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解説動画
竜王戦第3局
竜王戦第5局
対局情報
読売新聞社
公益社団法人日本将棋連盟
(棋譜利用問い合わせ済み)
局面解説
序盤
22手目:形勢判断と候補手
互角:△2四歩、△2三歩
22手目では次の▲2一飛成を受ける必要がありますが、
既に左銀を4二に上がっているため、△2二銀と
指すことはできません。
よって、2筋に歩を打つことになりますが、本譜は△2四歩と打ちました。
将来的な△3三桂~△2五歩の2筋逆襲を狙っていて、わずかに積極的です。
他に△2三歩も有力です。後手玉を美濃に囲って、堅さで優位に立った後、
強く△2四飛と
ぶつける含みがあります。
尚、△2二歩と低く打つ手も考えられますが、
後手が2筋に飛車を
回って動く含みを減らしており、
結局、後で△2三歩と
突くことになる可能性が高いので、
手待ちの意味を込めた、やや消極的な指し方になります。
29手目:形勢判断と候補手
互角:▲3六歩、▲6八玉、▲1六歩 など
横歩取りでは
端歩を突き合うか否かの判断が難しいです。
先手としては確実に突くであろう▲3六歩を優先する指し方も有力ですが、
▲7五歩~▲8六飛とぶつける含みがなくなると、
後手が△6二玉~△7一玉と囲いやすくなる点は気になります。
本譜は▲1六歩と突いて、後手の
囲いをけん制しました。
1筋が争点に加わりやすくなったことの損得判断は非常に難しいです。
37手目:形勢判断と候補手
互角:▲2八歩、▲7七銀
後手が△2五歩と突いてくることはほぼ確定していますが、
▲2八飛と
引くと△2四飛~△6四角で
大駒の働きに差が付いてしまいます。
よって、△2五歩に対しては▲3六飛と
寄ることになりますが、
先手の飛車が2筋から逸れると△2八角と打たれる隙が生じてしまいます。
とは言え、後手に馬を作られても、しばらくは閉じ込めておけるので、
ここで▲7七銀と上がって
壁形を解消し、攻め合いに備える指し方は有力です。
本譜は「
敵の打ちたいところに打て」で▲2八歩と指しました。
攻めていた筋なのに
自陣へ歩を打つのは少し悔しいようですが、
▲2三歩や▲2二歩が厳しい
垂らしとなる展開にはなりにくいですし、
▲9五歩 △同歩 ▲9三歩のように歩を使う攻めもまだ早いので、
相手の分かりやすい攻め筋を潰すのに見合った投資であると判断できます。
中盤
45手目:形勢判断と候補手
互角:▲4六歩、▲3七桂、▲4六角 など
次に△2六歩~△2七歩成で2筋を突破されてしまうと、
角を手に入れて
駒得になったとしても、中住まいでは耐えることができません。
本譜は▲4六歩と突いて、角を5四に追い払いました。
これで▲3四歩には△同飛と応じることになり、
後手の飛車が2筋から逸れるので、結果的に2七を受けることができます。
53手目:形勢判断と候補手
互角:▲4七角、▲3九歩
次に△3八角成から
二枚替えで突破される訳にはいかないので、
53手目の局面では受ける1手です。
現状では3七に銀と桂が利いているので、
▲3七歩と打つ手が部分的には手堅いのですが、
△3八角成と
切られてから△2五銀と押さえられてしまうと、
先手は狭くなった飛車の対処に困ることとなります。
本譜は「
角には角」で▲4七角と合わせて角を消しにいきました。
尚、同じ格言を満たしていたとしても、▲5六角と合わせてしまうと、
後手からの角交換後に玉の
こびんがあいてしまうマイナスが大きいです。
62手目:形勢判断と候補手
互角:△7一玉
62手目で△4六歩と取り込んでも▲同飛で先手陣のバランスは崩せないうえに、
▲2三角 △同金 ▲4二飛成の含みが生じるので忙しくなってしまいます。
1筋を突破されてしまったので、後手も早く攻め込みたいところですが、
本譜は、わずかな余裕ができたことを生かして△7一玉と引きました。
