【将棋解説】
第91期棋聖戦五番勝負第2局 渡辺棋聖vs藤井(聡)七段

目次

解説動画



対局情報

棋戦
第91期棋聖戦五番勝負 第2局
対局日
持ち時間
4時間(1日制)
対局者
渡辺 明 棋聖(三冠)<先手>
藤井 聡太 七段<後手>
戦型
急戦矢倉
主催
産経新聞社
公益社団法人日本将棋連盟
(棋譜利用問い合わせ済み)
対局場所
東京都:東京・将棋会館

局面解説

序盤

【将棋】第91期棋聖戦五番勝負 第2局 渡辺明 棋聖 対 藤井聡太 七段の対局で26手指した局面
point
27手目:形勢判断と候補手
互角:▲6六銀、▲4五歩、▲4七銀 など
27手目で▲6六歩と突いて、金矢倉の完成を目指すのは疑問手です。
4七銀型の金矢倉自体は、よくある形ですが、
銀が前進しづらいので、早い仕掛けを狙っておらず、持久戦の布陣です。
この早い段階で持久戦を宣言しても、後手が持久戦に付き合うことはなく、
方針を変更できない先手は作戦負けになります。

本譜は▲6六銀と上がって急戦になりました。
▲4六歩や▲3七桂を急いだ効果も加わり、▲4五歩の仕掛けが生じています。




【将棋】第91期棋聖戦五番勝負 第2局 渡辺明 棋聖 対 藤井聡太 七段の対局で30手指した局面
急戦に持ち込むのは権利ですが、
持久戦に持ち込むか否かは、相手の動きを見ながら決める必要があるのです。



中盤

【将棋】第91期棋聖戦五番勝負 第2局 渡辺明 棋聖 対 藤井聡太 七段の対局で35手指した局面
point
36手目:形勢判断と候補手
互角:△2二角、△5四歩、△8六歩、△4二角 など
先手からの早い仕掛けによって、
お互いに玉を囲うという選択肢はなくなり、忙しくなってきました。
後手は3一の角が準備途中なので、今のうちに活用を急ぎます。
角を3一に引いたことを生かすのであれば△5四歩は自然な手で、
△7五歩からの攻め合いに期待できます。

他に△4二角と上がって、3三や2四を受けつつ、
△1五角の飛び出しを含みにする指し方も有力です。

本譜は△2二角と上がりました。
先手の角が攻めに利いてくるので、角で対抗して受けるのは自然な指し方です。
元の位置に戻るのは悔しいですが、仕掛けさせたことに満足しておきます。



【将棋】第91期棋聖戦五番勝負 第2局 渡辺明 棋聖 対 藤井聡太 七段の対局で41手指した局面
point
42手目:形勢判断と候補手
互角:△5四金、△1四歩、△8六歩 など
42手目で本譜は△5四金と上がって積極的な動きを見せました。
これで4五の地点において、後手が数的優位に立っており、
▲4九飛の応援にも△4二飛と応援を送り返せば、状況は変わりません。
但し「金は斜めに誘え」と言われるようにマイナス面も大きく、
4三に金は戻れないので、薄くなった自陣の修復は困難になります。
金を前線に出すと、上部に手厚くなるので、押さえ込みには有効ですが、
その反面、突破されることが負けに繋がりやすいので、リスクは高い手です。

ここでは△1四歩と端歩を突いて、△1三角と覗く含みを見せながら、
もう少しだけ先手の攻めを呼び込むのが無難な指し方です。



【将棋】第91期棋聖戦五番勝負 第2局 渡辺明 棋聖 対 藤井聡太 七段の対局で44手指した局面
point
45手目:形勢判断と候補手
互角:▲5七銀左、▲2四歩、▲4三歩
45手目で▲5五銀左とぶつけても、激しくて難解な部分はありますが、
一気に押し切ることは難しく、持ち駒を増やした後手からの反撃が怖いです。

本譜は▲5七銀左と引きました。駒を引くこと自体はマイナス要素ですが、
角の利きが通るうえに、5七に引いた銀は4筋の攻防で確実に働きます。
また、対抗していた後手の右銀を6四に取り残すことができる可能性もあり、
将来的に銀の働きで差を付けることができそうな点もプラス要素です。



【将棋】第91期棋聖戦五番勝負 第2局 渡辺明 棋聖 対 藤井聡太 七段の対局で45手指した局面
point
46手目:形勢判断と候補手
互角:△7三桂、△8六歩、△4七歩、△3一玉 など
後手に△4五銀と桂を取る権利はありますが、
46手目の局面だと▲2二角成 △同金で壁金の形が悪いうえに、
▲4五銀 △同金 ▲6一角と絡まれて、4五の金の助け方が難しいです。
以下、△5二銀 ▲3一銀 △同玉 ▲5二角成 △同飛 ▲4五飛となると、
角桂と金の交換で先手が駒損ながら、それを補って余りある駒の働きです。

近い将来、角交換から激しくなる変化は避けられませんが、
桂取りの権利は保持できますので、ギリギリまで更なる攻撃態勢を整えます。
本譜は「遊び駒を活用せよ」で△7三桂と跳ねました。
均衡を保った戦いなので、
後手だけが右桂を使わずに勝てるはずがないという考え方が重要です。



