目次
解説動画
名人戦第2局
名人戦第4局
対局情報
局面解説
序盤
22手目:形勢判断と候補手
互角:△1四歩、△9四歩、△6四歩 など
戦型は角換わりで、21手目まで第2局と同じ手順になりました。
先手が角換わり腰掛銀を目指した場合、
後手が最も含みを持たせた手順であるとも言えます。
別の手順で指しても、同じ形に合流することも多いので、
手順を暗記する必要はありません。
しかし、実戦では、あえて流行りの序盤を真似してみるのも面白いでしょう。
例えば、名人戦と同じ手順が続くならば、
相手も名人戦を見ている可能性が高いと判断します。
大会などで相手の棋力が分からない場合は、
このようなことも貴重な情報の1つです。
第2局では、22手目に△7三銀と上がり、後手が早繰り銀となりました。
本局は、△1四歩と突いて、一旦様子を見ました。
後手は腰掛銀の方針となりました。
最近の角換わりは、先手が早めに▲4五桂と跳ねて仕掛ける場合があります。
しかし、本局の後手のように駒組みをすれば
△2二銀と引いて受けることで、先手の攻めが難しくなります。
34手目:形勢判断と候補手
互角:△9四歩、△5四銀、△3一玉、△4四歩、△6五歩 など
角換わりの場合、端歩は無条件に受けておいて、ほぼ問題ありません。
但し、後手が△9四歩と突かずに、1手早く仕掛けるという指し方はあります。
端攻めが絡まないので、どうしても細い攻めになりますが、
先に攻めることが重要である、という考え方です。
本譜のように、先手が▲9五歩と端を突き越した場合、
終盤で▲9七玉~▲9六玉のように逃げられるのが最悪のシナリオです。
よって、後手は先手玉を9筋に追わないように意識して7筋や8筋を重点的に攻めます。
中盤
44手目:形勢判断と候補手
互角:△7四歩
44手目は△7四歩と控えて打つ手があります。
自分から交換を仕掛けたので少し悔しい気もしますが、
歩が後ろに戻る手筋でもあります。
先手の銀の位置が少し悪くなって、
次に△8六歩から歩交換ができるので、バランスは取れています。
本譜は△7四銀と出ました。
45手目:形勢判断と候補手
先手有利:▲7五歩
45手目は▲7五歩と打つ1手です。
後手から△7五歩と打たれてしまうと、先手の銀が捕まってしまいます。
「
敵の打ちたいところに打て」です。
後手としては、先手に▲7五歩を打たせた、という意味があります。
但し、後手は銀を戻るしかなく、分かりやすく手損をしています。
48手目:形勢判断と候補手
互角:△5四歩、△5二金、△2二玉 など
47手目の▲7七金は力強い受けです。
但し、8八の地点が弱くなりましたので、
後手から駒を打ち込まれる手には注意する必要があります。
△8六歩 ▲同歩 △8八歩という手順は、
現状では▲9七桂と逃げておけば大丈夫です。
但し、状況が変われば、有力な仕掛けになる可能性はあります。
自陣の隙は常に注意するようにしましょう。
53手目:形勢判断と候補手
互角:▲5八玉、▲7八玉、▲6六歩 など
先手としては玉を6八から移動したいです。
囲って堅くなる、ということではないのですが、
終盤で△4六角や△3五角と打たれると攻防手になる場合があります。
だいぶ先の話ですので、実現しない可能性も高いですが、
もし実現してしまうと、形勢を損ねる可能性が高いです。
将来的なリスクまで含めて考えることは難しいですが、
有段者を目指すならば、徐々に身に付けておきたい感覚です。
本譜は▲7八玉と指しました。
相手の攻め駒から離れる意味で▲5八玉もあります。
尚、積極的に攻めるならば▲6六歩と突いて、
後手の角を狙いにいくような指し方もあります。
61手目:形勢判断と候補手
互角:▲同歩、▲4六角 など
61手目は▲同歩と取る手が自然です。
△同銀に▲5六歩と打っておけば、△6四銀と引くしかありません。
単なる歩交換で終わりますので、悪手になる確率は低いです。
▲4六角と先にかわしておく手もあります。
角頭を歩で攻められた場合、たまに出てくる手筋です。
本譜は▲3四歩と打って、強く攻め込みました。
64手目:形勢判断と候補手
互角:△3五歩
64手目は△3五歩と打つ1手です。
先手から▲3五歩と打たれてしまうと後手の銀が捕まってしまいます。
先ほども先手で同様の形がありましたが、
銀が動けない場合は、歩で捕まりやすい状況でもあります。
後手から△3六歩という手はありますが、
遅い攻めなので、▲3五歩のように攻め合われると勝てません。
後手は1歩を入手してから、先手陣の弱点である7五の地点を狙ってきました。
先手も受けづらい場所ですが、強く攻め合って桂を入手し、
後手陣攻略の急所となる▲2六桂を狙います。
79手目:形勢判断と候補手
先手有利:▲7四と、▲7七金
79手目に▲7七金と逃げても先手が良いのですが、
6筋から8筋の位を取られているのが気になります。
後手は△7六銀のように上から押さえつける攻めが分かりやすいです。
