【将棋解説】
第5期叡王戦七番勝負第1局 永瀬叡王vs豊島竜王名人

目次

解説動画



対局情報

棋戦
第5期叡王戦七番勝負 第1局
対局日
持ち時間
5時間(1日制)
対局者
永瀬 拓矢 叡王<先手>
豊島 将之 竜王・名人<後手>
(千日手局)
永瀬 拓矢 叡王<後手>
豊島 将之 竜王・名人<先手>
(指し直し局)
戦型
角換わり早繰り銀(千日手局)
角換わり右玉(指し直し局)
主催
株式会社ドワンゴ
公益社団法人日本将棋連盟
(棋譜利用問い合わせ済み)
対局場所
静岡県:今井浜「今井荘」

局面解説(指し直し局)

序盤

【将棋】第5期叡王戦七番勝負 第1局(指し直し局) 永瀬拓矢 叡王 対 豊島将之 竜王・名人の対局で28手指した局面
point
29手目:形勢判断と候補手
互角:▲2九飛、▲4八金、▲4五桂、▲1六歩 など
後手がこの早い段階で△5二金と上がって形を決めたので、
先手としては右玉を警戒する必要があります。
右玉の対応は、角換わりの中でも独特な感覚が求められる部分もあるので、
8一飛&6二玉型を作られる前に▲4五桂と仕掛けてしまう手は有力です。
以下、△4四銀 ▲2四歩 △同歩 ▲同飛 △2三歩 ▲3四飛と激しくすれば、
千日手模様のジリジリとした展開を避けることはできます。

本譜は▲2九飛と引いたので、駒組みの続く、穏やかな展開となりました。




【将棋】第5期叡王戦七番勝負 第1局(指し直し局) 永瀬拓矢 叡王 対 豊島将之 竜王・名人の対局で39手指した局面
point
40手目:形勢判断と候補手
互角:△6二金、△4四銀、△4四歩 など
40手目で△4四銀と上がって、△3五歩から1歩を交換したり、
△5三銀と引きつけたりして、少し動きを見せる指し方は有力です。

本譜は△4四歩と突きました。
千日手とカウンターに狙いを絞って、争点を減らすことに重きを置いています。



【将棋】第5期叡王戦七番勝負 第1局(指し直し局) 永瀬拓矢 叡王 対 豊島将之 竜王・名人の対局で47手指した局面
先手の飛車先の歩交換について、後手が防ぎ続ける必要はありません。
角打ちの隙を生じさせないように仕掛ける、ということが難しい状況は、
先手の持ち駒に1歩が加わっても変わりません。



【将棋】第5期叡王戦七番勝負 第1局(指し直し局) 永瀬拓矢 叡王 対 豊島将之 竜王・名人の対局で58手指した局面
point
59手目:形勢判断と候補手
互角:▲7九玉、▲9八香、▲5七桂 など
依然として動き方の難しい局面が続いており、
59手目から千日手含みで▲7九玉と引く手は有力です。

先手が動くとすれば▲9八香~▲9九飛が有力で、対右玉の頻出手筋です。
右玉の玉側の端は、金駒の応援を送りづらいので弱点の1つとなっています。
但し、後手が△8三桂や△8四角と打って、
丁寧に受けてくると端攻めは止まってしまいますし、
後手玉の9筋からの遠さと広さを生かして、
あえて端を攻めさせるという指し方もあるため、判断は難しいです。

本譜は▲5五歩と突きました。▲5五桂の含みがあるため成立していますが、
膠着状態からの単なる1歩損は致命的なので、深い読みが必要です。




中盤

【将棋】第5期叡王戦七番勝負 第1局(指し直し局) 永瀬拓矢 叡王 対 豊島将之 竜王・名人の対局で69手指した局面
point
70手目:形勢判断と候補手
互角:△4二金
1一の香は飛車でが付いているので目先の狙いは3三の金取りだけです。

