目次
王位戦第6局
第60期王位戦第1局
対局情報
局面解説
序盤
22手目:形勢判断と候補手
互角:△8二銀、△4五歩、△6四歩、△5二金左、△5一金左 など
22手目の局面で△4五歩と突く手は有力で、
先手が穴熊に組みづらくなります。
先手は△4六歩からの歩交換を防ぐ必要がありますが、
▲2六飛や▲4八飛は先手の飛車だけ動きづらくなります。
また、▲6八角と引くのは△4三銀~△5四銀~△6五銀と上がっていけば
「
角筋は受けにくし」となります。
最善は▲5七銀と戻る手ですが、手損のうえに、角が向かい合っているので、
先手が無理に穴熊に組もうとすると、
後手陣が好形になって、先手から仕掛けづらくなる可能性が高まります。
本譜は△8二銀と指しました。穴熊の
ハッチを閉める自然な手です。
27手目:形勢判断と候補手
互角:▲6八角、▲5七金、▲2六飛 など
27手目は▲6八角と引くのが自然な受け方です。
既に▲9八香と上がっているので、今度は後手の左銀が上がってきても
▲9九玉~▲8八銀が間に合います。
反面、先手は自分の角が邪魔で5八の金を穴熊に近付けづらくなります。
もし先手が右金を5九に寄っていれば、堅い穴熊を組みやすくはなりますが、
6七の地点が手薄になって、早い仕掛けに弱くなるので一長一短です。
尚、先手は穴熊に囲えることが確定しているため、
ここでは一時的に辛抱して▲5七金や▲2六飛という手もあります。
28手目:形勢判断と候補手
互角:△4三銀、△7一金、△6二金寄 など
ここは△4三銀と上がることで、▲2四歩 △同歩 ▲同角に対して
△2二飛と回る受けを用意するのが部分的な定跡です。
但し、3二銀型のままで2三の歩を支えて
△4一飛~△3三桂~△2一飛のような指し方もあります。
34手目:形勢判断と候補手
互角:△7一金、△4三金、△4三銀 など
先手は銀を引いて、しっかりと4筋を受けました。
手損のようですが、次に▲7七角と
ぶつける手を狙っています。
現状では、後手の角の方が働きが良いです。
そのような場合は積極的に交換を挑みましょう。
相穴熊の序盤でお互いが角を持ち駒にすると、駒組みの難易度が上がります。
玉を堅くしようとしても、仕掛けようとしても、
角打ちの隙が生じてうまくいかないことが多いです。
48手目:形勢判断と候補手
互角:△6三銀、△4三銀、△9四歩、△4四角 など
48手目に△6二金寄とすると▲7七角と打たれる手が厳しくなります。
5二の金は3三の桂を守るという役割もあるのです。
お互いに動かせる駒が少なくて、指し手が難しいのですが、
△6三銀や△4三銀は、隙が生じないので無難です。
また、少しもったいないようですが、△4四角と打つ手もあります。
部分的には角換わり腰掛け銀でも出てくる好形です。
59手目:形勢判断と候補手
互角:▲3六歩、▲5五歩、▲8五歩 など
59手目の局面で▲7八金右として穴熊を堅くする手は指しづらいです。
△6九角と打たれると、角成りを防ぐために▲4八飛と回りますが、
△2四歩から確実に2筋を突破されてしまいます。
本譜は▲3六歩と突きました。
62手目:形勢判断と候補手
互角:△7三角、△7二銀、△5四歩 など
先手が▲7八金右と寄って玉を固めましたが、
62手目に△6九角と打つ手は成立しません。
▲4八飛から角を捕まえた後、▲4一角~▲3二角打のように
持ち駒の角2枚だけで後手陣に攻め込む手順があります。
穴熊は、少々雑に指しても負けにくいイメージが強いですが、
特に相穴熊では、
序盤に
敗着が生じやすいので繊細さが求められます。
中盤
73手目:形勢判断と候補手
互角:▲8五歩、▲7七桂
73手目で角取りを見せる▲8五歩は有力です。
以下、冷静に△7三角と引かれても、△6六角と切られても難解です。
また、△6五金を防ぐために
「
パンツを脱ぐ」と言われている桂跳ねの▲7七桂も有力です。
但し、先手の穴熊がかなり弱体化しますので、
しっかりと後手を押さえ込むことが重要です。
80手目:形勢判断と候補手
互角:△6四歩
80手目は少し難しいのですが△6四歩と打つ手が有力です。
後手は角が
狭く助けづらいので、角を取らせる間に6筋の突破を目指します。
相穴熊では
終盤に近付くにつれて、角の価値が相対的に下がっていきます。
「
相穴熊では角より金」であることが多く、角金交換ならば喜んで行います。
手番を握ることができるならば、角銀交換でも優先して考えたいところです。
97手目:形勢判断と候補手
先手有利:▲5一角
97手目は▲5一角と打つ1手です。
先手陣は飛車で攻められると弱いので、手順に△6九飛成とされてはいけません。
この角は間接的に7三の地点へ利きを足してもいるので、
後手の飛車は逃げることができなくなっています。
尚、ここで▲6四歩と打ってはいけません。
手堅いようですが、3七の角の利きが止まるので、先手からの攻めも遅れます。
後手からは△7六歩や△6八歩のように
と金作りを狙った攻め筋が複数あるため、先手の受け切りは難しいのです。
終盤
101手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲同飛
101手目に▲同玉と取ってはいけません。
穴熊では、なるべく玉を隅から動かさない方が良いです。
▲同飛は「
玉飛接近すべからず」という格言に反しますが、
この対局における先手の飛車は守備駒なので、
金と銀を足して2で割った駒というくらいに考えておきます。
飛車は狙われやすいですが、飛車を取られたときに
先手玉がそのまま詰まなければ、とりあえず問題ありません。
先手は自玉が詰まない形なので、
飛車以外ならば渡す駒を気にする必要がありません。
早めに▲3二飛のように飛車を打っておく手も有力ですが、
△6二歩や△7二歩のような手で受け切られてしまうと大変です。
先手は持ち駒が少ないことや、歩切れであることが不安要素なので、
安い持ち駒から打っていく方が無難です。
127手にて、後手の菅井王位が投了し、菅井王位の3勝、豊島棋聖の4勝で、
タイトル奪取、豊島二冠の誕生となりました。
本局では、豊島二冠の穴熊攻略が非常に勉強になりました。
王位戦第6局
第60期王位戦第1局