目次
王位戦第5局
王位戦第7局
対局情報
局面解説
序盤
19手目:形勢判断と候補手
互角:▲3三角成、▲6六歩、▲7七角 など
先手が無難に穴熊に組むためには▲6六歩と突いて、
角交換を拒否してから▲7七角と上がります。
但し、相穴熊なので、積極的に▲3三角成と角交換をする手順も有力です。
本譜は▲6六角と出ました。
△同角 ▲同銀となると先手の銀が手順に進出できるので、
後手からの角交換をけん制していると言えます。
但し、角は
頭が丸いので狙われやすいです。
本譜では、あえて狙わせている意味もあるのですが、
指し方が難しくなるので、あまり前線に出ない方が無難です。
29手目:形勢判断と候補手
互角:▲8八銀、▲5五歩 など
29手目で▲8八銀と上がって
ハッチを閉める手は自然ですが、
後手がすぐに攻めてくる訳ではないので、急ぐ必要はありません。
ここでは▲5五歩~▲5六銀と位を取って、
後で▲5八飛から5筋を攻める指し方もあります。
本譜は▲3六歩と突きました。
これも右桂を活用するために必要な1手です。
37手目:形勢判断と候補手
互角:▲6八角、▲5九角、▲8六角、▲9五角、▲6六角、▲5五角
37手目は、いくら穴熊と言えども角を逃げますが、逃げ場所はどこも有力です。
多くの場合、大駒を逃げ回っているのは良くないのですが、
穴熊の場合、大駒を追い払うために歩を突いてくれるならば、
中終盤で歩をぶつけて攻めやすくなるという面が強くなります。
中盤
45手目:形勢判断と候補手
互角:▲3七桂、▲9六歩、▲8六角 など
45手目に▲同角と取ってはいけません。
例えば、美濃囲い同士の場合、△2二飛と回り、▲2五歩と角を支えて、
△4四角とかわす、といった手順が部分的な定跡ですが、
相穴熊では必ずしも通用しません。
△2二飛 ▲2五歩に、△2四飛と後手から飛車角交換をして、
△2七歩から△4九角のように攻めていく手順が成立します。
場合によっては3三の角も切って食い付いてしまえば、
先手が2筋を突破しても、攻めとしては遅いので怖くありません。
穴熊では、相手陣に食い付くことを優先して考えるようにしましょう。
船囲いや美濃囲いでの手筋が通用しない場合も多いので注意が必要です。
56手目:形勢判断と候補手
互角:△2二飛、△4七飛成 など
56手目では部分的な定跡通りに△2二飛と回る手もあります。
本譜は△4七飛成と指しました。こちらも自然な手です。
相手陣に侵入したら、桂香の入手を巡る攻防となります。
本局の場合は、と金を作ることができる筋が囲いから遠いので尚更です。
67手目:形勢判断と候補手
互角:▲3一竜、▲2二竜 など
66手目の△1五角は
両取りですが、3七の桂を取られても
駒損ではないので、
67手目は▲3一竜や▲2二竜と逃げておく手が有力です。
以下、▲1一竜と先に香を取って、
▲8六香~▲9五桂のような攻めを狙って難解な勝負となります。
▲5三竜も有力で、竜が移動すれば▲5三角と打つスペースができます。
但し、△5八歩~△5九歩成のようになると攻め間違えることができません。
歩を取るときには、その筋に と金を作られる手順まで意識しましょう。
無難に攻めるならば、不用意に相手陣の歩を取らないことがコツです。
74手目:形勢判断と候補手
後手有利:△6三銀、△6二金寄
先手は7筋の歩が切れていることを生かして
▲6四桂~▲7二歩と打つような攻めを狙っています。
但し、目先の狙いはそれだけですので、
△6三銀と引いて、丁寧に受けておけば問題ありません。
80手目:形勢判断と候補手
互角:△7九飛成、△4六飛成
80手目は△4六飛成のように飛車角交換を受け入れる手順も有力ですが、
△7九飛成が相穴熊ならではの攻めです。
先手の持ち駒が大駒と歩だけなので穴熊を再生されづらいうえに、
3八に打った角の働きが少し弱いので盤上に残そうという判断です。
92手目:形勢判断と候補手
互角:△9五桂、△7八金 など
次の▲6一歩成は受からないので、後手は攻めるしかありません。
△7八金は有力ですが、先手は▲7九歩と打つことができるので、
結果として先手に金が渡り、それを埋めて粘られる可能性は上がります。
ここでは△9五桂が有力です。次に△7八金と打てば、先手は受けなしです。
▲7九歩に対しても△同竜 ▲同銀に△8七桂不成で詰みです。
さらに5三の桂が
質駒になっているため、
入手後に△7五桂と打って8七の地点を突破する狙いもあります。
本譜は△7五桂と打ちました。狙いは△9五桂とほぼ同じですが、
9五に打つよりも取られてしまう可能性は高くなります。
お互いに桂と と金で相手陣を崩そうとしますが、
相穴熊では取った駒を自陣に埋め合うことでほぼリセットされます。
勝負を決めるためには一気に突破する必要がありますので、
少しでも攻め駒が前進したり、相手陣を弱体化したりするようにしましょう。
終盤
109手目:形勢判断と候補手
互角:▲8三金、▲5三竜、▲7八金 など
先手陣には2枚の角の利きがあるため、有効な
詰めろがかかりません。
よって、▲8三金と直接攻めたり、
▲5三竜と銀を入手したりする手は有力です。
本譜は▲7八金と打ちました。
持ち駒の金は自陣に埋めるためのもの、という穴熊ならではの手筋です。
120手目:形勢判断と候補手
互角:△8五桂、△5九竜、△8二金打、△8二銀 など
穴熊に対して5段目から攻める手は基本的に遅く、
▲7四歩と取り込まれても詰めろになりません。
よって、ここで攻めることもできますが、
その場合は金駒に対して金駒以外の駒で働きかける△8五桂が有力です。
受ける場合は△8二銀と引いておくか、
△8二金打のように惜しみなく持ち駒を投入する手が有力です。
金駒を打ち込んでくる攻めに対しては、金駒を打ち返してしっかりと受けます。
玉はなるべく端から動かないようにすることが穴熊で粘るコツです。
140手目:形勢判断と候補手
先手有利:△7四銀
140手目で粘るならば、△7四銀と歩を取ってから△7一香と打ちます。
しかし、先手の大駒の働きが良いので既に粘りづらい状況です。
本譜は△7七桂と打ちました。
155手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:▲9五桂、▲7五桂、▲7二銀、▲4五角成 など
相手陣の駒が少なくなったら、それらの駒に直接絡むように
持ち駒を打っていけば寄り筋となります。
あとは、△8二玉から入玉を目指してきた場合のことを考えておきます。
本局の場合、▲4五角成とすれば、
入玉のルートは遮断できます。
165手にて、後手の菅井王位が投了し、
菅井王位の3勝、豊島棋聖の3勝となりました。
本局では、豊島棋聖の相穴熊における距離感が非常に勉強になりました。
王位戦第5局
王位戦第7局