目次
解説動画
第67期王将戦第6局
王将戦第2局
対局情報
局面解説概要
序盤
13手目:形勢判断と候補手
互角:▲5八金、▲9六歩、▲3六歩、▲2四歩 など
先手が▲7八玉と寄った後、後手が2四の地点を受けなければ
▲2四歩からの歩交換が常に有力な変化となります。
但し、後手が飛車を2筋に振り直して逆襲してくる可能性が高まるため、
先手が少し忙しくなります。
17手目:形勢判断と候補手
互角:▲3六歩、▲4六歩、▲2四歩 など
本譜は17手目に▲4六歩と突きました。
▲4七銀と上がることで、手早く3筋~5筋を守ることができるため、
後手からの
仕掛けが難しくなって、比較的穏やかな展開となります。
但し、居飛車側からの仕掛けも難しくなるため、
特に先手の場合、
千日手にならないような
駒組みが求められます。
21手目:形勢判断と候補手
互角:▲同銀、▲同玉
21手目では▲同銀の方が角のラインを気にする必要がないので無難ですが、
▲同玉ならば美濃囲いに組むことができます。
「▲同銀で矢倉~玉頭位取り」「▲同銀でいきなり銀冠」
「▲同玉で美濃囲い~銀冠」のいずれの駒組みも有力です。
尚、▲同玉に対して△5五角と打たれると1歩損する変化はありますが、
角を手放すマイナスの方が大きいので気にする必要はありません。
後手は△5五歩を保留して、角交換向かい飛車の変化に合流させます。
現状で2筋は先手の右銀の守備範囲外なので争点にしやすいです。
32手目:形勢判断と候補手
互角:△2五桂、△5三銀、△4三銀、△8四歩 など
32手目で「桂ポン」と言われる△2五桂は有力です。
▲同飛で桂を取られてしまいますが、
△2四歩~△2五歩と2筋の歩を突いていけば、
歩切れの先手は持ち駒の桂や角を手放して2筋を受ける必要があるため、
先手が桂得を生かすことは難しく、後手が形勢を損ねることにはなりません。
本譜は△5三銀と上がりました。
後で△4二金と寄れば、4三銀&3二金型よりも玉が堅くなります。
桂頭である3四の弱点が残ったままなのは少し気になりますが、
しばらくは先手が歩を入手できないことを見越しています。
38手目:形勢判断と候補手
互角:△2四歩、△6四歩、△3二金 など
先手の飛車が2筋からいなくなったので、38手目に△2四歩と突く手は有力です。
但し、2筋の突破は手数がかかるので、
先手は△2四歩を手抜いて4筋から攻めてきます。
お互いが一直線に飛車先の突破を目指すと、明らかに後手の方が遅いですが、
先手が攻めると先手陣に角打ちの隙が生じますので、
角を打って先手の飛車をいじめながら攻めを遅らせれば互角の攻め合いです。
本譜は△4一飛としました。
戦いが起こりそうな筋に飛車を回るのは振り飛車の常套手段です。
中盤
49手目:形勢判断と候補手
互角:▲6五桂、▲4九飛、▲8六歩 など
49手目で▲4三飛成 △同金 ▲3二角は無理筋です。
斜めに1マス離れた状態の飛車金両取りは基本的には厳しいのですが、
持ち駒に飛車がある場合は例外で、△4一飛打とすれば受かっています。
51手目:形勢判断と候補手
互角:▲6五桂、▲4六飛、▲4三飛成 など
51手目で▲4三飛成 △同金 ▲3二角は有力です。
△4一飛打で部分的には受かっているのですが、後手が2七に角を打ったため、
▲2一角成 △同飛に▲4七飛と打つ手が角金両取りになります。
状況は常に変化しているので、指し手の価値も変動します。
過去の読み筋が弊害とならないように、盤を広く見て考えることが重要です。
61手目:形勢判断と候補手
互角:▲1五角、▲3四桂 など
61手目では▲1五角や▲3四桂と打って4二の金に働きかける手が有力です。
4筋の突破や▲6五桂の含みがあり、後手はバランスの保ち方が難しいです。
例えば、▲3四桂に対して△5二金は▲3二角~▲4三角成が狙えますし、
△3二金は▲2三歩の
垂らしが厳しい手となります。
本譜は▲6五歩と突きました。
相手陣に圧力をかけつつ、▲6六角と打つ攻防手を狙っています。
67手目:形勢判断と候補手
互角:▲6六角
67手目で▲同銀としてはいけません。△8四歩 ▲7六銀引となると、
自分の玉頭の歩を手持ちにしただけなので戦果としてはイマイチです。
銀冠は銀の頭が弱点なので、そこを狙います。
▲8四歩とすぐに
叩いていく手も有力ですが、先手は持ち駒が少ないため、
ここは▲6六角と打って、8筋への攻めの力を溜めるのが好手です。
71手目:形勢判断と候補手
先手有利:▲5六飛、▲4七歩、▲4四飛
71手目は飛車取りを受けて、▲5六飛とかわすか、
あるいは▲4七歩と打って飛車に紐を付ける手が有力です。
本譜は▲4四飛と切りました。
これも有力手ですが、この段階で飛車を切るためには深くて正確な読みが必要です。
大駒を相手に渡すと反撃される変化が大幅に増えます。
実戦的には終盤のギリギリまで
大駒は
切らない方が無難です。
82手目:形勢判断と候補手
先手有利:△5五馬、△8三銀、△5二金 など
82手目で△6九飛のように打っても、先手玉が広いため厳しくありません。
攻めるならば、馬が3七に残ったまま攻め勝つことは有り得ないので、
