【将棋解説】
第69期王将戦七番勝負第7局 渡辺王将vs広瀬八段

目次

解説動画



対局情報

棋戦
第69期王将戦七番勝負 第7局
対局日
持ち時間
8時間(2日制)
対局者
渡辺 明 王将(三冠)<先手>
広瀬 章人 八段<後手>
戦型
矢倉
主催
スポーツニッポン新聞社
毎日新聞社
公益社団法人日本将棋連盟
(棋譜利用問い合わせ済み)
対局場所
新潟県:佐渡グリーンホテルきらく

局面解説概要

序盤

【将棋】第69期王将戦七番勝負 第7局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の対局で21手指した局面
point
22手目:形勢判断と候補手
互角:△6三銀、△7三桂、△1四歩 など
先手が玉と角を動かさずに金矢倉を完成させたのは、
やや形を決めすぎている面があり、後手が咎めるならば急戦です。
急戦にする場合、先手陣は駒が左側に寄っているので、
それらをなるべく相手にしないために、右四間飛車か中飛車が自然です。
少なくとも右桂の素早い活用は必須なので、
△8五桂の含みを残しておくために△8五歩は保留しておきます。




【将棋】第69期王将戦七番勝負 第7局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の対局で29手指した局面
point
30手目:形勢判断と候補手
互角:△6一飛、△1四歩、△3一玉 など
30手目で△6五歩と仕掛ける手に対しては▲4六角と出るのが好手で、
後手は7三の桂取りを受けつつ、6筋の攻めを継続することができません。

つまり、しばらくは駒組みを続けるしかなく、
それでは急戦の意味合いが薄らいでいるようですが、それは違います。
見方を変えると、▲4六角がなくなれば、△6五歩が生じるので、
▲4六歩~▲4七銀という盛り上がりを防いでいますし、
▲7九玉~▲8八玉は間接的に後手の角の利きに入るので指しづらく、
先手の駒組みを制限することに成功しています。

そして、先手が自ら先手陣のバランスを崩せば、
△4二銀、△6五歩、△8五桂などの組み合わせで攻めかかりますし、
玉を囲わずに、無理気味に動いてくれば、
それをしっかりと受けて、反撃を楽しみにすれば良いのです。



中盤

【将棋】第69期王将戦七番勝負 第7局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の対局で44手指した局面
point
45手目:形勢判断と候補手
互角:▲5七角、▲4二角成
45手目で穏やかに指すならば▲5七角と引く手が有力です。
次に▲2四歩と垂らす手が厳しいので、後手は△2三歩と受けますが、
先手も▲5六歩と打って△4四銀と追い返します。

本譜は▲4二角成と切りました。



【将棋】第69期王将戦七番勝負 第7局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の対局で46手指した局面
point
47手目:形勢判断と候補手
互角:▲2二飛成
47手目では3つの攻め方が考えられます。
1つ目は▲2四歩と垂らす手です。
次の▲2三歩成を間に合わせる訳にはいかないので、対応を急ぎますが、
△2七歩~△4九角と飛車を追い回すことで2筋は受かります。

2つ目は▲2三銀と打ち込む手です。
これに対しては△2七歩~△4九角でも難しいですが、
△2七歩~△2六歩と連打して△4四角と飛車取りにかわすのが手筋です。

3つ目は▲2二飛成で、本譜の進行ですが、これが最善です。
後手が2筋に歩を打てると、角と歩の持ち駒だけで、
先手の飛車は簡単に狙われてしまうので、それを嫌って反撃筋を減らします。
早い段階で大駒が角1枚だけになるのは少し心許ないですが、
手番を握りながら後手陣を乱して、あとは玉の堅さで勝負です。



【将棋】第69期王将戦七番勝負 第7局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の対局で60手指した局面
point
61手目:形勢判断と候補手
互角:▲2五銀、▲2五金
現状は飛車角と金銀の交換で、先手が大きく駒損しています。
但し、後手は大駒が密集しているうえに、玉とも近いので、
手番を生かしてまとめて押さえ込んでいけば、
駒損の回復も見込めますし、拠点を作ることもできます。

本譜は▲2五銀と打って竜を狭くしましたが、同様に▲2五金も有力です。



【将棋】第69期王将戦七番勝負 第7局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の対局で68手指した局面
point
69手目:形勢判断と候補手
互角:▲2二歩
69手目で簡単に▲3三金として角を取ってはいけません。
後手玉の周囲がサッパリとして、先手の攻めが続かなくなってしまうと、
駒損のマイナスが徐々に響いてくる展開となってしまいます。

