目次
解説動画
第43期棋王戦第5局
棋王戦第2局
対局情報
局面解説概要
序盤
17手目:形勢判断と候補手
互角:▲7六歩、▲8七歩
後手が次に△8六歩と
垂らして△8七歩成を狙う攻めは気になりますが、
▲7六歩と突いて
角道を開ければ対応できています。
▲7六歩に対して、後手が△8六歩と垂らした場合は、
▲6六角と飛車取りに出て、△8二飛に▲8八歩と打って受けます。
17手目では単に▲8七歩と打つ手もありますが、
▲8二歩のような含みが残っている分、▲7六歩の方がわずかに得です。
27手目:形勢判断と候補手
互角:▲2九飛、▲2五飛、▲2七飛、▲2六飛、▲2八飛
先手は飛車の引き場所が2五~2九の5か所あって、いずれも有力ですが、
攻め重視ならば▲2五飛、受け重視ならば▲2九飛が無難です。
将来的に、角交換から△4四角や△5五角と打たれて8筋突破を狙われても、
飛車取りとの両狙いにはならないので、少し安心できます。
▲2五飛は、敵陣に近いので、狙われやすいことが欠点ですが、
次に△3三桂と跳ねてくる手はないので、しばらくは大丈夫そうです。
いずれの場合も再度▲2四歩と合わせて攻める場合には大差がありません。
考えすぎずに、感覚・棋風に従って選びます。
34手目:形勢判断と候補手
互角:△2三歩
先程、後手が飛車先の歩交換をしてきた時のことを考えると、
簡単に△2三歩と打たないで、他の手も考えることは重要です。
次に先手から▲2三歩と打たれてしまうと角が捕まってしまいますので、
他に最善手があるとすれば△3四歩か△1四歩です。
△3四歩は▲同飛と取られた際に、次の▲2二角成を受ける必要があり、
それを受けている間に▲6四飛ともう1枚歩を取られてしまいます。
これは、通常の横歩取り戦法と比較して、1歩余計に損している計算です。
よって、△3四歩は形勢を損ねる可能性が高いと判断します。
△1四歩は、突いた歩が取られないのでやや有力ではあるのですが、
▲6四飛の後、▲2四飛と1手で2筋に戻られてしまいます。
こちらも通常の横歩取り戦法の基本的な考え方を流用するのですが、
序盤の1歩損の代償として、飛車を簡単に2筋に戻らせたくはありません。
よって、▲6四飛~▲6五飛~▲2五飛と遠回りをさせる△2三歩の方が
△1四歩よりも得をしていると判断します。
中盤
42手目:形勢判断と候補手
互角:△8六歩、△1四歩、△8一飛、△4二銀、△5四銀 など
42手目に△8六歩と垂らす手は有力です。
現状で後手の飛車先は通っておらず、8七に打ち込む持ち駒もありませんが、
先手も8七の地点をケアしながら攻めることは難しいです。
△8六歩に対して▲9七角と歩を取りにいく手は、
△2四歩と突いて飛車の横利きを逸らすのが
好手で△8五桂が実現します。
仮に8六に打った歩がタダで取られそうになったとしても、
△8七歩成 ▲同金で先手陣を乱すことができるため、損になりにくい手です。
歩切れは気になりますが、角交換を拒否されて、他に歩の使い道が少ないため、
現状では、あまりマイナスとなりません。
本譜は△5四銀と上がって、陣形の上部を厚くしました。
▲7五歩と桂頭を狙われたら、△6三金と上がってさらに
手厚く受けます。
50手目:形勢判断と候補手
互角:△4四歩、△4四角、△3三桂、△8六歩、△6三金、△8一飛 など
先手は薄いながらも玉を囲いましたが、
後手は玉をしっかりと囲うことが難しい状態です。
例えば、△3三角~△3一玉~△2二玉としても
「
玉は敵の角筋を避けよ」に反してしまい、返って狙われやすくなります。
本譜は△4四歩と突きました。
これは雁木を目指すというよりも、
△3三桂を絡めながら4筋を攻めることで2五飛を
咎めようという手です。
他に、△8六歩と垂らす手は依然として有力です。
また、△6三金や△8一飛と陣形のバランスを取る手も有力です。
59手目:形勢判断と候補手
互角:▲8六歩
59手目に▲同桂と取ってはいけません。
△同飛となると、△4六歩に加えて、△8六歩という攻め筋まで加わり、
相手の攻めのお手伝いとなってしまいます。
先手の7七の桂はタダで取られる訳ではないので、取る1手ではありません。
本譜は▲8六歩と打って、後手の飛車先を通さないように対応しました。