△5五馬と活用する手が先になります。
受けるならば、玉頭をカバーする△8三歩が考えられますが、
△8五歩や△8七歩と叩く筋を残すために△8三銀も有力です。
終盤
91手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲7八歩、▲8三銀 など
91手目で▲6八金と逃げる手は自然ですが、
△8七歩と打たれる手があるため、あまり先手になっていません。
後手は飛車さえ渡さなければ、かなり詰みづらい形なので、
簡単に角を逃げてくれません。
本譜は「
終盤は駒の損得より速度」で▲7八歩と打ちました。
金をタダで取られてしまいますが、後手の攻め駒が玉から離れて行ったので
先手玉が安全になり、攻めるための
手番を握ることができました。
99手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:▲6二角
99手目は「
玉は包むように寄せよ」で▲6二角が寄せの手筋です。
後手が受け切るとしたら、後手玉が6筋~5筋へ逃げて、
4二の金が受けに利いてくるパターンとなりますが、
先回りして、その望みを断ち切っておきます。
103手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:▲5四桂
103手目に▲4四角成としてはいけません。
▲4四角成でも部分的には後手の受けが難しいのですが、
△7九銀~△4九飛の王手角取りを狙われてしまいます。
ここは▲5四桂と打って、角に
紐を付けつつ、
詰めろをかけておけば
相手玉周辺に攻め駒が増えることもあって、より受けがなくなっていきます。
114手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:△7五歩、△7五銀 など
ここから△5八馬 ▲8七玉 △6九馬 ▲7六玉…、となれば千日手ですが、
連続王手の千日手なので後手の反則負けです。
先手玉を詰ますためには金駒か桂が1枚足りませんでした。
115手にて、後手の久保王将が投了し、渡辺棋王の1勝となりました。
投了図以降、先手は▲7四玉と潜り込んだ形が安全で詰みはありません。
一方、後手は△6一玉と早逃げしても
▲7二銀や▲7一角成からの詰みがあり、受けはありません。
本局では渡辺棋王の確実な攻めの繋ぎ方や玉頭戦が非常に勉強になりました。
棋譜
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棋戦:第68期王将戦七番勝負 第1局
先手:渡辺明棋王
後手:久保利明王将
手数----指手---------消費時間--
1 2六歩(27) ( 0:00/00:00:00)
2 3四歩(33) ( 1:00/00:01:00)
3 7六歩(77) ( 1:00/00:01:00)
4 5四歩(53) ( 6:00/00:07:00)
5 2五歩(26) ( 4:00/00:05:00)
6 5二飛(82) ( 2:00/00:09:00)
7 4八銀(39) ( 2:00/00:07:00)
8 6二玉(51) ( 4:00/00:13:00)
9 6八玉(59) ( 4:00/00:11:00)
10 7二玉(62) (11:00/00:24:00)
11 7八玉(68) ( 4:00/00:15:00)
12 8二玉(72) ( 5:00/00:29:00)
13 5八金(49) (16:00/00:31:00)
14 7二銀(71) (11:00/00:40:00)
15 9六歩(97) ( 6:00/00:37:00)
16 9四歩(93) ( 5:00/00:45:00)
17 4六歩(47) ( 1:00/00:38:00)
18 5一飛(52) (24:00/01:09:00)
19 3六歩(37) (33:00/01:11:00)
20 8八角成(22) ( 8:00/01:17:00)
21 同 銀(79) ( 3:00/01:14:00)
22 3二金(41) ( 0:00/01:17:00)
23 4七銀(48) ( 8:00/01:22:00)
24 4二銀(31) ( 5:00/01:22:00)
25 7七銀(88) ( 4:00/01:26:00)
26 4四歩(43) (32:00/01:54:00)
27 8八玉(78) (12:00/01:38:00)
28 3三桂(21) ( 3:00/01:57:00)
29 7八金(69) ( 5:00/01:43:00)
30 2一飛(51) ( 4:00/02:01:00)
31 6六歩(67) (23:00/02:06:00)
32 5三銀(42) ( 7:00/02:08:00)
33 3七桂(29) ( 5:00/02:11:00)
34 4二金(32) ( 4:00/02:12:00)
35 5六銀(47) (18:00/02:29:00)
36 8四歩(83) ( 4:00/02:16:00)
37 4八飛(28) (45:00/03:14:00)
