目次
解説動画
王座戦第3局
王座戦第5局
対局情報
中村 太地 王座<先手>
斎藤 慎太郎 七段<後手>
局面解説概要
序盤
本局は先手が中村王座、後手が斎藤七段です。
戦型は角換わり腰掛け銀になりました。
36手目:形勢判断と候補手
互角:△7五歩、△3一玉、△6五銀、△6二金 など
36手目で後手が仕掛けるならば△7五歩です。
以下、△6五桂と跳ねてから△3九角を
含みに攻めていきます。
角換わりで右金を5筋に上がる将棋は減っていますが、
このような桂跳ねの仕掛けが成立しやすいということが一因です。
本譜は△6二金と寄りました。
8一飛との相性が良く、後手陣のバランスを最も崩さない指し手です。
44手目:形勢判断と候補手
互角:△3一玉、△5二玉、△7二金、△6五歩 など
先手は、玉の堅さと遠さを求めて穴熊を目指しました。
これに対して、後手の方針は「仕掛ける」と「待機」の2つがあります。
先手に穴熊を組む余裕を与えなければ、
▲9八香を「先手が自ら9筋を弱くした手」にできる可能性があります。
但し、先手はそれを承知で▲9八香と上がっており、
わざと隙を見せて、後手からの
仕掛けを誘っているとも言えます。
そもそも、後手は手損を受け入れて待機してきました。
このまま方針を一貫して、待機し続けるというのも自然です。
穴熊に組むと、駒が偏って隙が生じやすくなるので、
穴熊側からの仕掛け方は難しくなります。
後手が待機をする場合、先手が無理に仕掛けてきたらカウンターによる完封、
仕掛けてこなければ
千日手による先後入れ替えを狙います。
中盤
47手目:形勢判断と候補手
互角:▲同銀、▲6六銀
47手目で▲6六銀とかわして、△6四歩と打つのが部分的な
定跡で、
この局面でも有力な手順です。
但し、先手は後手よりも玉が堅いので、
少々の
駒損をしても攻めが続けば問題ありません。
本譜は▲同銀と取りました。
49手目:形勢判断と候補手
互角:▲6三歩
49手目で、先手の理想を言えば、▲6四歩~▲6三歩成として、
より確実に▲7二角を狙いたいところですが、さすがに間に合いません。
▲6四歩に対して、△5二銀のように丁寧に受けられてしまうと
攻め筋がなくなって、駒損という結果だけが残ってしまいます。
本譜は▲6三歩と打って、後手陣のバランスを崩しにいきました。
持ち駒に桂がある場合には、直接叩く手が成立します。
56手目:形勢判断と候補手
互角:△4四角、△5五角、△3七角、△8六歩
56手目で△4四銀のように逃げてはいけません。
▲2四歩や▲5一角のような手で先手の攻めが続いてしまいます。
現時点で、後手は銀得です。
銀桂交換でもまだ
駒得なので、攻めに転じるタイミングです。
67手目:形勢判断と候補手
互角:▲4五馬
先手は飛車を取ることができましたが、
△7五歩~△7六歩が厳しく「
角筋は受けにくし」となっています。
このような場合の受け方は
「①根元の角を取りにいく」か
「②玉を逃げる」か
「③角の利きを二重に遮断する」の3つです。
但し、この局面では後手の6五の銀に上部を抑えられているため、
▲7九玉や▲6六歩では後手の攻めが続いてしまいます。
本譜は▲4五馬と引きました。角を取る手が王手なので、
△7六歩の
おかわりで囲いの駒を全部取られることは防いでいます。
72手目:形勢判断と候補手
後手有利:△7六歩
ここは再度△7六歩と打つ手が有力です。
▲2一飛成が▲3四馬からの
詰めろなのですが、
△7七歩成~△3一金打とすれば、とりあえず受かっています。
本譜は△7六桂と打ちました。
こちらの方が先手陣の駒を
剥がせますが、
先手の持ち駒も増えるので、反撃は厳しくなります。
79手目:形勢判断と候補手
後手有利:▲9七銀
79手目で飛車を逃げてはいけません。
玉を9九から動かさないために徹底して持ち駒を
埋めるのが穴熊流です。
88手目:形勢判断と候補手
後手有利:△2九飛、△6九飛 など
先手からは▲2一飛成や▲3五桂のように攻め筋が複数あるため、
後手は受けに回ってもジリ貧となります。
しかし、攻めると言っても、歩切れで△7六歩のような手がないので、
拠点の作り方が難しいです。
とりあえず、王手で飛車を打って、
先手が▲8九桂と▲7九歩のどちらを指すかを確認しておきたいところです。
本譜は△7六桂と打ちましたが、
「角の利きを二重に遮断する ▲6六歩」で忙しくなってしまいました。
97手目:形勢判断と候補手
先手有利:▲2四桂、▲6六竜、▲同竜
先手の飛車が引き上げたので、後手陣が安全になったようにも見えますが、
▲2四桂が好手で、2三に空間を作って駒を打ち込むと一気に寄り形です。
特に桂の捨て駒は見落としやすいですが、
手順に隙を作ったり、拠点を作ったりできることも多いです。
終盤
111手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲5六角
後手の持ち駒がだいぶ増えてきましたが、先手陣は薄くても穴熊です。
先手は攻めが続くかどうかを優先して考えましょう。
11手目で▲6六銀のようにゆっくりしていると、
△8六桂と打つ強手が
詰めろで逆転します。
以下、▲同歩 △8七桂 ▲同金 △7八銀のような寄せ筋があります。
やはり、持ち駒に桂がある場合は、桂捨てに注意です。
116手目:形勢判断と候補手
先手優勢:△4五銀 など
