目次
解説動画
王将戦第1局
王将戦第3局
対局情報
局面解説概要
序盤
22手目:形勢判断と候補手
互角:△3三角、△4二銀上、△4二金寄、△6四銀 など
22手目は居飛車側の
駒組みの分岐点です。
△3三角~△2二玉~△3二銀の「左美濃」、△4二金寄の「箱入り娘」、
△4二銀上~△3一金の「elmo囲い」のいずれも有力です。
他に△6四銀と上がって、5筋の歩交換を防ぐような指し方もあります。
27手目:形勢判断と候補手
互角:▲8八飛、▲7八金、▲6八金 など
先手は左金を活用したいところです。しかし、自分の飛車が邪魔で、
すぐに▲5八金左と上がることができないのが中飛車の欠点です。
27手目で、本譜は▲6八金と上がりました。
バランスを取りつつ、場合によっては▲5七金~▲4七金を含みにしています。
他に、▲8八飛と回ってから▲5八金左として自玉を堅くする手順や、
▲7八金と上がってしっかりと陣形のバランスを取る手も有力です。
36手目:形勢判断と候補手
互角:△7三桂、△6三金、△3三角 など
先手は駒組みに苦労していますが、
これは後手が△6五歩と突く
仕掛けを警戒しているためです。
主導権を後手に握られているので、わずかに先手の作戦負けと言えますが、
角道を止める振り飛車では、居飛車側が仕掛けるまで我慢することも必要です。
39手目:形勢判断と候補手
▲7五歩、▲6八飛
39手目で▲同歩と取ってはいけません。
△7七角成~△8六歩と攻められてしまいます。
7七の角は8六の地点を守るという重要な役割があります。
現状、△8六歩を上回る攻め合いは見込めないため、まだ交換は拒否します。
ここで受けの手筋は6筋の逆襲を狙う▲6八飛です。
また、飛車が7筋にいることを生かして▲7五歩と突く手も有力です。
43手目:形勢判断と候補手
互角:▲4七金、▲3六歩、▲7八銀 など
後手は金を上下に往復しましたが、
決して
千日手狙いをしている訳ではありません。
先手が最善のバランスを保ったままで
手待ちをできないことを見越しており、
先手陣に隙ができるのを待つという高度な指し方です。
中盤
49手目:形勢判断と候補手
互角:▲同飛成
49手目で飛車交換を拒否して▲6三歩 △同金 ▲7一角は形勢を損ねます。
金駒の援軍に期待できず、攻めが細い状態での歩切れは致命的です。
先手は
合駒ができない以上、ここでは▲同飛成と取る手が有力ですが、
本譜は▲6七飛と引きました。
6七で後手から飛車を交換してもらった方が、
手順に左銀が活用できるうえに、後手陣の金・桂・香が
浮いたままになります。
但し、飛車が向かい合った際、縦に逃げる手は得することが少ないです。
▲同飛成 △同金に▲8八角と打って自陣の隙をなくした方が粘りやすいです。
59手目:形勢判断と候補手
後手有利:▲8三角、▲8四角
先手は桂香が取られそうなので、
駒損を避けるために後手陣の桂香を取りにいきたくもなりますが、
玉の堅さが同じくらいなので、単純な攻め合いは1手負けします。
59手目は▲7一飛のように攻めだけを狙った手ではなく、
▲8三角や▲8四角から馬を作り、攻防に利かせる指し方が有力です。
63手目:形勢判断と候補手
後手有利:▲6三歩、▲6四歩、▲5五歩、▲9七香 など
63手目で本譜は▲6三歩と打ちました。
6二の金を動かすことで有効な飛車の打ち場所を作る狙いがあります。
尚、▲6四歩と
垂らした方が、次の▲6三歩成が受けづらそうに見えますが、
これには△9二角が好手で、先手は粘りの要となる馬を消されてしまいます。
他、後手の持ち駒に
頭の丸い駒しかないことに着目して、
▲9七香と逃げるような手も意外と有力です。
駒を逃げるだけの手はジリ貧になることも多いのですが、
相手の読みに無い手でビックリさせて、無理攻めを誘う勝負術です。
72手目:形勢判断と候補手
後手有利:△9三角、△7七角
次に▲5四歩 △同銀 ▲6二歩成のようになると後手も忙しくなります。
しかし、持ち駒が角と桂だけで4枚の美濃囲いを攻め切ることもできません。
このような場合は、優先的に攻防手を探します。
