【将棋解説】
第4期叡王戦七番勝負第4局 高見叡王vs永瀬七段

目次

解説動画



対局情報

棋戦
第4期叡王戦七番勝負 第4局
対局日
持ち時間
3時間(1日制/チェスクロック方式)
対局者
高見 泰地 叡王<先手>
永瀬 拓矢 七段<後手>
対局場所
広島県:みやじまの宿 岩惣
戦型
横歩取り

局面解説

序盤

【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第4局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で22手指した局面
本局は先手が高見叡王、後手が永瀬七段です。
戦型は横歩取りで、29手目までは本シリーズの第2局と同一手順になりました。



【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第4局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で29手指した局面
point
30手目:形勢判断と候補手
互角:△3四飛、△7四飛、△8二玉 など
第2局では30手目で△8二玉として美濃囲いに入城しましたが、
本譜は△3四飛と回りました。
第2局では、先手の持ち駒に飛車があった局面にて、
▲8四飛や▲8五飛と打つと王手で駒取りになる変化が複数ありました。
7一玉型ならば、少なくともその心配はありません。
終盤から逆算した序盤の工夫が見られます。

但し、△8二玉は総合的に見てプラスとなる可能性が高い手です。
後回しにして間に合わなくなるリスクを認識しておく必要はあります。




【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第4局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で36手指した局面
point
37手目:形勢判断と候補手
互角:▲2五歩、▲同飛、▲2三角成
横歩取りで後手が△2四飛とぶつける手に対しては、
多くの場合、▲2五歩も▲同飛も有力です。
▲2五歩は後手に主導権を渡すので指し方が少し難しくなりますが、
一直線の激しい変化を避けることができます。

尚、この局面の場合、▲2三角成も有力です。
飛車交換に加えて、角銀交換で先手の駒損となりますが、
3二の金が上ずるため、後手陣に飛車打ちの隙が生じて攻めやすくなります。




中盤

【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第4局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で45手指した局面
point
46手目:形勢判断と候補手
互角:△4二角
46手目で△6一金と寄ってはいけません。
▲2三歩と打たれて、後手は駒損が避けられなくなります。

よって、ここでは5一の金取りを受けつつ、手番を握る必要があります。
とりあえずの候補としては、3一の飛車取りとなる△4一飛か△4二角です。
但し、△4一飛には▲2三歩と打つのが好手で、
△3一飛と先に飛車を取っても、▲2二歩成から飛車が捕まります。
自陣飛車を狭い場所に打った際に、たまに出てくる手筋です。
本譜は△4二角と打ちました。
少し働きの悪い位置ですが、角は狭い位置からでも活用しやすい駒ですし、
消去法で考えてもこれしかありません。



【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第4局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で50手指した局面
point
51手目:形勢判断と候補手
互角:▲9六歩、▲4六歩 など
先手は竜ができているものの、金駒はすべて自陣におり、
桂も跳ねておらず、歩も伸びていません。
いくら竜の攻撃力が高くても
このような場合は焦って攻めようとしないことが重要です。
本譜は▲9六歩と突きました。
自玉の広さを確保しつつ、端攻めの含みもあるの良い手です。



【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第4局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で54手指した局面
point
55手目:形勢判断と候補手
互角:▲8五竜
先手の角が9二に利いていたため、後手は△9四歩と突けませんでした。
そして、△8三歩と打ったので後手の囲いが玉の狭い棺桶美濃となりました。
これで△9四歩と端歩を突いている美濃囲いと比較すると、
先手は後手玉を詰ますために必要な駒が基本的に2枚少なくて済みます。



【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第4局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で60手指した局面
point
61手目:形勢判断と候補手
互角:▲4六歩、▲8八銀、▲8六歩
盤上から竜が消えて争点がぼやけたので、
局面を広く見て、総合的に状況を整理します。

まず、歩の枚数も含めて、駒の損得はありません。
玉の堅さは「先手3:後手7」ですが、玉の広さは「先手8:後手2」です。
駒の働きは先手の左銀が玉よりも安全な位置に隠れており、
また右銀・右桂の自由度が低いため「先手4:後手6」です。
合計するとほぼ互角ではあるものの、わずかに後手寄りの形勢です。
先手陣にはマイナス面が多いので、それらを解消する手を指したいです。

