【将棋解説】
第5期叡王戦七番勝負第4局 永瀬叡王vs豊島竜王名人

目次

解説動画



対局情報

棋戦
第5期叡王戦七番勝負 第4局
対局日
持ち時間
1時間(1日制)
対局者
永瀬 拓矢 叡王<後手>
豊島 将之 竜王・名人<先手>
戦型
横歩取り(青野流)
主催
株式会社ドワンゴ
公益社団法人日本将棋連盟
(棋譜利用問い合わせ済み)
対局場所
愛知県:亀岳林 万松寺

局面解説

序盤

※解説は103手目からです。
【将棋】第5期叡王戦七番勝負 第4局 永瀬拓矢 叡王 対 豊島将之 竜王・名人の対局で26手指した局面



中盤

※解説は103手目からです。
【将棋】第5期叡王戦七番勝負 第4局 永瀬拓矢 叡王 対 豊島将之 竜王・名人の対局で48手指した局面



【将棋】第5期叡王戦七番勝負 第4局 永瀬拓矢 叡王 対 豊島将之 竜王・名人の対局で65手指した局面



【将棋】第5期叡王戦七番勝負 第4局 永瀬拓矢 叡王 対 豊島将之 竜王・名人の対局で79手指した局面



【将棋】第5期叡王戦七番勝負 第4局 永瀬拓矢 叡王 対 豊島将之 竜王・名人の対局で91手指した局面



【将棋】第5期叡王戦七番勝負 第4局 永瀬拓矢 叡王 対 豊島将之 竜王・名人の対局で102手指した局面
point
103手目:形勢判断と候補手
先手有利:▲8五飛成、▲2四桂、▲3四桂、▲5七歩、▲1一飛成 など
先手は後手陣に2枚の飛車を打ち込んでおり、持ち駒もそれなりにあるので、
様々な攻め方が考えられる局面です。
先手の飛車はいずれも底歩で横利きを遮断されているので、
底歩を排除するか、別の段に移動することで、早めに活用したいです。

103手目から2一の飛車を活用するならば、
▲2四桂あるいは▲3四桂と打って、金駒を剥がしにいく手が有力です。
仮に、先手の持ち駒に桂が1枚しかなければ
玉の守りの金を攻めよ」で▲2四桂を優先した方が良いですが、
現時点で桂は2枚あるので、金銀どちらも取れる可能性は高そうです。

そして8一の飛車を活用するならば、
▲8五飛成として、角の両取りをかける手は有力です。
飛車を引き揚げると先手の攻めは少し遅れますが、
△7七角成~△8六角と2枚角で攻め込まれる手順を潰しておくことで、
後手からの攻めをそれ以上に遅らせることができます。

他に、▲1一飛成と香を取ってから▲7八香と打ち、
7筋の底歩を崩していく手順も有力です。



【将棋】第5期叡王戦七番勝負 第4局 永瀬拓矢 叡王 対 豊島将之 竜王・名人の対局で105手指した局面
point
106手目:形勢判断と候補手
互角:△6四香、△8六角
106手目で△6四香や△8六角として、
先手陣の手薄な場所を狙って攻め続ける手は有力です。

本譜は△2三香と打ちました。
▲4八玉~▲3九玉と逃がしてしまうと、今度は美濃崩しが必要になるので、
王手は追う手」になることを嫌ったものです。
これで先手玉が狭くなったので、先手は自玉に詰みを生じさせないために、
後手に駒を渡すことに対して慎重になる必要があります。
結果的に、先手の最善が強く攻め込む手であったとしても、
読み切れなくて手堅く受けに回っているので、実戦的に有効な指し方でした。



【将棋】第5期叡王戦七番勝負 第4局 永瀬拓矢 叡王 対 豊島将之 竜王・名人の対局で122手指した局面
point
123手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲7七角、▲2二飛成、▲3四桂
次に、玉のこびんを狙われて△6六桂と打たれてしまうと、
王手金取りが厳しく、中住まいが一気に崩壊します。
本譜は▲7七角と上がりました。
△6六桂を防ぎつつ、狭くなった6八の角を活用するの良い手です。

後手は馬1枚だけだと狙いが単調なので、
拠点を増やすところから始める必要がありますが、
先手の攻めが速いので、攻め合いではとても間に合いません。
よって、持ち駒を自陣に投入して粘ります。



