目次
解説動画
叡王戦第1局
叡王戦第3局
対局情報
局面解説
序盤
11手目:形勢判断と候補手
互角:▲2四歩、▲7八金、▲5六歩、▲4八銀 など
11手目に▲2四歩は自然な手です。
「
飛車先の歩交換三つの得あり」という格言は
以前ほど重要視されなくなってきていますが、有力なことに間違いはありません。
17手目:形勢判断と候補手
互角:▲3八銀、▲9六歩、▲1六歩 など
17手目に▲3四飛と横歩を取る手は見えますが、疑問手です。
後手は△4四角と出るのが手筋で、2六に角の利きがあるため、
先手は▲3六飛と引いた場合、▲2六飛として2筋に戻れません。
また▲2四飛と寄った場合、△2二銀と歩を使わずに受けておいて
先手が▲2八飛と引いたら、△2六歩と打って飛車先を止めます。
いずれの場合も、後手は向かい飛車にして2筋を逆襲するような指し方が有力です。
先手は2筋を攻めていたはずなのに、いつの間にか2筋から攻められてしまいます。
作戦失敗は明らかで、1歩得ではとても割に合いません。
20手目:形勢判断と候補手
互角:△2三歩
20手目は△2三歩と打って受けるしかありません。
これは先手が▲2四歩と垂らす手を受けています。
27手目:形勢判断と候補手
互角:▲6六銀、▲5八金、▲6九玉 など
棒銀は攻めの銀を、相手の守りの銀と交換できれば成功と言われています。
しかし、27手目に▲2四歩とは打ちづらいです。
先手は再度、飛車が上下に動くことになるため、手損になります。
「先に2筋の歩を交換したので、銀が簡単に五段目へ進出できた」
という見方はできますが、
2筋の歩交換を保留したまま、右銀を1五や3五に出す変化は狙えたはずです。
中盤
37手目:形勢判断と候補手
互角:▲同歩、▲7九角、▲2四歩
37手目に▲7九角と手抜きをする手は有力です。
しかし、△7六歩 ▲同銀 △7五歩のように攻められると
手順に守りの銀が離れるうえに、7筋の位を取られてしまいます。
このような変化は、駒があちこちでぶつかりやすく、一気に複雑な展開となります。
よって▲同歩も有力です。
後手は手順に銀を進出しながら、8筋で歩と銀を交換できますが、
その後は一時的に攻めが落ち着きます。
こちらの変化は、比較的穏やかで先が読みやすい展開となります。
それぞれ違った展開になりますが、どの変化も難解で、善悪の比較は難しいです。
49手目:形勢判断と候補手
互角:▲6八角、▲5七角 など
49手目に▲同角と取ってはいけません。
▲同角△同歩の後、先手からすぐには厳しい攻めがありません。
一方、後手には△6五歩と△4九角という2つの狙いがあります。
△6五歩は△6六歩 ▲同金 △3九角を狙っています。
飛車取りが絡むので、無視して攻め合うことができません。
△4九角は△6七角成 ▲同金 △8七飛成を狙っています。
一見すると簡単に角を捕まえられそうですが、
△6七角成以外にも△5八銀、△3九銀、△2七銀など、
複数の狙いがあるため、実は非常に厄介です。
矢倉では、相手陣の一段目に角を打ち込む手がよく出てきます。
角が交換になりそうな局面では、しっかりと意識するようにしましょう。
55手目:形勢判断と候補手
互角:▲7二歩
後手は△2二銀として1筋や2筋を手厚く受けてきました。
しかし、△2二玉と囲うことができなくなったとも言えます。
このような場合、無理に端攻めを継続するのではなく、
むしろ1筋や2筋を放置することで、壁銀の悪形を残したままにしたいです。
55手目は▲7二歩が「
手裏剣の歩」と呼ばれる手筋です。
攻めとしてはとても遅いですが、歩を取ってくれれば、
飛車が8筋から逸れるので、1歩で1手を稼ぐことができます。
また角打ちの隙が生じているので、▲4六角のように角交換を挑めるようにもなります。
歩を取らないならば、後手は一気に攻める必要があります。
しかし、本局では直前に△2二銀や△9四歩と指していることから、
後手からの早い攻めはなさそうです。
57手目:形勢判断と候補手
互角:▲7一歩成、▲3六銀
56手目の△3三桂は実戦的な手です。
銀取りと併せて、玉の逃げ道を確保しています。
また、▲7一歩成と攻め合うか、▲3六銀と駒損を避けるか、