攻防手は大駒によって生じやすいので、飛車と角と離れ駒に着目します。
72手目で△7七角と打つ手は有力です。
△5九角成からの2枚替えと、△5五角成と歩を払う狙いがあります。
本譜は△9三角と打ちました。
こちらは5七の銀取りと、△7一金と引いて飛車を捕まえる狙いがあります。
78手目:形勢判断と候補手
後手優勢:△6七桂、△8八飛、△7八飛
78手目で△4二銀引や△4四銀と逃げておくても有力ですが、
▲6二歩成と金取りに成ってから▲6九歩と
底歩を打つ粘りがあります。
5三の銀を取られても後手玉に詰めろがかかるような状況ではありません。
ここでは銀を取らせている間に攻めることを考えます。
終盤
88手目:形勢判断と候補手
後手有利:△7五飛成、△5九竜、△8七竜 など
後手は持ち駒の少なさが気になります。
△9八竜と香を取っても現状では有効な打ち場所がありません。
88手目は「
遊び駒を活用せよ」で、9三の角が働いていないことに着目し、
角の利きを遮っている駒を除去する△7五飛成が有力です。
尚、△7五角は着眼点は良いのですが、▲同馬 △同飛成の瞬間が少し甘いです。
以下、▲4五角(竜取り) △9八竜 ▲3四角で攻守が逆転します。
本譜と比較するとよく分かるのですが、後手の攻めの速さが1手違います。
先手が欲しい駒は飛車よりも角なのです。
104手目:形勢判断と候補手
後手勝勢:△4七銀、△4七歩 など
後手玉は薄いですが、先手の攻め駒から2マス離れているのでかなり安全です。
先手に駒を渡さなければ、次に
詰めろがかかることもありません。
このような場合は、先手玉に対して無理に詰めろをかける必要がありません。
必至や厳しい詰めろをかけやすくなる手を探すのが確実です。
104手目で、9八の竜の横利きを生かした△4七銀は寄せの手筋で有力ですが、
この銀が後で質駒となるリスクがわずかにあります。
本譜は△4七歩と打ちました。
歩を使った攻めはローリスクハイリターンなので実戦的です。
106手目:形勢判断と候補手
後手勝勢:△2四金、△4六竜 など
106手目に△4八銀と攻めてはいけません。
▲同銀 △同歩成で先手玉に必至がかかりますが、先手に銀を渡したので、
▲2一馬 △同玉 ▲3二銀 △1二玉 ▲2三銀上成で詰まされてしまいます。
先手は最後の罠を仕掛けてきています。
本譜は△2四金と打って相手の希望をしっかりと打ち砕きました。
特に自玉が薄いときは、相手が罠を仕掛けやすいので、
勝ちだと思っても、最後まで気を緩めないようにしましょう。
112手目:形勢判断と候補手
後手勝勢:△4八銀、△5九竜 など
112手目で△4四角や△1二金と打って完封を狙う指し方も有力ですが、
さすがに安全すぎます。
勝ちが遠のきますし、自分の持ち駒が減って寄せが難しくなるので、
逆転しやすくなる恐れがあります。
本譜は、4七の歩の拠点を生かして△4八銀と打ちました。
次に△3九銀不成からの詰めろになっています。
尚、同じ様でも△4八金と打ってはいけません。
この手は詰めろになっていないのです。
無理に王手を続ける手順としては△3八金 ▲同銀 △同竜 ▲同金ですが、
玉の隣に金が残ってしまうと、玉を引っ張り出すことができません。
詰将棋を解いて詰む形を身に付けることも重要ですが、
実戦の中から詰まない形も身に付けることで、より終盤力が上がります。
126手にて、先手の久保王将が投了し、渡辺棋王の2勝となりました。
投了図以降、▲同銀 △同竜 ▲同玉に
持ち駒を5七から打っていけば追い詰めとなります。
本局では渡辺棋王の確実な美濃攻略が非常に勉強になりました。
棋譜
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棋戦:第68期王将戦七番勝負 第2局
先手:久保利明王将
後手:渡辺明棋王
手数----指手---------消費時間--
1 5六歩(57) ( 0:00/00:00:00)
2 8四歩(83) ( 0:00/00:00:00)
3 7六歩(77) ( 0:00/00:00:00)
