目次
解説動画
名人戦第1局
名人戦第3局
対局情報
局面解説
序盤
29手目:形勢判断と候補手
互角:▲3七桂、▲9五歩 など
※以下は第31期竜王戦第2局の羽生vs広瀬戦と同じ解説文です。
角換わりで後手が9筋の端歩を受けなかった場合、
先手が突き越すか否かで、形勢は変わりませんが、指し方は変わってきます。
先手が▲9五歩を生かすためには、右玉のような指し方を放棄して、
終盤で自玉が9筋に逃げて詰まない、という形を目指したいです。
但し、端にかけた手数の差が2手あるので、後手は必ず先に攻めてきます。
先手は、しばらくの間、自玉が戦場に近い状態で受けに回る展開となります。
34手目:形勢判断と候補手
互角:△6五歩、△5四銀、△4四歩、△3一玉 など
先手が9筋の歩を突き越したため、
9筋以外に着目すると、後手は2手得しています。
「2手得の後手番」は「1手得の先手番」と同じ勘定になりますが、
かなり条件が良いので、必ず先に仕掛けることができます。
先手は中終盤で9筋を生かそうとする反撃や凌ぎを必ずしてきますので、
後手はそれらをなるべく回避するような
仕掛けを選択します。
本譜は△6五歩と突きました。
次に△6四角と打つのが良い形で、上部から押さえこむことで、
終盤に▲9七玉や▲9六玉と逃げられる展開になりにくくなります。
39手目:形勢判断と候補手
互角:▲2六角、▲8八玉、▲4八金、▲5六歩 など
39手目に本譜は▲1七角と打ちました。
6二の金取りなので、後手は△5二玉や△5二金と受けますが、
まずは、3筋の歩を交換することができます。
そして、▲4五桂と跳ねれば、角と桂が5三に利いているので、
中盤以降で先手が駒を入手したときに、反撃しやすい状態となります。
46手目:形勢判断と候補手
互角:△7五歩、△3四歩、△8六歩 など
46手目で△3四歩と打つ手は有力です。
次に△3五銀 ▲1七角となれば、△4六銀や△1五歩という狙いが残ります。
△3五銀を直接防ぐならば▲3六歩と打つしかありませんが、
交換した歩を元の位置に打つのは、損であることが多いです。
よって、▲4五桂と跳ねることで△3五銀に▲同角~▲2四歩を見せますが、
後手も先手が動くまで△3五銀とは指しません。
後手は2六の角を押さえ込んで、角の働きに差を付ける含みを見せることで、
先手に仕掛ける権利を押し返します。
先手はそもそも後手に仕掛けさせる方針で指しており、
攻撃態勢が十分でないことに着目した高度な指し方です。
本譜は△7五歩と突きました。
仕掛けの幅を広げるために、歩を手持ちにしておく指し方も自然です。
中盤
53手目:形勢判断と候補手
互角:▲7六歩、▲5六歩 など
次に△4五銀 ▲同歩 △2八角成と馬を作られる手順は気になりますが、
それ以上に駒を取られる恐れがないため、バランスは取れています。
それよりも先手陣で気になるのは7六の地点です。
後手がもう1歩入手すれば、△7六歩の
叩きが厳しくなります。
▲同銀は△7五歩で銀が捕まりますし、銀を引くと拠点が残ります。
53手目で「
敵の打ちたいところに打て」の▲7六歩は有力です。
但し、後手が右桂を跳ねてから△7七歩と打つ攻めには利いていませんし、
△7五歩 ▲同歩とこじ開けてから△7六歩と叩く手筋もあるため、
それほどしっかりとしている訳ではない、という認識は必要です。
本譜は▲5六歩と突きました。
△4六角のような手が
王手になるので少し怖い面もありますが、
5筋の攻めに歩を参加させる
含みを見せることで後手からの攻めを誘います。
64手目:形勢判断と候補手
互角:△8四飛、△9八歩 など
後手としては、先手玉を9筋から遠ざけることができたので、まずは作戦成功です。
あとは、▲9三歩成からの反撃を防ぐ必要があります。
64手目では△8四飛と
引く手が有力で、次に△9八歩と叩いて香を吊り上げてから
△4五銀と桂を入手することで、△8六桂の
ふんどしを狙います。
もし、先手が▲8七歩や▲8七銀などで△8六桂を受けた場合は、
△9四香と歩を取る手が間に合います。
このとき、6四の角がよく利いているため、そのまま9筋を逆襲することができます。
本譜はここで△4五銀としました。
狙っている攻め筋は同じですが、これは
手順前後で、
先に銀を渡したうえに、先手の角の利きが通ったので、
攻め合いの変化が生じて、後手が忙しくなりました。
71手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲9三歩成
