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解説動画
第32期竜王戦第5局
竜王戦第2局
対局情報
読売新聞社
公益社団法人日本将棋連盟
(棋譜利用問い合わせ済み)
局面解説
序盤
11手目:形勢判断と候補手
互角:▲7八金、▲6六歩、▲7五歩 など
矢倉の出だしでしたが、早くも後手が右桂を跳ねて仕掛けを狙ってきました。
現状、先手は7七の銀でしか8筋を守っていないので、
△6五桂の銀取りに備えて、対応する必要があります。
△6五桂自体を防ぐ▲6六歩は有力ですが、
△6四歩と突かれて、6筋で争点を作られてしまう点が気になります。
本譜は▲7八金と上がりました。
手薄い場所に金の応援を送るのは、自然で手堅い指し方です。
尚、後手の作戦に乗って乱戦にするならば、
桂頭を狙って▲7五歩と突く手も面白そうです。
▲7四歩~▲7三歩成を
含みにして攻め合えば、
△7四歩~△7三桂が早いことを
咎めていると言えます。
中盤
17手目:形勢判断と候補手
互角:▲6六銀、▲2四歩
17手目で▲6六銀と逃げる手は自然で有力ですが、
△8六歩 ▲同歩 △同飛 ▲8八歩に△7六飛と
回られてしまうと、
7八の金取りになっているので、飛車を縦に動かせなくなったり、
▲4八銀のような飛車の横利きを遮る手を指せなくなったりします。
以下、▲5五歩~▲4六角~▲8七金と飛車を捕まえにいく間に、
後手が△6二銀や△4二玉と陣形整備をしていきますが、
陣形の差があるので、形勢は互角でも好みが分かれる展開です。
本譜は▲2四歩から動きましたが、こちらも有力です。
22手目:形勢判断と候補手
互角:△5二玉、△4二玉、△6二金、△2七歩 など
後手は銀桂交換の
駒得とはなりましたが、ここで自陣に手を戻して、
角交換からの▲7三角と、▲6三桂を防ぐ必要があります。
本譜は△6二金と上がりました。
部分的な形としては△6二銀の方が自然ですが、
すぐに攻め込まれることが目に見えている状況なので、
飛車に
紐を付けたままにしつつ、5三に利きを足すこともできるという、
目先のメリットの多さを重視しています。
鬼殺しのような奇襲に対しても出てくる受けの手筋で、
囲いづらくなるのが欠点ですが、どうせ囲う暇はないので問題ありません。
他に「
居玉は避けよ」で△5二玉と上がる手も有力で、
両取りの含みが減ることもあって、1手の割には安定した陣形となります。
この場合、▲7三角を防いでいないようですが、
△8六歩と突いて、飛車角交換は先手に判断を任せます。
▲7三角を防ぎたかった理由は「王手飛車だから」ではありません。
▲6四角成と馬を作られてしまい、
▲6五桂と跳ねられたり、△8六歩を防がれたりすることが嫌なので、
対抗できる攻め筋が用意できていれば、必ずしも受ける必要はないのです。
26手目:形勢判断と候補手
互角:△4五桂、△2七歩、△8六歩
先手は▲3三角成だけでなく、▲6四角~▲6五桂も狙っているので、
△3二金や△3二銀と桂取りを受けている余裕はありません。
26手目で△4五桂と取られそうな桂を跳ねて、攻め合う手は有力です。
角には成り込まれてしまいますが、
先手の
居玉に対して、5七に
拠点ができることは大きいです。
本譜は△2七歩と
叩きました。▲同飛と取らせることで7八の金が
浮くので、
あとで△8九角と打ち込む手がより厳しくなります。
△2七歩に対して、▲3三角成と
王手をかけてきた場合は、
飛車に成り込まれた後の耐久度を意識して、△4二銀打とガッチリ受けます。
33手目:形勢判断と候補手
互角:▲7九金
32手目の角打ちの対応は悩ましいです。
金に紐を付けようとして▲2八飛と
引くと、
△8六飛と1歩を補充されてから、△2七歩と叩かれてしまいます。
▲7九香は△7八角成~△8六飛で8筋の突破が受からず、
貴重な香を手放してしまうマイナスも大きいです。
▲6八玉は△8六飛 ▲8七歩 △7八角成 ▲同玉に、
△8九銀と捨てるのが手筋で、
▲同玉は△8七飛成の
一間竜で詰みですし、
▲6八玉と逃げても△8七飛成と突破されて収拾困難です。
よって、ここでは金を逃げるしかないのですが、
▲6八金は△8六飛~△8八飛成の活用がやはり厳しいです。
本譜は8筋の突破を防ぐために▲7九金と引きました。
△6七角成と急所に馬を作られてしまいますが、1一の馬が利いているので、
7七の桂が取られることはなく、▲6八香で追い払うこともできます。
43手目:形勢判断と候補手
互角:▲5八金、▲4八金
後手からの攻めとしては△5七銀と打つ手が厳しく、
6八の香を取って△6六香と打つ6筋の攻めと、
△8八飛成とする8筋の攻めを両方支えきることはできません。
よって、43手目は▲5八金と上がって、
5七への利きで数的優位に立っておく手が有力です。
受けに回る展開になるので、実戦的には怖い部分も有りますが、
▲4八銀まで間に合えば、だいぶ安定します。
本譜は▲2三飛成としましたが、
後手玉までは少し遠いので、攻めが届きませんでした。
終盤
52手にて、先手の羽生九段が投了し、豊島竜王の1勝となりました。
投了図以降、▲同桂には△同桂成 ▲同金に△7七馬と入れば、
6八に
合駒をしても△同竜で詰みとなります。
竜の横利きが通ると強烈ですので、
それを防ぐならば▲5八銀と打つしかありませんが、
△6七歩と金取りに打たれてしまうと、▲同銀と取ることはできませんし、
▲同金も△同馬と
タダで取られてしまうので、しびれています。
本局では豊島竜王の桂をうまく使った乱戦の制し方が非常に勉強になりました。
第32期竜王戦第5局
竜王戦第2局