先手に選択肢を与えて迷わせる、という意味合いもあります。
お互いの攻め駒が少ないので、揺さぶるような攻めが続きます。
細い攻めなので、受け切れそうな気もしますが、
受け間違えると一方的に攻められてしまうことになりかねません。
受けるか手抜くかの判断は非常に難しいです。
72手目:形勢判断と候補手
先手有利:△2四香
72手目は△2四香が味の良い受けです。
先手の飛車と角の利きを同時に止めているだけでなく、先手の歩切れを咎めています。
75手目:形勢判断と候補手
先手有利:▲1四飛
先手は持ち駒が少ないので、▲1四飛 △1二歩 ▲1三歩のように
盤上の駒、特に大駒を使って攻めていきたいところです。
本譜は6筋から手を付けていきました。
終盤
後手は馬が強力なので、すぐに寄せられる心配はありません。
しかし、飛車が攻めに参加していないので、依然として先手への攻め方は難しいです。
このような場合は、持ち駒を増やしたり、相手玉周辺に金駒や成駒を近づけたりします。
すぐに詰めろがかからなくても焦る必要はありません。
先手が攻めてくれば、後手の持ち駒は必ず増えます。
先手が攻めずに勝つとしたら、入玉するしかありませんが、
それさえ防いでおけば、先手は攻めざるを得ません。
93手目:形勢判断と候補手
後手優勢:▲6七歩、▲6七香 など
93手目、▲7六金のように逃げる手は自然です。
しかし、△6六歩と打たれて拠点を作られると
後手の攻めが分かりやすくなってしまいます。
厳しい拠点を作られてしまうならば、先に金駒を損してでも阻止した方が
結果的に相手の攻めが遅れることも多いです。
102手目:形勢判断と候補手
後手優勢:△3六成銀、△6六桂 など
後手は3六の銀と6六の金を取れば
持ち駒に金駒が3枚あるため、しっかりと包囲網を作ることができそうです。
本譜は△6八歩と打ちました。
「
焦点の歩」という手筋ではありますが、玉が上がってくると、
そのまま中段へ逃げられてしまう恐れもあります。
先手は丁寧に受けながら、上部脱出を見せつつ、
さらに後手玉へプレッシャーをかけていきます。
117手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲同金
116手目の△7五馬は、取られそうな馬を犠牲にして先手陣を崩し、
上部をしっかりと押さえることで確実な寄せを狙った手です。
しかし、この後に▲9九飛と指されてみると先手玉がかなり広くなってしまいました。
先手は自玉が安全になったので、一気に攻め合いにいきました。
但し、後手へ桂を渡してしまうと△7六桂から詰み筋が生じます。
2三に打った桂だけでなく、5二にも質駒となっている桂があります。
本局では△5二飛と取られても▲3一角と打てば詰むので大丈夫です。
しかし状況が変わって「
詰めろ逃れの詰めろ」になるようだと逆転です。
質駒を取られる手は常に注意するようにしましょう。
135手にて、後手の金井六段が投了し、高見六段の2勝となりました。
投了図以降は、△2三歩 ▲2一成桂 △3三玉に
▲3二飛 △同玉 ▲4一角や、▲2三飛成 △同玉 ▲2二飛のような手順で
少し長いですが、複数の詰み筋があります。
本局では高見六段の逆転を狙った我慢強い指し方が非常に勉強になりました。
棋譜
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棋戦:第3期叡王戦決勝七番勝負 第2局
先手:高見泰地六段
後手:金井恒太六段
手数----指手---------消費時間--
1 7六歩(77) ( 0:00/00:00:00)
2 8四歩(83) ( 0:00/00:00:00)
3 6八銀(79) ( 0:00/00:00:00)
4 3四歩(33) ( 0:00/00:00:00)
5 7七銀(68) ( 0:00/00:00:00)
6 6二銀(71) ( 0:00/00:00:00)
7 2六歩(27) ( 0:00/00:00:00)
8 7四歩(73) ( 0:00/00:00:00)
9 2五歩(26) ( 0:00/00:00:00)
