目次
解説動画
棋王戦第2局
棋王戦第4局
対局情報
局面解説概要
序盤
16手目:形勢判断と候補手
互角:△4三金右
次に▲3四飛と横歩を取られた場合、後手は1歩損の代償として、
手得を生かして
急戦を仕掛けなければ割に合いませんが、
既に△4四歩と
角道を止めてしまったので、
仕掛けが難しくなっています。
よって、16手目は△4三金右と上がって3四の歩を守る1手です。
先手が早い段階で飛車先の歩を交換したのは
後手の囲いを矢倉に限定し、雁木を阻止する意味合いもありました。
後手が確実に雁木を目指すのであれば
△5二金の代わりに、△4二銀と上がる必要があります。
25手目:形勢判断と候補手
互角:▲6九玉、▲9六歩、▲1六歩、▲5八金 など
後手が右銀を5三に上がるのは、
持久戦となる1つの目安です。
後手がすぐに仕掛けるとすれば△7四歩~△6四銀~△7五歩ですが、
▲6六歩~▲6七銀とすれば受けが間に合うので、少し無理気味です。
後手が持久戦を目指した場合、先手は無理に仕掛ける必要はありませんが、
仕掛けを封じられないように、
駒組みの手順を工夫する必要はあります。
36手目:形勢判断と候補手
互角:△1四歩、△7三桂、△7二飛 など
後手としては、先手からの仕掛けを待ち、
玉の堅さを生かして反撃を狙うのが自然な指し方です。
本譜は△6四銀と上がりましたが、これはやや積極的な指し方です。
▲6五歩と突かれて△5三銀と戻るようでは明らかな
手損ですが、
△6四歩が仕掛けの1手に変わるので、後手に選択肢が増えます。
41手目:形勢判断と候補手
互角:▲7五歩、▲6六銀、▲3六歩 など
先手はできれば飛車を活用して仕掛けたいところですが、
右銀と連携して攻めるためには右四間飛車にする必要があります。
しかし、現状で後手は右四間飛車に対して強い陣形となっています。
相手の警戒している仕掛けは反動が大きくなります。
先手玉の方が薄いこともあり、好んで選ぶ展開ではありません。
本譜は▲7五歩と突きました。
相手陣の
金駒が囲いに偏ったときに有力なB面攻撃です。
以降、先手は
玉頭に厚みを築いて、後手の攻め駒を押さえ込みます。
中盤
43手目:形勢判断と候補手
互角:▲7六銀
43手目で▲7四歩と
取り込むのは疑問手です。
△同飛となった局面では、後手の方が7五の地点を制しています。
厚みを築く指し方は、少し難しいのですが、基本的に陣取りゲームです。
駒落ちの
上手を指すようになるとかなり身に付きます。
ここは▲7六銀と上がって7五の地点に加勢します。
これで後手から△7五歩と取ることはできません。
53手目:形勢判断と候補手
互角:▲6七金右、▲6七金左 など
厚みを築く際には、自分の駒を少しずつ前進させるだけでなく、
駒の連結を意識することも重要です。
ラグビーでスクラムを組んでトライを目指すイメージです。
53手目では、7六の銀が
離れ駒になっているので、
▲6七金右と紐を付けつつ、玉側に寄せていくのが自然な手です。
また▲6七金左と、7八の金を6七に上がる指し方もあります。
こちらはバランス重視で、
大駒交換後の
打ち込みに備えた手です。
63手目:形勢判断と候補手
互角:▲6六角、▲1六歩 など
63手目で▲同歩と取ってはいけません。
△同桂が角取りなので、▲6六角のように逃げますが、
△7七桂成が「
鬼より怖い両王手」で▲同玉 △8九飛成と突破されます。
本譜は▲6六角と上がりました。
△8六歩は少し怖いですが、8七の守りは足りています。
70手目:形勢判断と候補手
互角:△4五歩、△5五歩、△1五角
後手は
駒損していますので攻め続ける必要がありますし、
戦力的に大駒の角を攻めに使うことは必須です。
70手目に本譜は△4五歩と突きました。
王手で角を活用できるのは大きいです。
但し、先手からの▲4五桂が生じるので、さらに忙しくなります。
尚、ここでは△1五角の飛び出しも有力です。
先手が▲2六歩と打てば3七の桂取りは簡単に受かるのですが、
先手の攻めが2手遅れるので損になりにくい手です。
80手目:形勢判断と候補手
後手優勢:△7四歩
80手目では△7四歩と角取りに打つ手が有力です。
6六の金に7五の角でしか
紐が付いていないことを
咎めています。
先手が6六の金を取られないためには▲8四角と逃げるしかありませんが
そこで△8三金と打って角を捕獲します。
本譜は単に△8五金と打ちました。角を狙っている点は同じですが、
盤上の駒の残り方の違いで、先手にうまく粘る手順が生じてしまいました。
84手目:形勢判断と候補手
先手有利:△同金寄
84手目で△同銀と取れば、総矢倉が完成して部分的には良い形ですが、
矢倉は上からの攻撃には強い反面、横からの攻撃には弱い
囲いです。
この成桂は△同金寄と取るのが最善で、飛車の打ち込みに備えています。
また、2枚の金が縦または横に並んだ形は
終盤で耐久力があります。
90手目:形勢判断と候補手
先手有利:△7二歩、△9三角
90手目で△9三角と逃げる手は有力ですが、▲7三飛成とされると、
後手は唯一の
大駒である角の働きが悪くなって、攻めが切れやすくなります。
本譜は角を見捨てて△7二歩と打ちました。
