目次
解説動画
名人戦第1局
名人戦第3局
対局情報
局面解説
序盤
角換わりは、右銀の使い方によって
さらに棒銀・早繰り銀・腰掛け銀に分けられます。
以前は、銀を三段目に上がるよりも、
歩を突く手や、玉を囲う手を優先することで
作戦に含みを持たせた指し方が多かったです。
しかし、近年の角換わりは玉を深く囲わずに、
早めに仕掛けて主導権を握ろうとする指し方が増えています。
それだけ攻めの精度が高くなっているのですが、
ギリギリの変化が多く含まれているため
アマチュアには真似しづらい将棋にもなっています。
27手目:形勢判断と候補手
互角:▲6五歩
27手目に▲同歩と取ってはいけません。
△同銀と取り返されると、手順に銀が五段目に進出してくるので、
後手の棒銀をお手伝いしていることになります。
歩がぶつかった時には、取らない手も考える癖を付けましょう。
歩を支えている駒を攻めることができる場合には、
有力な手になることも多いです。
ここでは▲6五歩と、銀取りに歩を突き違えるのが手筋です。
尚、部分的には▲6七銀と引いて、
△7六歩に▲同銀右と形良く受ける指し方もあります。
しかし、本局で▲6七銀と引くと△4七角と打たれる隙が生じてしまいます。
▲6七銀と引くためには、事前に▲5八金のような手が必要です。
ちょっとした形の違いに注意しましょう。
28手目:形勢判断と候補手
互角:△7六歩
28手目に後手は△7三銀と逃げてしまうと、
▲7五歩とされて、歩をただで取られてしまいます。
序盤の単純な1歩損は、作戦の幅をかなり狭めてしまうので
指し手に苦労する展開が続き、かなり勝ちづらくなります。
ここは△7六歩と取り込むしかありませんが、
△7六歩と取り込めることは△7五歩を突く前に考えておきましょう。
29手目:形勢判断と候補手
互角:▲同銀、▲6四歩
29手目に間違いのない手は▲同銀です。
他に▲6四歩と激しく攻め合う手もあります。
以下、△7七歩成 ▲6三歩成 △7八と と駒を取り合って先手は金損になります。
しかし、▲6四角と飛車取りに打つ手が、それを補う程の厳しい手です。
後手の陣形は5筋が急所です。特に▲5三角成のように角で突破されると
玉が3一に逃げられないため、一気に受けが難しくなります。
とは言え、もし後手にうまい受けがあると駒損が響いて形勢を損ねます。
かなり先まで正確に読まないと指せない、怖い手でもあります。
中盤
35手目:形勢判断と候補手
先手有利:▲3五歩、▲6八玉、▲5八金、▲1六歩 など
35手目は▲7五歩と打ってはいけません。
「
離れ駒に手有り」で、6六の角を間接的ににらんだ△8四角という手があります。
▲7四歩と銀を取ると6六の角を取られてしまいますし、
7五の歩を守る手もないため、形勢を損ねます。
後手の銀は追い返せませんが、前に出てくる訳でもないので
無理に相手をする必要はないのです。
先手は居玉のままなのが気になります。
▲6八玉と指すような手はありますが、
相手が攻めている場所に近づいているとも言えます。
▲8八玉まで行ければ良いですが、その余裕はありません。
玉を動かして必ずしもプラスにならないのであれば
攻める手から考えてみたいところです。
但し、自玉が薄いときには攻める際の制約が多くなります。
例えば、本局では、後手玉を寄せるまで飛車を渡せませんし、
後手が3七を突破するような攻め合いは避ける必要があります。
51手目:形勢判断と候補手
先手有利:▲2六飛
51手目は▲2六飛が味の良い1手です。
△3六歩も受かっていますし、
3七の桂を跳ねても飛車を取られなくなりました。
本当は▲3四歩と打てるならば打ちたいです。
2筋の歩を交換してから▲2六飛とすれば
飛車を浮いてから2筋の歩を交換するよりも1手得している計算になります。
しかし、▲3四歩には強く△同銀と取り、▲1一角成にも△3六歩と攻め合われると、
先手は居玉なので後手の攻めの方が厳しくなります。
60手目:形勢判断と候補手
先手有利:△6四歩
先手は飛車先の歩を交換して、歩を持ち駒にしました。
次に先手が▲4五歩と打つと銀が捕まってしまうため、
後手は無理にでも動かなければいけません。
63手目:形勢判断と候補手
先手有利:▲3三歩成、▲同桂、▲同銀、▲4四角
先手は角を助けるためには▲同桂や▲同銀と応じる必要があります。
形勢の良い局面で、駒損をしないようにしっかりと面倒をみる手は有力です。
しかし、後手の7四の銀が働いてくるので、紛れが生じる可能性はあります。
後手が打った6五の歩は、7四の銀の前進を防いでくれているとも言えるので、
角を切ってしまっても、確実な攻めがあれば問題ありません。
本譜は、角を切る前に▲3三歩成と王手をしました。
難しい手ですが、▲4四角と切ってから▲3三歩成とすると
△同玉と応じられて粘られてしまいます。
先に▲3三歩成としておけば△同玉とは取れません。
