目次
解説動画
【訂正】
動画で、86手目「形勢:後手優勢、候補手:△6一銀打」としていますが、
「形勢:先手有利、候補手:△8一銀打」と致します。
△6一銀打 ▲6四歩以降の変化で読み抜けがありました。
ご指摘頂いた方、ありがとうございました。
棋王戦第5局
名人戦第2局
対局情報
局面解説
序盤
16手目:形勢判断と候補手
互角:△3三角、△4二玉、△4一玉、△3三桂 など
横歩取りはプロの対局で多く指されていますが、
激しい変化がとても多く、非常に難しい戦型です。
例えば、17手目の局面で、△8八角成と角交換をして、
▲同銀に、△7六飛や△4五角という手があります。
近年のプロの公式戦では、ほとんど指されていませんが、
それは、既に研究し尽くされているためです。
結論としては、正確に指せば先手勝ちです。
しかし、膨大な変化があるので、簡単に覚えられるものではありません。
そして、多くの変化で、後手が激しく攻める展開となり、
先手が1手でも受け間違えると負けとなります。
アマチュアでは、この定跡を詳しく勉強していて、
不利を承知で△8八角成と指してくる人も多いです。
これは、先手が自分よりも定跡に詳しくなければ
短手数で簡単に勝つことができるためです。
居飛車党で高段を目指すのであれば、
簡単に負けてしまって悔しい思いをしたり、
長手数の定跡を覚えたりすることは避けて通れない道です。
しかし、級位者のうちは、他に身に付けるべきことが沢山あるので、
横歩取り自体を避けた方がいいかもしれません。
19手目:形勢判断と候補手
互角:▲3六飛、▲3六歩、▲3八金 など
先手も後手も早めに玉を動かしました。
「
居玉は避けよ」で確実にプラスになる手です。
後手は△4一玉、△4二玉、△5二玉、△6二玉のいずれもあります。
△6二玉はできれば美濃囲いに囲ってしまおうという手です。
中盤
25手目:形勢判断と候補手
互角:▲2一飛成
後手が角を交換して、△4四角と飛車取りに打つ変化は横歩取りではよく出てきます。
先手としては、金銀を取られながら8筋を突破されるのでかなり嫌な形です。
27手目:形勢判断と候補手
互角:▲9五角、▲7五角
27手目の局面で▲同金と取ってはいけません。
△同飛成と王手で成り込まれると、簡単に負けてしまいます。
ここは▲9五角、または、▲7五角と打つのが受けの手筋です。
後手は8八の馬が邪魔をしていて、飛車を成り込むことができません。
尚、▲7五角には△8五飛と浮いて▲8六歩と打つ変化も難しいですが、
▲9五角に△8五飛は▲7七桂という好手があるため先手優勢となります。
後手の変化を限定しているという意味では▲9五角の方が良いです。
31手目:形勢判断と候補手
互角:▲2四桂、▲8二歩、▲4八玉
30手目の局面では、飛車と金銀の二枚替えになりました。
「
二枚替えなら歩ともせよ」という格言に従うと
後手が得をしていることになります。
しかし、お互いの玉が薄い状態では、手番の重要性が高まるので、
現局面では互角か、わずかに先手が有利です。
31手目に先手が積極的に攻めるならば▲2四桂です。
3一銀と3二金の形を崩す場合、金を取りに行く手が効果的です。
3二の金がどこに逃げても、3一の銀が離れ駒になります。
早逃げの▲4八玉も有力です。
いずれ必要になる手ですので、攻めが読み切れなかった時の保険として
頭に入れておきましょう。悪手になる確率が低い手です。
本譜は▲8二歩と指しました。△同銀には▲7四桂があります。
狙っている駒が桂なので、金駒を狙うよりは遅い攻めですが、
歩を使った攻めなので、より確実であるとも言えます。
39手目:形勢判断と候補手
互角:▲同玉、▲同銀、▲4一銀
38手目の△3八歩は悩ましい手です。
▲同金は金駒が壁になってしまい、先手玉が詰んでしまいます。
▲同玉と取れば、相手の馬から遠ざかることができているようですが、
2七の地点は先手にとって弱点なので、
△2六歩や△3五桂のような攻めが早くなるとも言えます。
▲同銀と取ると、2八の地点が弱くなります。
玉が2八まで行ければ、美濃囲いとしての堅さが機能しますが、
その前に左右挟撃の攻めをされる恐れがあります。
尚、△3九歩成が王手ではないので、▲4一銀と攻め合いに行く手はあります。
しかし、後戻りできなくなる可能性も高いので難しいところです。
43手目:形勢判断と候補手
互角:▲6四歩
43手目は▲6四歩と打つ1手です。
先手は2枚目の馬を作られてしまいましたが、6筋の歩を切らせた、とも言えます。
相手玉を攻める足掛かりとして、歩が使えるということはとても大きいです。
終盤
49手目:形勢判断と候補手
後手優勢:▲同玉
48手目の△4九馬が鋭い踏み込みとなりました。
先手に角を渡すので非常に怖いですが、後手玉はギリギリ寄りません。
形勢は後手に傾きましたが、まだまだ詰みまでは遠く、