尚、▲8七歩でも同じ様ですが、8五の桂がタダ取りできないため、
後手は△7七桂成を急がずに、△4六歩~△3五歩と攻めてきます。
後手は桂交換を後回しにしたいのですが、
先手は反撃するためにすぐに桂が欲しいので、相手の言い分を通さないようにします。
66手目:形勢判断と候補手
互角:△2二金、△4三銀上
66手目で金桂交換を避ける△2二金は自然な手です。
尚、△3一金は▲2三飛成と竜を作られてしまいます。
本譜は△4三銀上としました。後手にとっては4四の桂がかなり厄介な
拠点です。
二歩になるので、△4三歩と打って桂を取りにいくこともできません。
駒損は痛いですが、
終盤が近くなると、
相手の拠点をなくすことの価値も高くなっていきます。
終盤
73手目:形勢判断と候補手
互角:▲4三銀、▲2一銀
先手は攻めの拠点である4五の歩と後手玉が3マス離れているのに対して、
後手は攻めの拠点である4六の歩と先手玉が1マスしか離れていません。
本譜は▲4四歩と突いて、確実な攻めを狙いましたが、
まだ後手玉と2マス離れているので、結果的に間に合いませんでした。
終盤の速度計算は様々な要素が絡むので難しいのですが、
拠点から相手玉までの距離は1つの目安となります。
73手目では▲4三銀か▲2一銀と捨てる
勝負手がありました。
「
終盤は駒の損得より速度」です。
△同銀 ▲3三角成で部分的には駒損ながらも後手玉に迫り、
また、2九の飛車が
成り込むような変化もあります。
このような捨て駒は負けを早める可能性もありますが、
後手陣に食い付ければ、攻めの速度が逆転します。
言い方を変えると、
先手は、後手陣に食い付くことを最優先に考えて指せば良いのです。
80手目:形勢判断と候補手
後手勝勢:△4七銀、△6五角 など
後手は8二の飛車を取られる前に、先手玉を寄せることができれば勝ちです。
8二の飛車の横利きが残っている限り、渡す駒の制約もほとんどありません。
先手玉に迫るためには、△4七銀と打ち込む手が分かりやすいですが、
「
角筋は受けにくし」で△6五角と打つ手も強烈です。
尚、後手陣だけを見て、受けの手を選ぶ場合には、
△6二飛と逃げるより△4三銀と と金を払った方が安全になります。
84手にて、先手の広瀬竜王が投了し、渡辺棋王の1勝となりました。
投了図以降、先手玉は△5八角 ▲4八玉 △4七歩 ▲3九玉 △3八金までの
詰めろで、
他に△3八角からの詰み筋もあります。
受けるとしたら▲2八飛ですが、△6九角 ▲5八銀 △同桂成以下
先手玉が薄いため、詰めろが分かりやすく続きます。
本局では渡辺棋王の間合いの見切り方が非常に勉強になりました。
棋譜
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棋戦:第44期棋王戦五番勝負 第1局
先手:広瀬章人竜王
後手:渡辺明棋王
手数----指手---------消費時間--
1 2六歩(27) ( 0:00/00:00:00)
2 8四歩(83) ( 0:00/00:00:00)
3 2五歩(26) ( 1:00/00:01:00)
4 8五歩(84) ( 0:00/00:00:00)
5 7八金(69) ( 0:00/00:01:00)
6 3二金(41) ( 1:00/00:01:00)
7 3八銀(39) ( 1:00/00:02:00)
8 7二銀(71) ( 1:00/00:02:00)
9 9六歩(97) ( 1:00/00:03:00)
10 9四歩(93) ( 2:00/00:04:00)
11 5八玉(59) ( 3:00/00:06:00)
12 8六歩(85) (18:00/00:22:00)
13 同 歩(87) ( 0:00/00:06:00)
14 同 飛(82) ( 0:00/00:22:00)
15 3六歩(37) ( 3:00/00:09:00)
16 8四飛(86) (11:00/00:33:00)
17 7六歩(77) ( 5:00/00:14:00)
18 5二玉(51) ( 0:00/00:33:00)
19 3七桂(29) ( 5:00/00:19:00)
20 6二金(61) (14:00/00:47:00)
