目次
解説動画
叡王戦第3局
第4期叡王戦第1局
対局情報
局面解説
序盤
27手目:形勢判断と候補手
互角:▲9六歩、▲6七金右 など
矢倉の場合、相手が棒銀を狙える形ならば、
玉側の端歩は受けないことが多いです。
端攻めが絡む棒銀は破壊力があるため、
端歩を突くという1手をかけて、相手に争点を与えるのは損です。
しかし、この局面で▲9六歩と受ける手はあります。
後手が棒銀を目指してくるならば、
先手は玉を8八まで深く囲わずに攻めの態勢を整えておきます。
29手目:形勢判断と候補手
互角:▲4六歩、▲3七桂、▲4六角、▲3七銀
28手目の飛車取りに対して、▲1八飛とかわす手は、
大駒の働きに差が出てしまうので、他の狙いが少ない局面では少し損です。
よって、移動合で受けることとなりますが、
▲4六歩、▲3七桂、▲4六角、▲3七銀のいずれも有力です。
▲4六歩や▲3七桂は、比較的ゆっくりとした戦いになります。
右銀を前進させづらくなりますが、遊び駒は出にくくなります。
▲4六角や▲3七銀は、早めに駒交換が行われて、激しい戦いになりやすいです。
積極的に攻めることはできますが、右桂や右香を活用するタイミングや、
陣形のバランスの取り方が難しくなります。
先手はバランス重視、後手は堅さ重視の陣形となりました。
お互いに攻め込めないので長い戦いとなります。
43手目:形勢判断と候補手
互角:▲4六歩、▲4七銀 など
43手目は▲4六歩と打って、歩で桂を支えるのが手筋です。
自分から4筋の歩を交換しにいったのに、
すぐに自分だけ元の位置に歩を打つので、一見すると損にも見えます。
しかし、相手の囲いの銀を引き離して動けなくしているうえに、
桂が遊んだり、タダで取られたりする可能性が減り、
また、飛車先の歩交換が行えるようにもなったので、バランスは取れています。
尚、この局面で▲4七銀という手もあります。
△4五銀と桂を取られても▲4六歩と打てば銀を取り返すことができます。
また、△3七角成と成る隙も生じますが、
▲4六角と出れば飛車馬両取りなので、すぐに馬を消すことができます。
先手としては歩を温存できますが、注意すべき変化が増えます。
後手玉が堅いことを考慮すると、少し難しい指し方にはなります。
お互いに銀が攻めに参加していないため、ゆっくりとした戦いになっています。
戦力不足なので、仕掛けてもなかなかうまくいきません。
よって、終盤で遊び駒が残らないように意識して駒組みを進めていきます。
後手の角道が止まったので、先手は角を2筋へ移動させて活用します。
依然としてお互いに仕掛け方は難しいですが、大駒の働きに差が出てしまうと
逆転しづらい優劣が付いてしまうことも多いので注意しましょう。
中盤
64手目:形勢判断と候補手
互角:△6四歩
64手目は△6四歩と打って、後手も跳ねた桂を歩で支えます。
この後、桂の隣の筋で、歩を突き捨ててから
歩を叩いたり垂らしたりする攻めを狙います。
尚、△6六角 ▲同金 △5七銀という筋も頭に入れておきます。
手順に相手陣の金銀を剥がしながら食い付くことができるならば
多少の駒損をしても問題ないことが多いです。
現状は、▲6七金と引いておけば攻めが続きませんし、
先手に角を渡すと▲7一角のような反撃が厳しいため、成立しません。
69手目:形勢判断と候補手
先手有利:▲同香
香交換が主な目的の端攻めは素直に応じておきましょう。
香を手にしながら、手番を握ることもできるので、攻めやすくなります。
但し、この局面で後手の持ち駒に歩がある場合は、
▲同香に△9八歩や△9七歩のような
垂れ歩を警戒する必要があります。
持ち駒の歩が1枚以下の状況で端を仕掛けるのは
少し無理気味なことが多いです。
75手目:形勢判断と候補手
互角:▲2八香、▲2七香 など
持ち駒に香がある場合、角頭と歩の裏は常に意識しましょう。
75手目の局面では、後手が△2四香と打つ手が真っ先に見えている必要があります。
対して、▲4四角と切れば、角と銀香の2枚替えにはなるので
必ずしも受ける必要はなさそうです。
75手目は2筋突破のために香を打っておく手が厳しいです。
△2四香をけん制していることもあり、味が良いです。
尚、先手の持ち駒が香ではなく桂ならば、
▲1六桂と打つ手が厳しくなることも多いです。
飛車先に桂や香の利きを足す攻め方は、
矢倉では特によく出てきますので、意識しておきましょう。
