目次
解説動画
第30期竜王戦第5局
竜王戦第2局
対局情報
局面解説概要
序盤
本局は先手が羽生竜王、後手が広瀬八段です。
戦型は角換わり腰掛け銀になりました。
37手目:形勢判断と候補手
互角:▲6六歩、▲7九玉、▲5八玉、▲4五歩 など
37手目で本譜は▲6六歩と突きました。
自玉の上部にある歩を自らぶつけていく手は少し危ないのですが、
後手が△6五歩を早目に突いたことを
咎めようとした積極的な手です。
尚、この局面では▲7九玉と深く囲いに行く手や、
▲5八玉と陣形のバランスを保つ手も有力です。
41手目:形勢判断と候補手
互角:▲6四歩、▲7五歩、▲5八玉 など
41手目で▲6四歩と打つのは、部分的によく出てくる手筋です。
後手の5四の銀が動いたら▲6三歩成 △同金 ▲7二角で
飛車金両取りとなるため、後手の動きを制限しています。
本譜は▲5八玉と寄りました。
戦場の6筋を避けつつ、▲6九飛の活用も狙った
味の良い手です。
中盤
51手目:形勢判断と候補手
互角:▲7六歩
51手目で、先手は7八の金取りを受ける必要がありますが、
▲7五歩と打ってはいけません。
△8四飛と好位置に戻るお手伝いとなるうえに、先手が仕掛けた7筋で、
後手だけが歩を手持ちにしたことになってしまいます。
部分的には、一旦我慢して▲7七歩も考えられますが、
それならば最初から7筋を仕掛けない方が良かったと言えます。
本譜は▲7六歩と打ちました。
先手は1歩を犠牲にして手順に馬を作ることが狙いです。
58手目:形勢判断と候補手
互角:△8三角、△7四角
58手目では△8三角や△7四角と打つ手が有力です。
特に馬を作った直後は、角を合わせて消すことができる可能性が高いです。
いずれの角打ちに対しても、先手が▲7五銀と出る手は有力で、
△5六角から同じ局面に合流します。
但し、△7四角の場合は▲同角 △同飛 ▲8三角となると
千日手になる可能性もありました。
本譜は△8三角と打ちました。
65手目:形勢判断と候補手
先手有利:▲7六銀、▲2四歩 など
後手が△8二歩と打ったので、角成りは受けられてしまいましたが、
△8六歩や△8八歩と打たれる変化がなくなり、飛車も狭くなっています。
この交換は先手が少し得をしているので、
それを生かすために▲7六銀から6筋や7筋で戦いを続ける指し方は有力です。
本譜は▲4五桂と跳ねました。
72手目:形勢判断と候補手
互角:△6三銀、△6三歩
72手目で△3三歩と打てば、先手の飛車が捕まっているようですが、悪手です。
現状は、先手の6四の角の方が働いているので
そちらを先に取りに行くことが重要です。手順前後をすると形勢を損ねます。
先を読んで優先度を判断する必要があるので難しいのですが、
バランス重視の陣形で突破されてしまうことは非常に大きなマイナスです。
80手目:形勢判断と候補手
互角:△6一金
80手目は「
金は引く手に好手あり」で△6一金が有力です。
△同金と取る手も考えられますが、金は上ずると守備力が大幅に低下します。
但し、6一にいる金は、7三にいる金と比較すると
飛車で取られた際に詰みや詰めろに直結する可能性が高まります。
87手目:形勢判断と候補手
互角:▲2四桂、▲3二竜
87手目で▲同竜と取って、目先の駒損を避ける手は自然ですが、
△同金と取り返されると、後手陣に一段金が2枚あるため、
手順に飛車の打ち込みに強い形になってしまいます。
本譜は▲2四桂と打ちましたが、これが
好手でした。
後手にとって、飛車は最も大事な攻め駒ですが、△同歩 ▲同竜として、
飛車が3一に残る形になると、攻めに使う見込みがなくなります。
よって、この桂を△同歩と取ることはできませんが、
後手の守りの要である3二の金を取ることができます。
後手が先に飛車を取るので、一時的に
駒損にはなりますが、
後手の飛車は狭く、必ず取り返すことができるので問題ありません。
93手目:形勢判断と候補手
先手有利:▲3八金打
93手目で▲2一成桂として、飛車を取りたいのはやまやまですが、
次に有効な
詰めろがかからないので攻めとしては少し遅いです。
一方、後手からは△3六桂・△3五桂・△2九飛のような
厳しい攻め筋が複数あります。
ここは▲3八金打として、先手でガッチリと受けておくのが実戦的です。
これで後手も先手玉に対して有効な詰めろをかけづらくなりました。
逃げられない相手の駒を急いで取る必要はありません。
他に優先すべき手がないか、常に確認するようにしましょう。
97手目:形勢判断と候補手
先手有利:▲2九飛
97手目は「
敵の打ちたいところに打て」で▲2九飛と打つ手が、
△2九飛を防ぎ、馬取りで、▲2三飛成も狙っているため味が良いです。
103手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲3一角、▲2七歩
103手目は▲3一角と打つ手が厳しいです。
後手は4二に銀・桂・香を合駒することができれば耐えているのですが、
持ち駒の都合で、大駒しか合駒がありません。
大駒による王手は、安い合駒ができないと厳しくなります。
大駒が自分の持ち駒にあるときは、相手の持ち駒の種類も意識しましょう。
終盤
115手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲2六桂
先手は▲3八歩と銀を取って、戦力を補強したいところですが、
115手目の局面では△5九飛打から詰まされてしまいます。
