【将棋解説】
第66期王座戦五番勝負第5局 中村(太)王座vs斎藤七段

目次

解説動画



対局情報

棋戦
第66期王座戦五番勝負 第5局
対局日
持ち時間
5時間(1日制)
対局者
中村 太地 王座<後手>
斎藤 慎太郎 七段<先手>
対局場所
山梨県:常磐ホテル
戦型
角換わり腰掛け銀

局面解説概要

序盤

【将棋】第66期王座戦五番勝負 第5局 中村太地 王座 対 斎藤慎太郎 七段の対局で24手指した局面
本局は先手が斎藤七段、後手が中村王座です。
戦型は角換わり腰掛け銀になりました。



【将棋】第66期王座戦五番勝負 第5局 中村太地 王座 対 斎藤慎太郎 七段の対局で38手指した局面
point
39手目:形勢判断と候補手
互角:▲6六歩、▲6九飛 など
39手目の局面で同月に行われた竜王戦第1局の37手目の局面と比較をすると、
先手玉が6八にいる状態ならば完全に同一の局面があります。
これは後手の右金が、竜王戦では1手で6二に上がりましたが、
本局では7二を経由してから6二に移動したためです。
竜王戦では後に▲5八玉と寄る手が出ましたが、
本局では先手に1手の余裕を与えて▲7九玉と指させることで防いでいます。

先手は玉が戦場に近づいた点については損をする可能性がありますが、
その代わりに得をする可能性を考えます。
本局の場合、6八に玉がいないことを生かす指し手は▲6九飛です。
よって、6筋を攻める手順を本線に考えます。




【将棋】第66期王座戦五番勝負 第5局 中村太地 王座 対 斎藤慎太郎 七段の対局で46手指した局面
point
47手目:形勢判断と候補手
互角:▲5五銀左、▲3五歩 など
47手目では▲3五歩 △同歩 ▲4五桂のように仕掛ける手順も有力です。
しかし、先手が6筋からの攻めを継続するならば▲5五銀左です。
多くの場合、銀が単独で五段目に出ても歩で追い返されてしまうのですが、
△5四歩には▲6四歩と打つ手が厳しいです。

よって、後手は先手からの▲6四歩を受けるために
敵の打ちたいところに打て」で△6四歩と打ちます。
しかし、戦場となるべき6筋で後手の歩が結果的にバックしたうえ、
先手だけ歩を手持ちにする結果となりました。
次に▲6九飛も見えています。

もちろん勝負としてはまだまだ難しいですが、
後手の手待ち作戦を先手が的確に咎めたと言えます。




中盤

【将棋】第66期王座戦五番勝負 第5局 中村太地 王座 対 斎藤慎太郎 七段の対局で55手指した局面
point
56手目:形勢判断と候補手
互角:△5七桂成、△5七桂不成
56手目は△5七桂成(不成)と歩を取りながら、先手陣を崩す手が有力です。
後手は桂損ですが、▲6六歩と打たせて先手の攻めを遅らせたこと、
先手陣に角打ちの隙ができたこと、を考えるとバランスは取れています。



【将棋】第66期王座戦五番勝負 第5局 中村太地 王座 対 斎藤慎太郎 七段の対局で58手指した局面
point
59手目:形勢判断と候補手
先手有利:▲3五歩
後手が△5二銀と引いた手はかなり消極的で、
「手数を長くして相手のミスを待つ」という指し方です。
このような手が指された場合は、形勢が良いことを自覚しつつも、
無理に突っ込まないことが、さらに形勢の差を広げるコツです。

一般的な角換わり腰掛け銀の中盤では、
後手の右銀が6五にいてもおかしくありません。
それが5二にいる訳ですから、後手の負けが遠のいた以上に
先手の負けが遠のいているのです。

59手目で本譜は▲3五歩と突いて、冷静に角の逃げ場所を確保しました。



【将棋】第66期王座戦五番勝負 第5局 中村太地 王座 対 斎藤慎太郎 七段の対局で67手指した局面
point
68手目:形勢判断と候補手
先手優勢:△3一玉、△6六歩、△6七歩 など
後手は持ち駒に歩がたくさんあるので、
△6八歩からの「連打の歩」で先手の飛車先を受けることはできます。
よって、急所である6筋をすぐに突破される訳ではありませんが、
先手からは他にも▲4五歩や▲2二歩という有力な手があります。

それらの攻めに幅広く対応している受けは△3一玉です。
68手目で玉を動かしているようでは苦しいですが、粘りの勝負術です。
もし、先手が▲2二歩からの攻めを考えていたとしたら、
その考慮時間を無駄にできるうえに、焦ってくれる可能性もあります。