これまでは先手が▲8二角と打ってきても、香を取られて、
隅に馬を作られるだけなので、盤面右側における攻防の方が重要でした。
しかし、攻め込まれた後だと、8二に駒を打たれる手が
詰めろになったり、
玉の逃げ道がないことで受け方が難しくなったりする恐れもあります。
△7一玉を指さずして、終盤の攻め合いを制することは非常に困難です。
横歩取りにおける後手の美濃囲いは非常に有力ですが、
小競り合いが続いている中で入城するタイミングを計る必要があります。
入城してから戦いが起こることの多い
対抗形や相振り飛車とは
かなり感覚が異なるので注意が必要です。
75手目:形勢判断と候補手
先手有利:▲4八銀、▲6五角、▲1一歩成
お互いに飛車角を手持ちにしましたが、双方の大駒を打つ手の中では、
後手の△4七角が△6九飛と△2九角成の両狙いで最も厳しいです。
△2九角成と桂を取られる方を少し甘い攻めと見て、
ここで▲1一歩成と香を取り、攻め合いに持ち込む指し方はありますが、
2九の馬が後手陣まで利いていて、受けにも活用しやすい点は気になるので、
そもそも△4七角を打たせないようにした方が無難です。
本譜は▲6五角と打ちました。
4七や3二、そして後手陣の中まで、3方向によく利いていて
味が良いです。
後手は
当たりになっている左金を2つ上がって角を追い払いますが、
▲3八角と引いた状態でも、まだ攻防に利いていますし、
後手陣のバランスが崩れたことで、先手の飛車打ちの厳しさが増しました。
終盤
91手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲9二香、▲4五銀 など
後手に馬を作られましたが、端への空成りなので、厳しさには欠けています。
91手目で本譜は、
手番と角の利きを生かして、▲9二香と打ちました。
他に▲4五銀と桂を取ってから▲8三桂と打つ手も有力です。
坊主美濃は左右挟撃を食らいやすいので、
持久戦模様になった場合は、△8三歩と打って、
片美濃の完全形まで修復することも視野に入れる必要があります。
101手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲7七桂
100手目の△6五香は3八の
角筋を遮りつつ、先手の
玉頭に利かせた
攻防手ですが、
次に6七を突破してくる訳ではありません。
後手からの最も速い攻めは△2八馬~△3八馬として、
働きの弱い後手の馬と、よく働いている先手の角を交換する手順です。
よって、先手には1手の余裕があるので、
薄い後手玉を追い詰めるために駒の補充を図ります。
101手目で▲7二桂成と銀を取る手はありますが、
拠点を失ううえに、後手の持ち駒を増やしてしまう点が気になります。
後手は飛車の横利きを遮断しておくために△8三銀とは上がれないので、
7二の銀を取る権利はギリギリまで保持しておいた方が良いです。
本譜は▲7七桂と跳ねて、6五の香を狙いました。
これで△2八馬には▲6五角と、角の方で香を取って、
働きの弱い馬との交換を避けることもできます。
後手は6五の香を取られてしまうと、攻防共に見込みがなくなるので、
仕方なく一気に踏み込みますが、攻め駒不足でわずかに届きませんでした。
113手にて、後手の羽生九段が投了し、
豊島竜王の3勝、羽生九段の1勝となりました。
投了図の時点で、先手玉は広いので飛車1枚では詰みません。
そして、後手玉には▲8二銀までの詰めろがかかっていますが、
△8二歩と埋めるのは▲9一飛 △同玉 ▲9二銀で詰みとなります。
△8二飛と打つ方が粘りはありますが、
それでも▲同角成 △同玉 ▲9二飛以下詰みがありますし、
仮に読み切れなかったとしても、
先手玉が安全なので詰ます必要がありません。
本局では豊島竜王の坊主美濃の攻略手順が非常に勉強になりました。
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