そこで、強力な竜を移動させるために▲2六桂と捨てる手が有力です。
難解な終盤では、
攻防手が勝敗を分けます。優先して探しましょう。
123手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲4九銀
126手目で唯一の受けは▲4九銀です。
一間竜の形は非常に怖いですが、壁さえ作ってしまえば、
壁全体を玉で支えることができるので、むしろ粘り強い形になります。
後手は竜の周りが狭いので、援軍を送りづらくなっています。
逆側からも攻めたいのですが、△8八歩 ▲同金のような崩しが
できなかったので、攻めの
拠点を作ることも難しい状況です。
137手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:▲1一成桂、▲3八銀、▲6三と など
136手目の△5二金のように、離れた遊び駒を動かす手を相手が指したときは、
自玉の安全を相手が確認してくれたということなので、勝ちは近いです。
このような局面では、焦って王手をしてはいけません。
相手は次の指し手にも困っているはずです。
先手に足りないのは、後手玉を詰ますための持ち駒なので、
盤上で取れそうな駒を探しましょう。
141手にて、後手の広瀬八段が投了し、羽生竜王の1勝となりました。
投了図以降、指し続けるならば△2六角成ですが、
▲同金 △同竜に▲2七香と
田楽刺しをすれば、
後手は攻めることもできず、入玉も見込めません。
本局では羽生竜王の攻めの食い付き方と、自玉の安全管理が非常に勉強になりました。
棋譜
棋譜をクリップボードにコピー
棋戦:第31期竜王戦七番勝負 第1局
先手:羽生善治竜王
後手:広瀬章人八段
手数----指手---------消費時間--
1 2六歩(27) ( 0:00/00:00:00)
2 8四歩(83) ( 2:00/00:02:00)
3 7六歩(77) ( 1:00/00:01:00)
4 8五歩(84) ( 2:00/00:04:00)
5 7七角(88) ( 3:00/00:04:00)
6 3四歩(33) ( 1:00/00:05:00)
7 6八銀(79) ( 1:00/00:05:00)
8 3二金(41) ( 1:00/00:06:00)
9 7八金(69) ( 2:00/00:07:00)
10 7七角成(22) ( 3:00/00:09:00)
11 同 銀(68) ( 1:00/00:08:00)
12 2二銀(31) ( 3:00/00:12:00)
13 3八銀(39) ( 5:00/00:13:00)
14 6二銀(71) ( 2:00/00:14:00)
15 4六歩(47) ( 3:00/00:16:00)
16 4二玉(51) ( 1:00/00:15:00)
17 4七銀(38) ( 3:00/00:19:00)
18 7四歩(73) ( 1:00/00:16:00)
19 3六歩(37) ( 5:00/00:24:00)
20 6四歩(63) ( 7:00/00:23:00)
21 3七桂(29) ( 6:00/00:30:00)
22 6三銀(62) (19:00/00:42:00)
23 6八玉(59) ( 7:00/00:37:00)
24 7三桂(81) ( 3:00/00:45:00)
25 4八金(49) ( 7:00/00:44:00)
26 6二金(61) (33:00/01:18:00)
27 2九飛(28) (14:00/00:58:00)
28 6五歩(64) ( 8:00/01:26:00)
29 1六歩(17) (13:00/01:11:00)
30 1四歩(13) ( 4:00/01:30:00)
31 9六歩(97) (14:00/01:25:00)
32 9四歩(93) ( 2:00/01:32:00)
33 2五歩(26) (40:00/02:05:00)
34 3三銀(22) ( 2:00/01:34:00)
35 5六銀(47) ( 0:00/02:05:00)
36 8一飛(82) ( 3:00/01:37:00)
37 6六歩(67) ( 1:00/02:06:00)
38 同 歩(65) (10:00/01:47:00)
39 同 銀(77) ( 0:00/02:06:00)
40 5四銀(63) ( 1:00/01:48:00)
41 5八玉(68) ( 5:00/02:11:00)
42 8六歩(85) (17:00/02:05:00)
43 同 歩(87) ( 2:00/02:13:00)
44 同 飛(81) ( 0:00/02:05:00)
45 8七歩打 ( 1:00/02:14:00)
46 8一飛(86) (32:00/02:37:00)
47 7五歩(76) (31:00/02:45:00)
48 8四飛(81) (97:00/04:14:00)
49 7四歩(75) (38:00/03:23:00)
50 同 飛(84) ( 3:00/04:17:00)
51 7六歩打 ( 1:00/03:24:00)
52 同 飛(74) (25:00/04:42:00)
53 6七銀(56) ( 7:00/03:31:00)
54 7四飛(76) ( 1:00/04:43:00)
55 8三角打 (38:00/04:09:00)
56 8四飛(74) ( 1:00/04:44:00)
57 5六角成(83) ( 0:00/04:09:00)
58 8三角打 (20:00/05:04:00)
