目次
解説動画
竜王戦第5局
王将戦第2局
対局情報
局面解説概要
序盤
相振り飛車は、一般的に四間飛車よりも三間飛車や向かい飛車の方が
相手玉に近い所を攻めることができるため良いと言われています。
本局の先手は四間飛車でしたが、攻める筋の位を早めに確保することで
後手の駒組みをけん制するという工夫をしています。
26手目:形勢判断と候補手
互角:△2五歩、△1四歩、△4三金、△8二玉 など
26手目の局面、先手は9筋と6筋の位を2つ取ったため、
後手と比較して、囲いが遅れています。
後手はそれをとがめるために先手玉が2八まで行く前に仕掛けてみたいところです。
攻めるとしたら5四にいる銀を使う必要がありますが、
現局面で△4五銀とぶつけると▲同銀 △同歩 ▲4四銀と押さえられて
一気に劣勢になってしまいます。
本譜は△4三金として、バランスを取りながら、次に仕掛けることを狙いました。
中盤
33手目:形勢判断と候補手
互角:▲6六角、▲7七角、▲8八角
駒がぶつかっておらず、少し落ち着いた局面では
「もしパスをしたら、相手は次に何を指すだろう」
と考え始めるのがいいです。
33手目の局面では次に後手から△5五角と打たれると苦しくなります。
先手からそれを上回る攻めの手はありませんので、
△5五角は絶対に防ぐ必要があります。
しかし、片方の香取りを受けるだけの▲3七銀のような手では、
△4四角と打たれ、▲7七角 △同角成 ▲同桂 △4四角のように、
先手の手薄な盤面左側を狙われてしまいます。
▲5六歩は持ち駒を節約した受けですが、
「
角交換に5筋の歩を突くな」という格言に反しており、
△4六歩や△2五歩の後に△7九角を狙われるので指しづらいです。
▲5五銀は「
敵の打ちたいところに打て」でなかなか強い手です。
しかし、この局面に限ると、先手が6筋を突破できたとしても
後手玉に詰めろがかからないので△5四歩と催促されると困ります。
後手は6筋の歩が切れた瞬間に、△6七歩や△6六歩のような手で
攻防に利いている飛車をいじめながら馬を作る変化があります。
よって、ここでは▲6六角のように角を使って受けるしかありません。
先に持ち駒の角を手放すのは少し悔しいですが、
攻防にしっかりと利いているので問題ありません。
37手目:形勢判断と候補手
互角:▲8五桂、▲3七銀
37手目の局面では後手の飛車先を受ける▲3七銀が自然な手ですが、
△3五歩から棒銀で来られると後手の攻めに勢いが付くという面もあります。
すぐに2筋が突破される訳ではないので、
▲8五桂と跳ねて▲9三桂成から9筋を攻める方が難しかったかもしれません。
41手目:形勢判断と候補手
後手有利:▲8五桂、▲9四歩、▲3六歩、▲3六銀打
40手目を指した局面で後手は5段目に出た銀が追い返されないので、
棒銀の攻めが成功した形となりました。
▲2八銀のような手は銀交換を避ける手筋ではありますが、
△2六歩 ▲同歩 △同飛の後、△6六飛~△8八角のように指されて、
攻め込まれた上に壁銀の形が残って敗勢です。
後手の攻めを催促するなら▲3六歩や▲3六銀打ですが、
後手が3五の銀を逃げてくれる訳ではないので、少し消極的です。
受けが難しい局面では、受けてもジリ貧になることが多いです。
例えば、この局面では▲9四歩や▲8五桂と攻め合った方が
実戦的には勝ちやすい(逆転する確率が高い)です。
45手目:形勢判断と候補手
後手優勢:▲2三歩、▲同銀
45手目に局面でおとなしく指すなら▲同銀です。
しかし、△同飛に対して、▲2七歩、あるいは▲2七銀~▲2六歩と受けても
先手は歩切れなので反撃に移れません。
本譜は後手の4三にいる金が浮いていることに着目し、
後手の攻めを受け切って、勝ちを目指す指し方を選択しました。
終盤
54手目:形勢判断と候補手
後手優勢:△2六歩、△2八歩
54手目の局面、後手は4三の金が取られそうですが、
△5二銀のように受けてはいけません。
「
4枚の攻めは切れない」と言われますが、
後手の攻め駒は2五の桂と、持ち駒の角・金・銀の4枚で現状はギリギリです。
4三の金を取られても詰めろではないどころか
先手の飛車が急所の段からそれるので
攻め続けることさえできれば大したことはありません。
ここは先手の歩切れに着目して△2六歩と打ってみたいです。
次に△2七角を狙いながら、
先手の数少ない勝ち筋である入玉の望みも断ち切っています。
▲2八歩と受けられればいいのですが、
その歩がないので「
一歩千金」が実感できる局面です。
本譜は△2八歩と打って、さらに直接的に攻めました。
58手目:形勢判断と候補手
後手優勢:△3七歩、△2四歩
58手目の局面では、後手玉が安全で、持ち駒も豊富にありますので、
先手に入玉されないことを最優先に考えます。
先手が入玉するにあたって1番働きそうな駒は2五の成銀です。
先手玉はまだ詰まないので、この成銀を攻めるのが確実です。
本譜は△3七歩と打ちましたが、これが好手でした。
▲同玉には△3三桂と打つ狙いがあり、
成銀取りを見せながら上部を押さえることができます。
成銀に働きかけるという意味では△2四歩のような手でもいいです。
後手は、先手玉を下段に落とすことができたので
相当負けづらくなりました。
とは言っても、先手玉は広いので確実な攻めが必要です。
相手が持ち駒を投入して受けてくる場合には、王手や詰めろをかけながら
「自分の小駒と相手の大駒」
「自分の銀と相手の金」
「自分の桂香と相手の金駒」
を交換するようにしていけば
相手の守備力は徐々に低下し、自分の攻撃力は徐々に上昇していきます。
受け切られてしまうことだけが逆転の要素ですので、
分かりやすい局面になるまで決めに行く必要はありません。
88手にて、先手の久保王将が投了し、豊島八段の1勝となりました。
豊島八段の機敏な仕掛けと、確実な寄せが非常に勉強になりました。
棋譜
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棋戦:第67期王将戦七番勝負 第1局
先手:久保利明王将
後手:豊島将之八段
手数----指手---------消費時間--
