目次
解説動画
棋王戦第1局
棋王戦第3局
対局情報
局面解説概要
序盤
戦型は角換わり腰掛け銀で
先手4八金&2九飛、後手6二金&8一飛の形となりました。
そして、駒組みが完了した後、玉の移動による
手待ち合戦が行われた結果、
先手玉が7九、後手玉が5二の状態で先手が
仕掛けました。
角換わり腰掛け銀は、似たような局面が多数出てきますが、
お互いの玉の位置によっても、仕掛け方が変わるため注意が必要です。
中盤
51手目:形勢判断と候補手
互角:▲2七飛
50手目の△1三角は受けの手筋で、次に△4六角と出れば
4五の桂を取ることができるようになります。
これに対しては、お互いの玉の位置によって飛車の逃げ場所が変わります。
現局面だと先手玉は飛車打ちに弱く、後手玉は戦場の2筋から遠い状態です。
後手玉に迫る前に反撃される可能性が高いため、▲2七飛と引く1手です。
△4六角と出られて、後手の持ち歩が2枚になっても、
連打の歩で飛車先を止められてしまうことなく、2筋突破が間に合います。
仮に、先手玉が8八、後手玉が4二の位置で仕掛けていたとすると、
先手玉は飛車打ちの王手がなく、後手玉は戦場の2筋から近い状態です。
そのため、積極的に▲1四飛と寄って飛車角交換を狙ったり、
▲2九飛と引いて、角をいじめながら1~3筋を攻めたりします。
53手目:形勢判断と候補手
互角:▲2三角
次に△2三歩と打たれてしまうと、桂香を助ける対応も難しいですし、
攻めが▲7五歩くらいしかなくなってしまいます。
ここはゆっくりしていられませんので、▲2三角と打つ1手です。
これは後手玉が5二にいて、
3二の金が
浮いているから成立している打ち込みです。
仮に後手玉が4二にいたとすると
▲2三角が成立しないので、2手前の▲2七飛が
疑問手に変わります。
角換わり腰掛け銀で、部分的に同じ形は多数出てきますが、
常に全体を見ていないと
最善手を判断できないのが難しいところです。
60手目:形勢判断と候補手
互角:△2四歩
60手目に△同金と取ってはいけません。
部分的には角金交換の
駒得ですし、交換自体は避けられませんが、
手順に王手で飛車を
成り込まれると、攻めとしては速いです。
ここは△2四歩と打つのが手筋で、1歩を犠牲にして△4六馬と引くことで、
後手も攻めのスピードアップを図ります。
71手目:形勢判断と候補手
互角:▲4七歩、▲4七香、▲4七銀、▲8四香、▲8三香 など
71手目の局面は非常に悩ましい局面です。
次の△5六銀は許せませんし、▲4五銀は△同馬が絶好の位置です。
攻めをいなすならば▲4七銀ですが、先手陣に
金駒が残りすぎとも言えます。
できれば持ち駒を増やして後手玉の
寄せに繋げたいところです。
△5六銀を受けつつ、攻めを催促するならば▲4七歩ですが、
△1三馬と引かれると、馬が攻防に利いてくる恐れがあります。
本譜は▲4七香と打ちました。
後手は、馬を逃げる余裕がないため、強く攻め込むしかありません。
馬は取れそうですが、▲8四香や▲8三香と打つ手がなくなるため、
後手の飛車の働きを抑えづらくなるデメリットはあります。
76手目:形勢判断と候補手
互角:△4七銀成、△2六角 など
76手目で、単純に△4七銀成として香を入手する手は有力です。
▲同金で
拠点がなくなってしまうようですが、△5五桂ですぐに復活します。
本譜は△6七桂と打ちました。
先手玉は狭くなりますが、後手も打った桂が邪魔になるリスクがあります。
終盤
88手目:形勢判断と候補手
互角:△8五桂、△8三香、△8五歩 など
88手目は5九の馬と8一の飛車を連携させる狙いで、
「△8五桂 ▲同歩 △8六歩」や「△8三香」のような攻めが有力でした。
本譜は△8七歩と打ちました。
これは退路封鎖の手筋で△6九金までの詰めろですが、
▲同金と取って8筋が
厚くなり、横からの攻めにも耐久力が残っていました。
97手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲7五桂、▲7八金
先手の受けとしては▲7八金と打つしかありません。
しかし、ノータイムで▲7八金と打つのは損です。
現状、先手玉に対して
王手はかかっていませんので、
後手玉に対して王手をかける手だけは成立する可能性があります。
ここは▲7五桂と打つ手も有力で、△7四香と打つ
攻防手を消しています。
但し、無駄な王手は
駒損や寄せ損ないに繋がるため、慎重な判断が必要です。
先手玉は9七や9八まで逃げることができるため、
後手が横から攻めても、明らかに持ち駒が足りていません。
しかし、後手は8筋からの攻めも難しくなったため、