59 同 馬(56) (66:00/05:15:00)
60 同 飛(84) ( 0:00/05:04:00)
61 7四歩打 ( 0:00/05:15:00)
62 6五桂(73) ( 6:00/05:10:00)
63 6四角打 ( 5:00/05:20:00)
64 8二歩打 ( 5:00/05:15:00)
65 4五桂(37) (21:00/05:41:00)
66 4四銀(33) ( 3:00/05:18:00)
67 2四歩(25) ( 1:00/05:42:00)
68 同 歩(23) ( 1:00/05:19:00)
69 同 飛(29) ( 0:00/05:42:00)
70 2三歩打 ( 1:00/05:20:00)
71 3四飛(24) ( 0:00/05:42:00)
72 6三歩打 (31:00/05:51:00)
73 7三歩成(74) (36:00/06:18:00)
74 6四歩(63) ( 1:00/05:52:00)
75 8三と(73) ( 0:00/06:18:00)
76 3三歩打 ( 2:00/05:54:00)
77 4四飛(34) (11:00/06:29:00)
78 同 歩(43) (14:00/06:08:00)
79 7三と(83) ( 2:00/06:31:00)
80 6一金(62) (11:00/06:19:00)
81 5三桂成(45) (33:00/07:04:00)
82 同 玉(42) ( 1:00/06:20:00)
83 4一飛打 ( 0:00/07:04:00)
84 2五角打 (17:00/06:37:00)
85 2一飛成(41) ( 1:00/07:05:00)
86 3一飛打 ( 2:00/06:39:00)
87 2四桂打 ( 5:00/07:10:00)
88 2一飛(31) (21:00/07:00:00)
89 3二桂成(24) ( 0:00/07:10:00)
90 3六角(25) ( 0:00/07:00:00)
91 4七銀打 ( 1:00/07:11:00)
92 2七角成(36) ( 0:00/07:00:00)
93 3八金打 (16:00/07:27:00)
94 2六馬(27) ( 1:00/07:01:00)
95 2一成桂(32) ( 0:00/07:27:00)
96 3五桂打 ( 8:00/07:09:00)
97 2九飛打 (16:00/07:43:00)
98 7七歩打 ( 2:00/07:11:00)
99 7九金(78) ( 0:00/07:43:00)
100 2四飛打 ( 4:00/07:15:00)
101 2六飛(29) ( 1:00/07:44:00)
102 同 飛(24) ( 0:00/07:15:00)
103 3一角打 ( 0:00/07:44:00)
104 4三玉(53) ( 5:00/07:20:00)
105 6四角成(31) ( 0:00/07:44:00)
106 2九飛成(26) ( 3:00/07:23:00)
107 3九歩打 ( 0:00/07:44:00)
108 4七桂成(35) ( 0:00/07:23:00)
109 同 金(48) ( 0:00/07:44:00)
110 2七銀打 (12:00/07:35:00)
111 6五銀(66) ( 6:00/07:50:00)
112 3八銀(27) ( 0:00/07:35:00)
113 5四馬(64) ( 1:00/07:51:00)
114 3四玉(43) ( 0:00/07:35:00)
115 2六桂打 ( 3:00/07:54:00)
116 同 竜(29) ( 1:00/07:36:00)
117 3八歩(39) ( 0:00/07:54:00)
118 3九飛打 ( 0:00/07:36:00)
119 5九桂打 ( 5:00/07:59:00)
120 3八飛成(39) ( 3:00/07:39:00)
121 4八銀打 ( 0:00/07:59:00)
122 3五桂打 ( 0:00/07:39:00)
123 4九銀打 ( 0:00/07:59:00)
124 2九竜(38) (12:00/07:51:00)
125 3七金(47) ( 0:00/07:59:00)
126 2八竜(26) ( 1:00/07:52:00)
127 3六歩打 ( 0:00/07:59:00)
128 4七桂成(35) ( 0:00/07:52:00)
129 同 桂(59) ( 0:00/07:59:00)
130 1九竜(28) ( 4:00/07:56:00)
131 3五歩(36) ( 0:00/07:59:00)
132 2四玉(34) ( 0:00/07:56:00)
133 2五歩打 ( 0:00/07:59:00)
134 同 玉(24) ( 0:00/07:56:00)
135 3九桂打 ( 0:00/07:59:00)
136 5二金(61) ( 2:00/07:58:00)
137 1一成桂(21) ( 0:00/07:59:00)
138 1七角打 ( 0:00/07:58:00)
139 2六歩打 ( 0:00/07:59:00)
140 2四玉(25) ( 1:00/07:59:00)
141 1二成桂(11) ( 0:00/07:59:00)
142 投了 ( 0:00/07:59:00)
まで141手で先手の勝ち
第30期竜王戦第5局
竜王戦第2局