後手は▲3四歩や▲3四角と攻められてもダメ、
▲7七金と手を戻されてもダメなので、
紛れが少ない状況です。
逆転する確率をわずかでも高めるならば
△4五銀のような手で相手に多くの選択肢を与えるようにしましょう。
勝負手は冷静に対応されると負けを早めることが多いので、
ソフトの
最善手になることはほとんどありません。
しかし、非常に重要な勝負術ですので、人間の対局からしっかりと学びましょう。
127手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:▲3二銀、▲7七銀打、▲8九銀 など
127手目では、▲3二銀から後手玉に長手数の詰みがあるのですが、
「詰ましにいって詰まない」というのが、先手の数少ない負けパターンです。
勝ちを最優先するならば、勝勢のときほど
辛く指しましょう。
先手陣は、薄くても穴熊なので、駒を埋めていれば負けはないですし、
桂が手に入れば、後手玉をより詰ましやすくなります。
少なくとも対局中に
「詰みを逃したらカッコ悪い」などと考えてはいけません。
137手にて、後手の斎藤七段が投了し、中村王座の2勝、斎藤七段の2勝となりました。
投了図以降、例えば△4八飛成としても攻防手にはなっておらず、
▲2四歩 △同玉 ▲3六桂から、持ち駒を打っていけば後手玉は詰みます。
本局では中村王座の玉の遠さを生かした粘り方が非常に勉強になりました。
棋譜
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棋戦:第66期王座戦五番勝負 第4局
先手:中村太地王座
後手:斎藤慎太郎七段
手数----指手---------消費時間--
1 2六歩(27) ( 0:00/00:00:00)
2 8四歩(83) ( 0:00/00:00:00)
3 2五歩(26) ( 1:00/00:01:00)
4 8五歩(84) ( 0:00/00:00:00)
5 7六歩(77) ( 0:00/00:01:00)
6 3二金(41) ( 1:00/00:01:00)
7 7七角(88) ( 0:00/00:01:00)
8 3四歩(33) ( 0:00/00:01:00)
9 6八銀(79) ( 0:00/00:01:00)
10 7七角成(22) ( 0:00/00:01:00)
11 同 銀(68) ( 0:00/00:01:00)
12 2二銀(31) ( 0:00/00:01:00)
13 4八銀(39) ( 0:00/00:01:00)
14 6二銀(71) ( 0:00/00:01:00)
15 3六歩(37) ( 1:00/00:02:00)
16 3三銀(22) ( 2:00/00:03:00)
17 3七桂(29) ( 1:00/00:03:00)
18 4二玉(51) ( 0:00/00:03:00)
19 4六歩(47) ( 0:00/00:03:00)
20 5二金(61) ( 0:00/00:03:00)
21 6八玉(59) ( 0:00/00:03:00)
22 6四歩(63) ( 2:00/00:05:00)
23 7八金(69) ( 1:00/00:04:00)
24 6三銀(62) ( 0:00/00:05:00)
25 4七銀(48) ( 0:00/00:04:00)
26 7四歩(73) ( 1:00/00:06:00)
27 7九玉(68) ( 0:00/00:04:00)
28 7三桂(81) ( 2:00/00:08:00)
29 5八金(49) ( 1:00/00:05:00)
30 1四歩(13) ( 3:00/00:11:00)
31 9六歩(97) ( 1:00/00:06:00)
32 9四歩(93) ( 4:00/00:15:00)
33 1六歩(17) ( 0:00/00:06:00)
34 8一飛(82) ( 0:00/00:15:00)
35 5六銀(47) ( 1:00/00:07:00)
36 6二金(52) ( 1:00/00:16:00)
37 6六歩(67) ( 0:00/00:07:00)
38 5四銀(63) ( 2:00/00:18:00)
39 6八金(58) ( 1:00/00:08:00)
40 5二玉(42) ( 2:00/00:20:00)
41 8八玉(79) ( 1:00/00:09:00)
42 4二玉(52) (20:00/00:40:00)
43 9八香(99) ( 3:00/00:12:00)
44 6五歩(64) (29:00/01:09:00)
45 同 歩(66) (14:00/00:26:00)
46 同 桂(73) (20:00/01:29:00)
47 同 銀(56) (18:00/00:44:00)
48 同 銀(54) ( 0:00/01:29:00)
49 6三歩打 ( 1:00/00:45:00)
50 7二金(62) ( 4:00/01:33:00)
51 6四桂打 ( 0:00/00:45:00)
52 7三金(72) ( 5:00/01:38:00)
53 6二歩成(63) ( 7:00/00:52:00)
54 6四金(73) ( 0:00/01:38:00)
55 4五桂(37) ( 7:00/00:59:00)
56 4四角打 (26:00/02:04:00)
