【将棋格言】
玉の早逃げ八手の得

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「玉の早逃げ八手の得」の読み方

ぎょくのはやにげはってのとく

「玉の早逃げ八手の得」に関連する主な駒

「玉の早逃げ八手の得」の出現頻度

★★★☆☆

「玉の早逃げ八手の得」の説明

中終盤において、王手をかけられる前に相手の攻め駒から自玉を遠ざけておけば、王手をかけられてから逃げるよりも良い場合がある、ということ。
相手の攻め駒から自玉を遠ざけると「王手がかかりにくくなる」「追い詰めや退路封鎖などによって寄せられにくくなる」などの効果がある。但し、早逃げをすると手番を失い、次に相手から攻められてしまうので、その先の結果まで考慮することが重要である。
相手の攻めが細くて、追撃に手数がかかるのであれば、自玉の危険度よりも安全度の方が高まっていることになるので早逃げが有力であるということは分かりやすい。では、相手の攻めが厳しくて、結果的に自玉がより危険になる場合はどうだろうか。この場合において、早逃げが好手となるか否かの判断材料としては「持ち駒」が重要となる。例えば、先に相手に攻めさせて自分の持ち駒を増やしたうえで、どこかで手抜きをして反撃に転じることができれば、早逃げをせずに攻めかかるよりも厳しくなりやすいと言える。他に、相手が攻める際に持ち駒を手放すことで、相手がその持ち駒を使って受ける手順がなくなって、厳しい反撃が新たに生じるような場合もある。このあたりは、非常に難しい考え方ではあるが、いずれにしても、王手がかかる前に受けておく手は盲点になりやすいので、王手がかかりやすい局面で早逃げを意識する癖は付けておいた方が良い。
尚、「八手」というのは、具体的な手数としての8手ではないので真に受けてはいけない。「八」には「たくさん」という意味合いがあり、要は「玉の早逃げでたくさん得をすることがある」と言っているのである。

「玉の早逃げ八手の得」の例

【将棋格言】第65期王座戦五番勝負 第3局 羽生善治 王座 対 中村太地 六段で「玉の早逃げ八手の得」を実現した局面

[図1]

上の [図1] は、2017年10月3日に行われた第65期王座戦五番勝負 第3局 羽生善治 王座 対 中村太地 六段で、76手目の後手の手番。△7五歩のように攻めていきたいところだが、後手玉が3一にいるため、▲7一飛~▲7五飛成のように王手で駒を取られてしまう変化がある。ここは△2二玉が「玉の早逃げ八手の得」で、▲7一飛が王手にならないため、先手玉を攻めやすくなった。
【将棋格言】第3期叡王戦決勝七番勝負第1局 金井六段vs高見六段で「玉の早逃げ八手の得」を実現した局面

[図2]

上の [図2] は、2018年4月14日に行われた第3期叡王戦決勝七番勝負 第1局 金井恒太 六段 対 高見泰地 六段で、60手目に後手の高見六段が△6二玉と玉を早逃げした局面。攻める手もありそうな局面だったが、△6二玉の1手を指すと、6二の銀と7一の金が美濃囲いとして機能してくるうえに、4二の銀は外堀のような存在に変わり、 先手に取られたとしても、手を稼ぐという役割を果たす。玉が5二にいるよりも先手の攻めが1手以上遅れるので、攻める手よりも得になる。実際の手数として8手も得をしていることはないが、価値が高いという意味を込めて「玉の早逃げ八手の得」である。
【将棋格言】第76期名人戦七番勝負第1局 佐藤(天)名人vs羽生竜王で「玉の早逃げ八手の得」とされた手を指した局面

[図3]

上の [図3] は、2018年4月11日から12日にかけて行われた第76期名人戦七番勝負第1局 佐藤(天)名人vs羽生竜王の91手目に先手の佐藤(天)名人が、2八にいた玉を、▲1八玉と寄った局面。「玉の早逃げ八手の得」で、持ち駒を使わずに△3九角からの詰みを回避しているどころか、有効な詰めろがかかりにくくなっている。
【将棋格言】第69期王将戦七番勝負 第7局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段で「玉の早逃げ八手の得」とされた手を指した局面

[図4]

上の [図4] は、2020年3月25日から26日にかけて行われた第69期王将戦七番勝負 第7局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の80手目に後手の広瀬八段が△3六馬と引いた局面。 次に△4七と~△5七と と開き王手で金駒を剥がされてしまうと先手陣は一気に弱体化する。よって、ここは一旦受けに回る必要があり、本譜は「玉の早逃げ八手の得」で▲7九玉と寄った。

「玉の早逃げ八手の得」に関連する用語

「玉の早逃げ八手の得」に関連する手筋

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