87手目:形勢判断と候補手
互角:▲1四歩、▲4四角、▲6八玉 など
87手目は思い切って攻めるならば▲1四歩や▲4四角です。
しかし後には引けないので怖い手でもあります。
攻めないならば、▲6八玉が実戦的な好手となりやすいです。
▲7四桂 △8七飛成という手順が王手にならないので
▲6二桂成と金を取ることができるうえに、
後手が桂を入手しても△6六桂と打つ手が王手金取りになりません。
本譜は▲5五歩と突きました。
「
三歩持ったら継ぎ歩と垂れ歩」という格言通りに
先手は2筋から手を付けていきます。
但し、それだけで攻めが決まるということは少ないです。
歩を多く持ち駒に加えた相手からの反撃を遅らせるためにも
別の場所でも争点を作って、攻め続けることができるようにしておきましょう。
先手は何とか攻めを繋げようとしていますが、
持ち駒不足で切れ模様です。
このような場合、後手は中途半端に受けてはいけません。
相手に新たな攻め筋を作る猶予を与えないためにも、
持ち駒を惜しみなく投入して、受け切りを狙いましょう。
終盤
114手目:形勢判断と候補手
後手優勢:△6六桂、△4二玉、△4一玉 など
攻め続けていた先手が、自陣に手を入れました。
これは明らかに変調で、攻守入れ替えのチャンスです。
しかし、後手も攻め駒が少ないので、攻めるならば慎重にいきます。
先手の持ち駒を増やすような手をすぐに指してはいけません。
「
玉の守りの金を攻めよ」で△6六桂と打つ手は
先手の角道を止めていることもあり、無難で味が良いです。
また、先手自身が攻めの継続を諦めたことに追い打ちをかける意味で、
△4二玉や△4一玉のように完封を狙う指し方も有力です。
先手も何とか攻めを続けようと食い付きます。
相手のミスを誘うためにも、なるべく安い駒で
駒取りとなるような手を指し続けると、手抜きしづらいので有効です。
130手目:形勢判断と候補手
後手優勢:△同金
130手目は△同金と取りたいです。
自玉付近に歩の拠点を残すことはかなり危険です。
▲5一角は気になりますが、
△2四銀と香を取りながら、3三の金取りを受けておきます。
▲6二角成と金はタダで取られますが、
相手の攻め駒が自玉から離れるので、そこまで怖くはありません。
後手は香と手番を入手することで、△5五桂という厳しい攻めに移ることができます。
138手目:形勢判断と候補手
後手優勢:△5四香、△4四金
後手玉は詰まないので「
香を持ったら歩の裏を狙え」で
△5四香と打ちながら、先手玉に詰めろをかける手が非常に厳しいです。
本譜は△4三金打としたため、
難しい変化はあるものの、一気に逆転してしまいました。
「絶対に負けたくない」という意識が働くと
優勢な状況で受けすぎてしまうことがよくあります。
しかし、持ち駒を使った受けは、自らの攻め筋をなくしているとも言えます。
優勢な終盤では手抜きすることを強めに意識しておくと良いでしょう。
147手にて、後手の金井六段が投了し、高見六段が4連勝で叡王獲得となりました。
投了図以降は、△2二玉 ▲2一金 △1二玉 と後手玉を端に追いつめてから
▲4三銀成と金を取れば必至がかかります。
本局では高見六段の局面を複雑にする粘り方が非常に勉強になりました。
棋譜
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棋戦:第3期叡王戦決勝七番勝負 第4局
先手:高見泰地六段
後手:金井恒太六段
手数----指手---------消費時間--
1 7六歩(77) ( 0:00/00:00:00)
2 8四歩(83) ( 0:00/00:00:00)
3 6八銀(79) ( 0:00/00:00:00)
4 3四歩(33) ( 0:00/00:00:00)
5 7七銀(68) ( 0:00/00:00:00)
6 6二銀(71) ( 0:00/00:00:00)
7 2六歩(27) ( 0:00/00:00:00)
8 4二銀(31) ( 0:00/00:00:00)
9 2五歩(26) ( 0:00/00:00:00)
10 3三銀(42) ( 0:00/00:00:00)
11 5六歩(57) ( 0:00/00:00:00)
12 3二金(41) ( 0:00/00:00:00)
13 4八銀(39) ( 0:00/00:00:00)
14 4一玉(51) ( 0:00/00:00:00)
