【将棋解説】
第69期王将戦七番勝負第6局 渡辺王将vs広瀬八段

目次

解説動画



対局情報

棋戦
第69期王将戦七番勝負 第6局
対局日
持ち時間
8時間(2日制)
対局者
渡辺 明 王将(三冠)<後手>
広瀬 章人 八段<先手>
戦型
角換わり(後手右玉)
主催
スポーツニッポン新聞社
毎日新聞社
公益社団法人日本将棋連盟
(棋譜利用問い合わせ済み)
対局場所
佐賀県:大幸園

局面解説概要

序盤

【将棋】第69期王将戦七番勝負 第6局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の対局で17手指した局面
point
18手目:形勢判断と候補手
互角:△7四歩、△4一玉、△4二玉、△9四歩 など
先手が早い段階で1筋を突き越しましたが、
後手がこれを積極的に咎めるならば、早繰り銀が有力です。
1筋以外だと後手の駒組みの方が進んでいるので、確実に先攻できるうえに、
玉を深く囲うことが少ないので、終盤で1筋に追い込まれる可能性が低いです。

本譜は、後手が早繰り銀を見送って、
1筋の圧力から遠ざかる右玉を選択しました。




【将棋】第69期王将戦七番勝負 第6局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の対局で31手指した局面
point
32手目:形勢判断と候補手
互角:△7二金、△5二金、△5二玉 など
後手は△7二玉~△6二金とすれば、
先手の攻撃陣から距離を取ることができるので、玉の安全度は増します。
但し、32手目で玉を寄ると▲4五桂と仕掛けられて、△6二金が間に合いません。
右玉を指すならば、飛車の横利きが通るまでは慎重になる必要があります。
同じ形を目指すならば、△6二玉に代えて、△6二金と上がり、
△6一玉~△7二玉と囲った方が仕掛けられにくいです。

本譜は△5二金と上がった後、陣形を盛り上げて押さえ込みにいきました。
玉が薄く、少しのミスで大きく形勢を損ねるため、非常に難しい指し方です。

尚、1手損にはなりますが、
△5二金の後に△7二玉~△6二金とする待機策もあります。



【将棋】第69期王将戦七番勝負 第6局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の対局で38手指した局面
point
39手目:形勢判断と候補手
互角:▲5八金、▲5六銀、▲6六歩 など
39手目で、▲5八金と寄って、玉の堅さを主張する指し方は有力です。
▲4五桂と仕掛けた後で、角打ちによる反撃は生じやすくなりますが、
自玉が堅ければ、手抜きをして攻めやすいです。

▲4五桂については、いずれ跳ねますが、ここではまだ早いです。
桂の高跳び歩の餌食」で△4二銀~△4四歩が間に合ってしまいます。

本譜は▲6六歩と突きました。
後手を少しずつ揺さぶりながら、▲4五桂のタイミングを計ります。



中盤

【将棋】第69期王将戦七番勝負 第6局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の対局で49手指した局面
point
50手目:形勢判断と候補手
互角:△3五歩、△8六歩、△3三桂、△2三歩
50手目で本譜は△2三歩と打って無難に受けましたが、
▲2一飛成は△同飛で後手必勝なので、2筋の受けは必須ではありません。

具体的な候補としては△3五歩と突き捨てて、
▲同歩に△5九角と打つ手順が有力です。
▲4七金で角の行き場がなくなったようですが、
△2三歩を保留したことで1歩が残っているので、
△3六歩 ▲同金 △4八角成と馬を作ることができます。

特に持ち駒の歩が少ない場合、歩を受けに使って1枚減らす前に、
「現在の歩の枚数で攻め筋が生じていないか」を確認することは重要です。



【将棋】第69期王将戦七番勝負 第6局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の対局で54手指した局面
point
55手目:形勢判断と候補手
先手有利:▲4五桂、▲7五歩
55手目は▲4五桂が有力です。△4四歩には▲5三銀と打って後手陣を乱せば、
駒損ながらも後手陣に角打ちの隙が生じるので、攻めは続きます。
この▲4五桂が成立するようだと、後手の2一の桂との働きの差で、
先手の形勢が良くなったと判断することができます。
本局の展開を踏まえると、後手はどこかで△3三桂と跳ねておきたかったです。