具体的には7九の銀を活用する▲8八銀、
角の利きを増やしつつ、2九の桂に紐を付ける▲4六歩、
自玉を広くしつつ、端攻めの狙いも残す▲8六歩の3手が有力です。

本譜は▲4一飛と打ちました。
陣形差で劣っている時に単騎で斬り込んでいくのはリスクが高い手です。



【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第4局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で65手指した局面
point
66手目:形勢判断と候補手
後手有利:△3三銀
66手目では△3三銀と引き、▲3一金に対して、
△2七飛~△2二飛成として、自陣竜で金を取り返す手順が有力です。

本譜は△2八歩と打ちました。
これも形を崩す手筋で、先手は▲同銀と取るしかありません。
以下、飛車で金を取り返しましたが、
竜よりも狙われやすいため、後手も神経を使う展開となりました。



【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第4局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で75手指した局面
point
76手目:形勢判断と候補手
後手有利:△2二歩、△4二銀
76手目で△4二銀と逃げる手もありますが、
後手は飛車を狙われつつ、玉に迫られてしまう恐れがあります。

ここは先手が▲3四歩と打ったことで馬の退路が塞がったことに着目して、
△2二歩と打つ手が有力です。
これで後手は角が手に入ることが確定します。
代わりに3一の飛車を相手に取らせても駒損にならないため、負担が減ります。



【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第4局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で80手指した局面
point
81手目:形勢判断と候補手
後手有利:▲5三角成、▲3一角成
81手目で本譜は▲5三角成と王手をしてから▲3一馬と飛車を取りましたが、
単に▲3一角成と飛車を取る指し方も有力です。

▲5三角成は手番を握りながら歩切れを解消できて、
かつ、5三に駒を打つスペースができるというメリットがあります。
その反面、後手玉が手順に△8二玉と入城できますし、
△5六歩と打つ反撃が生じます。
但し、先手の歩切れ解消がプラスになるかどうかは現時点で不明です。
現状で先手が歩を使うならば、9筋の端攻めくらいしかありませんが、
先に△8二玉と入城されてしまうと厳しい攻め筋ではありません。

本譜でも出てきますが、先手の▲5三桂と後手の△5六歩で、
どちらがより得をしているかの判断は難しいため、無難な手は▲3一角成です。



【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第4局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で91手指した局面
point
92手目:形勢判断と候補手
後手有利:△2四角、△9九角成
92手目では単に△9九角成とするか、
あるいは△2四角に▲4六銀と合駒を打たせてから△9九角成が有力です。

ここで本譜は△2八角成としました。
駒単体の価値で考えると銀を取った方が良いのですが、
先手が▲7七玉から逃げる価値の方が高い状態でした。



【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第4局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で100手指した局面
point
101手目:形勢判断と候補手
互角:▲8八玉、▲8六香
101手目で▲4三と と寄ると、角を逃げずに△8五桂が好手です。
▲8八玉には△9六桂のタダ捨てが手筋で、
▲同香と上ずらせることで9七から突破することができます。
端歩を突き越している場合の数少ないデメリットがこの攻め筋です。

但し、△8五桂が王手にならなければ回避できる手順なので、
ここでは▲8八玉と早逃げするか▲8六香と打つ手が有力です。

終盤

【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第4局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で111手指した局面
point
112手目:形勢判断と候補手
後手優勢:△6一香
後手玉は▲7一竜 △同玉 ▲6二と からの詰めろになっています。
5三の成香が1七の馬の利きを遮断していることがポイントです。
112手目は▲7一竜と切られないように△6一香と打ちます。



【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第4局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で114手指した局面
point
115手目:形勢判断と候補手
後手優勢:▲6三成香
115手目で、先手の持ち駒に角か銀があり、
かつ、後手の1七の馬がいなければ▲6二成香と捨てる手が厳しくなります。
但し、そのいずれも満たしていないため、後手玉に対する寄せはありません。

次に△5三馬と成香を取られると先手の完封負けなので、
ここは▲6三成香と寄る1手です。
△同銀には▲6一竜がありますし、後手が手抜いても▲7二成香があるため、
確実に金駒を1枚剥がすことができるという美濃崩しの手筋です。



【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第4局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局で123手指した局面
point
124手目:形勢判断と候補手
後手勝勢:△7四金、△5三馬 など
後手の陣形で、玉の隣に金1枚がいる形は、
決して堅くはありませんが、かなり詰みづらい形です。
先手が後手玉を寄せるならば7二の金を剥がすしかありませんが、
1九の馬の利きがあるため、▲6四桂と打つことができません。
よって、現局面は後手にかなり余裕がある状態です。
仮に1手パスをしてもまだ後手が優位に立っています。

