目次
解説動画
棋聖戦第2局
棋聖戦第4局
対局情報
豊島 将之 棋聖(三冠)<後手>
渡辺 明 二冠<先手>
局面解説
序盤
27手目:形勢判断と候補手
互角:▲6六歩、▲3七銀 など
27手目で▲6九玉や▲5八金のように
駒組みを進めてしまうと、
△6五桂~△8六歩といきなり
仕掛けられてしまう恐れがあります。
現局面は、後手の角の
利きが通っていることもあり、
角換わり以上に△6五桂の急襲を
咎めづらい状態です。
ここでは▲3七銀と上がって攻め合いを見せる指し方も有力ですが、
本譜は▲6六歩と突いて桂跳ねを防ぎました。
37手目:形勢判断と候補手
互角:▲6七金右、▲3七角、▲9六歩、▲6八銀右、▲8八玉 など
後手がバランスの良い陣形を完成させたため、
どのタイミングで△6五歩と仕掛けてきてもおかしくありません。
先手はすべての
金駒を囲いに投入しており、全力で迎え撃つ方針ですので、
△6五歩に続く攻めまで見越して、更なる準備をしておきます。
本譜は▲6七金右と上がりました。
争点になりそうな上部を
手厚くする自然な手です。
38手目:形勢判断と候補手
互角:△6五歩、△4五歩、△1四歩、△3一角 など
現時点で後手の角があまり働いていませんが、
今後の方針として2二のまま使うか、3一に引いて使うかを考えます。
角を2二のままで使う場合、△4五歩と
角筋を通すことになりますが、
▲3七角~▲2六角が6二の金取りになったり、
▲3七桂~▲4五桂が実現しやすくなったりして、
先手からの反撃が分かりやすくなる点に注意が必要です。
角を3一に引いて使う場合、先手が▲8八玉と入城しやすくなる点と、
▲2二歩と打って陣形を崩す手筋が生じる点に注意が必要です。
いずれも有力ですが、本譜は△3一角と引きました。
中盤
43手目:形勢判断と候補手
互角:▲8八玉、▲1五歩、▲5五歩
42手目の△6五歩に対して▲同歩とは取りません。
△同桂が銀の
両取りになってしまいます。
後手の右桂が盤上からなくなれば、しばらく追撃はありませんが、
序盤の
駒損は選択肢が狭まって作戦負けに繋がりやすいため避けるべきです。
本譜は▲1五歩と突きました。
これは1筋の端攻めを狙っているというよりも、
後手が△2二玉と囲う手の価値を下げることで、
先手が玉の堅さにおいて確実に優位を維持しようという手です。
52手目:形勢判断と候補手
互角:△9七歩、△9六歩、△6四角 など
52手目で後手が9筋を攻めるならば△9七歩も△9六歩も有力です。
△9七歩の方がより積極的で、▲同香に△9八歩と
垂らすのが手筋です。
先手は9九に と金を作られないために▲8八玉と上がって受けますが、
△9九歩成 ▲同玉に△9七角成の強襲が狙いです。
後手は駒損になりますが、先手玉が隅で孤立しているため、
この端攻めは先手にとって怖い展開が続きます。
本譜は△9六歩と垂らしました。
△9五香 ▲9八歩となれば先手玉はかなり狭くなります。
ここでは、他に△6四角とぶつける手も有力です。
先手陣は金駒が上ずっているので、有力な角打ちが生じやすいのですが、
▲4六角や▲3七角と引かれてしまうと角交換に応じてもらえないため、
先手の角が5五にいる今だけがチャンスです。
54手目:形勢判断と候補手
互角:△8六歩、△9八歩
54手目は△8六歩 ▲同歩 △同角と迫る手順が有力です。
以下▲同銀 △同飛となれば、△9六飛と香が取れる形なので、
2枚替えのうえに端を突破して後手の攻めが好調です。
本譜は△4一玉と引いて、戦いに備えましたが、
▲8八玉と上がられて8筋と9筋が手厚くなってしまい、機を逃しました。
61手目:形勢判断と候補手
互角:▲2二歩、▲6四歩、▲6三歩、▲6八飛 など
局面が少し落ち着いたので、
先手としては少し反撃を見せておきたいところです。
本譜は▲6四歩と打ちました。
後手の角の利きを止めて△8六歩からの攻めを緩和しつつ、
▲5五桂~▲6三歩成で金駒の入手を狙っています。
他に、▲2二歩も手筋です。
後手から▲2一歩成よりも厳しい攻めがないため、
△同金と取りますが、ここで形を乱しておくと
終盤で生きてきます。
尚、▲2四歩 △同歩 ▲2五歩の
継ぎ歩から
十字飛車を狙う攻めは、
盤を広く見ていて、着眼点は良いのですが、
後手玉が離れていて、少し甘い攻めとなるため、
△8六歩や△5六歩と攻め合われると少し間に合いません。
67手目:形勢判断と候補手
先手有利:▲6六銀右、▲2二歩
67手目で▲5四桂と銀を取ってはいけません。
△同銀で6三に利いている数は変わらないので、
6筋を突破できるようになる訳ではありませんし、
何より△8四桂と香取りに打つ反撃が厳しいため、
桂は後手に渡しづらい駒の筆頭なのです。
本譜は▲6六銀右として力を溜めました。
後手が△4五銀と逃げる余裕はないため、銀桂交換の権利は残ります。