10 3二金(41) ( 0:00/00:00:00)
11 2四歩(25) ( 0:00/00:00:00)
12 同 歩(23) ( 0:00/00:00:00)
13 同 飛(28) ( 0:00/00:00:00)
14 8五歩(84) ( 0:00/00:00:00)
15 7八金(69) ( 0:00/00:00:00)
16 7三銀(62) ( 0:00/00:00:00)
17 3八銀(39) ( 0:00/00:00:00)
18 4一玉(51) ( 0:00/00:00:00)
19 2八飛(24) ( 0:00/00:00:00)
20 2三歩打 ( 0:00/00:00:00)
21 2七銀(38) ( 0:00/00:00:00)
22 6四銀(73) ( 0:00/00:00:00)
23 3六銀(27) ( 0:00/00:00:00)
24 4二銀(31) ( 0:00/00:00:00)
25 2五銀(36) ( 0:00/00:00:00)
26 3三銀(42) ( 0:00/00:00:00)
27 5八金(49) ( 0:00/00:00:00)
28 5四歩(53) ( 0:00/00:00:00)
29 6九玉(59) ( 0:00/00:00:00)
30 5二金(61) ( 0:00/00:00:00)
31 6六歩(67) ( 0:00/00:00:00)
32 3一角(22) ( 0:00/00:00:00)
33 6七金(58) ( 0:00/00:00:00)
34 4四歩(43) ( 0:00/00:00:00)
35 5六歩(57) ( 0:00/00:00:00)
36 7五歩(74) ( 0:00/00:00:00)
37 同 歩(76) ( 0:00/00:00:00)
38 同 銀(64) ( 0:00/00:00:00)
39 7九角(88) ( 0:00/00:00:00)
40 8六歩(85) ( 0:00/00:00:00)
41 同 歩(87) ( 0:00/00:00:00)
42 同 銀(75) ( 0:00/00:00:00)
43 4六角(79) ( 0:00/00:00:00)
44 7三歩打 ( 0:00/00:00:00)
45 8六銀(77) ( 0:00/00:00:00)
46 同 角(31) ( 0:00/00:00:00)
47 8七歩打 ( 0:00/00:00:00)
48 6四角(86) ( 0:00/00:00:00)
49 5七角(46) ( 0:00/00:00:00)
50 4三金(52) ( 0:00/00:00:00)
51 1六歩(17) ( 0:00/00:00:00)
52 9四歩(93) ( 0:00/00:00:00)
53 1五歩(16) ( 0:00/00:00:00)
54 2二銀(33) ( 0:00/00:00:00)
55 7二歩打 ( 0:00/00:00:00)
56 3三桂(21) ( 0:00/00:00:00)
57 3六銀(25) ( 0:00/00:00:00)
58 7二飛(82) ( 0:00/00:00:00)
59 1四歩(15) ( 0:00/00:00:00)
60 同 歩(13) ( 0:00/00:00:00)
61 2一銀打 ( 0:00/00:00:00)
62 8八歩打 ( 0:00/00:00:00)
63 7七桂(89) ( 0:00/00:00:00)
64 8九歩成(88) ( 0:00/00:00:00)
65 6五歩(66) ( 0:00/00:00:00)
66 5三角(64) ( 0:00/00:00:00)
67 1二歩打 ( 0:00/00:00:00)
68 9九と(89) ( 0:00/00:00:00)
69 3二銀成(21) ( 0:00/00:00:00)
70 同 飛(72) ( 0:00/00:00:00)
71 1一歩成(12) ( 0:00/00:00:00)
72 2四香打 ( 0:00/00:00:00)
73 1八飛(28) ( 0:00/00:00:00)