今度は角を切らずに▲6五桂と手を戻しておけば、
後手玉の場所が悪すぎて▲4五桂のような手が厳しくなります。
折角の拠点を放棄してしまうのでもったいないようですが、
相手の応手を限定させて、敵陣のバランスを崩し、
角を切った後に攻めが続くようにしているのです。
終盤
72手目:形勢判断と候補手
先手優勢:△7三桂、△6四角 など
72手目の局面、先手は▲2一歩成からの攻めが確実です。
よって、後手は攻め合わなければ勝てませんが、
現状では飛車も銀も押さえ込まれてしまっています。
本譜は、
遊び駒を活用して△7三桂と指しました。
劣勢に陥った場合は、なるべく相手が間違えるように、
そして相手が間違えた時に逆転する可能性が高まるように指します。
そのためには「①遊び駒を活用する」「②自分の持ち駒を増やす」
「③相手の持ち駒を増やさない」「④拠点を作る」ということを意識します。
そして、相手の分かりやすい狙いはしっかりと受けたうえで、
それ以外は「自玉が寄るかもしれない」と思っても、諦めて攻めましょう。
89手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:▲4三桂、▲5五桂 など
先手は早い段階で、後手玉を下段に落とすことができました。
あとは、そのまま上から押さえつけながら、攻め駒の数を足していきます。
形勢が離れているので、先手の勝ち方はいくつもあります。
迷うこともありますが、歩や桂を使った攻めは比較的安全で、
もし悪手であったとしても、まだ勝ちが残っている可能性が高いです。
逆に、相手玉が詰んでいないのに、
清算して飛車や金を後手に渡すような手を指してはいけません。
飛車や金を後手に渡すと、先手玉が詰む変化も出てきます。
終盤では「相手に渡しても良い駒」を常に考えるようにしましょう。
89手目の局面では▲4三桂と打つ手が、金取りで、相手玉の逃げ道も塞ぎ、
▲4二歩からの詰めろにもなっているので、とても厳しいです。
持ち駒が少ないので、歩が打てる筋もしっかりと意識しましょう。
飛車の横利きが受けに利いている場合、かなり粘り強い形なので
利きを遮断するか、できれば飛車を直接狙っていきます。
飛車を取ってしまえば、相手の守備力が減り、
その分、自分の攻撃力が増えるので、かなり分かりやすくなります。
103手にて、後手の羽生竜王が投了し、
佐藤名人の1勝、羽生竜王の1勝となりました。
投了図以降、後手玉は▲6二角成だとわずかに詰まないのですが、
▲4二とや▲5二金打から2三の竜の横利きを通すように指すと詰みます。
本局では佐藤名人の力強い押さえ込みと確実な寄せが非常に勉強になりました。
棋譜
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棋戦:第76期名人戦七番勝負 第2局
先手:佐藤天彦名人
後手:羽生善治竜王
手数----指手---------消費時間--
1 7六歩(77) ( 0:00/00:00:00)
2 8四歩(83) ( 0:00/00:00:00)
3 2六歩(27) ( 0:00/00:00:00)
4 3二金(41) ( 0:00/00:00:00)
5 7八金(69) ( 0:00/00:00:00)
6 8五歩(84) ( 0:00/00:00:00)
7 7七角(88) ( 0:00/00:00:00)
8 3四歩(33) ( 0:00/00:00:00)
9 6八銀(79) ( 0:00/00:00:00)
10 7七角成(22) ( 0:00/00:00:00)
11 同 銀(68) ( 0:00/00:00:00)
12 2二銀(31) ( 0:00/00:00:00)
13 3八銀(39) ( 0:00/00:00:00)
14 6二銀(71) ( 0:00/00:00:00)
15 4六歩(47) ( 0:00/00:00:00)
16 4二玉(51) ( 0:00/00:00:00)
17 4七銀(38) ( 0:00/00:00:00)
18 7四歩(73) ( 0:00/00:00:00)
19 3六歩(37) ( 0:00/00:00:00)
20 3三銀(22) ( 0:00/00:00:00)
21 2五歩(26) ( 0:00/00:00:00)
22 7三銀(62) ( 0:00/00:00:00)
23 6六歩(67) ( 0:00/00:00:00)
24 6四銀(73) ( 0:00/00:00:00)
25 5六銀(47) ( 0:00/00:00:00)
26 7五歩(74) ( 0:00/00:00:00)
27 6五歩(66) ( 0:00/00:00:00)
28 7六歩(75) ( 0:00/00:00:00)
29 同 銀(77) ( 0:00/00:00:00)
