目次
解説動画
王将戦第5局
第68期王将戦第1局
対局情報
局面解説概要
序盤
先手は角を打ち込んでも、後手に角を合わされると
馬を作ることができません。
それどころか、先手から角交換をしているので、
結果として後手の駒だけが動いていることになり、先手が手損をしています。
後手は△4四歩と△3二金を生かして矢倉に組めば、
先後を入れ替えた程度の形勢となります。
しかし、振り飛車にする場合は、あまり手得が生きません。
△5四歩と△4四歩を両方突いている形は隙が生じやすく、
△3二金は自玉の囲いから遠ざかっています。
つまり、本局は、振り飛車党である相手に作戦を限定させた指し方であると言えます。
37手目:形勢判断と候補手
先手有利:▲5三角
持ち駒に角があり、相手陣に隙がある場合は、角を打つ手を考えましょう。
「2方向以上に角を成る」あるいは「駒取りと角成りを見せている」
のように狙いが2つ以上あれば、同時に受けることが難しくなります。
気を付けるべき点は3つあります。
1つ目は、角を合わされて馬が作れない場合です。
本局の序盤でも出てきましたが、基本的には手損となってしまいます。
2つ目は、相手にもっと有効な角打ちがある場合です。
次に両取りがかかるような手だと気付きやすいですが、
持ち駒に角を残しておかないと合駒に困る、ということもあります。
3つ目は、自分に対する王手や飛車取りなどと併せて、
打った角の狙いを消されてしまう場合です。
受けている間に角の行き場がなくなって、捕まってしまいます。
いずれかに該当する場合には、誘いの隙である可能性が高くなります。
46手目:形勢判断と候補手
先手有利:△3三桂、△8四歩、△5五角、△6四角、△7四歩 など
後手は、駒の損得がなく、囲いが先手より薄く、
馬を作られているので、少し苦しい局面です。
但し、先手の金駒はすべて玉側に寄っているため、
すぐに攻め込まれることはありません。
このような場合は、無理に攻めず、遊び駒を活用します。
この局面では△3三桂が最も自然な手です。
振り飛車を指す場合は、常に左桂の活用を狙うようにしましょう。
中盤
56手目:形勢判断と候補手
互角:△1四歩、△4二金 など
56手目に後手がこのまま4筋を攻め続けるならば△3七銀成という手になります。
▲同飛は△4八歩成で4筋を突破しながら、と金を作ることができます。
▲同馬は△4六桂と飛車金両取りをかければ、金を取り返しながら
先手玉の囲いを薄くすることができます。
一見、良さそうではありますが、実は悪手です。
少なくとも飛車が成り込めるくらいの成果が出ないと、
銀や桂を持ち駒にした先手からの反撃が厳しくなります。
攻め合いになると、後手は3二の金が働かず、
金落ちの将棋を指しているような状況になってしまうのです。
先手はカウンター狙いの方針となりました。
しかし、後手も遊び駒がなくなり、玉を堅くすることができました。
先手は角打ちの隙を作らないようにするため、駒組みの制約が多いです。
また飛車の働きは後手の方が良いため、形勢は互角に戻っています。
69手目:形勢判断と候補手
互角:▲2四歩、▲同馬、▲2八飛
69手目に▲2四歩と突き捨てておくのは手筋です。
仕掛けた直後から本格的に駒がぶつかるまでのわずかな間は
積極的に歩を突き捨てましょう。
攻め合いになると、後手が10手以上前に指しておいた
△5二金や△3三桂がよく利いていることが分かります。
81手目:形勢判断と候補手
互角:▲4四歩、▲2二飛成、▲7九金
81手目に▲7九金と逃げる手はありますが、
と金で金駒を取られることに変わりはありません。
秒読みの場合に考える時間を稼ぐことができる、というメリットはありますが、
基本的には手抜きをして攻め合いましょう。
86手目:形勢判断と候補手
互角:△4三金打
86手目は少しもったいないようですが、△4三金打としっかり受けます。
大駒に当たりになるように受けて、大駒の交換を強要することで、
なかなか敵陣に成り込めなかった飛車を捌くことができました。
89手目:形勢判断と候補手
互角:▲2二飛、▲4四桂、▲9五歩
ここは「
玉の守りの金を攻めよ」で▲2二飛や▲4四桂のように指して、
美濃囲いの金を1枚ずつはがしながら確実に攻める手順と
「
三歩持ったら端に手あり」で▲9五歩と端から攻める手順がいずれも有力です。
本譜は▲8五歩と突きました。
美濃囲いの玉頭は急所の1つですが、同様に自陣の急所でもあります。
後手は美濃囲いがしっかりと残っている状態で、
駒得もしているという、理想的な展開です。
終盤
100手目:形勢判断と候補手
後手優勢:△4一歩、△3二歩、△5二金寄
100手目は△3二歩や△5二金寄という受け方もありますが、
△4一歩と打てば「