74 1一銀(22) ( 0:00/00:00:00)
75 6四歩(65) ( 0:00/00:00:00)
76 同 角(53) ( 0:00/00:00:00)
77 6五香打 ( 0:00/00:00:00)
78 9七角成(64) ( 0:00/00:00:00)
79 6三香成(65) ( 0:00/00:00:00)
80 6六歩打 ( 0:00/00:00:00)
81 同 金(67) ( 0:00/00:00:00)
82 6二歩打 ( 0:00/00:00:00)
83 8八金(78) ( 0:00/00:00:00)
84 4二馬(97) ( 0:00/00:00:00)
85 6二成香(63) ( 0:00/00:00:00)
86 2九香成(24) ( 0:00/00:00:00)
87 1三角成(57) ( 0:00/00:00:00)
88 1九成香(29) ( 0:00/00:00:00)
89 同 飛(18) ( 0:00/00:00:00)
90 1二銀(11) ( 0:00/00:00:00)
91 6八馬(13) ( 0:00/00:00:00)
92 7四桂打 ( 0:00/00:00:00)
93 6七香打 ( 0:00/00:00:00)
94 4八銀打 ( 0:00/00:00:00)
95 5八金打 ( 0:00/00:00:00)
96 3七銀成(48) ( 0:00/00:00:00)
97 1三歩打 ( 0:00/00:00:00)
98 2一銀(12) ( 0:00/00:00:00)
99 2四歩打 ( 0:00/00:00:00)
100 同 歩(23) ( 0:00/00:00:00)
101 4六馬(68) ( 0:00/00:00:00)
102 6八歩打 ( 0:00/00:00:00)
103 同 玉(69) ( 0:00/00:00:00)
104 6六桂(74) ( 0:00/00:00:00)
105 同 香(67) ( 0:00/00:00:00)
106 6七歩打 ( 0:00/00:00:00)
107 同 金(58) ( 0:00/00:00:00)
108 4八成銀(37) ( 0:00/00:00:00)
109 6三香成(66) ( 0:00/00:00:00)
110 6六歩打 ( 0:00/00:00:00)
111 同 金(67) ( 0:00/00:00:00)
112 4五桂(33) ( 0:00/00:00:00)
113 6四桂打 ( 0:00/00:00:00)
114 3一玉(41) ( 0:00/00:00:00)
115 5二桂成(64) ( 0:00/00:00:00)
116 7五馬(42) ( 0:00/00:00:00)
117 同 金(66) ( 0:00/00:00:00)
118 6六銀打 ( 0:00/00:00:00)
119 9九飛(19) ( 0:00/00:00:00)
120 7五銀(66) ( 0:00/00:00:00)
121 4五銀(36) ( 0:00/00:00:00)
122 同 歩(44) ( 0:00/00:00:00)
123 2三桂打 ( 0:00/00:00:00)
124 2二玉(31) ( 0:00/00:00:00)
125 2四馬(46) ( 0:00/00:00:00)
126 1一香打 ( 0:00/00:00:00)
127 2九飛(99) ( 0:00/00:00:00)
128 2五歩打 ( 0:00/00:00:00)
129 3一角打 ( 0:00/00:00:00)
130 同 飛(32) ( 0:00/00:00:00)
131 同 桂成(23) ( 0:00/00:00:00)
132 3五角打 ( 0:00/00:00:00)
133 同 馬(24) ( 0:00/00:00:00)
134 同 歩(34) ( 0:00/00:00:00)
135 2五飛(29) ( 0:00/00:00:00)
136 投了 ( 0:00/00:00:00)
まで135手で先手の勝ち
叡王戦第1局
叡王戦第3局