部分的には△4三金寄とかわすのが右玉らしい指し方で、
▲2四飛から竜を作られた場合は、大駒が渋滞気味で活用に時間がかかり、
△6七桂成からの反撃の方が厳しくなるため、問題ありません。
但し、現局面では、角の左下への利きが通ると、
▲4五歩という攻め筋が生じますし、
4三に金があることで、▲5五銀 △同銀から、
▲4七桂~▲5五桂打と継ぎ桂ふんどしがかかる手順も気になります。

それらを避けるために、本譜は△4二金と寄りました。



【将棋】第5期叡王戦七番勝負 第1局(指し直し局) 永瀬拓矢 叡王 対 豊島将之 竜王・名人の対局で76手指した局面
後手は多少の駒得をできたとしても、玉が薄いうえに争点から近いので、
先手の攻めが続いてしまうと簡単に形勢を損ねます。

後手は先手の大駒を押さえ込むことで受け切りを図りますが、
先手も桂と歩で後手陣を崩しにかかります。



【将棋】第5期叡王戦七番勝負 第1局(指し直し局) 永瀬拓矢 叡王 対 豊島将之 竜王・名人の対局で87手指した局面
point
88手目:形勢判断と候補手
先手優勢:△5五銀、△8六桂、△5七歩
88手目で△5四銀引と逃げているようでは、先手への攻めが遠のきますし、
▲4六桂と銀を取られた手がさらに銀取りになって、手番が回ってきません。

本譜は△5五銀と引きました。取られる駒に貴重な1手を費やすのは悔しいですが、
相手の桂の活用を防ぎつつ、自分の角の活用に繋がるので価値はあります。




終盤

【将棋】第5期叡王戦七番勝負 第1局(指し直し局) 永瀬拓矢 叡王 対 豊島将之 竜王・名人の対局で101手指した局面
point
102手目:形勢判断と候補手
先手優勢:△8六桂
102手目では強く攻め合う△8六桂が有力です。
矢倉崩しにも使える手筋で▲同歩 △同歩となれば、
銀の入手が見込めることもあり、先手も怖い形です。

本譜は「桂は控えて打て」で△8四桂としました。
次の△7六桂が厳しく、確実な攻めではありますが、
速度は遅いので、先手としては少し安心できます。

劣勢の局面で、逆転の可能性を高めるならば、
負けを早めたとしても、直接的な手を選択した方が良い場合は多いです。



【将棋】第5期叡王戦七番勝負 第1局(指し直し局) 永瀬拓矢 叡王 対 豊島将之 竜王・名人の対局で112手指した局面
point
113手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:▲3五桂、▲5五桂、▲7三銀成、▲7三角、▲7二角、▲2一角、▲3二角、▲6九飛、▲5九飛、▲2九飛、▲2六桂 など
次に△9六歩と取り込まれても、先手玉は詰めろではありません。
また、後手に如何なる駒を渡しても、1枚ならば先手玉に詰みは生じません。

勝ちが目の前にあったとしても、自玉の安全条件は慎重に何度も確認します。
条件を満たす寄せ方は10通り以上ありますので、是非考えてみてください。

本譜は最速の寄せを狙って▲3五桂と跳ねました。
▲4三桂不成からの詰みを狙いつつ、次に▲4四飛と走れば、
頭の丸い持ち駒しかない、という状況が解消されて詰めろがかかります。



【将棋】第5期叡王戦七番勝負 第1局(指し直し局) 永瀬拓矢 叡王 対 豊島将之 竜王・名人の対局の投了図
115手にて、後手の永瀬叡王が投了し、
豊島竜王名人の1勝となりました。

投了図以降、△同金は入手したばかりの歩を5二に打って、
△同金 ▲同銀成 以下、詰みとなります。

▲5二歩を防ぐために△5二歩と先に打てば詰みはありませんが、
▲4三飛成と金を取りながら迫れば、後手玉は必至となります。

本局では、豊島竜王名人の、
桂を使った巧みなバランスの崩し方が非常に勉強になりました。


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