21 4八金(49) (31:00/00:50:00)
22 6四歩(63) (16:00/01:03:00)
23 2四歩(25) (23:00/01:13:00)
24 同 歩(23) ( 0:00/01:03:00)
25 同 飛(28) ( 0:00/01:13:00)
26 2三歩打 ( 0:00/01:03:00)
27 2五飛(24) ( 0:00/01:13:00)
28 7四歩(73) ( 0:00/01:03:00)
29 8五歩打 (41:00/01:54:00)
30 8二飛(84) ( 0:00/01:03:00)
31 2四歩打 ( 0:00/01:54:00)
32 同 歩(23) (20:00/01:23:00)
33 同 飛(25) ( 0:00/01:54:00)
34 2三歩打 ( 0:00/01:23:00)
35 6四飛(24) ( 0:00/01:54:00)
36 6三銀(72) ( 0:00/01:23:00)
37 6五飛(64) ( 0:00/01:54:00)
38 7三桂(81) ( 0:00/01:23:00)
39 2五飛(65) ( 0:00/01:54:00)
40 3四歩(33) ( 0:00/01:23:00)
41 7七桂(89) (11:00/02:05:00)
42 5四銀(63) (16:00/01:39:00)
43 4六歩(47) ( 4:00/02:09:00)
44 4二銀(31) ( 4:00/01:43:00)
45 4七銀(38) (13:00/02:22:00)
46 4一玉(52) ( 3:00/01:46:00)
47 4九玉(58) (23:00/02:45:00)
48 1四歩(13) (13:00/01:59:00)
49 3八玉(49) ( 1:00/02:46:00)
50 4四歩(43) ( 6:00/02:05:00)
51 6八銀(79) ( 5:00/02:51:00)
52 4五歩(44) ( 7:00/02:12:00)
53 同 歩(46) ( 2:00/02:53:00)
54 3三桂(21) ( 0:00/02:12:00)
55 2九飛(25) ( 0:00/02:53:00)
56 1三角(22) ( 1:00/02:13:00)
57 1六歩(17) ( 8:00/03:01:00)
58 8五桂(73) (12:00/02:25:00)
59 8六歩打 ( 3:00/03:04:00)
60 4六歩打 (10:00/02:35:00)
61 5六銀(47) ( 0:00/03:04:00)
62 7七桂成(85) ( 7:00/02:42:00)
63 同 角(88) ( 0:00/03:04:00)
64 6四桂打 ( 1:00/02:43:00)
65 4四桂打 ( 3:00/03:07:00)
66 4三銀(42) ( 6:00/02:49:00)
67 5五銀(56) (30:00/03:37:00)
68 同 銀(54) ( 0:00/02:49:00)
69 同 角(77) ( 0:00/03:37:00)
70 6三金(62) ( 0:00/02:49:00)
71 3二桂成(44) ( 2:00/03:39:00)
72 同 銀(43) ( 0:00/02:49:00)
73 4四歩(45) (10:00/03:49:00)
74 5四歩(53) (14:00/03:03:00)
75 4三歩成(44) ( 3:00/03:52:00)
76 5五歩(54) ( 1:00/03:04:00)
77 4二歩打 ( 0:00/03:52:00)
78 5一玉(41) ( 3:00/03:07:00)
79 8三銀打 ( 0:00/03:52:00)
80 4七銀打 ( 6:00/03:13:00)
81 同 金(48) ( 0:00/03:52:00)
82 同 歩成(46) ( 0:00/03:13:00)
83 同 玉(38) ( 0:00/03:52:00)
84 4六桂打 ( 6:00/03:19:00)
85 投了 ( 0:00/03:52:00)
まで84手で後手の勝ち
第43期棋王戦第5局
棋王戦第2局