3期叡王戦決勝七番勝負 第1局 金井恒太 六段 対 高見泰地 六段の対局の投了図
76手にて、先手の金井六段が投了し、高見六段の1勝となりました
高見六段の間合いの取り方と鋭い寄せが非常に勉強になりました。

棋譜

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棋戦:第3期叡王戦決勝七番勝負 第1局
先手:金井恒太六段
後手:高見泰地六段
手数----指手---------消費時間--
1 2六歩(27) (00:00 / 00:00:00)
2 3四歩(33) (00:00 / 00:00:00)
3 7六歩(77) (00:00 / 00:00:00)
4 8四歩(83) (00:00 / 00:00:00)
5 2五歩(26) (00:00 / 00:00:00)
6 8五歩(84) (00:00 / 00:00:00)
7 7八金(69) (00:00 / 00:00:00)
8 3二金(41) (00:00 / 00:00:00)
9 2四歩(25) (00:00 / 00:00:00)
10 同 歩(23) (00:00 / 00:00:00)
11 同 飛(28) (00:00 / 00:00:00)
12 8六歩(85) (00:00 / 00:00:00)
13 同 歩(87) (00:00 / 00:00:00)
14 同 飛(82) (00:00 / 00:00:00)
15 3四飛(24) (00:00 / 00:00:00)
16 3三角(22) (00:00 / 00:00:00)
17 5八玉(59) (00:00 / 00:00:00)
18 4二銀(31) (00:00 / 00:00:00)
19 3六飛(34) (00:00 / 00:00:00)
20 8五飛(86) (00:00 / 00:00:00)
21 2六飛(36) (00:00 / 00:00:00)
22 2五歩打 (00:00 / 00:00:00)
23 2八飛(26) (00:00 / 00:00:00)
24 8六歩打 (00:00 / 00:00:00)
25 3三角成(88) (00:00 / 00:00:00)
26 同 桂(21) (00:00 / 00:00:00)
27 8八歩打 (00:00 / 00:00:00)
28 8四飛(85) (00:00 / 00:00:00)
29 3八銀(39) (00:00 / 00:00:00)
30 5二玉(51) (00:00 / 00:00:00)
31 6八銀(79) (00:00 / 00:00:00)
32 9四歩(93) (00:00 / 00:00:00)
33 7七銀(68) (00:00 / 00:00:00)
34 7二銀(71) (00:00 / 00:00:00)
35 3六歩(37) (00:00 / 00:00:00)
36 9五歩(94) (00:00 / 00:00:00)
37 3七桂(29) (00:00 / 00:00:00)
38 9三桂(81) (00:00 / 00:00:00)
39 6六銀(77) (00:00 / 00:00:00)
40 8五桂(93) (00:00 / 00:00:00)
41 2五桂(37) (00:00 / 00:00:00)
42 4五桂(33) (00:00 / 00:00:00)
43 5五角打 (00:00 / 00:00:00)
44 9七桂成(85) (00:00 / 00:00:00)
45 同 桂(89) (00:00 / 00:00:00)
46 9六歩(95) (00:00 / 00:00:00)
47 3三桂成(25) (00:00 / 00:00:00)
48 同 金(32) (00:00 / 00:00:00)
49 2二飛成(28) (00:00 / 00:00:00)
50 4四歩(43) (00:00 / 00:00:00)
51 2四歩打 (00:00 / 00:00:00)
52 3七歩打 (00:00 / 00:00:00)
53 2三歩成(24) (00:00 / 00:00:00)
54 同 金(33) (00:00 / 00:00:00)
55 同 龍(22) (00:00 / 00:00:00)
56 3八歩成(37) (00:00 / 00:00:00)
57 同 金(49) (00:00 / 00:00:00)
58 3七歩打 (00:00 / 00:00:00)
59 4八金(38) (00:00 / 00:00:00)
60 6二玉(52) (00:00 / 00:00:00)
61 7五金打 (00:00 / 00:00:00)
62 5四飛(84) (00:00 / 00:00:00)
63 6五金(75) (00:00 / 00:00:00)
64 5五飛(54) (00:00 / 00:00:00)
65 同 金(65) (00:00 / 00:00:00)
66 7四桂打 (00:00 / 00:00:00)
67 6五桂打 (00:00 / 00:00:00)
68 8九角打 (00:00 / 00:00:00)
69 7九飛打 (00:00 / 00:00:00)
70 7八角成(89) (00:00 / 00:00:00)
71 同 飛(79) (00:00 / 00:00:00)
72 8九角打 (00:00 / 00:00:00)
73 7七飛(78) (00:00 / 00:00:00)
74 6六桂(74) (00:00 / 00:00:00)
75 同 歩(67) (00:00 / 00:00:00)
76 5七桂成(45) (00:00 / 00:00:00)
まで76手で後手の勝ち


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