目次
解説動画
棋聖戦第1局
棋聖戦第3局
対局情報
豊島 将之 棋聖(三冠)<先手>
渡辺 明 二冠<後手>
局面解説
序盤
36手目：形勢判断と候補手
互角：△５四銀、△６二金、△６一飛、△４一飛 など
後手は右金を７二に上がったことを生かして、
△５四銀～△６一飛として６筋から
仕掛ける指し方も有力です。
本譜は△６二金と寄ったため、
手待ちの方針がハッキリとしました。
44手目：形勢判断と候補手
互角：△５五銀、△４四歩
43手目の▲６七銀は、手待ちとしても使える手ですが、
▲５六歩から中央の攻めに歩を使う含みもあります。
先手の駒が下がったということに着目すれば、
ここで後手が駒を押し上げる△４四歩は自然な手です。
本譜は△５五銀と出ましたが、機敏な手でした。
これで先手が▲５六歩からゆっくりと押し上げる手順は間に合いません。
それどころか、先手は４六の歩を単に取られる訳にはいかないので、
ここで仕掛けるしかありません。
後手としては、玉の堅さが違い過ぎるので、無理に攻め合うことはせず、
丁寧に受け続けて、先手の攻めを切らしにいく方針となります。
中盤
53手目：形勢判断と候補手
互角：▲２九飛
53手目は▲２九飛と
引く手が有力です。△４六銀と歩を取られてしまうと、
次に４五の桂が
タダで取られてしまうようですが、
後手の３筋の歩が伸びていて、３四の地点が空いているので、
▲３四角と打って２筋の突破を目指すのが
好手で攻めが続きます。
仮に先手の持ち駒が銀であれば、
棒銀同様の攻め筋である▲３四銀は浮かびやすいと思います。
銀の代わりに角を使うというのは少しもったいないのですが、
相手よりも自玉が堅い場合、突破や食い付きなどの成果が見込めるのであれば、
角と
金駒の交換による
駒損はあまり気にする必要がありません。
本譜は▲２六飛と引いて、△４六銀を防ぎましたが
悪手でした。
54手目：形勢判断と候補手
後手優勢：△５九角
相手に複数の
離れ駒がある場合は、角打ちを考えます。
両取りになれば分かりやすいですが、串刺しでも構いません。
54手目は△５九角と打つのが
好手で、先手が困っています。
この角は狭いようですが、なかなか捕まりません。
とりあえず、先手は４八の金取りを受ける必要がありますが、
▲２八飛でも▲３七角でも、５九の角取りになっていません。
56手目：形勢判断と候補手
後手優勢：△４六銀、△３六歩、△８六歩
次に▲６八銀と引かれてしまうと、角が捕まってしまいますが、
後手が
手番を握っていることが非常に大きいです。
56手目では、５九の角を最大限に生かすために、
△４六銀や△３六歩として、３七の地点を狙う指し方が有力です。
▲６八銀と引かれても、△３七銀成 ▲５九銀 △２八成銀で
飛車角交換が間に合います。
このとき、後手が攻撃力の高い飛車を取ったことに加えて、
先手が自ら
囲いを弱体化してくれていることが大きいです。
本譜は△８六歩～△６五歩としましたが、囲い側に手を付けたために、
争点が増えて、角打ちの厳しさがぼやけてしまいました。
67手目：形勢判断と候補手
互角：▲７七銀打
次に△７六桂と
跳ねられる訳にはいかないので、７六の地点を守りますが、
67手目は▲７七銀打と
手厚く受ける１手です。
もし▲７七銀と引いて、持ち駒を節約してしまうと、
△８六歩～△８五歩の
継ぎ歩、△６五桂、△７五歩、△６九銀など、
様々な厳しい攻め筋があり、どれも先手が耐えきれないので、
相手が間違える余地が少なく、負けの確率を高めてしまいます。
現状で、先手は３四に打つための桂が欲しいので、
銀桂交換は歓迎ですが、後手に攻めてもらう必要があります。
先手としては桂を入手した後に、
攻め合いに持ち込めるだけの耐久力を残すことが重要です。
78手目：形勢判断と候補手
後手有利：△６六歩
後手は、次に▲６四角と桂を取られても困るのですが、
▲５八金と寄られても５九の角の逃げ場がないので困ります。
どちらを取られても困る場合、
片方を助ける手の価値は低く、ジリ貧になることがほとんどです。
よって、両方の駒が盤上に残っている今のうちに攻めるしかありませんが、
相手に駒を取る暇を与えないために、手抜きをされないことが重要です。
王手以外で手抜きをされない手では、歩を使う確率が最も高いです。
特に相手玉近くの歩を突くか、駒取りに歩を打つ手から考えるのがコツです。
本譜は△６六歩と
焦点に打ちました。金取りなので手抜きはできませんし、
どれで取っても、確実に先手陣が乱れて、後手からの攻めが速くなります。
終盤
