【将棋解説】
第31期竜王戦七番勝負第6局 羽生竜王vs広瀬八段

目次

解説動画



対局情報

棋戦
第31期竜王戦七番勝負 第6局
対局日
持ち時間
8時間(2日制)
対局者
羽生 善治 竜王<後手>
広瀬 章人 八段<先手>
対局場所
鹿児島県:指宿白水館
戦型
横歩取り

局面解説概要

序盤

【将棋】第31期竜王戦七番勝負 第6局 羽生善治 竜王 対 広瀬章人 八段の対局で17手指した局面
point
18手目:形勢判断と候補手
互角:△5二玉、△2二銀、△8二飛 など
18手目に△7六飛として、後手も横歩を取った場合、
手数は長いのですが、ほぼ一直線の変化で先手有利となります。

(手順の一例)
▲3三角成 △同桂 ▲8四飛 △8二歩 ▲8三歩 △7二金 ▲8二歩成 △同銀 ▲8五角 △8三歩 ▲7六角 △8四歩 ▲2一飛

特に横歩取りでは、つい指してしまうような悪手がたくさんあります。
序盤の指し手が敗着となることも珍しくありません。
いつも以上に手番・質駒・離れ駒に気を配ることが必要ですし、
経験を生かしてミスを減らすために指し手を決めてしまうことも実戦的です。




【将棋】第31期竜王戦七番勝負 第6局 羽生善治 竜王 対 広瀬章人 八段の対局で20手指した局面
point
21手目:形勢判断と候補手
互角:▲7七角、▲7七桂、▲3三角成、▲8四飛、▲6八玉
後手玉が後手陣の歩に紐を付けており、
先手からの角打ちによる飛車取りと角成りの両狙いが生じないため、
20手目の△7六飛は成立します。
そして、先手は次に△8八角成とされてしまうと、▲同銀は△7八飛成、
▲同金は△7九飛成で、金駒を取られつつ飛車を成り込まれて負けです。

よって、先手は△8八角成に対応する必要がありますが、
ここでは様々な有力手があります。

本譜は①▲7七角と上がりました。△8六飛を防ぎつつ、
相手から角交換をしてくれば手順に左桂を跳ねることができます。

②▲7七桂と跳ねて、角交換自体を防ぐ手も有力です。
一時的に先手の角が動けなくなりますが、▲6五桂で一気に活用できます。

③▲3三角成と先手から角交換をする手も有力です。
手順に△同桂と跳ねられるので損をしているようですが、
▲8四飛と回って△8二歩と受けさせた後、
先手も▲2八歩と先受けしておけば、激しい変化を減らすことができます。

④▲8四飛と回る手もあります。
△8八角成には▲同飛と取って、力戦向かい飛車のような指し方になります。

⑤▲6八玉と寄る手もあります。
1手損の勇気流なので厳密に言えば損ですが、後手も咎めるのは難しいです。




中盤

【将棋】第31期竜王戦七番勝負 第6局 羽生善治 竜王 対 広瀬章人 八段の対局で27手指した局面
point
28手目:形勢判断と候補手
互角:△6四角、△8六歩
先手の桂が2枚とも跳ねているので、▲4五桂&▲6五桂の攻めが速く、
後手は陣形整備をしている余裕がありません。
反面、桂を跳ねている分、先手陣には隙がありますので、
後手は飛車の打ち込みを狙います。

本譜は△8六歩と垂らしました。
金は斜めに誘え」で△8七歩成 ▲同金とすれば
バランスの良い先手陣が乱れて、飛車の打ち込みが厳しくなります。



【将棋】第31期竜王戦七番勝負 第6局 羽生善治 竜王 対 広瀬章人 八段の対局で32手指した局面
point
33手目:形勢判断と候補手
互角:▲8八角
33手目で▲7八銀と上がれば、金取りと銀取りを受けたうえで、
持ち駒を節約することはできます。
対して△9九飛成と香を取ってくれれば▲8九歩の底歩が堅いのですが、
△7九飛成と入り込まれるとはじく駒がないので、竜の対応に困ります。

相手の拠点がない状態で、単に飛車を打ち込まれた場合、
持ち駒を使って手厚く受けつつ、飛車をいじめて焦らせる指し方が有力です。
本譜は▲8八角と打ちました。
この角はすぐには動けませんが、後手の飛車も動けないので働きとしては十分です。



【将棋】第31期竜王戦七番勝負 第6局 羽生善治 竜王 対 広瀬章人 八段の対局で40手指した局面
point
41手目:形勢判断と候補手
互角:▲5三桂右成、▲5三桂左成 など
5三への駒の利きは、先手が2、後手が3なので、
5三に桂が成り込む攻めは数が足りていません。

