[図1]
上の [図1] は、先手玉に必至がかかっており、駒損もひどく、ずっと先手が敗勢だった局面。ここで▲3四桂と打つ手は、典型的な「思い出王手」と言える。△3一玉と逃げてくれれば、▲2二銀までの簡単な1手詰みで大逆転だが、上級者以上であれば、そのような大事件を期待している訳ではない。それよりも美濃囲いを攻略するための急所の手を指したという形を盤上に残すということに意味がある。▲3四桂に△1二玉とかわされた時が、最後の投了のタイミングだろう。[図2]
上の [図2] は、 [図1] と似ていて先手敗勢の局面だが、後手玉はガチガチの穴熊の中である。ここで▲2二角成とすれば、一応、王手はかかるが、△同金上と取られて何でもない。このように、駒を捨てるだけの明らかに無駄な王手も、一応「思い出王手」ではあるが、棋力が上になるほど「美しくない」という意識が強くなって指さなくなる。[図3]
上の [図3] は、第30期竜王戦七番勝負第4局 渡辺竜王vs羽生棋聖の95手目に先手の渡辺竜王が▲6一飛と王手をした局面。先手玉には必至がかかっており、後手玉には詰みがなく、プロレベルであれば後手勝ちが確実である。このような王手も一応「思い出王手」ではあるが、難解な局面が続いていた名局の場合は「形作り」と言われることがほとんどである。- スポンサーリンク -
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