目次
※動画は第3局と併せています。
叡王戦第1局
叡王戦第3局
対局情報
永瀬 拓矢 叡王<後手>
豊島 将之 竜王・名人<先手>
株式会社ドワンゴ
公益社団法人日本将棋連盟
(棋譜利用問い合わせ済み)
局面解説
2020年7月5日に行われた叡王戦第2局は、戦型が角換わり腰掛け銀となり、
222手にて
持将棋が成立して引き分けとなりました。
本局では、大きく
駒得をしていた後手が、
「
入玉宣言法」を適用できるか否かという局面が長く続いていました。
「入玉宣言法」は入玉時に自らの「勝ち」を決めることができるルールで、
プロの公式戦の場合、31点以上が必要です。
ここで終局図における後手の点数を確認すると、
玉は0点、
大駒は5点、
小駒は1点なので、合計は30点です。
つまり、後手があと1点増やすことができれば勝ちですが、
終局図では、その見込みがなくなったということになります。
ちなみに、平手の初期点数は27点ずつで、
すべての駒の合計点数は54点となるので、先手は24点であると計算できます。
持将棋は、原則としてお互いの合意が必要です。
本局は、豊島竜王名人が持将棋を提案し、永瀬叡王が同意して成立しました。
尚、プロの公式戦の場合、24点以上30点以下で宣言しても持将棋にできますが、
宣言するための条件を満たすまでに相当な手数がかかるので合意が一般的です。
他に、暫定施行ルールではありますが、
原則として手数が500手に達した場合、強制的に「持将棋」となります。
ちなみに、多くのアマ大会でも「入玉宣言法」は採用されていますが、
進行を重視している関係で、プロとは一部の条件が異なります。
98手目:形勢判断と候補手
後手優勢:△8五歩、△6九角、△3七馬 など
それでは本局を98手目までさかのぼったうえで、
まずは、この局面の形勢判断を行います。
駒割りは後手の2歩得で、
飛車銀と角金の交換については、ほぼ損得無しと判断できます。
玉の安全度について、広さは同程度、但し、先手玉が二段目にいるのに対して、
後手玉は四段目で、王手のかかりにくい、やや安定した位置にいます。
堅さは、先手が囲いの金を剥がされ、玉飛接近がマイナス要素なのに対して、
後手は金2枚を近くに配置していることもあり、
拠点を作られづらいです。
駒の働きは、概ね問題ありませんが、
やはり先手の7八の飛車の位置と狭さが気になります。
よって、後手が
優勢と判断できますが、先手玉の上部が既に開拓されており、
また、歩以外の持ち駒が角と金の2枚しかないのは、後手の懸念点です。
1番のポイントとしては、この辺りで後手が先手の入玉を阻止できたか否か、
ということになります。
本譜は△6九角と打ちました。
飛車取りの狙いもありますが、主な狙いは△3六角成で、
後手玉がかなり安全になり、入玉もほぼ約束されるので有力な手です。
但し、結果的には、2枚の馬で先手の入玉を阻止できなかったので、
もう少しリスクを背負って、持ち駒の角を温存したうえで、
△8五歩と打ったり、△3七馬と引いたりして、
寄せを優先する指し方も有力だったと思われます。
先手がミスをしないと難解な局面が続き、寄せ切れるかどうかも不明ですが、
後手は寄せを逃したとしても、相入玉に持ち込む選択肢が残されているので、
チャレンジする価値はありそうです。
叡王戦第1局
叡王戦第3局