4 6二銀(71) ( 2:00/00:02:00)
5 5八飛(28) ( 6:00/00:06:00)
6 4二玉(51) ( 2:00/00:04:00)
7 4八玉(59) ( 3:00/00:09:00)
8 8五歩(84) ( 4:00/00:08:00)
9 7七角(88) ( 3:00/00:12:00)
10 5四歩(53) ( 1:00/00:09:00)
11 6八銀(79) (14:00/00:26:00)
12 3四歩(33) ( 4:00/00:13:00)
13 3八玉(48) ( 5:00/00:31:00)
14 3二玉(42) ( 5:00/00:18:00)
15 2八玉(38) (10:00/00:41:00)
16 5二金(61) ( 7:00/00:25:00)
17 1六歩(17) ( 9:00/00:50:00)
18 1四歩(13) (12:00/00:37:00)
19 3八銀(39) (14:00/01:04:00)
20 5三銀(62) ( 4:00/00:41:00)
21 4六歩(47) ( 5:00/01:09:00)
22 4二銀(31) ( 8:00/00:49:00)
23 6六歩(67) ( 9:00/01:18:00)
24 7四歩(73) ( 4:00/00:53:00)
25 6七銀(68) ( 5:00/01:23:00)
26 6四歩(63) ( 9:00/01:02:00)
27 6八金(69) ( 7:00/01:30:00)
28 3一金(41) ( 5:00/01:07:00)
29 9六歩(97) ( 3:00/01:33:00)
30 9四歩(93) ( 3:00/01:10:00)
31 5九飛(58) ( 7:00/01:40:00)
32 7二飛(82) (23:00/01:33:00)
33 7九飛(59) ( 8:00/01:48:00)
34 8二飛(72) ( 7:00/01:40:00)
35 7八飛(79) (18:00/02:06:00)
36 7三桂(81) (53:00/02:33:00)
37 5八金(68) ( 6:00/02:12:00)
38 6五歩(64) (10:00/02:43:00)
39 6八飛(78) (34:00/02:46:00)
40 5一金(52) (26:00/03:09:00)
41 9八香(99) ( 4:00/02:50:00)
42 5二金(51) (31:00/03:40:00)
43 7八銀(67) (66:00/03:56:00)
44 6六歩(65) (23:00/04:03:00)
45 同 角(77) ( 3:00/03:59:00)
46 同 角(22) ( 6:00/04:09:00)
47 同 飛(68) ( 0:00/03:59:00)
48 6二飛(82) ( 0:00/04:09:00)
49 6七飛(66) ( 4:00/04:03:00)
50 同 飛成(62) (27:00/04:36:00)
51 同 銀(78) ( 0:00/04:03:00)
52 6九飛打 ( 1:00/04:37:00)
53 5九飛打 (32:00/04:35:00)
54 同 飛成(69) (15:00/04:52:00)
55 同 金(58) ( 2:00/04:37:00)
56 6六歩打 ( 0:00/04:52:00)
57 同 銀(67) (23:00/05:00:00)
58 9九飛打 ( 1:00/04:53:00)
59 8三角打 (36:00/05:36:00)
60 8九飛成(99) (30:00/05:23:00)
61 7四角成(83) ( 5:00/05:41:00)
62 6二金(52) ( 1:00/05:24:00)
63 6三歩打 (26:00/06:07:00)
64 7二金(62) (11:00/05:35:00)
65 5五歩(56) ( 6:00/06:13:00)