金底の歩、岩よりも堅し」となります。
4一の歩と4二の金が外堀のような役割を果たしており、
歩1枚で先手の飛車の働きが弱くなりました。
107手目:形勢判断と候補手
後手勝勢:▲同歩
106手目の△7五桂はとても気持ちの良い活用です。
取られそうな桂で歩を吊り上げ、
馬の利きで8筋を受けることができるようになりました。
先手は唯一の大駒である竜の働きが弱く、敗勢です。
後手としては、先手の竜を押さえ込んでも勝てますが、
あえて攻めさせて持ち駒を補充し、最後は先手玉を即詰みに討ち取りました。
120手にて、先手の豊島八段が投了し、
久保王将の4勝、豊島八段の2勝で、久保王将がタイトルを防衛しました。
久保王将の我慢強い指し回しと、華麗な捌きがとても勉強になりました。
棋譜
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棋戦:第67期王将戦七番勝負 第6局
先手:豊島将之八段
後手:久保利明王将
手数----指手---------消費時間--
1 2六歩(27) (00:00 / 00:00:00)
2 3四歩(33) (00:00 / 00:00:00)
3 2五歩(26) (00:00 / 00:00:00)
4 3三角(22) (00:00 / 00:00:00)
5 7六歩(77) (00:00 / 00:00:00)
6 4二銀(31) (00:00 / 00:00:00)
7 6八玉(59) (00:00 / 00:00:00)
8 5四歩(53) (00:00 / 00:00:00)
9 3三角成(88) (00:00 / 00:00:00)
10 同 銀(42) (00:00 / 00:00:00)
11 5三角打 (00:00 / 00:00:00)
12 4四角打 (00:00 / 00:00:00)
13 同 角成(53) (00:00 / 00:00:00)
14 同 歩(43) (00:00 / 00:00:00)
15 4三角打 (00:00 / 00:00:00)
16 3二角打 (00:00 / 00:00:00)
17 同 角成(43) (00:00 / 00:00:00)
18 同 金(41) (00:00 / 00:00:00)
19 4八銀(39) (00:00 / 00:00:00)
20 9四歩(93) (00:00 / 00:00:00)
21 9六歩(97) (00:00 / 00:00:00)
22 5二飛(82) (00:00 / 00:00:00)
23 5八金(49) (00:00 / 00:00:00)
24 6二玉(51) (00:00 / 00:00:00)
25 6六歩(67) (00:00 / 00:00:00)
26 7二玉(62) (00:00 / 00:00:00)
27 7八銀(79) (00:00 / 00:00:00)
28 8二玉(72) (00:00 / 00:00:00)
29 7九玉(68) (00:00 / 00:00:00)
30 7二銀(71) (00:00 / 00:00:00)
31 8八玉(79) (00:00 / 00:00:00)
32 5一飛(52) (00:00 / 00:00:00)
33 5九銀(48) (00:00 / 00:00:00)
34 4五歩(44) (00:00 / 00:00:00)
35 6八銀(59) (00:00 / 00:00:00)
36 4一飛(51) (00:00 / 00:00:00)
37 5三角打 (00:00 / 00:00:00)
38 4六歩(45) (00:00 / 00:00:00)
39 同 歩(47) (00:00 / 00:00:00)
40 同 飛(41) (00:00 / 00:00:00)
41 4七歩打 (00:00 / 00:00:00)
42 4一飛(46) (00:00 / 00:00:00)
43 2六角成(53) (00:00 / 00:00:00)
44 4四銀(33) (00:00 / 00:00:00)
45 3六歩(37) (00:00 / 00:00:00)
46 3三桂(21) (00:00 / 00:00:00)
47 3七桂(29) (00:00 / 00:00:00)
48 5五銀(44) (00:00 / 00:00:00)
49 7七銀(68) (00:00 / 00:00:00)
50 4六歩打 (00:00 / 00:00:00)
51 同 歩(47) (00:00 / 00:00:00)
52 同 銀(55) (00:00 / 00:00:00)
53 4八飛(28) (00:00 / 00:00:00)
