【将棋解説】
第4期叡王戦七番勝負第2局 高見叡王vs永瀬七段

目次

解説動画



対局情報

棋戦
第4期叡王戦七番勝負 第2局
対局日
持ち時間
5時間(1日制)
対局者
高見 泰地 叡王<先手>
永瀬 拓矢 七段<後手>
対局場所
北海道:北こぶし知床 ホテル&リゾート
戦型
横歩取り

局面解説

序盤

【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第2局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で22手指した局面
point
23手目:形勢判断と候補手
互角:▲2二歩、▲5八玉、▲6八玉、▲4八銀、▲3八金
22手目の△2三銀には、先手の飛車にプレッシャーをかけつつ、
美濃囲いを目指して△6二玉と上がりやすくするという意味合いがあります。
横歩取りでも美濃囲いは優秀とされており、
中住まいよりも玉の遠さと堅さの面において優位に立つことができます。

先手が△2三銀を咎めようとするならば、
ここで▲2二歩と打つ手が有力です。
以下△同金 ▲3三角成 △同桂 ▲3一角 △3二金 ▲5三角成 △6二金
▲4三馬 △同金 ▲2三飛成が一例で形勢は互角です。
後手が△2三銀と上がるためには、この変化も知っておくことが重要で、
何となく真似をすると、先程の手順中に間違えて劣勢になる恐れがあります。

本譜は▲6八玉と上がりました。
駒組みを続ける指し方も、もちろん有力です。




【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第2局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で26手指した局面
point
27手目:形勢判断と候補手
互角:▲2八飛、▲3六歩、▲9六歩、▲4六歩 など
先手の7九の銀と、後手の2一の桂は、早く活用したいのですが、
それぞれ自分の角が邪魔で活用が難しい状況です。
角交換をすると、相手に価値の高い手を指させてしまうことになるため、
角の有効な使い道ができるまで、お互いに角交換は保留します。

27手目で本譜は▲2八飛と引きました。
これは飛車の当たりを弱めて、将来の△3三桂~△2五歩などに備えた手です。



【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第2局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で27手指した局面
point
28手目:形勢判断と候補手
互角:△7一玉、△2四飛、△5四飛 など
28手目で後手が先手の飛車引きを咎めるならば、
△2四飛とぶつける手が有力で、▲同飛にて形勢は互角です。
横歩取りの、特に後手が△2三銀と上がっている形において、
先手は常に△2四飛を警戒しておく必要があります。
但し、1手前で▲2八飛と引く代わりに▲3六歩と突いた局面だと、
△2四飛には、▲同飛ではなく、▲3三角成として先手優勢です。

横歩取りは部分的に同じ形であったとしても、
少しの違いで好手悪手が入れ替わることも多いので、難しい戦法です。



【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第2局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で35手指した局面
point
36手目:形勢判断と候補手
互角:△4五歩
後手としては玉が安定したので、なるべく早く仕掛けたいところです。
現局面で先手陣の弱点は桂頭の3六であり、
▲4七銀のカバーが間に合っていない今がチャンスです。
狙い筋は△3五歩 ▲同歩 △3六歩ですが、いきなりその手順に踏み込むと、
▲2五桂が角取りなので、角を逃げるだけの手を指さなくてはいけません。

36手目で本譜は△4五歩と突きました。
これで△3五歩の攻め筋を残しつつ、角を捌くことができます。
尚、後手からの角交換が部分的に損であることは変わりませんが、
攻めの主導権を握ることができるならばバランスは取れています。




中盤

【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第2局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で37手指した局面
point
38手目:形勢判断と候補手
互角:△3四銀、△1四銀、△1二銀
37手目の▲2四歩を取ると、後手陣のバランスが崩れるうえに、
先手が飛車を活用しやすくなります。
後手は先手の飛車を押さえ込む展開に持ち込まないと
△3五歩 ▲同歩 △3六歩が間に合わなくなって、攻め合い負けします。

