目次
王位戦第4局
王位戦第6局
対局情報
局面解説
序盤
13手目:形勢判断と候補手
互角:▲3八玉、▲6八銀 など
相手が向かい飛車や中飛車のように積極的な攻めの含みを持たせている場合、
居飛車側は
角道を開けずに左美濃に組む指し方が有力です。
船囲いから進展させても同じ変化になる可能性はありますが、
居飛車側が好きなタイミングで角交換を挑む権利を保持しているため、
振り飛車側に主導権を握られにくくなり、
また、振り飛車側の
駒組みに少しだけ制約を与えることができます。
23手目:形勢判断と候補手
互角:▲6六歩
23手目で▲2二角成としてはいけません。
手順に後手玉が
囲いに入るので面白くない、というのもありますが、
先手は左銀を5七に上がっているので
△8五歩と突かれた時の8筋の受け方が難しくなってしまいます。
29手目:形勢判断と候補手
互角:▲2六歩、▲3六歩、▲4六歩 など
29手目は作戦の分岐点です。
基本的には2筋から4筋の歩を突いて、少しずつ
厚みを築き、
高美濃から銀冠を目指します。
歩を突く順番に決まりはありませんが、少しだけ含みが変わります。
▲4六歩から突くのは、最も無難です。
駒組みの途中で隙が生じにくいので、相手がすぐには仕掛けづらくなります。
但し、銀冠に組もうとして銀を上がった瞬間に狙われる可能性が高くなります。
▲2六歩から突くのは、▲2七銀~▲3八金の形を優先する含みがあります。
比較的安全に銀冠を組むことはできますが、
5八の金が残って
銀の割り打ちが生じたり、
早い段階で2筋を狙われたりする可能性が高くなります。
▲3六歩から突くのは、▲5九角~▲3七角と活用する含みがあります。
但し、玉の
こびんが開くので角交換の変化に気を付ける必要があります。
34手目:形勢判断と候補手
互角:△6三金、△7二飛、△6三銀 など
34手目の局面で△3二金から銀冠や銀冠穴熊を目指す指し方は自然なようですが、
後手はあまりゆっくりしていると、先手に7筋の歩を交換された後、
▲7六飛~▲7七桂~▲3七角の形を作られて主導権を握られてしまうので、
先手の好きなタイミングで仕掛けられてしまうことになります。
本譜は△6三金と指しました。
自玉から
離れるので少し指しづらいですが、
厚みを維持しながらバランスを取ることで作戦負けになるのを防いでいます。
44手目:形勢判断と候補手
互角:△7五歩、△8五歩 など
後手は陣形整備をするならば△4四歩が有力ですが、
角道が止まると少し攻めづらくなります。
先手の4九の金が離れ駒になったこともあり、
この瞬間に動けるだけ動いておきたいところです。
中盤
50手目:形勢判断と候補手
互角:△6五歩、△7六歩 など
後手は次に▲5五歩と突かれると、△4五銀 ▲同銀 △同桂 ▲4六角の後、
▲5六金のような手で桂や角を狙われて忙しくなってしまいます。
5五の地点に駒の利きを足すことはできませんので、
有効な受けはなく、50手目で仕掛けるしかありません。
59手目:形勢判断と候補手
互角:▲2六歩、▲6五歩、▲8三角、▲3八金 など
59手目は「
桂の高跳び歩の餌食」を狙って
▲2六歩が冷静な手です。
後手が△2四歩と受ける余地をなくすために、
▲2四歩 △同銀 ▲2六歩という手順は部分的な手筋ではあります。
しかし、この局面ではまだまだ先が長いので、
先手が2歩損になってしまうことの方が気になります。
66手目:形勢判断と候補手
互角:△9九角成、△1七桂成 など
66手目で△9九角成は自然な手です。
2五の桂を取らせている間に6筋や7筋から確実に攻めます。
但し、▲2五歩と桂を取る手が、後手陣に迫る手でもあるため、
本譜は△1七桂成と
ただ捨てして相手陣を乱しました。
1七の地点は銀冠の小部屋とも言われ、
終盤で玉が逃げた時に意外と耐久力があります。
終盤で粘られる可能性を減らすという意味があるため、
うまい駒の取られ方です。
72手目:形勢判断と候補手
互角:△6四香、△7三金、△3三銀 など
72手目は手が広くて難しい局面です。
自陣を整備するならば、▲8三角を防ぐ△7三金や△8二飛、
玉頭戦に備える△3三銀などが考えられます。
積極的に攻めるならば△6四香や△5四香と打てば
先手は歩切れのため、▲5六桂と使わせることができます。
78手目:形勢判断と候補手
互角:△3三銀左、△同銀
78手目は△3三銀左と引く手が自然です。
本譜は、強く△同銀と取りました。
これは、先手が歩切れで、かつ、後手の持ち駒に香があるため例外的に成立しています。
87手目:形勢判断と候補手
互角:▲8三角、▲1九飛、▲6五香 など
87手目に▲3七銀左と逃げてはいけません。
△7八馬に対して▲6六飛と出ることが出来なくなっています。
ここで手厚く指すならば▲8三角と打って、▲5六角成を狙います。
「
香を持ったら歩の裏を狙え」で、▲6五香と打つ手も有力です。
本譜は▲1九飛と回って、地下鉄飛車の形を生かしました。
飛車の当たりを避けつつ、1筋の端攻めが強力なので味が良いです。
また、だいぶ前に後手が△1七桂成とただ捨てした手を逆用しているため、
相手が後悔してくれる可能性もあり、心理面でもわずかにプラスです。
91手目:形勢判断と候補手
互角:▲1四歩、▲8三角 など
91手目に▲5六金と逃げてはいけません。
△5八と と入られると金取りの状況が変わらないまま、
相手の と金が自玉に迫ってきてしまいます。
現状では4六の銀も5七の金も取られそうなのですが、
お互いが連携しているので両方取られることはありません。
つまり、後手の5四の桂と6七の と金の働きが被っているので
見た目ほど厳しくはないのです。
終盤
97手目:形勢判断と候補手
先手有利:▲2四歩
97手目は▲2四歩と打つ手が厳しいです。
相手の歩を吊り上げてから
歩を垂らす攻めは非常に強力です。
後手は歩をうまく使って、1筋の突破を防ぎながら先手陣を乱します。
しかし、先手に冷静な対応をされると、先手陣に迫る手が難しい状況です。
119手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲6一銀、▲8三角、▲6一角 など
119手目で▲2三銀のように打っても悪手というほどではないのですが、
「
玉は包むように寄せよ」で先に相手玉を狭くしておく方が良いです。
▲8三角・▲6一銀・▲6一角のように
相手の
浮き駒を狙って持ち駒を打ち、先手で拠点を作りましょう。
126手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:△2七金
126手目で馬が逃げてしまうと▲5五桂・▲4五桂・▲4五香のような攻防手で
1手差にならない可能性が高まります。
形作りとなる可能性は高いですが、
ここが先手玉を詰ますために踏み込むタイミングです。
133手にて、後手の豊島棋聖が投了し、
菅井王位の3勝、豊島棋聖の2勝となりました。
投了図以降、後手は持ち駒に
小駒しかないので先手玉に詰みはありません。
また、△2四飛と歩を取りながら逃げても
▲4二銀 △同玉 ▲5一角 △3二玉 ▲4四桂以下、少し長いですが詰みとなります。
本局では菅井王位の玉頭戦の戦い方や飛車の使い方が非常に勉強になりました。
王位戦第4局
王位戦第6局