1 7六歩(77) (00:00 / 00:00:00)
2 3四歩(33) (00:00 / 00:00:00)
3 6六歩(67) (00:00 / 00:00:00)
4 4二銀(31) (00:00 / 00:00:00)
5 7八銀(79) (00:00 / 00:00:00)
6 4四歩(43) (00:00 / 00:00:00)
7 6五歩(66) (00:00 / 00:00:00)
8 4三銀(42) (00:00 / 00:00:00)
9 6七銀(78) (00:00 / 00:00:00)
10 3三角(22) (00:00 / 00:00:00)
11 5六銀(67) (00:00 / 00:00:00)
12 2二飛(82) (00:00 / 00:00:00)
13 6八飛(28) (00:00 / 00:00:00)
14 7二銀(71) (00:00 / 00:00:00)
15 3六歩(37) (00:00 / 00:00:00)
16 6二玉(51) (00:00 / 00:00:00)
17 4八銀(39) (00:00 / 00:00:00)
18 5二金(41) (00:00 / 00:00:00)
19 3八金(49) (00:00 / 00:00:00)
20 7一玉(62) (00:00 / 00:00:00)
21 9六歩(97) (00:00 / 00:00:00)
22 2四歩(23) (00:00 / 00:00:00)
23 9五歩(96) (00:00 / 00:00:00)
24 5四銀(43) (00:00 / 00:00:00)
25 4九玉(59) (00:00 / 00:00:00)
26 4三金(52) (00:00 / 00:00:00)
27 5八金(69) (00:00 / 00:00:00)
28 4五銀(54) (00:00 / 00:00:00)
29 同 銀(56) (00:00 / 00:00:00)
30 同 歩(44) (00:00 / 00:00:00)
31 3三角成(88) (00:00 / 00:00:00)
32 同 桂(21) (00:00 / 00:00:00)
33 6六角打 (00:00 / 00:00:00)
34 4四銀打 (00:00 / 00:00:00)
35 7七桂(89) (00:00 / 00:00:00)
36 2五歩(24) (00:00 / 00:00:00)
37 3七銀(48) (00:00 / 00:00:00)
38 3五歩(34) (00:00 / 00:00:00)
39 同 歩(36) (00:00 / 00:00:00)
40 同 銀(44) (00:00 / 00:00:00)
41 3六歩打 (00:00 / 00:00:00)
42 2六歩(25) (00:00 / 00:00:00)
43 同 歩(27) (00:00 / 00:00:00)
44 同 銀(35) (00:00 / 00:00:00)
45 2三歩打 (00:00 / 00:00:00)
46 同 飛(22) (00:00 / 00:00:00)
47 3二銀打 (00:00 / 00:00:00)
48 3七銀成(26) (00:00 / 00:00:00)
49 2三銀成(32) (00:00 / 00:00:00)
50 3八成銀(37) (00:00 / 00:00:00)
51 同 玉(49) (00:00 / 00:00:00)
52 2五桂(33) (00:00 / 00:00:00)
53 4一飛打 (00:00 / 00:00:00)
54 2八歩打 (00:00 / 00:00:00)
55 2四成銀(23) (00:00 / 00:00:00)
56 2九歩成(28) (00:00 / 00:00:00)
57 2五成銀(24) (00:00 / 00:00:00)
58 3七歩打 (00:00 / 00:00:00)
59 4八玉(38) (00:00 / 00:00:00)
60 3九と(29) (00:00 / 00:00:00)
61 5六歩(57) (00:00 / 00:00:00)
62 3八と(39) (00:00 / 00:00:00)
63 5九玉(48) (00:00 / 00:00:00)
64 7九銀打 (00:00 / 00:00:00)
65 4三飛成(41) (00:00 / 00:00:00)
66 4九と(38) (00:00 / 00:00:00)
67 6九玉(59) (00:00 / 00:00:00)
68 6八銀成(79) (00:00 / 00:00:00)
69 同 玉(69) (00:00 / 00:00:00)
70 2八飛打 (00:00 / 00:00:00)
71 6九銀打 (00:00 / 00:00:00)
72 5九金打 (00:00 / 00:00:00)
73 7九金打 (00:00 / 00:00:00)
74 5八金(59) (00:00 / 00:00:00)
75 同 銀(69) (00:00 / 00:00:00)
76 4八と(49) (00:00 / 00:00:00)
77 6九金打 (00:00 / 00:00:00)
78 5八と(48) (00:00 / 00:00:00)
79 同 金(69) (00:00 / 00:00:00)
80 4九銀打 (00:00 / 00:00:00)
81 5九銀打 (00:00 / 00:00:00)
82 7四桂打 (00:00 / 00:00:00)
83 7五角(66) (00:00 / 00:00:00)
84 5八銀成(49) (00:00 / 00:00:00)
85 同 銀(59) (00:00 / 00:00:00)
86 6六金打 (00:00 / 00:00:00)
87 5三角成(75) (00:00 / 00:00:00)
88 8二玉(71) (00:00 / 00:00:00)
89 投了 (00:00 / 00:00:00)
まで88手で後手の勝ち
竜王戦第5局
王将戦第2局