しかし、先手は入手した銀を7八に打てば飛車を捕獲できます。
そして、後手陣が乱れているので飛車の打ち場所にも困りません。
さらに、打ち込んだ飛車で後手陣の桂香を拾うこともできそうです。
攻めの継続が見込める場合には、桂損くらいならば割に合っています。



【将棋】第31期竜王戦七番勝負 第6局 羽生善治 竜王 対 広瀬章人 八段の対局で48手指した局面
point
49手目:形勢判断と候補手
互角:▲8五飛、▲2五飛、▲8二飛、▲5四飛 など
49手目で▲5四飛 △同銀に▲3四飛と打てば金銀両取りなので良さそうですが、
後手は△4一玉と逃げつつ金取りを受けて、▲5四飛と銀を取らせます。
すると、先手が次に▲5三飛成としても駒取りでも詰めろでもなく、
5四にいる飛車の活用に2手はかかってしまうため、後手が有利になります。
但し、▲5四飛 △同銀に▲2四飛と打つ、銀桂両取りは難解です。
今度は「両取り逃げるべからず」で△6五桂のような攻め合いとなります。

本譜は▲8五飛と回りました。
飛車を逃げつつ成り込みを狙った自然な手ですし、
後手に飛車を渡さないので、自玉の安全度も高いままです。



【将棋】第31期竜王戦七番勝負 第6局 羽生善治 竜王 対 広瀬章人 八段の対局で53手指した局面
point
54手目:形勢判断と候補手
互角:△4五桂
54手目は△4五桂と打つ1手でした。
3七の角に紐を付けつつ、△5七桂成も狙った攻防手です。

本譜は△1九角成としました。
後手は香を入手すれば△7五香が厳しい狙いとなりますが、
馬がそっぽに行ったので、攻めが遅れてしまいました。



【将棋】第31期竜王戦七番勝負 第6局 羽生善治 竜王 対 広瀬章人 八段の対局で56手指した局面
point
57手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲2八歩
57手目は▲2八歩と打つのが受けの手筋です。
受けるだけの手というのは、ジリ貧になることも多いのですが、
▲2八歩は次の△6五桂や△5五馬を受けただけではありません。

後手が1九の馬を活用するためには
△1八馬~△3六馬と2手かけて脱出する必要があります。
封じている駒が馬であることも大きく、
後手は戦力不足なので見捨てることもできません。

つまり、先手は持ち駒から1歩を減らしただけで、
ほぼ確実に1手を得することができます。



【将棋】第31期竜王戦七番勝負 第6局 羽生善治 竜王 対 広瀬章人 八段の対局で58手指した局面
point
59手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲2四桂、▲8六竜、▲4六桂 など
先手は後手の6筋を壁にしつつ、2一の竜を使って攻めたいところです。

現状は3二金&3一歩で「金底の歩、岩よりも堅し」となっていますが、
3二の金を狙っていけば、簡単に崩すことができます。
持ち駒に桂があれば▲2四桂、香があれば▲3五香のような手が厳しいです。




終盤

【将棋】第31期竜王戦七番勝負 第6局 羽生善治 竜王 対 広瀬章人 八段の対局で68手指した局面
point
69手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:▲3八香、▲5六香 など
69手目で絶対に負けない手は▲3八香です。
2九の馬を無力化し、△3六角と活用される変化も防いでいます。
後手の馬が攻めに使えると、馬の価値が1手の価値よりも増加するため、
馬を封じることに1手を費やしても割に合っています。

本譜は▲5六香と打ちました。この田楽刺しも厳しい手です。
後手の守り駒を剥がしつつ、寄せに必要な駒を入手する見通しが立ちました。



【将棋】第31期竜王戦七番勝負 第6局 羽生善治 竜王 対 広瀬章人 八段の対局で72手指した局面
point
73手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:▲6五銀、▲5五香打、▲3二桂成 など
73手目で▲4八金や▲5九金と逃げてもまだ先手の勝ちですが、
次に△4九桂成とされても先手玉に詰めろはかかっていません。
ここが攻めに転じるタイミングです。

2手すきの攻めというのは少し分かりづらいのですが、
詰めろをより厳しくする手を探すようにするのがコツです。
例えば、ここで▲5五香打とすれば後手玉に詰めろがかかるのですが、
△5四歩と打たれて、後手に粘る余地を与えてしまいます。

本譜は▲6五銀としました。5四に利きを足したことで、
▲5五香打の詰めろに対する後手の有効な受けがなくなりました。



【将棋】第31期竜王戦七番勝負 第6局 羽生善治 竜王 対 広瀬章人 八段の対局の投了図
81手にて、後手の羽生竜王が投了し、
羽生竜王の3勝、広瀬八段の3勝となりました。

