【将棋格言】
名人に定跡なし

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「名人に定跡なし」の読み方

めいじんにじょうせきなし

「名人に定跡なし」に関連する主な駒

「名人に定跡なし」の出現頻度

★★★☆☆

「名人に定跡なし」の説明

将棋が強い人は、これまでの常識にとらわれずに最善手を追求するものだ、ということ。
もちろん、単に定跡を外して指せば良い、ということではない。この格言は、定跡とされていなくても有力な変化は無数にあるという将棋の可能性や、自分で考えることの大切さについて説いている。
実際、過去に結論が出たとされる定跡が覆されたり、誰も指さなかったような手が主流になったりすることもある。必ずしも定跡を疑う必要はないが、自分でしっかりと考えたうえで、自由に新しい指し方をするのも将棋の面白さである。

「名人に定跡なし」の例

【将棋格言】第54期順位戦B級2組7回戦 藤井猛六段 vs 井上慶太六段で「名人に定跡なし」となった藤井システムの公式戦1号局

[図1]

上の [図1] は、1995年12月22日に行われた第54期順位戦B級2組7回戦 藤井猛六段 vs 井上慶太六段で29手目に先手の藤井六段が▲2五桂と跳ねた局面。これが藤井システムの公式戦1号局である。ここまで、後手の△1二香に反応して、先手が▲5六銀~▲4五銀~▲3五歩~▲2五桂としている。本譜は△4四角と上がったが、仮に△5一角と引いて△1一玉~△2二銀と居飛車穴熊に組んだ場合、先手は▲6五歩~▲5五角と角を活用して、▲6四歩と後手の飛車の横利きを止めてから、▲1五歩~▲1四歩とする端攻めが速い。いずれにしても、後手には△1一玉~△2二銀とする余裕がなく、結果的に△1二香が緩手となっている。
当時は、居飛車穴熊の研究が進んで高い勝率を上げている中で、振り飛車側の対策が急がれていた。そこで、藤井六段は穴熊に組ませないことから逆算して居玉のままで仕掛けるという構想に至ったが、「相手が囲っているから自分も囲う」ことが当たり前の時代であったため、「自分だけが居玉のままで仕掛ける」指し方は将棋界や将棋ファンに大きな衝撃を与えた。藤井システムは「名人に定跡なし」の一例と言える。
【将棋格言】第54期順位戦B級2組7回戦 藤井猛六段vs井上慶太六段で「名人に定跡なし」となった藤井システムの公式戦1号局の投了図

[図2]

上の [図2] は、[図1] から進んで、47手目に先手の藤井六段が▲6三歩成とした局面で、これが投了図となった。以降、△同銀でも△同金でも▲6一飛からの攻めが続くうえに、先手が居玉で低い位置にいるので後手からの反撃は届かない。
藤井六段は藤井システムの功績を称えられて、1997年の将棋大賞で升田幸三賞を受賞している。

「名人に定跡なし」に関連する用語


 

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