後手玉も薄いので、1手で逆転する範囲内です。
56手目:形勢判断と候補手
後手優勢:△6二玉
55手目の▲7五桂の王手は油断のならない手です。
後手玉は逃げ場所が6つありますが、△6二玉以外はすべて詰みます。
64手目:形勢判断と候補手
後手優勢:△6八角、△5九金、△2五歩、△同馬 など
64手目は手拍子に馬を逃げてはいけません。
終盤において、唯一の拠点を失うような手は、まず悪手です。
中盤をやり直すようなこととなるため、攻めがかなり遅れます。
このような場合は、馬を取られても、すぐに取り返せるように
△6八角や△7九角と打って、馬に紐を付けておく手が無難です。
また、△同馬と切ってしまっても、▲同玉に△6八角と張り付けば
先手玉が堅くなっている訳でもなく、拠点も残るので攻めは続きそうです。
他にも馬を取られる以上の成果を上げる手、
例えば、△2五歩と打って、攻守に働いている竜を取りに行く手は考えられます。
本譜は△5九金と捨てて攻めていきました。
この手は先手に金を渡すので、後手玉が少し危険な状態になります。
さらに後手の持ち駒から金が2枚ともなくなるので、先手玉の詰み筋が少なくなります。
しっかりと先を読めていれば問題ありませんが、
他に有力な手がある場合は、選ばない方が実戦的です。
先手は飛車と金を渡さないように意識しながら
歩と桂をうまく使って後手陣を乱します。
まだ後手玉は寄りませんので、
金を打ち込んで清算するような手を指してはいけません。
86手目:形勢判断と候補手
先手有利:△8一銀打
【訂正】
動画では「形勢:後手優勢、候補手:△6一銀打」としていますが、
「形勢:先手有利、候補手:△8一銀打」と致します。
△6一銀打 ▲6四歩以降の変化で読み抜けがありました。
ご指摘頂いた方、ありがとうございました。
91手目:形勢判断と候補手
互角:▲1八玉
ここは▲1八玉と指す1手で「
玉の早逃げ八手の得」となります。
持ち駒を使わずに詰みを回避しているどころか
有効な詰めろがかかりにくくなっています。
93手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:▲5二歩、▲8一竜
92手目の△6二角が大悪手で先手勝ちとなりました。
先手の竜を取って、丁寧に受けようとした指し方が裏目に出てしまいました。
角を打って寄せられてしまうくらいならば、
△4七馬と攻め合った方が難解です。
【訂正】
確かに△4七馬の方が紛れはあるのですが、
▲3六銀で先手が勝勢のようです。
97手にて、後手の佐藤名人が投了し、羽生竜王の1勝となりました。
羽生竜王の相手に決め手を与えない粘り方が非常に勉強になりました。
棋譜
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棋戦:第76期名人戦七番勝負 第1局
先手:羽生善治竜王
後手:佐藤天彦名人
手数----指手---------消費時間--
1 2六歩(27) (00:00 / 00:00:00)
2 3四歩(33) (00:00 / 00:00:00)
3 7六歩(77) (00:00 / 00:00:00)
4 8四歩(83) (00:00 / 00:00:00)
5 2五歩(26) (00:00 / 00:00:00)
6 8五歩(84) (00:00 / 00:00:00)
7 7八金(69) (00:00 / 00:00:00)
8 3二金(41) (00:00 / 00:00:00)
9 2四歩(25) (00:00 / 00:00:00)
10 同 歩(23) (00:00 / 00:00:00)
11 同 飛(28) (00:00 / 00:00:00)
12 8六歩(85) (00:00 / 00:00:00)
13 同 歩(87) (00:00 / 00:00:00)
14 同 飛(82) (00:00 / 00:00:00)
15 3四飛(24) (00:00 / 00:00:00)
16 3三角(22) (00:00 / 00:00:00)
17 5八玉(59) (00:00 / 00:00:00)
18 6二玉(51) (00:00 / 00:00:00)
19 3六飛(34) (00:00 / 00:00:00)
20 8四飛(86) (00:00 / 00:00:00)
21 2六飛(36) (00:00 / 00:00:00)
22 8八角成(33) (00:00 / 00:00:00)
23 同 銀(79) (00:00 / 00:00:00)
24 4四角打 (00:00 / 00:00:00)
25 2一飛成(26) (00:00 / 00:00:00)
26 8八角成(44) (00:00 / 00:00:00)
27 9五角打 (00:00 / 00:00:00)