【将棋】第69期王将戦七番勝負 第6局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の対局で65手指した局面
point
66手目:形勢判断と候補手
先手有利:△6六桂
66手目から△4七銀 ▲同金 △3八角の飛車金両取りは手筋ですが、
以下、▲5六金 △2九角成 ▲5五金 △同歩に▲4五桂が好手です。
打った桂が3三に利いているので玉を逃げることは難しいですし、
△同歩は▲6二角~▲4四銀が厳しく、ハッキリと先手の勝ちです。
角換わり腰掛け銀で頻出する飛車金両取りの手筋は、
基本的に厳しいのですが、相手に駒を渡すうえに、攻めの速度は遅めです。
よって、特に自玉が不安定な場合は、
攻め込まれるきっかけとなる恐れがあることを意識しておきます。

本譜は△6六桂と打ちました。
攻めを続けるためには桂と歩が1枚ずつ足りないかな、という感じですが、
手抜きはしづらいですし、今後の先手の攻め方を制限することもできます。



【将棋】第69期王将戦七番勝負 第6局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の対局で76手指した局面
point
77手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲2五飛
77手目は▲2五飛と浮く手が有力で、
次に▲6四金 △同銀 ▲6五飛として、大駒を交換する狙いがあります。
後手玉が薄いのに対して、先手玉はかなり詰みにくい形をしているので、
先手にとって大駒交換は大歓迎です。

本譜は▲5六桂と打ちました。
飛車取りを受けつつ、6四に利いているので味が良さそうですが、
対して、△5七成銀が好手で、結果的に△5六角が間に合ってしまい、
後手に桂が渡ることもあって、先手玉が一気に危ない形となりました。




終盤

【将棋】第69期王将戦七番勝負 第6局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の対局で85手指した局面
point
86手目:形勢判断と候補手
後手優勢:△3三金
86手目で△3三桂打と節約して受けると、▲3一成銀と飛車を取られます。
後手玉は広いので、それ自体は詰めろになっていないのですが、
先手に金駒を渡すと後手玉に詰みが生じるという制約があり、
それを満たしながら、先手玉に有効な詰めろをかけることができません。

よって、ここは竜取りになるように△3三金と打つ1手です。
次に△2三金と竜を取れば、後手玉は広さが復活して安全になるので、
手抜きをする事はできず、飛車を取る手は間に合いません。



【将棋】第69期王将戦七番勝負 第6局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の対局で89手指した局面
point
90手目:形勢判断と候補手
後手優勢:△8七桂
次に▲5二金という尻金の王手は怖いですが、
△8四玉と逃げるスペースが残っているので、詰めろではありません。
但し、次に▲3一竜とされると受けなしになるので、
あとは全力で攻めかかるだけです。

まずは△8七桂と打って、手順に盤上の攻め駒を増やします。
早い段階で先手に銀を渡すことはできませんが、
先手が受けに金を投入してくれれば、銀を渡す詰めろも有効です。



【将棋】第69期王将戦七番勝負 第6局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の対局で99手指した局面
point
100手目:形勢判断と候補手
後手勝勢:△9七香
101手目から△同成銀 ▲同金 △7九銀と絡んでいくと、
次に△8八銀成 ▲同玉 △7八金としても▲9七玉が好位置で詰みません。

ここは△9七香と打つのが決め手です。
▲同桂は△7七成銀と金を剥がされて受けが困難になりますし、
▲同金直は△8八成銀に△7九銀~△8八金と打って、今度は詰みます。
△9八香成の金取り自体も厳しいですが、▲9七玉の形が詰みづらいならば、
9七の地点を先手の駒で埋めておこうという退路封鎖の手筋でもあります。



【将棋】第69期王将戦七番勝負 第6局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の対局の投了図
108手にて、先手の広瀬八段が投了し、
渡辺王将の3勝、広瀬八段の3勝となりました。

投了図以降、▲同玉 △8九角成 ▲同玉 △8八金までの詰みとなります。

本局では渡辺王将の、
反撃を見据えた攻防のバランスの取り方が非常に勉強になりました。


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