目次
棋聖戦第1局
王位戦第2局
対局情報
局面解説
序盤
後手は、先手に5筋の位を取らせる代わりに
2枚の銀を繰り出す
急戦策を選択しました。
先手は、後手の銀が出てくる前に、
玉の囲いよりも左銀の進出を優先して5筋の位を守ります。
25手目:形勢判断と候補手
互角:▲4六歩、▲1六歩
25手目は「
歩越し銀には歩で受けよ」で▲4六歩と突く手が有力です。
▲4五歩と突いて△同銀と取らせるだけで、後手の左銀の働きを弱めることができます。
また、ゆっくりとした流れになれば
▲4七銀~▲3八金と木村美濃に組んで上部に手厚くすることができます。
さらに、▲3六歩~▲3七桂~▲4五歩となると
後手の左銀を追い返すこともできます。
25手目の局面では、他に▲1六歩と端歩を突いて、先手玉を広くする手も有力です。
中盤
30手目:形勢判断と候補手
互角:△9四歩、△1四歩、△6五桂 など
先手の飛車が狭いので、
△5五歩と閉じ込める手もありそうですが悪手です。
次に△4五銀や△6五銀と進めない形では、
1手で先手の飛車を捕まえることができません。
先手は、飛車が捕まるまでの猶予と持ち駒の1歩を生かし、
▲7五歩と桂頭を狙って仕掛ける手が成立します。
その先の手順は長いのですが、
▲9五角と出て▲7三角成となる変化があり、
△5二飛と回った際に、5五に打った歩が邪魔で
後手は飛車も角も活用しづらくて、攻め遅れてしまうのです。
本譜は「
居飛車の税金」で△9四歩と突きました。
9筋から端攻めをする訳ではないので、できれば指したくないのですが、
▲9五角と出る変化を消すことで、後手は飛車や右桂が使いやすくなりました。
35手目:形勢判断と候補手
互角:▲7五歩、▲4五歩
後手は次に△5二飛~△5五歩~△5四飛という手順で
5筋の位を奪還しつつ、歩得をすることを狙っています。
そこまで進んでしまうと、作戦負けは明白です。
ゆっくりしていられないのであれば、仕掛けるしかありません。
ここでは▲7五歩と▲4五歩が有力です。
わずかに違いはありますが、結局はどちらの歩も突くことになる変化が多いです。
41手目:形勢判断と候補手
互角:▲7五銀
41手目は▲7五銀という強手があります。
この手が見えていなければ、少なくとも8手前に▲5四歩と垂らす手は指せません。
先に駒損をする攻めなので、失敗すると形勢を大きく損ねますが、
先手は「大駒がよく働いていること」「玉が安全であること」
「5筋の拠点を生かして後手陣を乱せること」
「大駒交換後に手番を握っていること」
「大駒を打てば後手陣の駒を取れそうなこと」
などの条件が揃っているため、バランスは取れています。
42手目:形勢判断と候補手
互角:△7七角成
42手目は△7七角成と後手から角交換をしてみたいです。
▲2二角成 △同玉となった形は、王手飛車の変化が生じることに加えて、
玉が守備駒の金から離れるのでやや不安定となり、できれば避けたいです。
本譜は△同飛と銀を取りました。
45手目:形勢判断と候補手
先手有利:▲5三歩成
45手目では▲5三歩成に△同金と取らせてから▲6六角と打ちます。
そこで△4四角と合駒をすると、▲5三飛成と金を取る手が成立します。
△5三同銀と飛車を取ると▲7五角で飛車が取り返せますし、
△6六角と角を取ると▲6二竜と王手で竜を逃げてから
▲6六歩と角を取り返すことができます。
尚、この局面で先に▲6六角と打ってはいけません。
△4四角 ▲5三歩成の局面で、△同金と取れば先ほどと同じ変化に合流しますが、
△6六角と角を取る手があります。
こちらも激しい攻め合いにはなりますが、
先手は飛車を取ることができないので、少し攻めが弱くなります。
この手順前後が効かないことは高段者レベルの話なので、
分からなければ流して頂いて結構です。
ポイントとして、2つの候補手でどちらを先に指すか迷ったら
安い駒を先に使う方が良いです。
もちろん例外はありますが、強い駒を残しておいた方が、
含みが多く残り、軌道修正もしやすくなります。
53手目:形勢判断と候補手
互角:▲4二歩、▲5五飛
53手目で▲4二歩と打つのが美濃囲い崩しの基本テクニックです。
金銀の相互連結がなくなるだけでも、だいぶ弱体化します。
この歩打ちは、敵陣に竜や飛車がいなくても、有効な手筋です。
但し、金をかわされてしまい、打った歩を取ってもらえないことは多く、
しばらく盤上に歩が残ります。
その間は、同じ筋で
底歩を打ったりして、
歩を受けに使うことができないので注意しましょう。
歩で相手の
囲いを崩す手から逆算して、