駒交換は相手の攻め筋を増やしてしまうことにも繋がります。
相手を困らせるためにも、後回しにできるか否かは常に考えましょう。
78手目:形勢判断と候補手
先手有利:△7三金寄
78手目は△7三金寄とかわす手が有力です。
自玉から離れるので感触は悪いのですが、
後手は6筋を突破されたらほとんど負けなので、
自玉の堅さよりも6筋の突破阻止の方が優先度が高いです。
本譜は△5三金と寄りましたが、手順に▲5四歩や▲7三角成が生じたため、
6筋の勢力が逆転して、受けが苦しくなりました。
終盤
83手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲7四銀成、▲7四銀不成
83手目は▲7四銀成あるいは▲7四銀不成が有力です。
次の▲6三歩成~▲7三角成が確実で、攻めとして厳しいだけでなく、
後手にとって最大の希望である△8四桂を受けてもいます。
好調に攻めている時こそ、
相手からの最も厳しい攻め筋を忘れないようにすることは重要です。
94手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:△同歩、△同角 など
94手目は△同歩と取るのが最善ではあるのですが、
角の利きが止まって、△8六歩の厳しさが半減してしまいます。
3一に角を残したままにしておく訳にはいかないので、
負けは早まりますが、駒損覚悟で△同角と取る手は実戦的に有力です。
本譜は負けを悟って△8六歩から攻め合いの形を作りにいきました。
100手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:△同飛、△同角
100手目から△同角 ▲同銀 △同飛となれば、
2枚替えのうえに飛車角が
捌けて少しは楽しみが出てくるのですが、
△同角には▲8二歩が冷静な受けです。
飛車が押さえ込まれてしまっては攻めが続きません。
105手にて、後手の豊島棋聖が投了し、豊島棋聖の1勝、渡辺二冠の2勝となりました。
投了図以降、後手に△3一角と逃げるような余裕はありませんが、
攻め合うにしても、先手玉は広いため、攻め駒が足りません。
一方、先手は▲6二と からの攻めが確実です。
△3二金~△3一玉~△2二玉と逃げても負けを先延ばしにするだけです。
本局では、渡辺二冠の、
玉形の差を生かした戦い方が非常に勉強になりました。
棋譜
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棋戦:第90期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第3局
先手:渡辺明二冠
後手:豊島将之棋聖
手数----指手---------消費時間--
1 7六歩(77) ( 0:00/00:00:00)
2 8四歩(83) ( 0:00/00:00:00)
3 6八銀(79) ( 1:00/00:01:00)
4 3四歩(33) ( 0:00/00:00:00)
5 7七銀(68) ( 0:00/00:01:00)
6 6二銀(71) ( 0:00/00:00:00)
7 2六歩(27) ( 0:00/00:01:00)
8 3二金(41) ( 0:00/00:00:00)
9 2五歩(26) ( 0:00/00:01:00)
10 7四歩(73) ( 1:00/00:01:00)
11 5六歩(57) ( 1:00/00:02:00)
12 6四歩(63) ( 2:00/00:03:00)
13 7九角(88) ( 2:00/00:04:00)
14 4一玉(51) ( 1:00/00:04:00)
15 7八金(69) ( 0:00/00:04:00)
16 6三銀(62) ( 1:00/00:05:00)
17 4八銀(39) ( 2:00/00:06:00)
18 7三桂(81) ( 3:00/00:08:00)
19 2四歩(25) ( 1:00/00:07:00)
20 同 歩(23) ( 0:00/00:08:00)
21 同 角(79) ( 0:00/00:07:00)
22 2三歩打 ( 0:00/00:08:00)
23 4六角(24) ( 0:00/00:07:00)
24 4二銀(31) ( 1:00/00:09:00)
25 3六歩(37) ( 1:00/00:08:00)
26 8五歩(84) ( 3:00/00:12:00)
27 6六歩(67) ( 2:00/00:10:00)
28 5四歩(53) (13:00/00:25:00)
29 5七銀(48) ( 7:00/00:17:00)
30 4四歩(43) ( 6:00/00:31:00)
31 5八金(49) ( 4:00/00:21:00)
32 4三銀(42) ( 1:00/00:32:00)
33 6九玉(59) ( 0:00/00:21:00)