▲7五桂の痛打を避けつつ、飛車の転換を図りました。
117手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:▲7四桂、▲7一角、▲7一銀 など
117手目で後手玉には▲7四桂・▲7一角・▲7一銀から長い詰みがあります。
しかし、先手は持ち駒に金がないため、読み抜けが少し怖いです。
このような場合は、次に△4八飛成とされても
▲8七玉で先手玉が詰まないことを先に読みます。
そして、詰み手順に少しでも不安があれば
「
長い詰みより短い必至」で▲2一竜とするのが実戦的です。
尚、▲2一竜に対して△6一金と打てば後手玉に詰みはないので、
厳密に言えば
必至ではないですが、手数伸ばしの受けは考えなくて大丈夫です。
119手にて、後手の広瀬竜王が投了し、渡辺棋王の2勝となりました。
投了図以降、△同玉 ▲7二銀 △同玉に▲5二竜として
一間竜の形を作り、
以下、▲8三銀から7四の金を王手で取って詰み形となります。
本局では渡辺棋王の相手の攻めを呼び込む力強い指し方が非常に勉強になりました。
棋譜
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棋戦:第44期棋王戦五番勝負 第2局
先手:渡辺明棋王
後手:広瀬章人竜王
手数----指手---------消費時間--
1 2六歩(27) ( 0:00/00:00:00)
2 8四歩(83) ( 1:00/00:01:00)
3 2五歩(26) ( 0:00/00:00:00)
4 8五歩(84) ( 0:00/00:01:00)
5 7六歩(77) ( 3:00/00:03:00)
6 3二金(41) ( 1:00/00:02:00)
7 7七角(88) ( 0:00/00:03:00)
8 3四歩(33) ( 0:00/00:02:00)
9 6八銀(79) ( 0:00/00:03:00)
10 7七角成(22) ( 0:00/00:02:00)
11 同 銀(68) ( 0:00/00:03:00)
12 2二銀(31) ( 0:00/00:02:00)
13 4八銀(39) ( 1:00/00:04:00)
14 3三銀(22) ( 0:00/00:02:00)
15 7八金(69) ( 0:00/00:04:00)
16 6二銀(71) ( 0:00/00:02:00)
17 4六歩(47) ( 0:00/00:04:00)
18 4二玉(51) ( 0:00/00:02:00)
19 4七銀(48) ( 0:00/00:04:00)
20 7四歩(73) ( 0:00/00:02:00)
21 3六歩(37) ( 0:00/00:04:00)
22 7三桂(81) ( 0:00/00:02:00)
23 6八玉(59) ( 0:00/00:04:00)
24 6四歩(63) ( 0:00/00:02:00)
25 3七桂(29) ( 0:00/00:04:00)
26 6三銀(62) ( 0:00/00:02:00)
27 2九飛(28) ( 1:00/00:05:00)
28 8一飛(82) ( 0:00/00:02:00)
29 4八金(49) ( 0:00/00:05:00)
30 7二金(61) ( 1:00/00:03:00)
31 9六歩(97) ( 1:00/00:06:00)
32 9四歩(93) ( 0:00/00:03:00)
33 1六歩(17) ( 0:00/00:06:00)
34 1四歩(13) ( 0:00/00:03:00)
35 6六歩(67) ( 0:00/00:06:00)
36 6二金(72) ( 1:00/00:04:00)
37 5六銀(47) ( 0:00/00:06:00)
38 5四銀(63) ( 2:00/00:06:00)
39 7九玉(68) ( 1:00/00:07:00)
40 5二玉(42) ( 1:00/00:07:00)
41 8八玉(79) ( 8:00/00:15:00)
42 4二玉(52) ( 1:00/00:08:00)
43 4五桂(37) ( 1:00/00:16:00)
44 4四銀(33) ( 1:00/00:09:00)
45 7九玉(88) ( 1:00/00:17:00)
46 5二玉(42) ( 6:00/00:15:00)
47 2四歩(25) (10:00/00:27:00)
48 同 歩(23) ( 3:00/00:18:00)
49 同 飛(29) ( 0:00/00:27:00)
