目次
解説動画
棋聖戦第4局
第90期棋聖戦第1局
対局情報
局面解説
序盤
39手目:形勢判断と候補手
互角:▲4五桂、▲7九玉、▲4五歩 など
38手目の△4一飛自体は4筋を受ける部分的な手筋です。
そして△8一飛と戻って手待ちをすることになれば
△5二玉⇔△4二玉と玉を往復して手待ちをするよりも、
常に△3一玉と囲う含みを残しています。
但し、現局面では玉飛接近の悪形ですので、
それを咎めるために▲4五桂と跳ねて仕掛ける手は有力です。
そこで△4四銀と上がると、後手は飛車を4筋で使う見込みがなくなります。
そのため、どこかで△8一飛と戻ることになりますが、
それならば△4一飛ではなく、△5二玉と手待ちをした方が
1手早く反撃できる可能性があります。
▲4五桂に対して、△2二銀と引くと、今度は
壁銀の悪形にもなります。
▲7五歩 △同歩 ▲5三桂成 △同玉 ▲7四歩と
桂頭の弱点を狙って、さらに畳みかければ、
形勢は互角のままですが、8筋に角を打つ隙もあるため、
後手が陣形をまとめながらミスなく受け続けるのは大変です。
手待ちをするということは、最善形を崩すということです。
相手はその隙を狙っていますので、
なるべく相手が仕掛けづらいような形を維持するようにしましょう。
本譜は▲7九玉と指しました。
争点となりそうな4筋から離れた自然な手です。
相手が明らかに研究していると思われる場合、
誘いの隙に対して余計な時間を使わないことも実戦的な指し方です。
45手目:形勢判断と候補手
互角:▲4五歩 など
45手目の局面で自然な受けは▲4五歩です。
あとで▲4六角と打つ手が攻防に利いてきます。
本譜は▲4七角と打ちました。
これは持ち駒の1歩を温存して、7筋の桂頭を攻めようという積極的な指し方です。
中盤
48手目:形勢判断と候補手
互角:△6三金、△8三角、△同歩 など
48手目で△6三金や△8三角のように桂を守りに行く手は自然です。
狙いが分かりやすいときには丁寧に受けておけば悪くなることは少ないです。
但し、△6三銀と引く手は少し指しづらいです。
4筋が手薄になると、先手が▲4五桂と跳ねる攻めを受けづらくなります。
尚、48手目に△同歩と取る手も有力です。
▲7四歩と打たれると桂を取られてしまいますが、
先手は歩切れになるうえ、4七の角が活用しづらいのです。
56手目:形勢判断と候補手
互角:△6五歩
56手目は△6五歩と突いて金取りを受ける1手です。
後手としては金駒を取り合った方が飛車を活用できるのですが、
それ以上に先手の4七の角を活用させてはいけないのです。
57手目:形勢判断と候補手
互角:▲5四銀
57手目は▲5四銀が有力です。
△同歩に対して▲4六歩と打って桂を守っておけば
後手は5三に駒を打ち込まれる手を気にする必要があります。
本譜は▲4四銀と指しました。
しかし、4五の桂を生かすためには3三の地点を狙うしかなくなったので
攻めが少し遅くなりました。
60手目:形勢判断と候補手
後手有利:△5五銀打、△8六歩
角換わりでは、飛車の場所に関わらず、
先手は2筋、後手は8筋の歩を
突き捨てる手を常に考えます。
中盤では損になりづらい手ですが、終盤だと手抜きをされる恐れがあります。
仕掛けの後、局面が少し落ち着いたら、突いてしまいましょう。
66手目:形勢判断と候補手
後手有利:△5五銀打
66手目に△同飛と取ると▲2五銀と打つ手があります。
対して△同歩 ▲同角は間接王手飛車ですし、
△4四飛は▲2四銀で2筋を突破されます。
後手玉は堅くないので、
後手陣に先手の竜や馬ができる展開は避けなければいけません。
ここでは△5五銀打と中央を手厚くしてから、
△4六銀と歩を取り、飛車を生かして4筋から攻める手順が有力です。
形勢が良くなると「安全に勝ちたい」という心理が働きますが
受け過ぎてしまうと返って逆転します。
相手が受けづらい攻めを仕掛けてきたら、
強く攻め合いを選択するようにしましょう。
終盤
後手が順調に攻めているようにも見えますが、
持ち駒の金駒を打っていく攻めは、相手も金駒を打って受けると
千日手になりやすいので注意が必要です。
歩を進めたり、桂香を取ったりするような手を絡めることができれば
徐々に相手が受けづらくなりますので、意識しましょう。
92手目:形勢判断と候補手
後手優勢:△6七角
後手が攻めの
拠点を作るためには6七か7六に駒を打つ必要があります。
そして、持ち駒は角・金・銀の3種類です。