88手目：形勢判断と候補手
後手優勢：△７六銀、△２三金
88手目は△７六銀と出る手が有力です。
以下▲７八玉に△５六桂と跳ねる活用の
味が良いです。
他に、受けの手では△２三金も有力です。
目先の▲２四飛を防いでいますし、あとで金が取られてしまったとしても、
その駒が邪魔をして、先手の飛車が
成り込むまで１手遅らせることができます。
本譜は△６九銀と打ちました。
先手玉を包囲して、△４八角成～△７八金の
詰みを狙ったものですが、
狙いが１つしかないと、相手から見て受けやすい攻めになりやすく、
唯一の持ち駒を使ってしまったこともあり、この局面では悪手でした。
96手目：形勢判断と候補手
後手優勢：△７八銀成、△６八角成
96手目は△６八角成としても優位は維持できますが、
△７八銀成と迫る方が勝っています。
対して▲同玉は△６八角成までの詰みなので逃げるしかありませんが、
取り残されそうだった
小駒で先手玉の包囲網を狭めることができます。
例え優勢な局面でも、働きの悪い駒に対して常に気を配ることは重要です。
106手にて、先手の豊島棋聖が投了し、
豊島棋聖の1勝、渡辺二冠の1勝となりました。
106手目の△８五飛は先手玉を詰ます唯一の手で、
以下、▲同銀は△７五金までの１手詰みです。
よって、▲７五歩のように
合駒をするしかありませんが、
△６四金 ▲６六玉 △７五金 ▲同銀に△６五歩と
叩いて、
△７五飛と王手で銀を取る形を作れば、先手玉は詰みとなります。
尚、途中で△７八銀成としていなければ、６九に銀がいる状態となりますが、
▲７六玉～▲６七玉と逃げられたときに
△６八馬と入ることができないため、先手玉は詰みませんでした。
本局では、渡辺二冠の、
押し引きと優位を逃した後のリカバリーが非常に勉強になりました。
棋譜
棋譜をクリップボードにコピー
棋戦：第９０期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第２局
先手：豊島将之棋聖
後手：渡辺明二冠
手数----指手---------消費時間--
1 ２六歩(27) ( 0:00/00:00:00)
2 ８四歩(83) ( 0:00/00:00:00)
3 ２五歩(26) ( 0:00/00:00:00)
4 ８五歩(84) ( 1:00/00:01:00)
5 ７六歩(77) ( 0:00/00:00:00)
6 ３二金(41) ( 1:00/00:02:00)
7 ７七角(88) ( 0:00/00:00:00)
8 ３四歩(33) ( 0:00/00:02:00)
9 ６八銀(79) ( 0:00/00:00:00)
10 ７七角成(22) ( 0:00/00:02:00)
11 同 銀(68) ( 0:00/00:00:00)
12 ２二銀(31) ( 0:00/00:02:00)
13 ４八銀(39) ( 0:00/00:00:00)
14 ３三銀(22) ( 0:00/00:02:00)
15 ７八金(69) ( 0:00/00:00:00)
16 ６二銀(71) ( 0:00/00:02:00)
17 ４六歩(47) ( 0:00/00:00:00)
18 ６四歩(63) ( 0:00/00:02:00)
19 ４七銀(48) ( 0:00/00:00:00)
20 ６三銀(62) ( 0:00/00:02:00)
21 ６八玉(59) ( 0:00/00:00:00)
22 ４二玉(51) ( 0:00/00:02:00)
23 ３六歩(37) ( 0:00/00:00:00)
24 ７四歩(73) ( 0:00/00:02:00)
25 ９六歩(97) ( 0:00/00:00:00)
26 ９四歩(93) ( 0:00/00:02:00)
27 １六歩(17) ( 0:00/00:00:00)
28 １四歩(13) ( 0:00/00:02:00)
29 ３七桂(29) ( 0:00/00:00:00)
30 ７三桂(81) ( 0:00/00:02:00)
31 ２九飛(28) ( 0:00/00:00:00)
32 ８一飛(82) ( 0:00/00:02:00)
33 ４八金(49) ( 0:00/00:00:00)
34 ７二金(61) ( 1:00/00:03:00)
35 ６六歩(67) ( 2:00/00:02:00)
36 ６二金(72) ( 0:00/00:03:00)
37 ５六銀(47) ( 0:00/00:02:00)
38 ５二玉(42) ( 0:00/00:03:00)