66 1五歩(14) (46:00/06:21:00)
67 6一飛打 (12:00/06:25:00)
68 1六歩(15) ( 8:00/06:29:00)
69 1八歩打 ( 3:00/06:28:00)
70 6五歩打 (12:00/06:41:00)
71 5七銀(66) (30:00/06:58:00)
72 9三角打 ( 3:00/06:44:00)
73 7五歩(76) ( 0:00/06:58:00)
74 7一金(72) ( 0:00/06:44:00)
75 3一飛成(61) ( 0:00/06:58:00)
76 同 銀(42) ( 0:00/06:44:00)
77 5二金打 ( 5:00/07:03:00)
78 6七桂打 (19:00/07:03:00)
79 4八金(59) ( 1:00/07:04:00)
80 5九桂成(67) ( 0:00/07:03:00)
81 3九金(49) ( 0:00/07:04:00)
82 7八飛打 (17:00/07:20:00)
83 5三金(52) ( 3:00/07:07:00)
84 5八成桂(59) ( 0:00/07:20:00)
85 4九銀打 ( 3:00/07:10:00)
86 5七成桂(58) ( 1:00/07:21:00)
87 同 金(48) ( 0:00/07:10:00)
88 7五飛成(78) ( 3:00/07:24:00)
89 8三馬(74) (10:00/07:20:00)
90 7七竜(75) ( 4:00/07:28:00)
91 9三馬(83) ( 8:00/07:28:00)
92 同 香(91) ( 0:00/07:28:00)
93 4五角打 (15:00/07:43:00)
94 9八竜(89) ( 0:00/07:28:00)
95 3四角(45) ( 0:00/07:43:00)
96 5七竜(77) ( 8:00/07:36:00)
97 4三角成(34) ( 0:00/07:43:00)
98 2二玉(32) ( 0:00/07:36:00)
99 4二金(53) ( 0:00/07:43:00)
100 同 銀(31) ( 5:00/07:41:00)
101 3四桂打 ( 3:00/07:46:00)
102 1二玉(22) ( 0:00/07:41:00)
103 4二桂成(34) ( 1:00/07:47:00)
104 4七歩打 ( 6:00/07:47:00)
105 1四銀打 ( 6:00/07:53:00)
106 2四金打 ( 4:00/07:51:00)
107 3一成桂(42) ( 0:00/07:53:00)
108 1四金(24) ( 0:00/07:51:00)
109 2一馬(43) ( 0:00/07:53:00)
110 1三玉(12) ( 0:00/07:51:00)
111 3二成桂(31) ( 0:00/07:53:00)
112 4八銀打 ( 3:00/07:54:00)
113 2二馬(21) ( 2:00/07:55:00)
114 2四玉(13) ( 0:00/07:54:00)
115 4八銀(49) ( 1:00/07:56:00)
116 同 歩成(47) ( 0:00/07:54:00)
117 3三馬(22) ( 0:00/07:56:00)
118 3五玉(24) ( 0:00/07:54:00)
119 3六歩(37) ( 0:00/07:56:00)
120 4六玉(35) ( 0:00/07:54:00)
121 3七銀打 ( 0:00/07:56:00)
122 5六玉(46) ( 0:00/07:54:00)
123 4八金(39) ( 0:00/07:56:00)
124 3九銀打 ( 0:00/07:54:00)
125 同 玉(28) ( 0:00/07:56:00)
126 4八竜(98) ( 0:00/07:54:00)
127 投了 ( 0:00/07:56:00)
まで126手で後手の勝ち
王将戦第1局
王将戦第3局