よって、38手目では銀を逃げて、2四に歩を残すことで
先手の飛車の働きを悪くします。
銀の逃げ方は△3四銀、△1四銀、△1二銀のいずれも有力です。
△1四銀や△1二銀は横歩取りならではの逃げ方です。
1筋や9筋に金駒を移動する手は
駒の働きが弱くなり、終盤で残りやすいので、原則は避けるべきです。
但し、後手の左銀は、先手の飛車の2筋突破を防ぐことが最大の使命です。
それさえ果たすことができるのであれば、仮に銀が残ってしまったとしても、
その分、飛車が動き回って働けば、バランスは取れています。



【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第2局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で49手指した局面
point
50手目:形勢判断と候補手
互角:△2三銀、△5六歩、△2八角
先手に馬を作られてしまいましたが、他に攻め駒がおらず、
後手にもまだ余裕があるため、50手目は手の広い局面です。

寄せやすさを意識するならば、先手の飛車の横利きが止まっているうちに
△5六歩と打って、玉のこびんを開けておく手が有力です。

駒の働きを意識するならば、最も働きの弱い金駒である1二の銀を、
前線に送っていく△2三銀が有力です。

確実な駒得を意識するならば、離れ駒の香を狙う△2八角が有力です。
しばらくは馬が狭いですが、3七の桂を狙う攻めがより厳しくなります。



【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第2局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で56手指した局面
point
57手目:形勢判断と候補手
互角:▲7七銀、▲4六飛、▲7九玉 など
次に△2六歩と突かれても▲2五歩と打つ手が飛車取りになるため、
先手が飛車を閉じ込められてしまう恐れはありません。
今度は先手に少し余裕ができましたが、本譜は▲7七銀と上がりました。
この「8八に銀がいるままでは勝てない」という感覚は非常に重要です。



【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第2局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で65手指した局面
point
66手目:形勢判断と候補手
互角:△4五歩
66手目は△4五歩と打って、飛車交換を拒否する1手です。
後手陣は隙が多いので、先手に飛車を渡すと技がかかりやすい状態です。
▲2二飛の金銀両取りはもちろんですが、
▲8四飛や▲8五飛が王手になることも忘れてはいけません。



【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第2局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で68手指した局面
point
69手目:形勢判断と候補手
先手有利:▲3四歩
69手目では▲3四歩と突く手が有力です。
△2六歩で馬が捕まってしまいますが、無視して▲3三歩成から攻め合えば、
先手の駒損でも1五の銀が遊んでいるので、実質的には損得無しと言えます。

ここで本譜は▲1六歩と突きました。後手の歩切れに着目した手ですが、
盤上で最も働いていない金駒に働きかけているので、が悪い手です。



【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第2局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で80手指した局面
point
81手目:形勢判断と候補手
後手有利:▲4七歩、▲5八金 など
81手目で▲4八香の田楽刺しが魅力的に見えますが、
△4七歩と叩くのが好手で、▲同香 △3七馬で2枚替えに持ち込まれます。
大駒1枚と桂香2枚では、大駒1枚の方が価値が高いことが多いのですが、
5筋を突破される条件まで追加されると、総合的に後手が得をしています。

つまり、先手は香を打っても取られてしまう状況なので、
ここは▲4七歩と打つ方が有力です。

本譜は▲7七玉と上がりました。

終盤

【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第2局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で81手指した局面
point
82手目:形勢判断と候補手
後手優勢:△3七馬
82手目では△3七馬が有力です。
▲同銀に△4九飛成となれば、2枚替えに竜までできて後手の必勝型です。
よって、△3七馬に対しては▲4七歩と受けることになりますが、
△6六飛と切って、やはり2枚替えが実現します。
尚、部分的には△4九飛成 ▲同銀 △3七馬の2枚替えも有力ですが、
この局面では、▲8五飛の王手からボロっと馬を取られて大逆転です。



【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第2局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で86手指した局面
point
87手目:形勢判断と候補手
後手優勢:▲6一竜、▲6九香 など
87手目で▲6一竜と切る手は有力です。
△同銀の1手に▲8三銀と打って、あとは無表情で祈ります。
そして△同玉と銀を取ってくれれば▲8四香から後手玉が詰むという罠です。
劣勢の場合は、少しでも詰む可能性がある局面に持ち込むことも重要です。