39 ７九玉(68) ( 0:00/00:02:00)
40 ４二玉(52) ( 0:00/00:03:00)
41 ８八玉(79) ( 0:00/00:02:00)
42 ５四銀(63) ( 0:00/00:03:00)
43 ６七銀(56) ( 1:00/00:03:00)
44 ５五銀(54) ( 3:00/00:06:00)
45 ３五歩(36) ( 2:00/00:05:00)
46 同 歩(34) ( 2:00/00:08:00)
47 ４五桂(37) ( 3:00/00:08:00)
48 ４四銀(33) ( 0:00/00:08:00)
49 ２四歩(25) ( 1:00/00:09:00)
50 同 歩(23) ( 0:00/00:08:00)
51 同 飛(29) ( 1:00/00:10:00)
52 ２三歩打 ( 0:00/00:08:00)
53 ２六飛(24) ( 1:00/00:11:00)
54 ５九角打 (10:00/00:18:00)
55 ２八飛(26) (38:00/00:49:00)
56 ８六歩(85) (53:00/01:11:00)
57 同 銀(77) (10:00/00:59:00)
58 ６五歩(64) ( 1:00/01:12:00)
59 ５六銀(67) (32:00/01:31:00)
60 同 銀(55) (20:00/01:32:00)
61 同 歩(57) ( 0:00/01:31:00)
62 ６六歩(65) ( 5:00/01:37:00)
63 ６八歩打 (37:00/02:08:00)
64 ４五銀(44) ( 3:00/01:40:00)
65 同 歩(46) (11:00/02:19:00)
66 ６四桂打 ( 0:00/01:40:00)
67 ７七銀打 (11:00/02:30:00)
68 ８五歩打 (14:00/01:54:00)
69 ９七銀(86) ( 0:00/02:30:00)
70 ６五桂(73) ( 1:00/01:55:00)
71 ２四歩打 ( 6:00/02:36:00)
72 ７七桂成(65) (52:00/02:47:00)
73 同 玉(88) ( 0:00/02:36:00)
74 ２四歩(23) ( 8:00/02:55:00)
75 ５五角打 ( 0:00/02:36:00)
76 ６七歩成(66) ( 8:00/03:03:00)
77 同 金(78) ( 1:00/02:37:00)
78 ６六歩打 ( 0:00/03:03:00)
79 同 角(55) (24:00/03:01:00)
80 ６五銀打 ( 4:00/03:07:00)
81 １一角成(66) ( 0:00/03:01:00)
82 ３三桂(21) ( 2:00/03:09:00)
83 ２一銀打 ( 0:00/03:01:00)
84 ６六歩打 (11:00/03:20:00)
85 ５七金(67) ( 0:00/03:01:00)
86 ８六歩(85) (13:00/03:33:00)
87 同 銀(97) ( 0:00/03:01:00)
88 ６九銀打 (12:00/03:45:00)
89 ６六金(57) (11:00/03:12:00)
90 ７六銀(65) ( 3:00/03:48:00)
91 同 金(66) ( 0:00/03:12:00)
92 同 桂(64) ( 0:00/03:48:00)
93 ２四飛(28) (16:00/03:28:00)
94 ３一金(32) ( 2:00/03:50:00)
95 ２三飛成(24) (13:00/03:41:00)
96 ７八銀成(69) ( 0:00/03:50:00)
97 ６七玉(77) ( 0:00/03:41:00)
98 ６八角成(59) ( 2:00/03:52:00)
99 ６六玉(67) ( 0:00/03:41:00)
100 ６五歩打 ( 2:00/03:54:00)
101 同 玉(66) ( 0:00/03:41:00)
102 ６四歩打 ( 0:00/03:54:00)
103 同 玉(65) ( 0:00/03:41:00)
104 ４六馬(68) ( 0:00/03:54:00)
105 ６五玉(64) (12:00/03:53:00)
106 ８五飛(81) ( 0:00/03:54:00)
107 投了 ( 2:00/03:55:00)
まで106手で後手の勝ち
棋聖戦第1局
棋聖戦第3局
