【将棋解説】
第69期王将戦七番勝負第1局 渡辺王将vs広瀬八段

目次

解説動画



対局情報

棋戦
第69期王将戦七番勝負 第1局
対局日
持ち時間
8時間(2日制)
対局者
渡辺 明 王将(三冠)<先手>
広瀬 章人 八段<後手>
戦型
矢倉模様の力戦
主催
スポーツニッポン新聞社
毎日新聞社
公益社団法人日本将棋連盟
(棋譜利用問い合わせ済み)
対局場所
静岡県:掛川城 二の丸茶室

局面解説概要

序盤

【将棋】第69期王将戦七番勝負 第1局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の対局で23手指した局面
point
24手目:形勢判断と候補手
互角:△5二金、△9四歩、△7三桂、△7三銀、△6四角 など
まだまだ駒組みが続きそうな局面ですが、先手の8筋が薄いので、
24手目で、後手が△8六歩と突く仕掛けは気になります。

▲同銀 △同角 ▲同歩 △同飛の角銀交換まで進んだ後、
先手が飛車成りと△8八歩を両方防ぐためには▲8八歩と打つしかありません。
以下、△8七歩 ▲7七金 △8八歩成 ▲8六金 △7九と ▲同金 △3九銀
とほぼ一直線の手順が有力です。
後手は駒損のうえに攻めが細いので、形勢は先手有利です。
しかし、先手は玉が薄く、大駒を狙われやすいので、実戦的には怖い変化です。
また、本譜と少し形が違うだけで、
先ほどの攻め筋から変化が生じて、後手有利となる場合もあります。

見た目以上に精密な駒組みが行われているので、
基本的には、▲7八金のような手で8筋を守っておいた方が無難です。




【将棋】第69期王将戦七番勝負 第1局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の対局で32手指した局面
point
33手目:形勢判断と候補手
互角:▲2四歩、▲4六角
33手目で▲7六歩と打つのは消極的で疑問手です。
後手が銀取りに構わず△8六歩と突く手が残ったままですし、
そもそも後手が次に△7六歩と打ってくる訳ではありません。

ここでは▲4六角の形を作って、
飛車取りによって後手の動き方をけん制します。
単に出る手も有力ですが、2筋の1歩交換はまず損にならないので、
2四を経由した方がお得感があり、自然です。



【将棋】第69期王将戦七番勝負 第1局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の対局で37手指した局面
point
38手目:形勢判断と候補手
互角:△5五歩
38手目は飛車取りを受けるために△5五歩と突く手が有力です。
次に▲3七桂と跳ねられてしまうと、角頭をカバーして良い形になるので、
歩をぶつけることで忙しくして、桂跳ねを遅らせる意味合いもあります。

他に△6四角とぶつける手は積極的ですが、▲同角と取られてみると、
△同歩は▲6三角と打ち込まれる含みが生じて駒組みが難しくなりますし、
△同銀は攻め駒が下がってしまうことで、
仕掛けも囲いも遅れて主張がなくなるため、いずれも作戦負けです。

本譜は△6四歩と突きました。
穏やかな指し方ですが、角の働きに少し差が出てしまいました。



中盤

【将棋】第69期王将戦七番勝負 第1局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の対局で50手指した局面
point
51手目:形勢判断と候補手
先手有利:▲2五銀、▲7七金寄、▲7七金上 など
51手目は▲2五銀と打つのが攻めの手筋です。
対して、△3三銀と引くのは▲3五歩で攻めの幅が広がってしまうので、
△3三銀打と手堅く受けるのが最善です。

結局、先手が2筋を破ることはできませんが、
お互いに持ち駒の銀を手放したという事実は同等なのに、
先手だけが好きな時に▲2四歩と打って、
銀を再度持ち駒にする権利を得ることができます。
これによって、後手からの早い攻めがなくなったので、
先手が自玉の厚みを築いて、後手の攻撃陣を圧迫する余裕が生じました。



【将棋】第69期王将戦七番勝負 第1局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の対局で63手指した局面
point
64手目:形勢判断と候補手
先手有利:△8五銀、△5五歩
次に、先手からは▲7四歩や▲7四銀という攻めがあるため、
64手目で、それらの狙いを先受けする△8五銀はの良い攻防手です。

本譜は△5五歩と突きました。
先手から攻められることにはなりますが、
その反動を利用して攻め合いに持ち込むための準備です。



【将棋】第69期王将戦七番勝負 第1局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の対局で72手指した局面
point
73手目:形勢判断と候補手
先手有利:▲同桂、▲6八玉
73手目は▲同桂と取る手も▲6八玉とかわす手も有力です。

▲同桂は、後手からの攻めが続きやすくなるのですが、
先手の持ち駒が増えるので、反撃が楽しみになります。

▲6八玉は、後手の駒が渋滞するので、攻めを切らしやすいのですが、
先手の持ち駒が増えにくいので、少し長い戦いになります。

この局面で、迷った場合のお勧めは▲同桂です。
終局までに自分がミスをする確率を考慮すると、
一般的に、優位の時は短期決戦に持ち込んだ方が、逆転負けしにくいです。



【将棋】第69期王将戦七番勝負 第1局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の対局で85手指した局面
point
86手目:形勢判断と候補手
先手有利:△3八金
後手は攻めの拠点がなく、小駒しか持っていないうえに、
大駒を押さえ込まれているので指し方が難しい局面です。
また、後手玉が薄いので、飛車は最も先手に渡せない駒なのですが、
先手には飛車を追い回すのに十分な持ち駒があり、後手に余裕はありません。

86手目で、先手玉に直接迫る手はないので、
次に厳しい迫り方として、大駒を狙う手を考えます。
本譜は△5四桂と打って角を狙いましたが、
△3八金と打って飛車を狙う手も有力です。




終盤

【将棋】第69期王将戦七番勝負 第1局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の対局で93手指した局面
point
94手目:形勢判断と候補手
先手有利:△8六歩、△6六桂
94手目は△8六歩と垂らしておく手が有力で、
次に△8七金や△8七歩成とする狙いがあります。
△8六歩に対する正着は手抜いて▲8四歩なのですが、
明確な狙いをチラつかせることで、間違えてくれる可能性も高そうです。

他に、△6六桂と跳ねる手も有力です。
▲同金とタダで取られてしまいますが、△6五銀と絡むことができます。

本譜は△4八銀と打ちました。
5筋で と金を作って、攻め駒不足を解消することが狙いですが、
▲2九飛と回ることで、先手の飛車が攻めに働くようになり、
攻め合いの速度差が大きく開いてしまいました。



【将棋】第69期王将戦七番勝負 第1局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の対局の投了図
103手にて、後手の広瀬八段が投了し、渡辺王将の1勝となりました。

投了図以降、先手玉は広くて詰まないので、
△2三同金と応じるしかありませんが、
大駒は離して打て」で▲7二飛か▲8二飛と打てば
△4一玉に▲3二銀、△5一玉に▲6二飛成の王手が生じて詰みとなります。

尚、▲6二飛と玉にくっつけて飛車を打ってしまうと、
持ち駒が銀では詰まないので大逆転です。

本局では渡辺王将の厚みを生かした戦い方が非常に勉強になりました。


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