投了図以降、△5二玉 ▲4一銀 △5一玉 ▲5三香不成
以下、後手玉に詰みがあります。

本局では広瀬八段の手堅い指し回しと鋭い寄せが非常に勉強になりました。

棋譜

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棋戦:第31期竜王戦七番勝負 第6局
先手:広瀬章人八段
後手:羽生善治竜王
手数----指手---------消費時間--
1 2六歩(27) ( 1:00/00:01:00)
2 8四歩(83) ( 0:00/00:00:00)
3 2五歩(26) ( 2:00/00:03:00)
4 8五歩(84) ( 3:00/00:03:00)
5 7六歩(77) ( 0:00/00:03:00)
6 3四歩(33) (12:00/00:15:00)
7 7八金(69) ( 3:00/00:06:00)
8 3二金(41) ( 0:00/00:15:00)
9 2四歩(25) ( 0:00/00:06:00)
10 同 歩(23) ( 0:00/00:15:00)
11 同 飛(28) ( 0:00/00:06:00)
12 8六歩(85) ( 1:00/00:16:00)
13 同 歩(87) ( 0:00/00:06:00)
14 同 飛(82) ( 0:00/00:16:00)
15 3四飛(24) ( 1:00/00:07:00)
16 3三角(22) ( 0:00/00:16:00)
17 5八玉(59) ( 2:00/00:09:00)
18 5二玉(51) (14:00/00:30:00)
19 3六歩(37) ( 2:00/00:11:00)
20 7六飛(86) (19:00/00:49:00)
21 7七角(88) ( 7:00/00:18:00)
22 7四飛(76) ( 2:00/00:51:00)
23 同 飛(34) (34:00/00:52:00)
24 同 歩(73) ( 0:00/00:51:00)
25 3七桂(29) (14:00/01:06:00)
26 7七角成(33) (35:00/01:26:00)
27 同 桂(89) ( 0:00/01:06:00)
28 8六歩打 ( 0:00/01:26:00)
29 6五桂(77) ( 8:00/01:14:00)
30 8七歩成(86) (35:00/02:01:00)
31 同 金(78) ( 3:00/01:17:00)
32 8九飛打 ( 0:00/02:01:00)
33 8八角打 ( 1:00/01:18:00)
34 8六歩打 ( 0:00/02:01:00)
35 7七金(87) (15:00/01:33:00)
36 5四角打 (50:00/02:51:00)
37 5五飛打 (52:00/02:25:00)
38 6二銀(71) (36:00/03:27:00)
39 4五桂(37) ( 5:00/02:30:00)
40 4二銀(31) (23:00/03:50:00)
41 5三桂成(45) ( 9:00/02:39:00)
42 同 銀(62) ( 7:00/03:57:00)
43 同 桂成(65) ( 0:00/02:39:00)
44 同 銀(42) ( 1:00/03:58:00)
45 7八銀打 ( 3:00/02:42:00)
46 8八飛成(89) (18:00/04:16:00)
47 同 銀(79) ( 0:00/02:42:00)
48 3七角打 ( 2:00/04:18:00)
49 8五飛(55) (30:00/03:12:00)
50 7三桂(81) (18:00/04:36:00)
51 8二飛成(85) ( 2:00/03:14:00)
52 6二桂打 ( 0:00/04:36:00)
53 2七飛打 ( 8:00/03:22:00)
54 1九角成(37) ( 2:00/04:38:00)
55 2一飛成(27) ( 5:00/03:27:00)
56 3一歩打 ( 0:00/04:38:00)
57 2八歩打 ( 2:00/03:29:00)
58 7五香打 (32:00/05:10:00)
59 2四桂打 (16:00/03:45:00)
60 4二金(32) ( 7:00/05:17:00)
61 3一竜(21) ( 1:00/03:46:00)
62 7七香成(75) (15:00/05:32:00)
63 同 銀(78) ( 1:00/03:47:00)
64 4一金打 ( 0:00/05:32:00)
65 1一竜(31) ( 2:00/03:49:00)
66 6五桂(73) ( 0:00/05:32:00)
67 6六銀(77) ( 5:00/03:54:00)
68 2九馬(19) ( 5:00/05:37:00)
69 5六香打 (10:00/04:04:00)
70 3六角(54) ( 8:00/05:45:00)
71 3八歩打 ( 1:00/04:05:00)
72 3七桂打 ( 7:00/05:52:00)
73 6五銀(66) (13:00/04:18:00)
74 4九桂成(37) ( 2:00/05:54:00)
75 5五香打 ( 1:00/04:19:00)
76 3九馬(29) ( 2:00/05:56:00)
77 5三香(55) ( 1:00/04:20:00)
78 同 金(42) ( 0:00/05:56:00)
79 4一竜(11) ( 0:00/04:20:00)
80 同 玉(52) ( 0:00/05:56:00)
81 3二金打 ( 0:00/04:20:00)
82 投了 ( 0:00/05:56:00)
まで81手で先手の勝ち


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