目次
解説動画
名人戦第3局
名人戦第5局
対局情報
局面解説
序盤
21手目:形勢判断と候補手
互角:▲2八歩、▲3八銀、▲2八銀、▲3五飛 など
20手目の△2六歩の垂らしは積極的な手です。
2七にと金を作って攻める、というよりも、
1歩を犠牲にして先手陣を崩し、攻めやすくすることが狙いです。
多くの場合、序盤で単に歩を捨てるような手は悪手になりやすく、
相手陣を少し崩すくらいでは割に合いません。
しかし、本局のような横歩取りでは、
すぐに終盤になる変化も多いので、必ずしも当てはまりません。
△2六歩に対して、後手の仕掛けをけん制するならば▲2八歩です。
先手が低い陣形を維持するためには、この手しかありません。
歩を打って低く受ける手は、損になることが多いですが、
持久戦にして、△2六歩を指し過ぎとして咎めることができれば問題ありません。
▲3八銀や▲2八銀と受けると、相手は研究通りに仕掛けてくることとなりますが、
先手は歩を手持ちにしながら、2筋で攻めに使う余地を残しています。
他に▲3五飛 △2七歩成 ▲2五飛のような受け方もあります。
但し、後手の選択肢が多いため、幅広い研究や柔軟な対応力が求められます。
いずれの受け方も有力ですが、研究量や棋風によって指しやすさは変わります。
自分に合った指し手を事前に決めておくと迷いが少なくなるのでいいでしょう。
中盤
27手目:形勢判断と候補手
互角:▲8七銀、▲7七角
先手が▲3六歩と突く形の横歩取りでは
後手から角交換をして、△5五角と打つ変化がよくあります。
先手としては、8筋の金銀を取られながら突破されると、
一気に寄せられてしまうので、それは必ず受けなければいけません。
本局の場合は▲7七角や▲8七銀と、飛車取りを見せつつ受ける手が有力です。
以降は、いずれも後手が激しく攻め続ける展開となります。
先手は、ある程度受け切って反撃に移ることができれば、指しやすい形勢にはなります。
しかし、研究なしで正確に受け続けるのはかなり難しいです。
勝ちが求められる対局では、横歩取り自体を避けることも作戦の1つです。
尚、27手目の局面で▲8七歩と受けるのは非常に手堅いのですが、
▲8二歩のような手が指せなくなってしまいます。
歩が使える筋が減ってしまうと、折角の歩得が生きないため、
有力な受け方が他にある状況では、少し指しづらいです。
28手目:形勢判断と候補手
互角:△同飛成
28手目に飛車を逃げてはいけません。
△8五飛は▲7七桂、△8二飛は▲8三歩のように
飛車取りをかけられながら、8筋を受けられてしまいます。
後手陣は大駒の打ち込みに強いので、2枚替えなら喜んで大駒を切ります。
35手目:形勢判断と候補手
互角:▲1六角、▲3四角 など
歩が上ずって、玉の
こびんが開いている局面では、
角の王手が好手になることが多いです。
35手目に▲1六角と打つ手に対して、△6二玉と逃げると、今度は6一の金を狙って、
▲2二歩成 △同銀 ▲4一角という手順が厳しいです。
よって、△4三香と合駒することになりますが、
歩以外の駒を受けに使わせたことが大きいです。
▲1六角自体は厳しい攻めとは言えません。
しかし、△5四香や△6四香のような後手の攻めをなくしており、
攻めながらにして先手玉を安全にしているので味が良いのです。
38手目:形勢判断と候補手
互角:△8二歩
先手陣には7八や7九に隙があるので、
後手は△7八飛や△7九飛を常に考えるようにします。
現局面では、△7八飛には▲6九玉、
△7九飛には▲7七金という受けがあるため、やや無理気味です。
「
4枚の攻めは切れない」という格言がありますが、
飛車と銀の2枚だけでは、基本的に受け切られてしまいます。
今すぐ攻めてもうまくいかない場合、持ち駒はすぐに使わないようにしましょう。
駒は持ち駒の状態でも、相手の攻めに制約を与えるという役割を果たしています。
45手目:形勢判断と候補手
先手有利:▲8八金、▲7七桂、▲6六歩、▲6八玉
後手からはすぐに攻める手がありません。
このような場合、焦って攻めてしまうと
相手の持ち駒が増えて、反撃の手助けをしてしまう恐れがあります。
攻めなければならない、という状況ではありませんから、
盤を広く見て、自分の駒の働きを良くすることを意識しましょう。
現状で1番中途半端な駒は8七の金なので、
「
金は引く手に好手あり」で▲8八金と指しておきたいところです。
△7八飛と打たれる変化がなくなるだけでも、だいぶ先手玉が安全になります。
53手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲2二歩成、▲8三歩 など
53手目に8筋の飛車と角を生かして▲8三歩と攻める手は有力です。
但し、相手が守りを固めた場合は、別の場所から攻めることも考えましょう。
本譜は▲2二歩成と指しました。
▲2二歩成は後手陣に隙を作る
成り捨ての手筋です。
但し、後手の歩切れが解消されると、新たな反撃の攻め筋が生じます。
歩切れの相手に歩を渡す場合は、特に注意するようにしましょう。
終盤
61手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲2二馬、▲2九歩、▲同銀 など
60手目の△2七歩は絶妙な勝負手です。
先手は▲2二馬から攻め合っても勝てそうです。
しかし、攻め合いは1手間違えると逆転するリスクが高いです。
後手は、まさにそれを狙っていますので、
▲2九歩と丁寧に受ける手が実戦的です。
但し、△2七歩と▲2九歩の2手だけを比較すると
△2七歩の方がハッキリ得をしています。
形勢が微差の場合は、攻め合う手から考えるようにしましょう。
後手は馬を捕まえることができましたが、飛車を手放してしまったため、
△7九飛のように打ち込む攻め筋を失ってしまいました。
持ち駒が角だけでは攻めることができませんし、受けにも適していません。