30 7三銀(64) ( 0:00/00:00:00)
31 7七角打 ( 0:00/00:00:00)
32 7二飛(82) ( 0:00/00:00:00)
33 6六角(77) ( 0:00/00:00:00)
34 7四銀(73) ( 0:00/00:00:00)
35 1六歩(17) ( 0:00/00:00:00)
36 7三角打 ( 0:00/00:00:00)
37 4八金(49) ( 0:00/00:00:00)
38 4六角(73) ( 0:00/00:00:00)
39 3七桂(29) ( 0:00/00:00:00)
40 6四歩(63) ( 0:00/00:00:00)
41 同 歩(65) ( 0:00/00:00:00)
42 同 角(46) ( 0:00/00:00:00)
43 7七桂(89) ( 0:00/00:00:00)
44 6二飛(72) ( 0:00/00:00:00)
45 6五歩打 ( 0:00/00:00:00)
46 8二角(64) ( 0:00/00:00:00)
47 3五歩(36) ( 0:00/00:00:00)
48 7五歩打 ( 0:00/00:00:00)
49 6七銀(76) ( 0:00/00:00:00)
50 3五歩(34) ( 0:00/00:00:00)
51 2六飛(28) ( 0:00/00:00:00)
52 5二金(61) ( 0:00/00:00:00)
53 3四歩打 ( 0:00/00:00:00)
54 4四銀(33) ( 0:00/00:00:00)
55 2四歩(25) ( 0:00/00:00:00)
56 同 歩(23) ( 0:00/00:00:00)
57 同 飛(26) ( 0:00/00:00:00)
58 2三歩打 ( 0:00/00:00:00)
59 2六飛(24) ( 0:00/00:00:00)
60 6四歩打 ( 0:00/00:00:00)
61 同 歩(65) ( 0:00/00:00:00)
62 6五歩打 ( 0:00/00:00:00)
63 3三歩成(34) ( 0:00/00:00:00)
64 同 金(32) ( 0:00/00:00:00)
65 4四角(66) ( 0:00/00:00:00)
66 同 歩(43) ( 0:00/00:00:00)
67 2二歩打 ( 0:00/00:00:00)
68 6六歩(65) ( 0:00/00:00:00)
69 同 銀(67) ( 0:00/00:00:00)
70 7六歩(75) ( 0:00/00:00:00)
71 6五桂(77) ( 0:00/00:00:00)
72 7三桂(81) ( 0:00/00:00:00)
73 3四歩打 ( 0:00/00:00:00)
74 3二金(33) ( 0:00/00:00:00)
75 2一歩成(22) ( 0:00/00:00:00)
76 6五桂(73) ( 0:00/00:00:00)
77 3一と(21) ( 0:00/00:00:00)
78 同 玉(42) ( 0:00/00:00:00)
79 3三銀打 ( 0:00/00:00:00)
80 3六桂打 ( 0:00/00:00:00)
81 3二銀成(33) ( 0:00/00:00:00)
82 同 玉(31) ( 0:00/00:00:00)
83 3三金打 ( 0:00/00:00:00)
84 4一玉(32) ( 0:00/00:00:00)
85 2三飛成(26) ( 0:00/00:00:00)
86 4八桂成(36) ( 0:00/00:00:00)
87 同 玉(59) ( 0:00/00:00:00)
88 3一金打 ( 0:00/00:00:00)
89 4三桂打 ( 0:00/00:00:00)
90 同 金(52) ( 0:00/00:00:00)
91 同 金(33) ( 0:00/00:00:00)
92 6四角(82) ( 0:00/00:00:00)
93 6三歩打 ( 0:00/00:00:00)
94 同 銀(74) ( 0:00/00:00:00)
95 3三歩成(34) ( 0:00/00:00:00)
96 5一玉(41) ( 0:00/00:00:00)
97 5五桂打 ( 0:00/00:00:00)
98 同 角(64) ( 0:00/00:00:00)
99 同 銀(56) ( 0:00/00:00:00)
100 3六桂打 ( 0:00/00:00:00)
101 5八玉(48) ( 0:00/00:00:00)
102 7七歩成(76) ( 0:00/00:00:00)
103 9五角打 ( 0:00/00:00:00)
104 投了 ( 0:00/00:00:00)
まで103手で先手の勝ち
名人戦第1局
名人戦第3局