【将棋】第91期棋聖戦五番勝負 第2局 渡辺明 棋聖 対 藤井聡太 七段の対局で54手指した局面
point
55手目:形勢判断と候補手
互角:▲4三歩
55手目で先ほどの変化と同様に▲6一角と打って▲4三歩を狙うと、
後手が右桂を2回跳ねた効果で△5七桂打という反撃を食らいます。

角打ちならば4筋の押さえ込みに加えて、
2二の金取りまで狙える▲6六角の方が絶好の位置になるのですが、
このタイミングだと、次に金をタダで取ることはできないので、
今度は△4六桂と金取りの反撃を食らいます。

本譜は▲4三歩と叩きました。
攻めのスピードアップを図るために、歩の叩きが有効になることは多いです。
1歩は犠牲になりますが、△同飛と取らせてから▲6六角と打てば、
2二の金をタダで取れるようになっているので攻めが速くなっています。



【将棋】第91期棋聖戦五番勝負 第2局 渡辺明 棋聖 対 藤井聡太 七段の対局で57手指した局面
point
58手目:形勢判断と候補手
互角:△3二金、△3一銀
2二の金取りの対応は非常に悩ましいです。

①攻め合うならば△4六桂ですが、▲2二角成と金を取られつつ、
玉の近くに馬を作られてしまっては、生きた心地がしません。

②それならば△3二金と寄って、
▲1一角成と香を取らせてから△4六桂と打った方が無難です。

③△3三桂と跳ねるのは▲3四歩が見えているものの、
時間稼ぎとしては十分に考えられます。

④駒損を極力避けるならば△1二金ですが、
以降、金が自玉の守りに働くことはないので、相当指しづらいです。

⑤本譜は△3一銀と打ちました。
金駒を投入するので手堅いですが、攻め駒がなくなっているのでリスクは高い手です。
特に、金取りを受けるための有力な手が複数ある中で、
貴重な持ち駒を投入する手は、感覚的にかなり選びづらいです。



【将棋】第91期棋聖戦五番勝負 第2局 渡辺明 棋聖 対 藤井聡太 七段の対局で58手指した局面
point
59手目:形勢判断と候補手
互角:▲4四歩
59手目は▲4四歩と叩く手が有力で、
以下、△同金 ▲同飛 △同飛 ▲同角に△4九飛で王手角取りをかけさせます。
そして、▲5九銀 △4四飛成と角を取らせれば、
一連の手順では角金交換の駒損ですが、
先手が手番を握っているので▲6一飛と打って攻めることができます。
後手陣の形が悪いこともあって、実戦的にはかなり難しい勝負です。

本譜は「玉の早逃げ八手の得」で▲7九玉と寄りました。
是非とも指したい、非常に大きな1手ですが、
△4六歩で飛車の活用が少し難しくなってしまいました。



【将棋】第91期棋聖戦五番勝負 第2局 渡辺明 棋聖 対 藤井聡太 七段の対局で61手指した局面
point
62手目:形勢判断と候補手
後手有利:△8六歩、△2七角
▲8八玉と入城される前に、
△8六歩と突き捨ててから△8七歩と垂らすのは、形を崩す頻出手筋です。
本局の場合は、9筋の端歩を突いていないため、
△9五桂と打つ含みがあり、さらに厳しくなっています。
この段階で△9五桂を防ぐために▲9六歩と突くようでは、
やや先手が苦しいです。




終盤

【将棋】第91期棋聖戦五番勝負 第2局 渡辺明 棋聖 対 藤井聡太 七段の対局で71手指した局面
point
72手目:形勢判断と候補手
後手優勢:△4七歩成、△8七歩
寄せの段階で「金は斜めに誘え」を実現すると相手玉はかなり弱体化します。

72手目で△8七歩と打つ手も有力ですが、
持ち駒が少ない時は、形を決めすぎない方が寄せを逃しにくいです。

本譜は△4七歩成としました。▲同金には△5八角、
▲同飛は△6九角が厳しく、△8七歩を保留することで生じている攻め筋です。



【将棋】第91期棋聖戦五番勝負 第2局 渡辺明 棋聖 対 藤井聡太 七段の対局で82手指した局面
玉を囲わない急戦は1度均衡が崩れてしまうと大差になりやすいです。
あとは相手玉周辺に拠点を残すことを意識しながら少しずつ迫っていけば、
うっかり駒を取られたり、入玉されたりしない限り、
多少は最善手を逃したとしても、まず逆転されません。



【将棋】第91期棋聖戦五番勝負 第2局 渡辺明 棋聖 対 藤井聡太 七段の対局の投了図
90手にて、先手の渡辺棋聖が投了し、藤井七段の2勝となりました。

投了図以降、△同玉に「大駒は離して打て」で△7九角と打つのがポイントで、
▲9八玉 △8八角成までの詰みとなります。

本局では、藤井七段の、
ハイリスクに見える手を指し切ってしまう読みの深さに驚きました。


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