【将棋】第5期叡王戦七番勝負 第4局 永瀬拓矢 叡王 対 豊島将之 竜王・名人の対局で136手指した局面
point
137手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲6六角、▲8六歩、▲4二金
137手目で本譜は▲5五角と逃げました。
しかし、結果的には▲6六角と1つ上がる手が有力でした。



【将棋】第5期叡王戦七番勝負 第4局 永瀬拓矢 叡王 対 豊島将之 竜王・名人の対局で137手指した局面
point
138手目:形勢判断と候補手
互角:△5四歩
5五に出た角の利きによって、後手は7三の地点を塞がれてしまいました。
対して、△6四歩と突けば、玉が広くなりますし、
▲同角には△6六桂があるので良さそうですが、
▲6六香と打たれてしまうと、
6五の桂が質駒になるうえに、△6六桂を防がれてしまいます。

本譜は△5四歩と突きました。



【将棋】第5期叡王戦七番勝負 第4局 永瀬拓矢 叡王 対 豊島将之 竜王・名人の対局で138手指した局面
point
139手目:形勢判断と候補手
互角:▲3三角成、▲6六角、▲9一角成、▲4六角 など
角取りの対応で、▲5五角を生かすのであれば▲4六角や▲9一角成ですが、
6六から角の利きが逸れると△6六桂が厳しいです。

本譜は▲6六角と引きました。
最初から移動できた位置なので、後手は△5四歩を0手で指すことができたと言えます。
先手としては、この△5四歩を「無理に突かせた」と言える展開に
持ち込めれば良いのですが、
例えば▲5三金と打って後手玉を詰ますような形にはなりづらく、
単に後手玉を広くしてしまったというマイナス面が大きすぎます。

実質的に▲5五角を自ら悪手と認定することになるのはつらいですが、
手の流れよりも負けないことを優先して我慢しました。



【将棋】第5期叡王戦七番勝負 第4局 永瀬拓矢 叡王 対 豊島将之 竜王・名人の対局で140手指した局面
point
141手目:形勢判断と候補手
互角:▲3三角成
141手目で▲8八角と逃げると△7五馬と寄る手が竜取りになるうえに、
△5七桂成の突破もあって、非常に厳しいです。
また、手順を逆にして△5七桂成 ▲同玉 △7五馬で
王手竜取りをかけられても、やはり厳しいです。

先手にとっては、△5四歩が祟っている厳しい展開となっており、
丁寧に受けている余裕はありません。本譜は▲4一竜と切りました。
先手は攻めの要の竜を切ったものの、決め手がある訳ではありません。
後手も決め手がないのは相変わらずなので、玉形を整えて、仕切り直しです。

先手としては、拠点を失ったうえに、持ち駒が小駒しかないので、
何とかして8八の角をうまく活用していきたいです。
後手としては、持ち駒が飛車しかないので、
あまり焦らずに、少しずつ陣形を盛り上げて、先手に圧力をかけます。




【将棋】第5期叡王戦七番勝負 第4局 永瀬拓矢 叡王 対 豊島将之 竜王・名人の対局で156手指した局面
point
157手目:形勢判断と候補手
互角:▲3三香成
後手が香を補充したので、次に△5五香と玉頭に足す手が厳しいですし、
中住まいで上と横から攻められる展開は非常に怖いです。
しかし、後手の拠点が多くて、すべてを受け切れるものではないので、
157手目では▲3三香成と攻め合う手が有力です。

本譜は▲2九金と打ちました。
先手陣は堅くなりますが、竜に逃げられて、2九に金が残ってしまいますし、
攻め駒不足で粘り切るしかなくなるので、実戦的には勝ちにくくなる手です。



【将棋】第5期叡王戦七番勝負 第4局 永瀬拓矢 叡王 対 豊島将之 竜王・名人の対局で165手指した局面
point
166手目:形勢判断と候補手
互角:△5七馬、△8四馬
165手目の▲8七桂は後手にとって厄介な手で、
後の▲7五桂打で、金取りをかけられつつ、拠点を作られてしまいます。

よって、あまりゆっくりはできないので、△5七馬と切る手は有力です。
すぐに寄せの手順がある訳ではないのですが、今ならば角を渡せますし、
▲同玉に△5六飛と打てば、先手玉を逃がしてしまう恐れはありません。