15 7八金(69) ( 0:00/00:00:00)
16 5四歩(53) ( 0:00/00:00:00)
17 6九玉(59) ( 0:00/00:00:00)
18 7四歩(73) ( 0:00/00:00:00)
19 3六歩(37) ( 0:00/00:00:00)
20 5二金(61) ( 0:00/00:00:00)
21 5八金(49) ( 0:00/00:00:00)
22 3一角(22) ( 0:00/00:00:00)
23 7九角(88) ( 0:00/00:00:00)
24 4四歩(43) ( 0:00/00:00:00)
25 6六歩(67) ( 0:00/00:00:00)
26 9四歩(93) ( 0:00/00:00:00)
27 9六歩(97) ( 0:00/00:00:00)
28 6四角(31) ( 0:00/00:00:00)
29 3七桂(29) ( 0:00/00:00:00)
30 3一玉(41) ( 0:00/00:00:00)
31 6七金(78) ( 0:00/00:00:00)
32 2二玉(31) ( 0:00/00:00:00)
33 7八玉(69) ( 0:00/00:00:00)
34 5三銀(62) ( 0:00/00:00:00)
35 4六歩(47) ( 0:00/00:00:00)
36 7三角(64) ( 0:00/00:00:00)
37 2九飛(28) ( 0:00/00:00:00)
38 4二銀(53) ( 0:00/00:00:00)
39 4五歩(46) ( 0:00/00:00:00)
40 同 歩(44) ( 0:00/00:00:00)
41 同 桂(37) ( 0:00/00:00:00)
42 4四銀(33) ( 0:00/00:00:00)
43 4六歩打 ( 0:00/00:00:00)
44 4三銀(42) ( 0:00/00:00:00)
45 2四歩(25) ( 0:00/00:00:00)
46 同 歩(23) ( 0:00/00:00:00)
47 同 飛(29) ( 0:00/00:00:00)
48 2三歩打 ( 0:00/00:00:00)
49 2九飛(24) ( 0:00/00:00:00)
50 8五歩(84) ( 0:00/00:00:00)
51 4七銀(48) ( 0:00/00:00:00)
52 6四歩(63) ( 0:00/00:00:00)
53 5七角(79) ( 0:00/00:00:00)
54 8四角(73) ( 0:00/00:00:00)
55 4八角(57) ( 0:00/00:00:00)
56 7三桂(81) ( 0:00/00:00:00)
57 2六角(48) ( 0:00/00:00:00)
58 6三金(52) ( 0:00/00:00:00)
59 1六歩(17) ( 0:00/00:00:00)
60 6五歩(64) ( 0:00/00:00:00)
61 同 歩(66) ( 0:00/00:00:00)
62 同 桂(73) ( 0:00/00:00:00)
63 6六銀(77) ( 0:00/00:00:00)
64 6四歩打 ( 0:00/00:00:00)
65 1五歩(16) ( 0:00/00:00:00)
66 9五歩(94) ( 0:00/00:00:00)
67 同 歩(96) ( 0:00/00:00:00)
68 9六歩打 ( 0:00/00:00:00)
69 同 香(99) ( 0:00/00:00:00)
70 9五香(91) ( 0:00/00:00:00)
71 同 香(96) ( 0:00/00:00:00)
72 同 角(84) ( 0:00/00:00:00)
73 9六歩打 ( 0:00/00:00:00)
74 5一角(95) ( 0:00/00:00:00)
75 2七香打 ( 0:00/00:00:00)
76 8六歩(85) ( 0:00/00:00:00)
77 同 歩(87) ( 0:00/00:00:00)
78 同 飛(82) ( 0:00/00:00:00)
79 8七歩打 ( 0:00/00:00:00)
80 8二飛(86) ( 0:00/00:00:00)
81 6五銀(66) ( 0:00/00:00:00)
82 8一香打 ( 0:00/00:00:00)