先手は少しずつ相手陣の駒を取って、飛車を成り込む手を狙います。
飛車さえ成り込んでしまえば、あとは桂や香を拾って打つだけで、
後手玉は受けがなくなっていきます。
79手にて、後手の羽生竜王が投了し、佐藤名人の2勝、羽生竜王の2勝となりました。
本局では、佐藤名人の正確で丁寧な受けが非常に勉強になりました。
棋譜
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棋戦:第76期名人戦七番勝負 第4局
先手:佐藤天彦名人
後手:羽生善治竜王
手数----指手---------消費時間--
1 2六歩(27) ( 0:00/00:00:00)
2 3四歩(33) ( 0:00/00:00:00)
3 7六歩(77) ( 0:00/00:00:00)
4 8四歩(83) ( 0:00/00:00:00)
5 2五歩(26) ( 0:00/00:00:00)
6 8五歩(84) ( 0:00/00:00:00)
7 7八金(69) ( 0:00/00:00:00)
8 3二金(41) ( 0:00/00:00:00)
9 2四歩(25) ( 0:00/00:00:00)
10 同 歩(23) ( 0:00/00:00:00)
11 同 飛(28) ( 0:00/00:00:00)
12 8六歩(85) ( 0:00/00:00:00)
13 同 歩(87) ( 0:00/00:00:00)
14 同 飛(82) ( 0:00/00:00:00)
15 3四飛(24) ( 0:00/00:00:00)
16 3三角(22) ( 0:00/00:00:00)
17 5八玉(59) ( 0:00/00:00:00)
18 5二玉(51) ( 0:00/00:00:00)
19 3六歩(37) ( 0:00/00:00:00)
20 2六歩打 ( 0:00/00:00:00)
21 3八銀(39) ( 0:00/00:00:00)
22 8八角成(33) ( 0:00/00:00:00)
23 同 銀(79) ( 0:00/00:00:00)
24 2七歩成(26) ( 0:00/00:00:00)
25 同 銀(38) ( 0:00/00:00:00)
26 5五角打 ( 0:00/00:00:00)
27 8七銀(88) ( 0:00/00:00:00)
28 同 飛成(86) ( 0:00/00:00:00)
29 同 金(78) ( 0:00/00:00:00)
30 9九角成(55) ( 0:00/00:00:00)
31 2三歩打 ( 0:00/00:00:00)
32 4四馬(99) ( 0:00/00:00:00)
33 同 飛(34) ( 0:00/00:00:00)
34 同 歩(43) ( 0:00/00:00:00)
35 1六角打 ( 0:00/00:00:00)
36 4三香打 ( 0:00/00:00:00)
37 8五飛打 ( 0:00/00:00:00)
38 8二歩打 ( 0:00/00:00:00)
39 3八銀(27) ( 0:00/00:00:00)
40 1四歩(13) ( 0:00/00:00:00)
41 3七桂(29) ( 0:00/00:00:00)
42 1五歩(14) ( 0:00/00:00:00)
43 3四角(16) ( 0:00/00:00:00)
44 7四歩(73) ( 0:00/00:00:00)
45 8八金(87) ( 0:00/00:00:00)
46 3三金(32) ( 0:00/00:00:00)
47 5六角(34) ( 0:00/00:00:00)
48 4五歩(44) ( 0:00/00:00:00)
49 7七桂(89) ( 0:00/00:00:00)
50 4四金(33) ( 0:00/00:00:00)
51 7四角(56) ( 0:00/00:00:00)
52 7二金(61) ( 0:00/00:00:00)
53 2二歩成(23) ( 0:00/00:00:00)
54 同 銀(31) ( 0:00/00:00:00)
55 3二角打 ( 0:00/00:00:00)
56 7三桂(81) ( 0:00/00:00:00)
57 8七飛(85) ( 0:00/00:00:00)
58 1三桂(21) ( 0:00/00:00:00)
59 2一角成(32) ( 0:00/00:00:00)
60 2七歩打 ( 0:00/00:00:00)
61 2九歩打 ( 0:00/00:00:00)
62 2四飛打 ( 0:00/00:00:00)
63 3九金(49) ( 0:00/00:00:00)
64 4二玉(52) ( 0:00/00:00:00)
65 8三歩打 ( 0:00/00:00:00)
66 3二銀打 ( 0:00/00:00:00)
67 8二歩成(83) ( 0:00/00:00:00)
68 同 金(72) ( 0:00/00:00:00)
69 3二馬(21) ( 0:00/00:00:00)
70 同 玉(42) ( 0:00/00:00:00)
71 6三角成(74) ( 0:00/00:00:00)
72 6六歩打 ( 0:00/00:00:00)
73 同 歩(67) ( 0:00/00:00:00)
74 5四角打 ( 0:00/00:00:00)
75 同 馬(63) ( 0:00/00:00:00)
76 同 金(44) ( 0:00/00:00:00)
77 6二角打 ( 0:00/00:00:00)
78 9四角打 ( 0:00/00:00:00)
79 6七銀打 ( 0:00/00:00:00)
80 投了 ( 0:00/00:00:00)
まで79手で先手の勝ち
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