となると、6パターンの中でどの手が最善かを考える必要があります。
まず悪手が1つあって、それは△6七金です。
詰めろでないどころか、次に有効な王手がかかりません。
▲7九桂や▲7八歩と丁寧に受けられて、攻めが続かずに逆転します。
また、将来的に▲7六玉から上部に脱出されるような隙も気になります。
そして
最善手は△6七角です。
金駒を2枚温存していることで、
手数は少し長くなりますが、△8七銀からの詰めろになっています。
また、先手がこの角を取りに来ても△6六歩と指して
ひもを付ければ
角を取られる代償に と金を作ることができます。
後手玉は安全ですので、この角が銀や桂と交換になっても構いません。
残りの4つは次善手です。
攻めが細いと▲7九桂のように粘られますし、
詰めろをかけないと▲5六桂や▲7四桂と攻め合われて忙しくなります。
98手目:形勢判断と候補手
後手勝勢:△8七歩、△7七歩 など
98手目は、直前で手に入れた1歩を生かして、
△8七歩と打つのが、分かりやすい決め手です。
6七の角は、取られてしまうギリギリまで、攻めの拠点として活用しましょう。
108手にて、先手の羽生棋聖が投了し、
羽生棋聖の2勝、豊島八段の3勝で、豊島新棋聖の誕生となりました。
投了図以降は、▲同桂に対して「
大駒は離して打て」で
△7七角 ▲9八玉 △8八角成までの詰みとなります。
本局では豊島新棋聖の手厚い指し回しが非常に勉強になりました。
棋譜
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棋戦:第89期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負 第5局
先手:羽生善治棋聖
後手:豊島将之八段
手数----指手---------消費時間--
1 2六歩(27) ( 0:00/00:00:00)
2 8四歩(83) ( 0:00/00:00:00)
3 2五歩(26) ( 1:00/00:01:00)
4 8五歩(84) ( 0:00/00:00:00)
5 7六歩(77) ( 0:00/00:01:00)
6 3二金(41) ( 0:00/00:00:00)
7 7七角(88) ( 0:00/00:01:00)
8 3四歩(33) ( 0:00/00:00:00)
9 6八銀(79) ( 0:00/00:01:00)
10 7七角成(22) ( 0:00/00:00:00)
11 同 銀(68) ( 0:00/00:01:00)
12 2二銀(31) ( 0:00/00:00:00)
13 7八金(69) ( 3:00/00:04:00)
14 3三銀(22) ( 0:00/00:00:00)
15 3八銀(39) ( 0:00/00:04:00)
16 6二銀(71) ( 0:00/00:00:00)
17 4六歩(47) ( 0:00/00:04:00)
18 6四歩(63) ( 2:00/00:02:00)
19 4七銀(38) ( 1:00/00:05:00)
20 6三銀(62) ( 0:00/00:02:00)
21 6八玉(59) ( 0:00/00:05:00)
22 4二玉(51) ( 1:00/00:03:00)
23 3六歩(37) ( 1:00/00:06:00)
24 7四歩(73) ( 0:00/00:03:00)
25 3七桂(29) ( 1:00/00:07:00)
26 7三桂(81) ( 0:00/00:03:00)
27 9六歩(97) ( 0:00/00:07:00)
28 9四歩(93) ( 0:00/00:03:00)
29 1六歩(17) ( 0:00/00:07:00)
30 1四歩(13) ( 0:00/00:03:00)
31 2九飛(28) ( 1:00/00:08:00)
32 8一飛(82) ( 0:00/00:03:00)
33 4八金(49) ( 2:00/00:10:00)
34 6二金(61) ( 0:00/00:03:00)
35 6六歩(67) ( 1:00/00:11:00)
36 5四銀(63) ( 2:00/00:05:00)
37 5六銀(47) ( 1:00/00:12:00)
38 4一飛(81) ( 1:00/00:06:00)
39 7九玉(68) ( 2:00/00:14:00)
40 4四歩(43) ( 0:00/00:06:00)