予め、その筋の歩を突き捨てておくような変化を
序盤から考えられるようになると高段者レベルの
駒組みとなります。
58手目:形勢判断と候補手
互角:△3三角、△5六角、△8八角 など
ようやく後手に
手番が回ってきました。
角を2枚持ち駒に温存しておいても仕方ないので、ここで1枚は使います。
後手は、先手陣に対する攻めの拠点がなく、金駒が4枚とも自陣付近にいます。
このような場合、急いで攻めようとすると、戦力不足で攻め合い負けします。
「
竜は敵陣に馬は自陣に」「
馬の守りは金銀三枚」という格言に従い、
馬を作って、粘ったり、受け切りを狙ったりする指し方が良いでしょう。
65手目:形勢判断と候補手
先手有利:▲5二銀
65手目に▲4一銀と打ってはいけません。
△3三馬と引かれると、4二の歩を取られてしまい、
攻めの足掛かりがなくなってしまいます。
強力な馬を引かせないために▲7七歩のような手も有力ですが、
△5三銀と引く手が、金駒を自玉に近づけながら、
拠点となる4二の歩を狙って攻めを催促しているので味が良いです。
また、後手が攻める際に1番欲しい駒は桂なので
後で△8九馬と桂を取る手が残っているのも気になります。
本譜は▲5二銀と打ちました。
自玉が安全な場合は、焦らず、確実な攻めを見せることがコツです。
69手目:形勢判断と候補手
先手有利:▲4八香
69手目は▲4八香と打つのが味の良い攻防手です。
後手が4筋に桂や香を打って攻める手を消しながら、
後手陣を睨んでいるうえ、歩の合駒がきかない馬取りの先手です。
尚、1筋の端攻めをされる恐れがある場合には、▲4七香と1つ上に打って、
先手玉が左側へ逃げる余地を残しておいた方が良い場合もあります。
先手は、後手から攻められる心配がないので、
攻めが切れないように指していきます。
そのためには、
駒損をしないように注意しながら
後手陣の駒を1枚ずつ丁寧に
剥がしていきます。
剥がす目標は馬や金などの守備力が高い駒が優先です。
また、強固な囲いを再生されないためにも、金は渡さないようにしましょう。
85手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲8四角
85手目は▲8四角と打つのが
味の良い攻防手です。
△5七桂不成を防ぎながら、後手陣を睨んでいます。
対抗形では、お互いにこのような角打ちの変化がよく出てきます。
自分が打つことだけでなく、相手に打たせないことも重要です。
89手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲7九金打、▲5四歩、▲5八金左、▲5九金左 など
89手目で辛く指すならば▲7九金打です。
勝ちは遠くなりますが、先手はと金を使った攻めが確実なので、焦る必要はありません。
攻めるならば▲5四歩と叩きます。但し、後手陣が堅すぎるので、
どこかで▲5八金左や▲5九金左と自陣に手を戻すことにはなります。
先手は大駒が3枚、金駒が4枚あるため、逆転の余地が少ない優勢です。
後手は、かなり苦しいですが、
最終盤での駒の入手を見越して、攻めの拠点を作ります。
終盤
109手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲2六飛、▲2五銀 など
109手目は▲2六飛と打つ手が好手です。
後手の玉頭を狙いながら、後手の攻めを焦らせてもいます。
先手は攻め駒として桂が欲しいので、
後手が桂で攻めてくる分には大歓迎なのです。
先手玉は絶対に詰まない形が続きます。
駒損を気にする必要はありません。全軍躍動で一気に攻めかかりましょう。
127手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:▲3二成銀、▲4二金、▲5七馬 など
127手目の局面は▲3二成銀以下、後手玉に長手数の詰みがあります。
但し、正確に読み切るのは非常に困難です。
自玉が必至ならば詰ましにいくしかありませんが、
優勢な場合は「
長い詰みより短い必至」で分かりやすく勝ちにいきましょう。
133手にて、後手の豊島八段が投了し、菅井王位の1勝となりました。
投了図以降、△1二玉 ▲1三香 △同玉 ▲2二角 △2四玉
▲2六竜 △2五銀 ▲1三銀 △同香 ▲3三角成 △同銀 ▲1六桂
のような詰みがあります。退路封鎖で▲1三銀と捨てるのがポイントです。
少し長いですが、追えるところまで追ってみてください。
本局では菅井王位の優位を維持する指し回しが非常に勉強になりました。
棋聖戦第1局
王位戦第2局