124手目で本譜は△7四金と打ちました。
相手玉を守っている金駒と交換を迫る手は間違いが少ないです。
そして、本局面の場合、▲同銀 △同歩となれば歩が7五に利いてくるので
△5三馬が厳しくなりますし、1九の馬が8二まで利いて安全度が増します。



【将棋】第4期叡王戦七番勝負 第4局 高見泰地 叡王 対 永瀬拓矢 七段の対局の投了図
132手にて、先手の高見叡王が投了し、4連勝で永瀬新叡王の誕生となりました。

投了図以降、▲同銀は△7五馬までの1手詰みです。
▲同金は△同銀不成 ▲同玉 △7九竜 ▲7八香 △7六金で詰みとなります。

本局では永瀬新叡王の負けにくい差し回しが非常に勉強になりました。

棋譜

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棋戦:第4期叡王戦七番勝負 第4局
先手:高見泰地叡王
後手:永瀬拓矢七段
手数----指手---------消費時間--
1 7六歩(77) ( 0:00/00:00:00)
2 3四歩(33) ( 0:00/00:00:00)
3 2六歩(27) ( 0:00/00:00:00)
4 8四歩(83) ( 0:00/00:00:00)
5 2五歩(26) ( 0:00/00:00:00)
6 8五歩(84) ( 0:00/00:00:00)
7 7八金(69) ( 0:00/00:00:00)
8 3二金(41) ( 0:00/00:00:00)
9 2四歩(25) ( 0:00/00:00:00)
10 同 歩(23) ( 0:00/00:00:00)
11 同 飛(28) ( 0:00/00:00:00)
12 8六歩(85) ( 0:00/00:00:00)
13 同 歩(87) ( 0:00/00:00:00)
14 同 飛(82) ( 0:00/00:00:00)
15 3四飛(24) ( 0:00/00:00:00)
16 3三角(22) ( 0:00/00:00:00)
17 3六飛(34) ( 0:00/00:00:00)
18 8四飛(86) ( 0:00/00:00:00)
19 2六飛(36) ( 0:00/00:00:00)
20 2二銀(31) ( 0:00/00:00:00)
21 8七歩打 ( 0:00/00:00:00)
22 2三銀(22) ( 0:00/00:00:00)
23 6八玉(59) ( 0:00/00:00:00)
24 6二玉(51) ( 0:00/00:00:00)
25 3八銀(39) ( 0:00/00:00:00)
26 7二銀(71) ( 0:00/00:00:00)
27 2八飛(26) ( 0:00/00:00:00)
28 7一玉(62) ( 0:00/00:00:00)
29 3六歩(37) ( 0:00/00:00:00)
30 3四飛(84) ( 0:00/00:00:00)
31 3七銀(38) ( 0:00/00:00:00)
32 4四角(33) ( 0:00/00:00:00)
33 同 角(88) ( 0:00/00:00:00)
34 同 飛(34) ( 0:00/00:00:00)
35 5六角打 ( 0:00/00:00:00)
36 2四飛(44) ( 0:00/00:00:00)
37 同 飛(28) ( 0:00/00:00:00)
38 同 銀(23) ( 0:00/00:00:00)
39 4一飛打 ( 0:00/00:00:00)
40 5一飛打 ( 0:00/00:00:00)
41 同 飛成(41) ( 0:00/00:00:00)
42 同 金(61) ( 0:00/00:00:00)
43 2二歩打 ( 0:00/00:00:00)
44 同 金(32) ( 0:00/00:00:00)
45 3一飛打 ( 0:00/00:00:00)
46 4二角打 ( 0:00/00:00:00)
47 3四飛成(31) ( 0:00/00:00:00)
48 3三金(22) ( 0:00/00:00:00)
49 8四竜(34) ( 0:00/00:00:00)
50 3二金(33) ( 0:00/00:00:00)
51 9六歩(97) ( 0:00/00:00:00)
52 6一金(51) ( 0:00/00:00:00)
53 9五歩(96) ( 0:00/00:00:00)
54 8三歩打 ( 0:00/00:00:00)
55 3四竜(84) ( 0:00/00:00:00)
56 3三銀(24) ( 0:00/00:00:00)
57 2五竜(34) ( 0:00/00:00:00)
58 2四飛打 ( 0:00/00:00:00)
59 同 竜(25) ( 0:00/00:00:00)
60 同 銀(33) ( 0:00/00:00:00)