54 4七歩打 (00:00 / 00:00:00)
55 3八飛(48) (00:00 / 00:00:00)
56 1四歩(13) (00:00 / 00:00:00)
57 1六歩(17) (00:00 / 00:00:00)
58 4二金(32) (00:00 / 00:00:00)
59 4九歩打 (00:00 / 00:00:00)
60 5二金(42) (00:00 / 00:00:00)
61 8六歩(87) (00:00 / 00:00:00)
62 1二香(11) (00:00 / 00:00:00)
63 6八金(58) (00:00 / 00:00:00)
64 6四歩(63) (00:00 / 00:00:00)
65 9八香(99) (00:00 / 00:00:00)
66 5五銀(46) (00:00 / 00:00:00)
67 3五歩(36) (00:00 / 00:00:00)
68 同 歩(34) (00:00 / 00:00:00)
69 2四歩(25) (00:00 / 00:00:00)
70 同 歩(23) (00:00 / 00:00:00)
71 3五馬(26) (00:00 / 00:00:00)
72 2七角打 (00:00 / 00:00:00)
73 2八飛(38) (00:00 / 00:00:00)
74 4九角成(27) (00:00 / 00:00:00)
75 5六歩(57) (00:00 / 00:00:00)
76 4六銀(55) (00:00 / 00:00:00)
77 3四馬(35) (00:00 / 00:00:00)
78 4八歩成(47) (00:00 / 00:00:00)
79 2四飛(28) (00:00 / 00:00:00)
80 5九と(48) (00:00 / 00:00:00)
81 2二飛成(24) (00:00 / 00:00:00)
82 6九と(59) (00:00 / 00:00:00)
83 同 金(68) (00:00 / 00:00:00)
84 4二飛(41) (00:00 / 00:00:00)
85 3三龍(22) (00:00 / 00:00:00)
86 4三金打 (00:00 / 00:00:00)
87 4二龍(33) (00:00 / 00:00:00)
88 同 金(43) (00:00 / 00:00:00)
89 8五歩(86) (00:00 / 00:00:00)
90 3六飛打 (00:00 / 00:00:00)
91 4三歩打 (00:00 / 00:00:00)
92 3四飛(36) (00:00 / 00:00:00)
93 4二歩成(43) (00:00 / 00:00:00)
94 同 金(52) (00:00 / 00:00:00)
95 8四歩(85) (00:00 / 00:00:00)
96 3七飛成(34) (00:00 / 00:00:00)
97 7五桂打 (00:00 / 00:00:00)
98 7一桂打 (00:00 / 00:00:00)
99 2二飛打 (00:00 / 00:00:00)
100 4一歩打 (00:00 / 00:00:00)
101 1二飛成(22) (00:00 / 00:00:00)
102 7四歩(73) (00:00 / 00:00:00)
103 8三桂成(75) (00:00 / 00:00:00)
104 同 桂(71) (00:00 / 00:00:00)
105 8七香打 (00:00 / 00:00:00)
106 7五桂(83) (00:00 / 00:00:00)
107 同 歩(76) (00:00 / 00:00:00)
108 8六歩打 (00:00 / 00:00:00)
109 同 香(87) (00:00 / 00:00:00)
110 8五歩打 (00:00 / 00:00:00)
111 3八歩打 (00:00 / 00:00:00)
112 5七龍(37) (00:00 / 00:00:00)
113 2三龍(12) (00:00 / 00:00:00)
114 8六歩(85) (00:00 / 00:00:00)
115 8三金打 (00:00 / 00:00:00)
116 7一玉(82) (00:00 / 00:00:00)
117 7二金(83) (00:00 / 00:00:00)
118 同 金(61) (00:00 / 00:00:00)
119 8三歩成(84) (00:00 / 00:00:00)
120 8七金打 (00:00 / 00:00:00)
まで120手で後手の勝ち
王将戦第5局
第68期王将戦第1局