57 3三桂成(45) (25:00/01:24:00)
58 同 玉(42) (19:00/02:23:00)
59 4五銀打 (11:00/01:35:00)
60 7五歩(74) ( 5:00/02:28:00)
61 3四銀(45) (16:00/01:51:00)
62 同 玉(33) (17:00/02:45:00)
63 4五角打 ( 3:00/01:54:00)
64 3三玉(34) ( 0:00/02:45:00)
65 8一角成(45) ( 0:00/01:54:00)
66 7六歩(75) (20:00/03:05:00)
67 4五馬(81) (31:00/02:25:00)
68 3四歩打 (13:00/03:18:00)
69 7一飛打 (19:00/02:44:00)
70 7七歩成(76) ( 4:00/03:22:00)
71 同 金(68) ( 0:00/02:44:00)
72 7六桂打 (27:00/03:49:00)
73 9九玉(88) ( 3:00/02:47:00)
74 8八銀打 ( 1:00/03:50:00)
75 同 金(78) ( 0:00/02:47:00)
76 同 桂成(76) ( 0:00/03:50:00)
77 同 飛(28) ( 0:00/02:47:00)
78 7九銀打 ( 1:00/03:51:00)
79 9七銀打 ( 5:00/02:52:00)
80 7六歩打 (35:00/04:26:00)
81 7八金(77) (17:00/03:09:00)
82 8八銀成(79) ( 0:00/04:26:00)
83 同 銀(97) ( 2:00/03:11:00)
84 7七桂打 ( 1:00/04:27:00)
85 同 桂(89) (54:00/04:05:00)
86 同 歩成(76) ( 0:00/04:27:00)
87 同 銀(88) ( 2:00/04:07:00)
88 7六桂打 ( 5:00/04:32:00)
89 6六歩打 (13:00/04:20:00)
90 2二玉(33) (25:00/04:57:00)
91 3五桂打 (13:00/04:33:00)
92 2九飛打 ( 0:00/04:57:00)
93 8九銀打 (12:00/04:45:00)
94 6六銀(65) ( 2:00/04:59:00)
95 7六飛成(71) ( 3:00/04:48:00)
96 7五銀打 ( 0:00/04:59:00)
97 2四桂打 ( 2:00/04:50:00)
98 同 歩(23) ( 0:00/04:59:00)
99 6六竜(76) ( 0:00/04:50:00)
100 同 銀(75) ( 0:00/04:59:00)
101 2三銀打 ( 0:00/04:50:00)
102 同 金(32) ( 0:00/04:59:00)
103 同 桂成(35) ( 0:00/04:50:00)
104 同 玉(22) ( 0:00/04:59:00)
105 3五桂打 ( 0:00/04:50:00)
106 同 角(44) ( 0:00/04:59:00)
107 同 歩(36) ( 0:00/04:50:00)
108 4四金打 ( 0:00/04:59:00)
109 同 馬(45) ( 0:00/04:50:00)
110 同 歩(43) ( 0:00/04:59:00)
111 5六角打 ( 0:00/04:50:00)
112 2五歩(24) ( 0:00/04:59:00)
113 2九角(56) ( 2:00/04:52:00)
114 7七銀成(66) ( 0:00/04:59:00)
115 5六角(29) ( 1:00/04:53:00)
116 4五銀打 ( 0:00/04:59:00)
117 7七金(78) ( 5:00/04:58:00)
118 5九角打 ( 0:00/04:59:00)
119 4五歩(46) ( 0:00/04:58:00)
120 7七角成(59) ( 0:00/04:59:00)
121 8八銀打 ( 0:00/04:58:00)
122 同 馬(77) ( 0:00/04:59:00)
123 同 銀(89) ( 0:00/04:58:00)
124 4九飛打 ( 0:00/04:59:00)
125 7九歩打 ( 0:00/04:58:00)
126 7六桂打 ( 0:00/04:59:00)
127 7七銀打 ( 0:00/04:58:00)
128 7八歩打 ( 0:00/04:59:00)
129 7六銀(77) ( 0:00/04:58:00)
130 8九金打 ( 0:00/04:59:00)
131 同 玉(99) ( 0:00/04:58:00)
132 7九歩成(78) ( 0:00/04:59:00)
133 同 銀(88) ( 0:00/04:58:00)
134 7七桂打 ( 0:00/04:59:00)
135 8八玉(89) ( 0:00/04:58:00)
136 9九銀打 ( 0:00/04:59:00)
137 9七玉(88) ( 0:00/04:58:00)
138 投了 ( 0:00/04:59:00)
まで137手で先手の勝ち
王座戦第3局
王座戦第5局