最後の大駒をタダで取られたら
投了級の差が付いてもおかしくありませんが、
このエリアが狭いので、
小駒だけでも飛車を取り返す手順がありました。
後手は飛車が持ち駒に加われば、
隙の多い先手陣に打ち込んで攻めを繋げることができます。
「助からないと思っても助かっている」という名言があるように
最後まで諦めずに手を探すと思わぬ
妙手が見つかることもあります。
終盤
107手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲4五桂、▲2四歩、▲3五歩 など
先手は受け切り勝ちや
入玉も考えたいところですが、
後手の持ち駒に飛車があるので、少し難しそうです。
現状で先手玉は狭いですが、次に
詰めろがかかることはないので
ここで後手玉に対する攻めの足掛かりを作っておきたいところです。
本譜は▲3五歩と突きました。
111手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:▲3三歩成
先手玉には△5六銀の1手詰み以外にも、△5八銀 ▲同金 △同竜や
△7八銀 ▲同金 △5八竜という複数の詰み筋があり、部分的に必至です。
そして、現状で後手玉はわずかに詰みません。
このような場合は攻防手がなければ負けが確定してしまいます。
この局面では、4七の竜が最も狙いやすそうなので、
▲2五馬と引くか、あるいは▲2五角と打つ手が
王手竜取りになるように後手玉を誘導できる手順から探します。
先手は「
桂頭の玉、寄せにくし」となっているので
4七の竜を抜くことさえできれば、渡す駒の制約はほとんどありません。
尚、本譜は長手数の寄せを読み切っているので攻め合いを選択していますが、
△3七飛に対して▲4八銀のように受けておく手も実戦的で有力でした。
121手にて、後手の渡辺棋王が投了し、渡辺棋王の2勝、広瀬竜王の1勝となりました。
投了図以降、△1三玉 ▲1四銀 △2四玉に▲4七角と竜を取った手が
詰めろ逃れの必至となります。
本局では広瀬竜王の、最短の勝ちを目指した鋭い踏み込みが非常に勉強になりました。
棋譜
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棋戦:第44期棋王戦五番勝負 第3局
先手:広瀬章人竜王
後手:渡辺明棋王
手数----指手---------消費時間--
1 2六歩(27) ( 1:00/00:01:00)
2 8四歩(83) ( 0:00/00:00:00)
3 7六歩(77) ( 1:00/00:02:00)
4 3二金(41) ( 1:00/00:01:00)
5 7八金(69) ( 0:00/00:02:00)
6 8五歩(84) ( 2:00/00:03:00)
7 7七角(88) ( 0:00/00:02:00)
8 3四歩(33) ( 1:00/00:04:00)
9 6八銀(79) ( 0:00/00:02:00)
10 4四歩(43) ( 0:00/00:04:00)
11 2五歩(26) ( 1:00/00:03:00)
12 5二金(61) ( 1:00/00:05:00)
13 2四歩(25) ( 2:00/00:05:00)
14 同 歩(23) ( 0:00/00:05:00)
15 同 飛(28) ( 0:00/00:05:00)
16 4三金(52) ( 0:00/00:05:00)
17 4八銀(39) ( 0:00/00:05:00)
18 2三歩打 ( 0:00/00:05:00)
19 2八飛(24) ( 0:00/00:05:00)
20 6二銀(71) ( 0:00/00:05:00)
21 4六歩(47) ( 0:00/00:05:00)
22 5四歩(53) ( 1:00/00:06:00)
23 4七銀(48) ( 1:00/00:06:00)
24 5三銀(62) ( 1:00/00:07:00)
25 6九玉(59) ( 2:00/00:08:00)
26 4一玉(51) ( 0:00/00:07:00)
27 5六銀(47) ( 7:00/00:15:00)
28 4二銀(31) ( 3:00/00:10:00)
29 6六歩(67) ( 5:00/00:20:00)
30 7四歩(73) (12:00/00:22:00)
31 6七銀(68) ( 0:00/00:20:00)
32 9四歩(93) ( 3:00/00:25:00)
33 9六歩(97) (10:00/00:30:00)
34 3一玉(41) (30:00/00:55:00)
35 5八金(49) ( 3:00/00:33:00)
36 6四銀(53) ( 3:00/00:58:00)
37 6五歩(66) (24:00/00:57:00)
38 5三銀(64) ( 3:00/01:01:00)
39 7九玉(69) ( 7:00/01:04:00)
40 7三桂(81) (13:00/01:14:00)
41 7五歩(76) (21:00/01:25:00)
42 8四飛(82) ( 0:00/01:14:00)
43 7六銀(67) ( 1:00/01:26:00)
