目次
解説動画
棋聖戦第1局
棋聖戦第3局
対局情報
局面解説
序盤
21手目:形勢判断と候補手
互角:▲6九玉、▲3六歩、▲9六歩 など
21手目に▲4五歩と仕掛けるのは少し損です。
現状では先手陣の方が少しだけバランスが悪いです。
そのため、角や銀が交換になると、先手は△2八角、△2七角、△9二角と
打たれるような手を気にしながら、駒組みを進めなければなりません。
相手の駒組みに制約を与えるためにも
駒交換の権利は保持しておき、自陣の駒組みを優先しましょう。
31手目:形勢判断と候補手
互角:▲2二角成
31手目は▲同銀と▲2二角成が考えられますが、
わずかに▲2二角成の方が得です。
▲2二角成 △同金となると、後手が壁金の悪形なので、
それを解消するために1手かける必要があります。
そのため、先手から角交換を行っても手損とはならず、
先手は好きなタイミングで▲7七銀と上がることができます。
41手目:形勢判断と候補手
互角:▲3八金、▲6八金、▲5八金、▲8八玉
41手目は指し手が難しい局面です。
先手は歩が伸びていないので、歩を
突き捨てる仕掛けが難しいものの、
歩を
伸ばすと隙が生じてしまいます。
ここで、本譜は▲3八金と指しました。
後手の仕掛けを封じた積極的な手ですが、
金が自玉と反対側に行くので、非常に難しい指し方です。
終盤の寄せ合いで、この金がそのまま盤上に残ってしまうと
かなり勝ちづらい将棋になることは強く意識しておきましょう。
この局面では▲6八金や▲5八金も有力です。
早指しの将棋ならば、堅さを犠牲にしない方が勝ちやすいです。
47手目:形勢判断と候補手
互角:▲7一角、▲6一角、▲3六歩 など
5二の金に8二の飛車でしか紐が付いておらず、また持ち駒に角と銀がある場合、
▲6一角や▲7一角といきなり打ち込む手が成立することが多いです。
角と銀の連携で攻め筋が複数あるため、
後手は簡単に角を捕まえることができません。
ゆっくり指すならば▲3六歩です。
相手の桂頭を狙いながら、右桂の活用も視野に入れているので
味が良い手です。
中盤
52手目:形勢判断と候補手
互角:△4三銀 など
52手目は△4三銀と引いて、先手の攻めを催促したいです。
△5四銀と上がったばかりなので少し悔しいですが、
先手に仕掛けられて状況が変わったので仕方ありません。
53手目:形勢判断と候補手
互角:▲5三成銀 など
53手目は▲5三成銀と引く手が有力です。
△5一飛と回られると、△5七飛成の含みがあるので気持ち悪いですが、
▲6三金と打つか、▲4三成銀と銀を取ってから▲4七金と上がっておけば、
後手は歩切れなので、すぐに攻め込まれることはありません。
本譜は▲6二金と打ちました。
確実に後手の飛車を取りにいく手ですが、少しもったいない感じもします。
56手目:形勢判断と候補手
後手有利:△4五桂、△8六歩 など
後手は貴重な
手番を握りましたので、△4五桂と跳ねて攻めたいです。
他に△8六歩という突き捨ても有力です。8筋に飛車はいませんが、
先手陣の形を崩すことができるので損になることは少ないです。
64手目:形勢判断と候補手
後手優勢:△6九銀、△6七銀、△4五角
64手目では「
玉の守りの金を攻めよ」で△6九銀や△6七銀と打ちたいです。
7八の金さえ剥がしてしまえば、先手玉は寄せやすくなります。
先に△4七成桂と指して金を取ってしまうと、
△6七銀のような手がなくなってしまうので損です。
終盤では相手玉に直接迫る手が成立するならば、それを優先します。
取られそうな駒の利きまで最大限に生かしましょう。
本譜は△2七角と打ちました。
先手の攻めの狙いを潰しにいった手ですが、
後手が持ち駒の角を手放したので、先手玉の安全度が増しました。
68手目:形勢判断と候補手
互角:△4二銀打
68手目は△4二銀打として、確実に飛車を取りにいくしかありません。
▲4一飛成 △同玉となると、後手は桂損ですが、
馬を生かして手厚く指していけば互角の勝負です。
本譜は△4八銀と打ちました。
飛車と金が斜めに1マス離れている悪形を咎めた手ですが、後手玉に寄せがありました。
69手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:▲5二角
69手目で▲5二角と打つ手がありました。
「
大駒は離して打て」という格言に反しており、
部分的には△4二金打と固めながら弾かれて、攻めが続きません。
終盤
71手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:▲4三桂
71手目で▲4三桂と打つ
好手がありました。
後手が桂を取るならば△同金左ですが、▲4一飛成 △同金 ▲4三角成とします。
次に後手が△3二銀と受けても、馬取りに構わず▲3三銀と打てば、
後手は馬も銀も取ることができません。
77手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:▲5二歩、▲5二銀、▲2一金 など
77手目は▲5二銀や▲2一金と打っても勝ちですが、
まだまだ手数はかかります。
万が一、読み抜けがあって後手が入玉を狙うような展開になると厄介です。
ここは▲5二歩と打つ手が確実で分かりやすいです。
△6三馬で、先手は攻めを催促されているようですが、
形勢は大差ですので、焦る必要はありません。
81手にて、後手の豊島八段が投了し、
羽生棋聖の1勝、豊島八段の1勝となりました。
投了図以降、後手が粘るならば△5四馬ですが、
▲3二銀成から▲3一竜のように指して、
一間竜の形を生かしながら、後手陣の金駒を剥がしていけば
次第に受けがなくなっていきます。
本局では羽生棋聖のバランス感覚と鋭い寄せが非常に勉強になりました。
棋譜