【将棋】第66期王座戦五番勝負 第5局 中村太地 王座 対 斎藤慎太郎 七段の対局で78手指した局面
後手も少ない持ち駒ながら、局面を複雑にして粘っています。
先手はどこかで寄せに切り替える必要がありますが、
相手玉が堅いとそのタイミングは難しいです。
目安としては、相手が攻め込んでくる直前が良いです。
相手の攻め駒が自分の持ち駒になることで、より攻めやすくなります。




終盤




【将棋】第66期王座戦五番勝負 第5局 中村太地 王座 対 斎藤慎太郎 七段の対局で85手指した局面
point
86手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:△7七歩成、△6七歩、△7一飛
86手目では、働きの弱い7三の飛車を逃げるよりも、
△7七歩成と踏み込む方が本来優先すべき指し手です。
確実に桂を入手できますし、△6八と と王手で飛車を取る狙いもあるので
後手の駒得が約束されています。
しかし、△7七歩成に▲7三歩成として飛車の取り合いになると
一直線の寄せ合いになって、後手の負け筋が読みやすくなってしまいます。

本譜は△7一飛と引きました。
先手の読みを外しつつ、分かりやすい決め手を与えないように粘った手です。



【将棋】第66期王座戦五番勝負 第5局 中村太地 王座 対 斎藤慎太郎 七段の対局で97手指した局面
point
98手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:△7七銀、△4七歩成、△7六歩 など
98手目に後手が△7六歩~△7七歩成としても、先手玉は詰めろになっていません。
本譜は「終盤は駒の損得より速度」で△7七銀とただ捨てしました。
これで先手が▲同金と取れば△7六歩~△7七歩成が詰めろになります。



【将棋】第66期王座戦五番勝負 第5局 中村太地 王座 対 斎藤慎太郎 七段の対局で105手指した局面
先手も寄せに必要な持ち駒が揃ったので、一転して、王手や詰めろをかけ続けます。



【将棋】第66期王座戦五番勝負 第5局 中村太地 王座 対 斎藤慎太郎 七段の対局の投了図
109手にて、後手の中村王座が投了し、
中村王座の2勝、斎藤七段の3勝で、斎藤新王座の誕生となりました。

投了図以降、詰み筋は複数ありますが、
△同玉 ▲4三銀成 △同玉に▲3四角と打ち捨てて
△同玉に▲4五角と出ると2三の歩が守られるため、分かりやすくなります。
以下、持ち駒に金駒が3枚あるため、上から押さえて詰みとなります。