41 4五歩(46) ( 4:00/00:18:00)
42 5二玉(42) ( 0:00/00:06:00)
43 4四歩(45) ( 5:00/00:23:00)
44 同 飛(41) ( 1:00/00:07:00)
45 4七角打 ( 3:00/00:26:00)
46 4一飛(44) (17:00/00:24:00)
47 7五歩(76) ( 7:00/00:33:00)
48 6三金(62) ( 1:00/00:25:00)
49 7四歩(75) (46:00/01:19:00)
50 同 金(63) ( 0:00/00:25:00)
51 4五桂(37) ( 1:00/01:20:00)
52 4四銀(33) (33:00/00:58:00)
53 2四歩(25) (30:00/01:50:00)
54 同 歩(23) ( 0:00/00:58:00)
55 5五銀(56) ( 0:00/01:50:00)
56 6五歩(64) (15:00/01:13:00)
57 4四銀(55) ( 1:00/01:51:00)
58 同 飛(41) ( 0:00/01:13:00)
59 4六歩打 ( 0:00/01:51:00)
60 8六歩(85) (24:00/01:37:00)
61 同 歩(87) ( 2:00/01:53:00)
62 8七歩打 ( 5:00/01:42:00)
63 3五歩(36) (31:00/02:24:00)
64 同 歩(34) ( 9:00/01:51:00)
65 3四歩打 ( 3:00/02:27:00)
66 5五銀(54) (21:00/02:12:00)
67 3三銀打 ( 4:00/02:31:00)
68 同 桂(21) (21:00/02:33:00)
69 同 歩成(34) ( 2:00/02:33:00)
70 8八銀打 (24:00/02:57:00)
71 同 銀(77) (17:00/02:50:00)
72 同 歩成(87) ( 0:00/02:57:00)
73 同 玉(79) ( 0:00/02:50:00)
74 7七歩打 ( 0:00/02:57:00)
75 同 金(78) ( 0:00/02:50:00)
76 7六歩打 ( 1:00/02:58:00)
77 同 金(77) ( 5:00/02:55:00)
78 6七銀打 (23:00/03:21:00)
79 8七銀打 ( 0:00/02:55:00)
80 7六銀成(67) ( 0:00/03:21:00)
81 同 銀(87) ( 0:00/02:55:00)
82 7五銀打 ( 0:00/03:21:00)
83 5八角(47) (14:00/03:09:00)
84 7六銀(75) ( 9:00/03:30:00)
85 同 角(58) ( 0:00/03:09:00)
86 7五金(74) ( 0:00/03:30:00)
87 8七銀打 ( 0:00/03:09:00)
88 7六金(75) ( 1:00/03:31:00)
89 同 銀(87) ( 0:00/03:09:00)
90 7五歩打 ( 0:00/03:31:00)
91 同 銀(76) (23:00/03:32:00)
92 6七角打 ( 1:00/03:32:00)
93 7八銀打 ( 0:00/03:32:00)
94 7六銀打 ( 1:00/03:33:00)
95 7九桂打 ( 2:00/03:34:00)
96 6六歩(65) ( 4:00/03:37:00)
97 6八歩打 ( 3:00/03:37:00)
98 8七歩打 ( 4:00/03:41:00)
99 同 銀(78) ( 0:00/03:37:00)
100 同 銀成(76) ( 1:00/03:42:00)
101 同 桂(79) ( 0:00/03:37:00)
102 7八金打 ( 3:00/03:45:00)
103 9八玉(88) ( 0:00/03:37:00)
104 8八銀打 ( 0:00/03:45:00)
105 6七歩(68) ( 0:00/03:37:00)
106 9九銀成(88) ( 0:00/03:45:00)
107 同 玉(98) ( 0:00/03:37:00)
108 9七香打 ( 0:00/03:45:00)
109 投了 ( 0:00/03:37:00)
まで108手で後手の勝ち
棋聖戦第4局
第90期棋聖戦第1局