ここは▲7四と と指してみたいです。
7三のと金と、7六の金のどちらかを盤上に残しながら
後手の攻め駒にプレッシャーをかけることができます。
駒は取られる直前が1番働く、と言われます。
手拍子で駒を逃げず、他に良い手がないか、考える癖を付けましょう。
85手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲同金
84手目の△5七歩は絶妙な勝負手です。
金を逃げると攻めの拠点が残ります。
角で取ると5筋を突破されますし、金で取ると先手玉が薄くなります。
どのように応じても嫌な変化がある勝負手は、
対応を間違える可能性が高くなります。
終盤
87手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲3四桂、▲9四歩、▲7四歩 など
87手目で先手が最も意識すべきことは、
仮に、後手の持ち駒に金が増えると、先手玉が詰むということです。
そして、8五にいる金が狙われやすい位置にいます。
大丈夫と読み切れれば▲3四桂ですが、
分からなければ▲9四歩や▲7四歩のように指して、
しっかりと後手からの攻めを受け切ってしまいましょう。
持ち駒に○○があったら、という仮定から指し手を考えていく機会は
終盤で特に多くなります。
質駒だけでなく、狙われやすい位置にいる駒も意識しましょう。
先手は、またしても強く攻めていきました。
後手は持ち駒が少ないので、角の王手が非常に厳しくなっています。
後手はやむを得ず金を受けに使いましたが、先手玉がさらに安全になってしまいました。
先手は金駒だけの攻めなので、上から押さえつけるように指します。
「
玉は下段に落とせ」です。
相手玉が一段目にいれば、金駒2枚で詰むこともありますし、
3枚目が7七に落ちているので、切れる心配はありません。
最後に、駒を取りながら自陣の桂を跳ねていきましたが、まさに駒の躍動です。
111手にて、後手の佐藤名人が投了し、佐藤名人の1勝、羽生竜王の2勝となりました。
投了図以降、7一に合駒をすると▲7三桂不成から、
△7二玉とかわすと▲8三銀 △8一玉にやはり▲7三桂不成で
以降、短手数の詰みとなります。
本局では、羽生竜王の強く攻め合う戦い方と、正確な見切りが非常に勉強になりました。
棋譜
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棋戦:第76期名人戦七番勝負 第3局
先手:羽生善治竜王
後手:佐藤天彦名人
手数----指手---------消費時間--
1 7六歩(77) ( 0:00/00:00:00)
2 8四歩(83) ( 0:00/00:00:00)
3 2六歩(27) ( 0:00/00:00:00)
4 3二金(41) ( 0:00/00:00:00)
5 7八金(69) ( 0:00/00:00:00)
6 8五歩(84) ( 0:00/00:00:00)
7 7七角(88) ( 0:00/00:00:00)
8 3四歩(33) ( 0:00/00:00:00)
9 6八銀(79) ( 0:00/00:00:00)
10 7七角成(22) ( 0:00/00:00:00)
11 同 銀(68) ( 0:00/00:00:00)
12 2二銀(31) ( 0:00/00:00:00)
13 3八銀(39) ( 0:00/00:00:00)
14 6二銀(71) ( 0:00/00:00:00)
15 4六歩(47) ( 0:00/00:00:00)
16 4二玉(51) ( 0:00/00:00:00)
17 4七銀(38) ( 0:00/00:00:00)
18 7四歩(73) ( 0:00/00:00:00)
19 3六歩(37) ( 0:00/00:00:00)
20 3三銀(22) ( 0:00/00:00:00)
21 2五歩(26) ( 0:00/00:00:00)
22 1四歩(13) ( 0:00/00:00:00)
23 1六歩(17) ( 0:00/00:00:00)
24 6四歩(63) ( 0:00/00:00:00)
25 3七桂(29) ( 0:00/00:00:00)
26 6三銀(62) ( 0:00/00:00:00)
27 6八玉(59) ( 0:00/00:00:00)
28 7三桂(81) ( 0:00/00:00:00)
29 4八金(49) ( 0:00/00:00:00)
30 6二金(61) ( 0:00/00:00:00)
31 9六歩(97) ( 0:00/00:00:00)
32 8一飛(82) ( 0:00/00:00:00)
33 2九飛(28) ( 0:00/00:00:00)
34 6五歩(64) ( 0:00/00:00:00)
35 9五歩(96) ( 0:00/00:00:00)
36 6四角打 ( 0:00/00:00:00)