61 4一飛打 ( 0:00/00:00:00)
62 3一金(32) ( 0:00/00:00:00)
63 同 飛成(41) ( 0:00/00:00:00)
64 同 角(42) ( 0:00/00:00:00)
65 3二金打 ( 0:00/00:00:00)
66 2八歩打 ( 0:00/00:00:00)
67 同 銀(37) ( 0:00/00:00:00)
68 2六飛打 ( 0:00/00:00:00)
69 2七歩打 ( 0:00/00:00:00)
70 3六飛(26) ( 0:00/00:00:00)
71 3一金(32) ( 0:00/00:00:00)
72 同 飛(36) ( 0:00/00:00:00)
73 2三角成(56) ( 0:00/00:00:00)
74 3三銀(24) ( 0:00/00:00:00)
75 3四歩打 ( 0:00/00:00:00)
76 2二歩打 ( 0:00/00:00:00)
77 3三馬(23) ( 0:00/00:00:00)
78 同 桂(21) ( 0:00/00:00:00)
79 4二角打 ( 0:00/00:00:00)
80 4一金打 ( 0:00/00:00:00)
81 5三角成(42) ( 0:00/00:00:00)
82 8二玉(71) ( 0:00/00:00:00)
83 3一馬(53) ( 0:00/00:00:00)
84 同 金(41) ( 0:00/00:00:00)
85 3三歩成(34) ( 0:00/00:00:00)
86 5五角打 ( 0:00/00:00:00)
87 5三桂打 ( 0:00/00:00:00)
88 7一金(61) ( 0:00/00:00:00)
89 5一飛打 ( 0:00/00:00:00)
90 5六歩打 ( 0:00/00:00:00)
91 同 歩(57) ( 0:00/00:00:00)
92 2八角成(55) ( 0:00/00:00:00)
93 3一飛成(51) ( 0:00/00:00:00)
94 3五角打 ( 0:00/00:00:00)
95 7七玉(68) ( 0:00/00:00:00)
96 4四角(35) ( 0:00/00:00:00)
97 6六銀打 ( 0:00/00:00:00)
98 5三角(44) ( 0:00/00:00:00)
99 1一竜(31) ( 0:00/00:00:00)
100 2九馬(28) ( 0:00/00:00:00)
101 8八玉(77) ( 0:00/00:00:00)
102 1九馬(29) ( 0:00/00:00:00)
103 4三と(33) ( 0:00/00:00:00)
104 1七角成(53) ( 0:00/00:00:00)
105 5五香打 ( 0:00/00:00:00)
106 8四桂打 ( 0:00/00:00:00)
107 5二と(43) ( 0:00/00:00:00)
108 7六桂(84) ( 0:00/00:00:00)
109 7七玉(88) ( 0:00/00:00:00)
110 6九飛打 ( 0:00/00:00:00)
111 5三香成(55) ( 0:00/00:00:00)
112 6一香打 ( 0:00/00:00:00)
113 同 と(52) ( 0:00/00:00:00)
114 同 金(71) ( 0:00/00:00:00)
115 6三成香(53) ( 0:00/00:00:00)
116 6八銀打 ( 0:00/00:00:00)
117 7六玉(77) ( 0:00/00:00:00)
118 8四桂打 ( 0:00/00:00:00)
119 8六玉(76) ( 0:00/00:00:00)
120 4九飛成(69) ( 0:00/00:00:00)
121 7二成香(63) ( 0:00/00:00:00)
122 同 金(61) ( 0:00/00:00:00)
123 8五銀打 ( 0:00/00:00:00)
124 7四金打 ( 0:00/00:00:00)
125 同 銀(85) ( 0:00/00:00:00)
126 同 歩(73) ( 0:00/00:00:00)
127 8五桂打 ( 0:00/00:00:00)
128 7六銀打 ( 0:00/00:00:00)
129 9七桂(89) ( 0:00/00:00:00)
130 5三馬(17) ( 0:00/00:00:00)
131 7五歩打 ( 0:00/00:00:00)
132 7七銀(76) ( 0:00/00:00:00)
133 投了 ( 0:00/00:00:00)
まで132手で後手の勝ち


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