本局では斎藤新王座の勝ちを焦らない冷静な指し回しが非常に勉強になりました。

棋譜

棋譜をクリップボードにコピー
棋戦:第66期王座戦五番勝負 第5局
先手:斎藤慎太郎七段
後手:中村太地王座
手数----指手---------消費時間--
1 2六歩(27) ( 0:00/00:00:00)
2 8四歩(83) ( 0:00/00:00:00)
3 7六歩(77) ( 0:00/00:00:00)
4 3二金(41) ( 1:00/00:01:00)
5 2五歩(26) ( 1:00/00:01:00)
6 8五歩(84) ( 0:00/00:01:00)
7 7七角(88) ( 0:00/00:01:00)
8 3四歩(33) ( 0:00/00:01:00)
9 6八銀(79) ( 0:00/00:01:00)
10 7七角成(22) ( 0:00/00:01:00)
11 同 銀(68) ( 0:00/00:01:00)
12 2二銀(31) ( 0:00/00:01:00)
13 4八銀(39) ( 0:00/00:01:00)
14 3三銀(22) ( 1:00/00:02:00)
15 7八金(69) ( 2:00/00:03:00)
16 6二銀(71) ( 0:00/00:02:00)
17 4六歩(47) ( 0:00/00:03:00)
18 4二玉(51) ( 0:00/00:02:00)
19 4七銀(48) ( 0:00/00:03:00)
20 7四歩(73) ( 2:00/00:04:00)
21 3六歩(37) ( 2:00/00:05:00)
22 6四歩(63) ( 3:00/00:07:00)
23 6八玉(59) ( 1:00/00:06:00)
24 6三銀(62) ( 0:00/00:07:00)
25 9六歩(97) ( 2:00/00:08:00)
26 9四歩(93) ( 0:00/00:07:00)
27 1六歩(17) ( 0:00/00:08:00)
28 1四歩(13) ( 0:00/00:07:00)
29 3七桂(29) ( 1:00/00:09:00)
30 7三桂(81) ( 0:00/00:07:00)
31 4八金(49) ( 2:00/00:11:00)
32 8一飛(82) ( 1:00/00:08:00)
33 2九飛(28) ( 0:00/00:11:00)
34 7二金(61) ( 3:00/00:11:00)
35 5六銀(47) ( 3:00/00:14:00)
36 6五歩(64) ( 3:00/00:14:00)
37 7九玉(68) ( 9:00/00:23:00)
38 6二金(72) ( 2:00/00:16:00)
39 6六歩(67) (12:00/00:35:00)
40 同 歩(65) ( 3:00/00:19:00)
41 同 銀(77) ( 1:00/00:36:00)
42 8六歩(85) (14:00/00:33:00)
43 同 歩(87) ( 1:00/00:37:00)
44 同 飛(81) ( 0:00/00:33:00)
45 8七歩打 (14:00/00:51:00)
46 8一飛(86) (10:00/00:43:00)
47 5五銀(66) ( 4:00/00:55:00)
48 6四歩打 (65:00/01:48:00)
49 6九飛(29) ( 4:00/00:59:00)
50 6五桂(73) (57:00/02:45:00)
51 4五角打 (43:00/01:42:00)
52 8二飛(81) (50:00/03:35:00)
53 2四歩(25) (69:00/02:51:00)
54 同 歩(23) (13:00/03:48:00)
55 6六歩打 ( 1:00/02:52:00)
56 5七桂成(65) (37:00/04:25:00)
57 同 金(48) ( 0:00/02:52:00)
58 5二銀(63) ( 1:00/04:26:00)
59 3五歩(36) (44:00/03:36:00)
60 同 歩(34) ( 0:00/04:26:00)
61 6五歩(66) ( 6:00/03:42:00)
62 4四歩(43) ( 0:00/04:26:00)
63 1八角(45) ( 0:00/03:42:00)
64 4八角打 ( 0:00/04:26:00)
65 4七金(57) ( 5:00/03:47:00)
66 8四角成(48) ( 0:00/04:26:00)
67 6四歩(65) ( 2:00/03:49:00)
68 3一玉(42) ( 0:00/04:26:00)
69 2三歩打 (20:00/04:09:00)
70 8三飛(82) ( 0:00/04:26:00)
71 4五歩(46) ( 3:00/04:12:00)
72 8六歩打 ( 0:00/04:26:00)
73 同 歩(87) ( 0:00/04:12:00)
74 8五歩打 ( 0:00/04:26:00)
75 7七桂(89) (11:00/04:23:00)
76 7五歩(74) ( 1:00/04:27:00)
77 8五歩(86) ( 0:00/04:23:00)
78 9三馬(84) ( 0:00/04:27:00)
79 6五銀(56) ( 1:00/04:24:00)
80 7三飛(83) (12:00/04:39:00)
81 8四歩(85) ( 9:00/04:33:00)
82 7六歩(75) ( 0:00/04:39:00)
83 7四歩打 ( 0:00/04:33:00)
84 6八歩打 ( 3:00/04:42:00)
85 同 飛(69) ( 5:00/04:38:00)
86 7一飛(73) ( 1:00/04:43:00)
87 7六銀(65) ( 0:00/04:38:00)
88 8四馬(93) ( 0:00/04:43:00)
89 4四歩(45) ( 1:00/04:39:00)
90 7四馬(84) ( 0:00/04:43:00)
91 5七金(47) ( 1:00/04:40:00)
92 4六歩打 (12:00/04:55:00)
93 5六歩打 ( 1:00/04:41:00)
94 7五歩打 ( 1:00/04:56:00)
95 8五銀(76) ( 1:00/04:42:00)
96 同 馬(74) ( 0:00/04:56:00)
97 同 桂(77) ( 0:00/04:42:00)
98 7七銀打 ( 0:00/04:56:00)
99 同 金(78) ( 5:00/04:47:00)
100 7六歩(75) ( 0:00/04:56:00)
101 4三桂打 ( 1:00/04:48:00)
102 同 銀(52) ( 0:00/04:56:00)
103 同 歩成(44) ( 0:00/04:48:00)
104 同 金(32) ( 1:00/04:57:00)
105 4四歩打 ( 2:00/04:50:00)
106 同 銀(33) ( 2:00/04:59:00)
107 同 銀(55) ( 2:00/04:52:00)
108 7七歩成(76) ( 0:00/04:59:00)
109 3二銀打 ( 1:00/04:53:00)
110 投了 ( 0:00/04:59:00)
まで109手で先手の勝ち


- スポンサーリンク -

- スポンサーリンク -