37 4五歩(46) ( 0:00/00:00:00)
38 3一玉(42) ( 0:00/00:00:00)
39 5六歩(57) ( 0:00/00:00:00)
40 7五歩(74) ( 0:00/00:00:00)
41 5七角打 ( 0:00/00:00:00)
42 7六歩(75) ( 0:00/00:00:00)
43 同 銀(77) ( 0:00/00:00:00)
44 7四銀(63) ( 0:00/00:00:00)
45 7五歩打 ( 0:00/00:00:00)
46 6三銀(74) ( 0:00/00:00:00)
47 7七金(78) ( 0:00/00:00:00)
48 5四歩(53) ( 0:00/00:00:00)
49 3五歩(36) ( 0:00/00:00:00)
50 同 歩(34) ( 0:00/00:00:00)
51 同 角(57) ( 0:00/00:00:00)
52 5二金(62) ( 0:00/00:00:00)
53 7八玉(68) ( 0:00/00:00:00)
54 4二角(64) ( 0:00/00:00:00)
55 4六角(35) ( 0:00/00:00:00)
56 6四銀(63) ( 0:00/00:00:00)
57 5八金(48) ( 0:00/00:00:00)
58 8四飛(81) ( 0:00/00:00:00)
59 5七角(46) ( 0:00/00:00:00)
60 5五歩(54) ( 0:00/00:00:00)
61 3四歩打 ( 0:00/00:00:00)
62 同 銀(33) ( 0:00/00:00:00)
63 5五歩(56) ( 0:00/00:00:00)
64 3五歩打 ( 0:00/00:00:00)
65 5六銀(47) ( 0:00/00:00:00)
66 3三角(42) ( 0:00/00:00:00)
67 4六角(57) ( 0:00/00:00:00)
68 9四歩(93) ( 0:00/00:00:00)
69 同 歩(95) ( 0:00/00:00:00)
70 同 香(91) ( 0:00/00:00:00)
71 9五歩打 ( 0:00/00:00:00)
72 7四歩打 ( 0:00/00:00:00)
73 同 歩(75) ( 0:00/00:00:00)
74 7五歩打 ( 0:00/00:00:00)
75 7三歩成(74) ( 0:00/00:00:00)
76 7六歩(75) ( 0:00/00:00:00)
77 同 金(77) ( 0:00/00:00:00)
78 7五歩打 ( 0:00/00:00:00)
79 7四と(73) ( 0:00/00:00:00)
80 同 飛(84) ( 0:00/00:00:00)
81 8五金(76) ( 0:00/00:00:00)
82 7一飛(74) ( 0:00/00:00:00)
83 2六桂打 ( 0:00/00:00:00)
84 5七歩打 ( 0:00/00:00:00)
85 同 金(58) ( 0:00/00:00:00)
86 7六歩(75) ( 0:00/00:00:00)
87 3四桂(26) ( 0:00/00:00:00)
88 7七銀打 ( 0:00/00:00:00)
89 6九玉(78) ( 0:00/00:00:00)
90 8一飛(71) ( 0:00/00:00:00)
91 5四歩(55) ( 0:00/00:00:00)
92 8五飛(81) ( 0:00/00:00:00)
93 6四角(46) ( 0:00/00:00:00)
94 4一玉(31) ( 0:00/00:00:00)
95 5九玉(69) ( 0:00/00:00:00)
96 6三金打 ( 0:00/00:00:00)
97 5三銀打 ( 0:00/00:00:00)
98 6四金(63) ( 0:00/00:00:00)
99 5二銀成(53) ( 0:00/00:00:00)
100 同 玉(41) ( 0:00/00:00:00)
101 5三金打 ( 0:00/00:00:00)
102 6一玉(52) ( 0:00/00:00:00)
103 7三銀打 ( 0:00/00:00:00)
104 6八銀打 ( 0:00/00:00:00)
105 4九玉(59) ( 0:00/00:00:00)
106 5一角(33) ( 0:00/00:00:00)
107 7七桂(89) ( 0:00/00:00:00)
108 7三角(51) ( 0:00/00:00:00)
109 8五桂(77) ( 0:00/00:00:00)
110 5七銀成(68) ( 0:00/00:00:00)
111 8一飛打 ( 0:00/00:00:00)
112 投了 ( 0:00/00:00:00)
まで111手で先手の勝ち
名人戦第2局
名人戦第4局