目次
解説動画
王将戦第1局
王将戦第3局
対局情報
渡辺 明 王将(三冠)<後手>
広瀬 章人 八段<先手>
スポーツニッポン新聞社
毎日新聞社
公益社団法人日本将棋連盟
(棋譜利用問い合わせ済み)
局面解説概要
序盤
戦型は角換わり腰掛け銀で、
先手が2九飛&4八金、後手が8一飛&6二金の形となりました。
その後、先手が4六に角を据える指し方は、
3か月ほど前に行われた
第32期竜王戦第1局と同様です。
一部で手順が前後するものの、49手目時点で同一局面となっています。
50手目:形勢判断と候補手
互角:△6三金、△6三銀
50手目で本譜は△6三金と上がりました。
竜王戦で指された△6三銀と比較すると、
玉の堅さよりも厚みで勝負する展開になりやすいです。
中盤
56手目:形勢判断と候補手
互角:△8一飛、△8二飛、△8三飛
56手目は飛車を
引くしかありません。
8四と8五は、横への働きが弱いので、
それよりも深く引きますが、8一~8三はいずれも有力で優劣つけ難いです。
本譜は△8一飛と引きました。
角のラインを避けつつ、香に
紐を付けているので、
先手が早い仕掛けを見送って、戦いが長引いた場合に、最も無難な位置です。
▲7二銀と飛車金両取りに打たれる隙は気になりますが、
先手がすぐに銀を入手するために▲5五銀とぶつけてきても、
以下、△同銀 ▲同角に△5四金と出れば、
両取りを回避しつつ、
先手の角を捕まえることもできるので、当面は問題ありません。
64手目:形勢判断と候補手
互角:△同銀、△同歩
64手目は△同銀も△同歩も有力で、比較は難しいです。
本譜は△同銀と取りました。
▲3五角を防ぐことで、先手が
歩切れになりやすく、
△同歩よりは先手に対するプレッシャーがわずかに強くなっています。
但し、銀が囲いから離れて薄くなるので、当面の間は、▲3四桂に加えて、
▲5五角のような斜めのラインにも注意する必要があります。
68手目:形勢判断と候補手
互角:△8四角
68手目で△同歩と取ると、
▲5四歩が▲7三角成と▲5三歩成の両狙いになります。
以下、両方を受けるためには△6四角と打つしかありませんが、
▲同角 △同銀 ▲5三歩成 △同銀で
金駒がばらけるため、指しづらいです。
本譜は△8四角と打ちました。
4八の金取りを見せつつ、7三の金に紐を付けており、味の良い攻防手です。
79手目:形勢判断と候補手
互角:▲3四香
次に後手が△2二銀と打つと、先手は馬を閉じ込められてしまいます。
しかし、▲7七馬と逃げるようでは△8五桂で後手の攻めに勢いが付きます。
「
敵の打ちたいところに打て」で▲2二歩と打つのは手筋なのですが、
このタイミングだと△3三桂 ▲2一歩成 △4二玉と全部逃げられた際に、
遠く8一の飛車が受けに利いてきてしまいます。
本譜は「
香を持ったら歩の裏を狙え」で▲3四香と打ちました。
後手が△3三桂打と受ければ手堅いですが、先手玉の安全度が増すうえに、
△3三桂と跳ねる手がなくなるので、▲2二歩が成立するようになります。
2筋の突き捨てに対して△同銀と応じた場合は、
▲3四香や▲3四桂がやや厳しくなることが多く、
相対的に先手の持ち駒における桂香の価値が高くなるため、
銀香交換や銀桂交換で先手の
駒損でも、形勢はバランスが取れているのです。
92手目:形勢判断と候補手
互角:△7六歩
92手目は△7六歩と攻め合いを目指す手が有力です。
対して▲7三桂成ならば、駒損となりますが、
先手の攻め駒が離れるので、後手玉に対する目先の脅威は和らいでいます。
先手が工夫して▲7三桂不成ならば、飛車取りが残りますが、
一旦△8二飛と浮いておけば、二段目の守備力がグッと増します。
本譜は△同馬と取りましたが、形勢を損ねました。
2九の飛車取りにはなっていますが、
先手は▲2四飛と
切る予定でしたので、
手番を握ることには繋がりません。
また、馬の利きがなくなって後手玉に増した脅威と、
桂を入手して先手玉に増した脅威では、前者が上回っていました。
これは、桂が持ち駒で2枚目なので、1枚目よりも少し価値が下がることと、
桂を取った後の馬の位置が中途半端なことが主な理由です。
終盤
97手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:▲6二銀、▲3三香成
97手目は「
玉は包むように寄せよ」で▲6二銀と打つ手が有力です。
▲5三金、▲5一銀打、▲7三銀成という狙いがあり、受け切りは困難です。
相手玉が広く、かつ、自分の持ち駒に小駒しかない場合は、
早い段階で先回りしておかないと、すぐに駒が足りなくなります。
109手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:▲4三金
109手目で▲7三桂成とすると、△8七香成から詰まされてしまい、大逆転です。
以下、▲同金には△8九飛と捨てます。
飛車捨てによる
送りの手筋は、
一間竜か二枚飛車が必ず実現するので、
上下でも左右でも強烈で、下段に落とす形は尚更です。
本譜の形で、仮に、後手の持ち駒に飛車がない場合、
角金銀の3枚をプラスしても先手玉は詰みません。それだけ違いがあります。
尚、△8七香成に▲7九玉と逃げれば、
詰みの手数は長くなりますが、
△7八成香と金を取って△8八飛打とすれば、先手玉は広くありません。
本譜は▲4三金と打って、後手玉を寄せにいきました。
王手を続ける中で、手順に守備力の高い馬を外すことがポイントです。
117手にて、後手の渡辺王将が投了し、
渡辺王将の1勝、広瀬八段の1勝となりました。
投了図以降、△6三玉 ▲7三金 △5二玉 ▲6二金 △4一玉 ▲3一馬にて、
後手玉はしっかりと包まれて詰みとなります。
本局では広瀬八段の
相手を左右から細かく揺さぶる指し回しが非常に勉強になりました。
王将戦第1局
王将戦第3局