34 8一飛(82) ( 0:00/00:32:00)
35 7九玉(69) ( 0:00/00:21:00)
36 6二金(61) ( 0:00/00:32:00)
37 6七金(58) ( 1:00/00:22:00)
38 3一角(22) ( 0:00/00:32:00)
39 9六歩(97) ( 7:00/00:29:00)
40 9四歩(93) ( 0:00/00:32:00)
41 1六歩(17) ( 0:00/00:29:00)
42 6五歩(64) ( 9:00/00:41:00)
43 1五歩(16) ( 9:00/00:38:00)
44 5二玉(41) ( 3:00/00:44:00)
45 5五歩(56) (17:00/00:55:00)
46 同 歩(54) (12:00/00:56:00)
47 同 角(46) ( 0:00/00:55:00)
48 6六歩(65) ( 4:00/01:00:00)
49 同 金(67) (11:00/01:06:00)
50 9五歩(94) (25:00/01:25:00)
51 同 歩(96) ( 3:00/01:09:00)
52 9六歩打 ( 0:00/01:25:00)
53 同 香(99) (15:00/01:24:00)
54 4一玉(52) (39:00/02:04:00)
55 8八玉(79) (13:00/01:37:00)
56 5四銀(63) (43:00/02:47:00)
57 3七角(55) ( 2:00/01:39:00)
58 6五桂(73) ( 0:00/02:47:00)
59 同 金(66) ( 3:00/01:42:00)
60 同 銀(54) ( 0:00/02:47:00)
61 6四歩打 ( 0:00/01:42:00)
62 5五歩打 (23:00/03:10:00)
63 6八飛(28) ( 7:00/01:49:00)
64 5四銀(65) ( 0:00/03:10:00)
65 4六桂打 ( 4:00/01:53:00)
66 5三金打 ( 0:00/03:10:00)
67 6六銀(57) ( 4:00/01:57:00)
68 5六歩(55) ( 0:00/03:10:00)
69 2二歩打 (38:00/02:35:00)
70 同 金(32) (11:00/03:21:00)
71 5四桂(46) ( 0:00/02:35:00)
72 同 銀(43) ( 0:00/03:21:00)
73 6三銀打 ( 3:00/02:38:00)
74 同 銀(54) ( 0:00/03:21:00)
75 同 歩成(64) ( 0:00/02:38:00)
76 同 金(53) ( 0:00/03:21:00)
77 6四歩打 ( 1:00/02:39:00)
78 5三金(63) ( 0:00/03:21:00)
79 6三銀打 ( 3:00/02:42:00)
80 6一金(62) ( 0:00/03:21:00)
81 5四歩打 ( 9:00/02:51:00)
82 4三金(53) ( 0:00/03:21:00)
83 7四銀成(63) ( 0:00/02:51:00)
84 6二歩打 ( 0:00/03:21:00)
85 6三歩成(64) ( 6:00/02:57:00)
86 同 歩(62) ( 0:00/03:21:00)
87 7三角成(37) ( 0:00/02:57:00)
88 6二銀打 ( 4:00/03:25:00)
89 5五馬(73) ( 1:00/02:58:00)
90 8六歩(85) ( 9:00/03:34:00)
91 同 歩(87) ( 1:00/02:59:00)
92 8五歩打 ( 0:00/03:34:00)
93 6四歩打 ( 5:00/03:04:00)
94 8六歩(85) ( 2:00/03:36:00)
95 6三歩成(64) ( 7:00/03:11:00)
96 8七歩成(86) ( 0:00/03:36:00)
97 同 金(78) ( 0:00/03:11:00)
98 8六歩打 ( 0:00/03:36:00)
99 同 金(87) ( 1:00/03:12:00)
100 同 飛(81) (12:00/03:48:00)
101 同 銀(77) ( 1:00/03:13:00)
102 同 角(31) ( 0:00/03:48:00)
103 7七銀(66) ( 2:00/03:15:00)
104 5七歩成(56) ( 0:00/03:48:00)
105 6五飛(68) ( 1:00/03:16:00)
106 投了 ( 3:00/03:51:00)
まで105手で先手の勝ち
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