38 4一飛(21) (53:00/03:09:00)
39 7五歩(76) ( 4:00/03:18:00)
40 8三銀(72) ( 6:00/03:15:00)
41 6七銀(56) (13:00/03:31:00)
42 2一飛(41) (17:00/03:32:00)
43 4五歩(46) (24:00/03:55:00)
44 同 歩(44) ( 6:00/03:38:00)
45 同 桂(37) ( 0:00/03:55:00)
46 同 桂(33) ( 0:00/03:38:00)
47 同 飛(48) ( 0:00/03:55:00)
48 4三歩打 ( 0:00/03:38:00)
49 8六歩(87) ( 0:00/03:55:00)
50 2七角打 (13:00/03:51:00)
51 4六飛(45) ( 0:00/03:55:00)
52 3八角成(27) ( 0:00/03:51:00)
53 7六銀(77) ( 0:00/03:55:00)
54 2四歩(23) ( 8:00/03:59:00)
55 7七桂(89) ( 9:00/04:04:00)
56 7二金(61) ( 4:00/04:03:00)
57 5六歩(57) (34:00/04:38:00)
58 2五歩(24) (10:00/04:13:00)
59 3五歩(36) (50:00/05:28:00)
60 同 歩(34) (10:00/04:23:00)
61 6五歩(66) ( 0:00/05:28:00)
62 5五歩(54) (67:00/05:30:00)
63 同 歩(56) ( 5:00/05:33:00)
64 4四銀(53) ( 0:00/05:30:00)
65 8五歩(86) ( 1:00/05:34:00)
66 同 歩(84) ( 6:00/05:36:00)
67 6六角打 ( 4:00/05:38:00)
68 8四桂打 ( 8:00/05:44:00)
69 8五銀(76) ( 4:00/05:42:00)
70 3七馬(38) ( 1:00/05:45:00)
71 4四飛(46) ( 1:00/05:43:00)
72 同 歩(43) ( 0:00/05:45:00)
73 7四歩(75) ( 0:00/05:43:00)
74 8七歩打 (18:00/06:03:00)
75 同 金(78) ( 2:00/05:45:00)
76 8六歩打 (27:00/06:30:00)
77 同 金(87) ( 2:00/05:47:00)
78 7四歩(73) ( 8:00/06:38:00)
79 8四銀(85) (16:00/06:03:00)
80 同 銀(83) ( 1:00/06:39:00)
81 同 角(66) ( 0:00/06:03:00)
82 5五馬(37) (14:00/06:53:00)
83 8三歩打 (25:00/06:28:00)
84 同 玉(82) ( 5:00/06:58:00)
85 6六角(84) ( 1:00/06:29:00)
86 同 馬(55) (11:00/07:09:00)
87 同 銀(67) ( 0:00/06:29:00)
88 6九角打 ( 1:00/07:10:00)
89 8四歩打 ( 1:00/06:30:00)
90 9二玉(83) (13:00/07:23:00)
91 7八歩打 (15:00/06:45:00)
92 5八角成(69) ( 2:00/07:25:00)
93 8三銀打 (16:00/07:01:00)
94 同 金(72) ( 2:00/07:27:00)
95 同 歩成(84) ( 0:00/07:01:00)
96 同 玉(92) ( 0:00/07:27:00)
97 8四歩打 ( 0:00/07:01:00)
98 同 玉(83) (31:00/07:58:00)
99 6二角打 ( 3:00/07:04:00)
100 8三玉(84) ( 0:00/07:58:00)
101 8四歩打 ( 1:00/07:05:00)
102 7二玉(83) ( 0:00/07:58:00)
103 5四桂打 ( 0:00/07:05:00)
104 7九銀打 ( 1:00/07:59:00)
105 同 玉(88) ( 0:00/07:05:00)
106 6八金打 ( 0:00/07:59:00)
107 8八玉(79) ( 0:00/07:05:00)
108 7八金(68) ( 0:00/07:59:00)
109 同 玉(88) ( 0:00/07:05:00)
110 6八飛打 ( 0:00/07:59:00)
111 8七玉(78) ( 0:00/07:05:00)
112 6九馬(58) ( 0:00/07:59:00)
113 7六玉(87) ( 0:00/07:05:00)
114 7五銀打 ( 0:00/07:59:00)
115 8五玉(76) ( 1:00/07:06:00)
116 投了 ( 0:00/07:59:00)
まで115手で先手の勝ち
第67期王将戦第6局
王将戦第2局