目次
解説動画
棋王戦第2局
棋王戦第4局
対局情報
渡辺 明 棋王(三冠)<先手>
本田 奎 五段<後手>
共同通信社
公益社団法人日本将棋連盟
(棋譜利用問い合わせ済み)
局面解説概要
序盤
21手目:形勢判断と候補手
互角:▲3六歩、▲7九角、▲5七銀 など
後手が△6四歩~△6三銀を急いだことで、
角を3一に引いても、窮屈で活用しづらい形となっています。
つまり、後手は角を2二に残したままで戦う可能性が高く、
戦型の候補としては急戦矢倉か右玉が有力となります。
後手からの仕掛けが早いのは急戦矢倉ですが、その場合でも対応できるように、
先手も角や右銀の活用を急いで、攻め合いに備えておきます。
29手目:形勢判断と候補手
互角:▲2四歩、▲9六歩 など
後手が△4二金右~△5二飛と仕掛けてきた場合、
▲6六銀と出る
含みを残しておいた方が5筋を受けやすいので、
29手目では▲6六歩や▲7九角を保留した方が無難です。
本譜は▲2四歩から2筋の歩を交換することで、
後手に
手番を渡して、様子を見ました。
35手目:形勢判断と候補手
先手有利:▲6八銀
34手目の△6五歩は△3一角~△6四角の活用を含みにしていますが、
ここで▲6八銀と引いたのが、機敏な対応でした。
これで先手に▲4五銀と仕掛ける権利が生じたため、
後手が△3一角と引く余裕はなくなりました。
こうなると△6五歩を急いだ意味合いが薄くなっているので、
先手が
緩手を的確に
咎めた、と判断することができます。
38手目:形勢判断と候補手
先手有利:△8五歩
先手は
駒組みが完了しているので、次に▲4五銀と仕掛けてきます。
後手の攻撃態勢は△6五歩の影響で1手遅れている感じがするものの、
それでも△8五歩と突いて飛車の活用を急ぐしかありません。
38手目で本譜は△5一玉と寄って、右玉を目指しました。
次に△6二玉と上がることができれば、粘りやすい形になります。
しかし△5一玉の瞬間が「
居玉は避けよ」に反していて危険な形であり、
そのタイミングで仕掛けられてしまうようでは、自滅気味と言えます。
この△5一玉~△6二玉や、先ほどの△3一角~△6四角のような手順は、
2手指せないと意味がないどころか、
1手しか指していない状態では、パスよりも酷い形になることが多いので、
相手から妨害されないように、細心の注意を払う必要があります。
中盤
49手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲5五歩、▲3三銀
49手目で▲3三銀と打ち込む手は有力ですが、3三で清算した後、
すぐに突破できる訳ではなく、また、
歩切れになるのも少し気になります。
本譜は▲5五歩と突きましたが、冷静な1手でした。
戦いが激しくなってから歩切れになると、
歩を回収しようとする間に、相手から反撃を受ける恐れがあります。
後手が飛車も角も使えておらず、銀も手放してくれた状況で、
わざわざ余計なリスクを背負って、強く踏み込む必要はありません。
57手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:▲5四銀、▲5四歩 など
57手目で▲5五角と歩を取る手はありますが、5五の歩は残したままで、
▲5四銀や▲5四歩と打って、歩の裏に潜り込む方が有力です。
▲5四銀に対して、△4二桂と打てば、銀が捕まっているようですが、
▲5三歩や▲4三銀打~▲2三飛成が厳しいので、銀取りは間に合いません。
本譜は▲5四歩と
垂らしました。歩を使う手はリスクが低いですし、
歩の攻めに対して歩で受けることができないので、これも受け方が難しいです。
尚、△7六桂の
ふんどしは全く気にする必要がないです。
持ち駒が増えれば攻め筋も増えるので、打ってくれればとても有難いです。
65手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:▲3三銀、▲4六歩、▲9六歩 など
そろそろ▲3三銀や▲5三銀と打ち込んでも良さそうですし、
実際、それでも勝ちですが、相手からの攻めがない時には、
拠点をなくさないように気を付けたうえで、とにかく焦らないのがコツです。
65手目では△5四銀と歩を取られても▲7四歩が生じるので、問題ありません。
本譜は▲9六歩と突きました。
現状では先手の角よりも後手の角の方が働いているので、
▲9七角とぶつけて角交換を挑むことは、先手の得に繋がります。
他に▲4六歩~▲4五歩と桂頭を狙う手順も有力です。
中盤で
勝勢になった場合、どうしても勝ちを急ぎたくはなりますが、
じわじわと確実に迫る方が、逆転の目がなく、相手はより困るのです。
終盤
73手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:▲5四歩、▲3三歩成 など
73手目は▲6四角でも勝ちですが、仮に△7五角 ▲同歩となれば、
桂頭狙いの含みが生じるので、後手から角を取ってくることはありません。
こちらから取っても取らなくても良い場合は、
原則として取らない手から考えていきます。
持ち駒を渡さなければ、相手は指し手が限定されて困ることになりますし、
自分にとってはシンプルで考えやすい局面が続くことになります。
本譜は▲5四歩と垂らしました。
△同銀だと6四の角がタダになるので、この歩は拠点として残ります。
81手にて、後手の本田五段が投了し、
渡辺棋王の2勝、本田五段の1勝となりました。
投了図以降、△同飛には▲7一角と王手飛車をかけます。
そして△6二飛に対して、すぐに取らずに▲6一金と打つのがポイントです。
あとは、飛車を取って後手陣に打ち込んでいけば、
桂香などを拾うこともできるので、戦力不足にはなりません。
そして、先手陣は手付かずなので攻め合いにもならず、
投了もやむを得ない大差となっています。
本局では渡辺棋王の、
優位に立った後、相手に何もさせない指し回しが非常に勉強になりました。
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