本譜は決戦を避けて△6五馬と寄りましたが、
▲3二成香と銀を取る手が間に合うのは大きく、
先手が桂香歩を駆使して、攻め合いの形を作ることに成功しました。



【将棋】第5期叡王戦七番勝負 第4局 永瀬拓矢 叡王 対 豊島将之 竜王・名人の対局で183手指した局面
point
184手目:形勢判断と候補手
後手有利:△5五歩
184手目から△5六歩 ▲4八玉 △5七歩成 ▲同玉として、
歩を犠牲にしながら、考慮時間を稼ぐのは実戦手筋です。
歩が残り3枚位までは問題ないと最初に判断しておけば焦らずに済みます。

ここで△5五歩と控えて打つ手は有力です。
先手の角の利きを遮断しつつ、拠点を強化しており、
△3六歩~△3七歩成を楽しみにします。

本譜は△6六桂と跳ねて竜の利きを通しました。
後手としては、7八の金が質駒になったことを生かして寄せを狙いたいです。



【将棋】第5期叡王戦七番勝負 第4局 永瀬拓矢 叡王 対 豊島将之 竜王・名人の対局で189手指した局面
point
190手目:形勢判断と候補手
後手有利:△4四桂、△2四桂
189手目の▲3六歩は後手からの△3六桂を防いだものですが、
基本的に手数を伸ばすだけで、しっかりとした受けにはなっていません。
ここは次の△3六桂跳ねを狙って、△4四桂か△2四桂と控えて打ちます。

尚、ここで△3五歩と打って、取られても取られなくても、
次に△3六歩を狙うのは手筋ですが、桂よりは攻めの速度が劣ります。




終盤

【将棋】第5期叡王戦七番勝負 第4局 永瀬拓矢 叡王 対 豊島将之 竜王・名人の対局で201手指した局面
point
202手目:形勢判断と候補手
互角:△7四玉
201手目の▲7五桂打を王手で実現されてしまったことは、
後手として望ましくない展開です。
△6六桂と跳ねた手の価値について改めて考えると、
結果的に7二の竜の活用が間に合わず、やや空振りとなっています。

ここで△5四玉と広い方へ逃げる手は自然ですが、
先手に銀を渡すと▲6三銀の王手竜取りが生じる状況で、
▲5八歩と銀取りに打たれてしまう手が気になります。

△7四玉ならば、5四の歩が残るので、
先手が5七の銀を狙うとしても▲5九香になり、銀香交換で済みます。

相手の歩を取る前には、縦1列をスッと眺めることが重要で、
相手に有効な歩打ちが生じないことを確認しておきます。



【将棋】第5期叡王戦七番勝負 第4局 永瀬拓矢 叡王 対 豊島将之 竜王・名人の対局で210手指した局面
point
211手目:形勢判断と候補手
後手有利:▲6五歩、▲5七香
211手目では▲6五歩と突いて角交換を迫るか、▲5七香と銀を取ることで、
最後の寄せ合いに使うための駒を補充する手が有力です。

本譜は▲2九玉と寄りましたが、間接的な飛車の利きから逃れていないので、
△5八歩と打たれて痺れてしまいました。
これで▲5七香と銀を取ることができなくなったうえに、
△5九歩成を受けるならば▲7七角しかありませんが、
角が攻めに使いづらくなったので、△2六歩が間に合うようになりました。



【将棋】第5期叡王戦七番勝負 第4局 永瀬拓矢 叡王 対 豊島将之 竜王・名人の対局で219手指した局面
point
220手目:形勢判断と候補手
後手勝勢:△2七歩成、△5七歩
後手玉の周辺は桂の利きがたくさんあるので分かりづらいですが、
飛車や金を渡さなければ、すり抜けることができる形です。

本譜は△2七歩成~△2六歩を繰り返して、先手陣の金駒を剥がしました。
露骨ですが、確実な攻めです。
【将棋】第5期叡王戦七番勝負 第4局 永瀬拓矢 叡王 対 豊島将之 竜王・名人の対局の投了図
232手にて、先手の豊島竜王名人が投了し、
永瀬叡王の1勝、豊島竜王名人の1勝、そして2引き分けとなりました。

投了図以降、▲同香に△2九金と打ち、▲3八玉には△2七歩成、
▲4八玉には△5七竜と追い詰めて、先手玉は詰みとなります。

本局では、永瀬叡王の、
手堅い指し回しや絶妙な揺さぶりが非常に勉強になりました。


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