50 1三角打 ( 3:00/00:21:00)
51 2七飛(24) ( 4:00/00:31:00)
52 4六角(13) ( 3:00/00:24:00)
53 2三角打 ( 1:00/00:32:00)
54 3一金(32) ( 7:00/00:31:00)
55 3四角成(23) ( 4:00/00:36:00)
56 3三歩打 ( 2:00/00:33:00)
57 2三馬(34) ( 3:00/00:39:00)
58 1九角成(46) ( 1:00/00:34:00)
59 2二馬(23) (12:00/00:51:00)
60 2四歩打 ( 6:00/00:40:00)
61 同 飛(27) ( 5:00/00:56:00)
62 4六馬(19) ( 1:00/00:41:00)
63 2三飛成(24) ( 0:00/00:56:00)
64 2二金(31) ( 3:00/00:44:00)
65 同 竜(23) ( 0:00/00:56:00)
66 6三玉(52) ( 1:00/00:45:00)
67 1一竜(22) ( 0:00/00:56:00)
68 8六歩(85) (18:00/01:03:00)
69 同 歩(87) ( 4:00/01:00:00)
70 4五銀(44) ( 3:00/01:06:00)
71 4七香打 (13:00/01:13:00)
72 5六馬(46) (20:00/01:26:00)
73 同 歩(57) ( 9:00/01:22:00)
74 同 銀(45) ( 0:00/01:26:00)
75 5七歩打 ( 0:00/01:22:00)
76 6七桂打 (32:00/01:58:00)
77 6九玉(79) (22:00/01:44:00)
78 2六角打 ( 0:00/01:58:00)
79 5八金打 ( 4:00/01:48:00)
80 3七銀打 ( 1:00/01:59:00)
81 5六歩(57) (45:00/02:33:00)
82 4八銀成(37) ( 2:00/02:01:00)
83 6七金(58) ( 0:00/02:33:00)
84 4七成銀(48) (19:00/02:20:00)
85 7九玉(69) (21:00/02:54:00)
86 5九角成(26) ( 4:00/02:24:00)
87 7五歩(76) ( 1:00/02:55:00)
88 8七歩打 (59:00/03:23:00)
89 同 金(78) ( 0:00/02:55:00)
90 5七金打 ( 0:00/03:23:00)
91 同 金(67) (18:00/03:13:00)
92 同 成銀(47) ( 0:00/03:23:00)
93 7四歩(75) ( 0:00/03:13:00)
94 6七成銀(57) (13:00/03:36:00)
95 7三歩成(74) ( 1:00/03:14:00)
96 同 金(62) ( 1:00/03:37:00)
97 7八金打 ( 6:00/03:20:00)
98 6九金打 (13:00/03:50:00)
99 8八玉(79) ( 0:00/03:20:00)
100 7八成銀(67) ( 0:00/03:50:00)
101 同 玉(88) ( 0:00/03:20:00)
102 7四香打 ( 0:00/03:50:00)
103 7五歩打 ( 4:00/03:24:00)
104 同 香(74) ( 5:00/03:55:00)
105 7六歩打 ( 0:00/03:24:00)
106 8五歩打 ( 0:00/03:55:00)
107 2二竜(11) ( 3:00/03:27:00)
108 5二香打 ( 0:00/03:55:00)
109 8五歩(86) ( 1:00/03:28:00)
110 同 飛(81) ( 2:00/03:57:00)
111 8六歩打 ( 1:00/03:29:00)
112 7六香(75) ( 0:00/03:57:00)
113 同 金(87) ( 0:00/03:29:00)
114 4五飛(85) ( 0:00/03:57:00)
115 7五桂打 ( 0:00/03:29:00)
116 6二玉(63) ( 0:00/03:57:00)
117 7四桂打 ( 2:00/03:31:00)
118 同 金(73) ( 0:00/03:57:00)
119 7一角打 ( 1:00/03:32:00)
120 投了 ( 0:00/03:57:00)
まで119手で先手の勝ち
棋王戦第1局
棋王戦第3局