本譜は▲6二香と打ちました。これは美濃崩しの手筋の1つです。
△同金には▲7一銀があるので、△7一金とかわしますが、
「後手玉を8二から動かして▲7一竜」
あるいは「▲2一飛のような2枚飛車から▲7一飛成」が実現すれば
とても厳しい攻めとなります。
但し、本局の場合は△4一歩と底歩を打てば簡単に受かるため、
少し重い攻めとなりました。

尚、この局面で6三の歩が6四にある状態ならば
▲6三香と1つ離して打つ方が効果的です。
△同銀は▲6一竜と金を取ることができますし、
△7一金には▲同竜 △同玉 ▲6二金で寄り筋です。



【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第2局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で98手指した局面
98手にて、先手の高見叡王が投了し、永瀬七段の2勝となりました。

投了図で先手玉には△7五馬 ▲同歩 △同馬からの詰めろがかかっています。
詰めろを受けるならば▲9七玉と早逃げするくらいですが、
△7七馬 ▲同金 △7九馬 ▲8八角 △8五桂 ▲8六玉 △8八馬で
先手玉に必至がかかります。
また△7七馬とは切らずに、△7六馬や△6九銀から確実に攻めても間に合います。

棋譜

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棋戦:第4期叡王戦七番勝負 第2局
先手:高見泰地叡王
後手:永瀬拓矢七段
手数----指手---------消費時間--
1 7六歩(77)
2 3四歩(33)
3 2六歩(27)
4 8四歩(83)
5 2五歩(26)
6 8五歩(84)
7 7八金(69)
8 3二金(41)
9 2四歩(25)
10 同 歩(23)
11 同 飛(28)
12 8六歩(85)
13 同 歩(87)
14 同 飛(82)
15 3四飛(24)
16 3三角(22)
17 3六飛(34)
18 8四飛(86)
19 2六飛(36)
20 2二銀(31)
21 8七歩打
22 2三銀(22)
23 6八玉(59)
24 6二玉(51)
25 3八銀(39)
26 7二銀(71)
27 2八飛(26)
28 7一玉(62)
29 3六歩(37)
30 8二玉(71)
31 4六歩(47)
32 5四飛(84)
33 9六歩(97)
34 4四歩(43)
35 3七桂(29)
36 4五歩(44)
37 2四歩打
38 1二銀(23)
39 4五歩(46)
40 3五歩打
41 2六飛(28)
42 2五歩打
43 1六飛(26)
44 8八角成(33)
45 同 銀(79)
46 2四飛(54)
47 4四角打
48 3三桂(21)
49 5三角成(44)
50 2八角打
51 4四歩(45)
52 5二歩打
53 5四馬(53)
54 4二金(32)
55 3五歩(36)
56 1九角成(28)
57 7七銀(88)
58 5三香打
59 2七馬(54)
60 4四飛(24)
61 4七歩打
62 2三銀(12)
63 6六銀(77)
64 2四銀(23)
65 4六飛(16)
66 4五歩打
67 3六飛(46)
68 1五銀(24)
69 1六歩(17)
70 2六銀(15)
71 同 馬(27)
72 同 歩(25)
73 同 飛(36)
74 4六歩(45)
75 同 歩(47)
76 1七角打
77 2二飛成(26)
78 3五角成(17)
79 1一竜(22)
80 4六飛(44)
81 7七玉(68)
82 3七馬(19)
83 4七歩打
84 6六飛(46)
85 同 歩(67)
86 5五馬(37)
87 6二香打
88 7一金(61)
89 5一竜(11)
90 6五桂打
91 8六玉(77)
92 6六馬(55)
93 7七銀打
94 同 桂成(65)
95 同 桂(89)
96 5七馬(35)
97 7五桂打
98 7四銀打
99 投了
まで98手で後手の勝ち


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