▲2四歩と打って▲2三歩成を狙うのは良い感覚ですが、
このタイミングだと△2二歩で簡単に受けられてしまいます。

ここは「敵の打ちたいところに打て」で▲2二歩が有力です。
△同角でも△同竜でも、▲2四歩と打てば、今度は△2二歩がありません。
よって、後手は桂を逃げるしかありませんが、
先手は、悪い位置ながらも、手順に拠点を増やすことができました。



【将棋】第69期王将戦七番勝負 第7局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の対局で80手指した局面
point
81手目:形勢判断と候補手
先手有利:▲7九玉、▲5六銀
次に△4七と~△5七と と開き王手で金駒を剥がされてしまうと、
先手陣は一気に弱体化します。
よって、ここは一旦受けに回る必要があり、
玉の早逃げ八手の得」で▲7九玉と寄っておく手が有力です。



【将棋】第69期王将戦七番勝負 第7局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の対局で91手指した局面
point
92手目:形勢判断と候補手
互角:△2八飛、△2七飛
次の▲2三香成を許す訳にはいきませんが、△3一桂と打つのでは、
▲2一歩成と と金を作られてしまい、△同玉と下段に落ちる訳にもいかず、
打ったばかりの桂が早くもピンチで、受けになっていません。

92手目は△2八飛と打って2三に利かせる手が有力です。
▲2三香成ならば飛車を渡すことにはなりますが、
先手の持ち駒が飛車だけならば寄せられてしまうことはありません。

本譜は△同角と取りましたが、すぐに先手が馬を作って手厚くなり、
後手の攻め筋がなくなって、粘るしかない展開となりました。



【将棋】第69期王将戦七番勝負 第7局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の対局で108手指した局面
point
109手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲1三金、▲8二竜 など
後手が徹底抗戦の構えなので、掴みどころの難しい局面です。
▲1三金 △同香 ▲3四桂と絡むのが厳しい攻め筋ではありますが、
押さえの駒がなくなると、少しのミスでも入玉されやすくなってしまいます。

本譜は▲8二角と打ちましたが、実戦的な手でした。
後手玉からは離れていますし、△8五桂と活用されるのは味が悪いですが、
馬を作って、自陣の右側に利かせれば、入玉されにくくなります。
また、最悪の場合で、後手に入玉されてしまったとしても、
あらかじめ先手玉の上部を開拓しておけば、相入玉に持ち込みやすいです。




終盤

【将棋】第69期王将戦七番勝負 第7局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の対局で127手指した局面
point
128手目:形勢判断と候補手
先手有利:△1八歩、△2七角成、△3五歩、△2五桂 など
後手は入玉が見えてきたので、この辺りから点数は確認しておきます。
現局面で後手は29点です。
プロの公式戦では入玉宣言法で24点法を採用しており、
24点あれば引き分けにできるので、小駒をあと5枚までは減らせます。

本譜は△2五桂と跳ねました。
上部を厚くしつつ、民族大移動の始まりです。



【将棋】第69期王将戦七番勝負 第7局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の対局で132手指した局面
point
133手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲5七金、▲3一と、▲1一と、▲4五歩 など
先手は後手玉が五段目まで前進してくることを阻止することはできません。
よって、今のうちから防衛ラインを七段目に下げておきます。
本譜は▲5七金と寄りました。囲いの駒ですが、
先手玉は安全なので、入玉阻止という別任務に就いてもらいます。



【将棋】第69期王将戦七番勝負 第7局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の対局で142手指した局面
point
143手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:▲4四桂
143手目は▲4四桂と竜金両取りに打つのが決め手です。
上部を押さえる手ではないので、後手が手抜きをすれば入玉はされますが、
竜を取った後に先手も入玉すれば、宣言して勝つことができます。

よって、後手は竜を逃げることになりますが、
それでは1筋と2筋で渋滞気味の駒を動かす手が間に合いません。
先手が金を入手すれば、後手玉に詰み筋が生じやすくなるので、
以降は入玉ルートを開拓させる暇を与えずに攻め続けます。



【将棋】第69期王将戦七番勝負 第7局 渡辺明 王将 対 広瀬章人 八段の対局の投了図
153手にて、後手の広瀬八段が投了し、
渡辺王将の4勝、広瀬八段の3勝で、渡辺王将がタイトルを防衛しました。

投了図以降、△2八成桂として入玉ルートを作っても、
▲1五飛と打てば△1七玉とは入れずに詰みとなります。
詰みを逃れるならば△2五玉ですが、▲1五飛 △2四玉と押し戻せば、
後手は唯一の勝ち筋である受け切りの見込みがなくなります。

本局では渡辺王将の、
逆転されにくい攻めの繋げ方が非常に勉強になりました。


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