83 8六桂打 ( 0:00/00:00:00)
84 6五歩(64) ( 0:00/00:00:00)
85 6四歩打 ( 0:00/00:00:00)
86 6二金(63) ( 0:00/00:00:00)
87 5五歩(56) ( 0:00/00:00:00)
88 3五歩(34) ( 0:00/00:00:00)
89 5四歩(55) ( 0:00/00:00:00)
90 8三飛(82) ( 0:00/00:00:00)
91 4八角(26) ( 0:00/00:00:00)
92 5四銀(43) ( 0:00/00:00:00)
93 2四歩打 ( 0:00/00:00:00)
94 同 歩(23) ( 0:00/00:00:00)
95 2五歩打 ( 0:00/00:00:00)
96 同 歩(24) ( 0:00/00:00:00)
97 2四歩打 ( 0:00/00:00:00)
98 3一玉(22) ( 0:00/00:00:00)
99 2五香(27) ( 0:00/00:00:00)
100 2二歩打 ( 0:00/00:00:00)
101 5三歩打 ( 0:00/00:00:00)
102 3四銀打 ( 0:00/00:00:00)
103 6九玉(78) ( 0:00/00:00:00)
104 3三桂(21) ( 0:00/00:00:00)
105 6三歩成(64) ( 0:00/00:00:00)
106 同 銀(54) ( 0:00/00:00:00)
107 3五歩(36) ( 0:00/00:00:00)
108 同 銀(44) ( 0:00/00:00:00)
109 3六歩打 ( 0:00/00:00:00)
110 4四銀(35) ( 0:00/00:00:00)
111 3三桂成(45) ( 0:00/00:00:00)
112 同 角(51) ( 0:00/00:00:00)
113 7七金(67) ( 0:00/00:00:00)
114 6六桂打 ( 0:00/00:00:00)
115 6八金(58) ( 0:00/00:00:00)
116 8八歩打 ( 0:00/00:00:00)
117 3五桂打 ( 0:00/00:00:00)
118 8九歩成(88) ( 0:00/00:00:00)
119 2三歩成(24) ( 0:00/00:00:00)
120 同 歩(22) ( 0:00/00:00:00)
121 同 桂成(35) ( 0:00/00:00:00)
122 2四歩打 ( 0:00/00:00:00)
123 同 成桂(23) ( 0:00/00:00:00)
124 同 角(33) ( 0:00/00:00:00)
125 同 香(25) ( 0:00/00:00:00)
126 2三歩打 ( 0:00/00:00:00)
127 3五歩(36) ( 0:00/00:00:00)
128 同 銀(44) ( 0:00/00:00:00)
129 3三歩打 ( 0:00/00:00:00)
130 2二金(32) ( 0:00/00:00:00)
131 6六金(77) ( 0:00/00:00:00)
132 同 歩(65) ( 0:00/00:00:00)
133 同 角(48) ( 0:00/00:00:00)
134 2四歩(23) ( 0:00/00:00:00)
135 4四桂打 ( 0:00/00:00:00)
136 3三金(22) ( 0:00/00:00:00)
137 5一角打 ( 0:00/00:00:00)
138 4三金打 ( 0:00/00:00:00)
139 6二角成(51) ( 0:00/00:00:00)
140 6四香打 ( 0:00/00:00:00)
141 3二歩打 ( 0:00/00:00:00)
142 2一玉(31) ( 0:00/00:00:00)
143 6三馬(62) ( 0:00/00:00:00)
144 同 飛(83) ( 0:00/00:00:00)
145 3一歩成(32) ( 0:00/00:00:00)
146 同 玉(21) ( 0:00/00:00:00)
147 3二銀打 ( 0:00/00:00:00)
148 投了 ( 0:00/00:00:00)
まで147手で先手の勝ち
叡王戦第3局
第4期叡王戦第1局