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棋戦:第89期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負 第2局
先手:羽生善治棋聖
後手:豊島将之八段
手数----指手---------消費時間--
1 7六歩(77) ( 0:00/00:00:00)
2 8四歩(83) ( 0:00/00:00:00)
3 2六歩(27) ( 1:00/00:01:00)
4 3二金(41) ( 0:00/00:00:00)
5 7八金(69) ( 0:00/00:01:00)
6 8五歩(84) ( 0:00/00:00:00)
7 7七角(88) ( 0:00/00:01:00)
8 3四歩(33) ( 0:00/00:00:00)
9 6八銀(79) ( 0:00/00:01:00)
10 4四歩(43) ( 1:00/00:01:00)
11 4八銀(39) ( 2:00/00:03:00)
12 6二銀(71) ( 1:00/00:02:00)
13 4六歩(47) ( 4:00/00:07:00)
14 6四歩(63) ( 0:00/00:02:00)
15 4七銀(48) ( 5:00/00:12:00)
16 6三銀(62) ( 0:00/00:02:00)
17 5六銀(47) ( 3:00/00:15:00)
18 5四銀(63) ( 0:00/00:02:00)
19 4八飛(28) ( 6:00/00:21:00)
20 4二銀(31) ( 3:00/00:05:00)
21 6九玉(59) ( 2:00/00:23:00)
22 4三銀(42) ( 1:00/00:06:00)
23 7九玉(69) ( 0:00/00:23:00)
24 5二金(61) ( 1:00/00:07:00)
25 9六歩(97) ( 1:00/00:24:00)
26 9四歩(93) (19:00/00:26:00)
27 1六歩(17) (15:00/00:39:00)
28 1四歩(13) ( 2:00/00:28:00)
29 4五歩(46) ( 2:00/00:41:00)
30 同 歩(44) ( 2:00/00:30:00)
31 2二角成(77) ( 1:00/00:42:00)
32 同 金(32) ( 3:00/00:33:00)
33 4五銀(56) ( 1:00/00:43:00)
34 同 銀(54) ( 0:00/00:33:00)
35 同 飛(48) ( 0:00/00:43:00)
36 4四歩打 ( 0:00/00:33:00)
37 4八飛(45) ( 0:00/00:43:00)
38 3三桂(21) ( 6:00/00:39:00)
39 7七銀(68) ( 2:00/00:45:00)
40 3二金(22) (17:00/00:56:00)
41 3八金(49) (11:00/00:56:00)
42 4二玉(51) ( 5:00/01:01:00)
43 6六歩(67) (11:00/01:07:00)
44 3一玉(42) ( 6:00/01:07:00)
45 8八玉(79) ( 5:00/01:12:00)
46 5四銀(43) (32:00/01:39:00)
47 7一角打 (41:00/01:53:00)
48 7二飛(82) (22:00/02:01:00)
49 6一銀打 ( 0:00/01:53:00)
50 7一飛(72) ( 0:00/02:01:00)
51 5二銀成(61) ( 0:00/01:53:00)
52 4三銀(54) ( 0:00/02:01:00)
53 6二金打 ( 7:00/02:00:00)
54 5二銀(43) ( 1:00/02:02:00)
55 7一金(62) ( 0:00/02:00:00)
56 4五桂(33) ( 2:00/02:04:00)
57 4七金(38) ( 7:00/02:07:00)
58 3九角打 (11:00/02:15:00)
59 5一飛打 (22:00/02:29:00)
60 4一銀(52) (28:00/02:43:00)
61 7二金(71) (20:00/02:49:00)
62 5七桂成(45) (23:00/03:06:00)
63 3八飛(48) (15:00/03:04:00)
64 2七角打 ( 7:00/03:13:00)
65 3九飛(38) ( 7:00/03:11:00)
66 7二角成(27) ( 0:00/03:13:00)
67 5七金(47) ( 1:00/03:12:00)
68 4八銀打 ( 5:00/03:18:00)
69 5二角打 (10:00/03:22:00)
70 4二金打 (15:00/03:33:00)
71 4三桂打 ( 2:00/03:24:00)
72 2二玉(31) (20:00/03:53:00)
73 4一角成(52) ( 1:00/03:25:00)
74 同 金(42) ( 1:00/03:54:00)
75 同 飛成(51) ( 0:00/03:25:00)
76 6三馬(72) ( 0:00/03:54:00)
77 5二歩打 ( 3:00/03:28:00)
78 4二銀打 ( 0:00/03:54:00)
79 2一銀打 ( 2:00/03:30:00)
80 4三銀(42) ( 0:00/03:54:00)
81 4二金打 ( 0:00/03:30:00)
82 投了 ( 1:00/03:55:00)
まで81手で先手の勝ち
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