44 6四歩(63) ( 0:00/01:14:00)
45 7四歩(75) ( 1:00/01:27:00)
46 同 飛(84) ( 0:00/01:14:00)
47 7五歩打 ( 0:00/01:27:00)
48 8四飛(74) ( 0:00/01:14:00)
49 6四歩(65) ( 0:00/01:27:00)
50 同 銀(53) ( 0:00/01:14:00)
51 6五歩打 ( 1:00/01:28:00)
52 5三銀(64) ( 0:00/01:14:00)
53 6七金(58) ( 1:00/01:29:00)
54 1四歩(13) ( 2:00/01:16:00)
55 8八玉(79) (10:00/01:39:00)
56 3三角(22) ( 8:00/01:24:00)
57 3六歩(37) (13:00/01:52:00)
58 2二玉(31) (18:00/01:42:00)
59 3七桂(29) ( 2:00/01:54:00)
60 8六歩(85) ( 1:00/01:43:00)
61 同 歩(87) ( 1:00/01:55:00)
62 8五歩打 ( 0:00/01:43:00)
63 6六角(77) (11:00/02:06:00)
64 8六歩(85) (15:00/01:58:00)
65 7四歩(75) ( 1:00/02:07:00)
66 同 飛(84) ( 1:00/01:59:00)
67 7五銀(76) ( 1:00/02:08:00)
68 同 飛(74) ( 0:00/01:59:00)
69 同 角(66) ( 0:00/02:08:00)
70 4五歩(44) ( 0:00/01:59:00)
71 7七歩打 ( 3:00/02:11:00)
72 6六歩打 ( 2:00/02:01:00)
73 同 金(67) (20:00/02:31:00)
74 8七銀打 (18:00/02:19:00)
75 同 金(78) ( 0:00/02:31:00)
76 同 歩成(86) ( 0:00/02:19:00)
77 同 玉(88) ( 0:00/02:31:00)
78 8六歩打 ( 0:00/02:19:00)
79 7八玉(87) ( 1:00/02:32:00)
80 8五金打 ( 0:00/02:19:00)
81 4五桂(37) ( 6:00/02:38:00)
82 7五金(85) ( 4:00/02:23:00)
83 3三桂成(45) ( 1:00/02:39:00)
84 同 金(43) ( 1:00/02:24:00)
85 7五金(66) ( 0:00/02:39:00)
86 6六角打 ( 3:00/02:27:00)
87 6八金打 (15:00/02:54:00)
88 7五角(66) ( 4:00/02:31:00)
89 7四飛打 ( 2:00/02:56:00)
90 7二歩打 (17:00/02:48:00)
91 7五飛(74) ( 2:00/02:58:00)
92 8五金打 ( 1:00/02:49:00)
93 7四飛(75) ( 7:00/03:05:00)
94 6二桂打 ( 0:00/02:49:00)
95 7三飛成(74) (13:00/03:18:00)
96 同 歩(72) ( 0:00/02:49:00)
97 2九飛(28) ( 0:00/03:18:00)
98 5五歩(54) (11:00/03:00:00)
99 4七銀(56) ( 1:00/03:19:00)
100 7四桂(62) ( 6:00/03:06:00)
101 4一角打 ( 7:00/03:26:00)
102 3一金(32) (15:00/03:21:00)
103 5二角成(41) ( 0:00/03:26:00)
104 6六桂(74) ( 6:00/03:27:00)
105 6七玉(78) ( 3:00/03:29:00)
106 7五金(85) ( 0:00/03:27:00)
107 3五歩(36) ( 3:00/03:32:00)
108 3七飛打 (11:00/03:38:00)
109 3四歩(35) ( 1:00/03:33:00)
110 4七飛成(37) ( 7:00/03:45:00)
111 3三歩成(34) ( 1:00/03:34:00)
112 同 銀(42) ( 0:00/03:45:00)
113 2三飛成(29) ( 1:00/03:35:00)
114 同 玉(22) ( 0:00/03:45:00)
115 3五桂打 ( 0:00/03:35:00)
116 2四玉(23) ( 0:00/03:45:00)
117 2五金打 ( 1:00/03:36:00)
118 1三玉(24) ( 0:00/03:45:00)
119 1四金(25) ( 1:00/03:37:00)
120 同 玉(13) ( 0:00/03:45:00)
121 2五角打 ( 0:00/03:37:00)
122 投了 ( 5:00/03:50:00)
まで121手で先手の勝ち
棋王戦第2局
棋王戦第4局