28 8九馬(88) (00:00 / 00:00:00)
29 8四角(95) (00:00 / 00:00:00)
30 7八馬(89) (00:00 / 00:00:00)
31 8二歩打 (00:00 / 00:00:00)
32 8三歩打 (00:00 / 00:00:00)
33 8一歩成(82) (00:00 / 00:00:00)
34 8四歩(83) (00:00 / 00:00:00)
35 7一と(81) (00:00 / 00:00:00)
36 同 金(61) (00:00 / 00:00:00)
37 4八玉(58) (00:00 / 00:00:00)
38 3八歩打 (00:00 / 00:00:00)
39 同 銀(39) (00:00 / 00:00:00)
40 1二角打 (00:00 / 00:00:00)
41 2六竜(21) (00:00 / 00:00:00)
42 6七角成(12) (00:00 / 00:00:00)
43 6四歩打 (00:00 / 00:00:00)
44 2七歩打 (00:00 / 00:00:00)
45 同 銀(38) (00:00 / 00:00:00)
46 6五桂打 (00:00 / 00:00:00)
47 3八玉(48) (00:00 / 00:00:00)
48 4九馬(67) (00:00 / 00:00:00)
49 同 玉(38) (00:00 / 00:00:00)
50 6七馬(78) (00:00 / 00:00:00)
51 5八桂打 (00:00 / 00:00:00)
52 5七桂成(65) (00:00 / 00:00:00)
53 6三歩成(64) (00:00 / 00:00:00)
54 同 玉(62) (00:00 / 00:00:00)
55 7五桂打 (00:00 / 00:00:00)
56 6二玉(63) (00:00 / 00:00:00)
57 6三歩打 (00:00 / 00:00:00)
58 5一玉(62) (00:00 / 00:00:00)
59 2四角打 (00:00 / 00:00:00)
60 3三歩打 (00:00 / 00:00:00)
61 5七角(24) (00:00 / 00:00:00)
62 同 馬(67) (00:00 / 00:00:00)
63 4八銀打 (00:00 / 00:00:00)
64 5九金打 (00:00 / 00:00:00)
65 同 玉(49) (00:00 / 00:00:00)
66 6八金打 (00:00 / 00:00:00)
67 4九玉(59) (00:00 / 00:00:00)
68 5八金(68) (00:00 / 00:00:00)
69 3九玉(49) (00:00 / 00:00:00)
70 4八金(58) (00:00 / 00:00:00)
71 2八玉(39) (00:00 / 00:00:00)
72 6一銀打 (00:00 / 00:00:00)
73 6二歩成(63) (00:00 / 00:00:00)
74 同 金(71) (00:00 / 00:00:00)
75 6三歩打 (00:00 / 00:00:00)
76 7二金(62) (00:00 / 00:00:00)
77 8一飛打 (00:00 / 00:00:00)
78 7一桂打 (00:00 / 00:00:00)
79 6二歩成(63) (00:00 / 00:00:00)
80 同 玉(51) (00:00 / 00:00:00)
81 6四桂打 (00:00 / 00:00:00)
82 6三歩打 (00:00 / 00:00:00)
83 7二桂成(64) (00:00 / 00:00:00)
84 同 銀(61) (00:00 / 00:00:00)
85 8二飛成(81) (00:00 / 00:00:00)
86 8一銀打 (00:00 / 00:00:00)
87 5一金打 (00:00 / 00:00:00)
88 同 玉(62) (00:00 / 00:00:00)
89 7一竜(82) (00:00 / 00:00:00)
90 6一桂打 (00:00 / 00:00:00)
91 1八玉(28) (00:00 / 00:00:00)
92 6二角打 (00:00 / 00:00:00)
93 5二歩打 (00:00 / 00:00:00)
94 同 玉(51) (00:00 / 00:00:00)
95 8一竜(71) (00:00 / 00:00:00)
96 7五馬(57) (00:00 / 00:00:00)
97 7二竜(81) (00:00 / 00:00:00)
まで97手で先手の勝ち
棋王戦第5局
名人戦第2局