70手目の△8一飛は▲4一銀 △同玉 ▲6二角成を防いでいますが、
▲9三歩成から歩で飛車を封じ込めることができるようになりました。
先手は後手の攻めの要である飛車を追い払っていけば、
同時に自玉の上部が開拓され、後手玉に迫っていることにもなります。
あとは駒の働きに差が付いていく一方なので、
先手としては、既に相当負けにくい展開となっています。
終盤
77手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲6二角成
77手目は▲6二角成と
切る1手です。
角と金の交換は、駒の価値だけで考えると先手の損ですが、
手順に後手玉を戦場に近づけていることや、
後手に△2七馬という角取りの手を指させたことを踏まえれば、
その差分は補えていると言えます。
83手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:▲8七金
83手目以降で▲7三金~▲7二と のように
小駒だけで攻め続けると
後手玉は広いので簡単に逃げ切られてしまいます。
相手玉の包囲網ができていない限り、
大駒を活用することが寄せの大原則です。
ここは▲8七金と上がるのが
好手で、7九の飛車が発射準備完了となります。
尚、この▲8七金は「桂で取られるのがもったいないから逃げる」
という訳ではありません。
7八の金は、飛車の活用を邪魔しているデメリットの方が大きいため、
むしろ△7八桂成と取ってもらいたい駒でした。
95手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:▲5八銀、▲5八銀打 など
先手玉には△5九角~△6八金までの
詰めろがかかっています。
但し、狙いが単純なので▲5八銀と引いて、
▲6七玉~▲7六玉の逃げ道を確保しておけば問題ありません。
本譜は▲7三飛成としました。
後手が持ち駒を使うと先手玉の詰めろが解除されることもあって、
手順に6一の飛車をタダで取ることができます。
但し「
王手は追う手」になった面もあり、
3二の金が働いて、後手玉の詰みが少し複雑にはなりました。
107手にて、後手の佐藤名人が投了し、豊島二冠の2勝となりました。
投了図以降、△1三玉には▲2二銀、△1二玉には▲2二飛から、
清算して▲3一角と打つ手順で後手玉に詰みがあります。
投了図から△同金と取る手に対しては▲同竜 △同玉に▲4二銀と捨てて、
6五の香の利きに後手玉を近づけてから、▲6二飛や▲7五角と打てば、
後手の
合駒が悪いこともあって、こちらも詰みとなります。
本局では豊島二冠の、巧みな序盤戦術が非常に勉強になりました。
棋譜
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棋戦:第77期名人戦七番勝負 第2局
先手:豊島将之二冠
後手:佐藤天彦名人
手数----指手---------消費時間--
1 2六歩(27) ( 0:00/00:00:00)
2 8四歩(83) ( 0:00/00:00:00)
3 2五歩(26) ( 0:00/00:00:00)
4 8五歩(84) ( 0:00/00:00:00)
5 7六歩(77) ( 0:00/00:00:00)
6 3二金(41) ( 0:00/00:00:00)
7 7七角(88) ( 0:00/00:00:00)
8 3四歩(33) ( 0:00/00:00:00)
9 6八銀(79) ( 0:00/00:00:00)
10 7七角成(22) ( 0:00/00:00:00)
11 同 銀(68) ( 0:00/00:00:00)
12 2二銀(31) ( 0:00/00:00:00)
13 7八金(69) ( 0:00/00:00:00)
14 3三銀(22) ( 0:00/00:00:00)
15 4八銀(39) ( 0:00/00:00:00)
16 6二銀(71) ( 0:00/00:00:00)
17 4六歩(47) ( 0:00/00:00:00)
18 7四歩(73) ( 0:00/00:00:00)
19 4七銀(48) ( 0:00/00:00:00)
20 4二玉(51) ( 0:00/00:00:00)
21 3六歩(37) ( 0:00/00:00:00)
22 1四歩(13) ( 0:00/00:00:00)
23 1六歩(17) ( 0:00/00:00:00)
24 7三桂(81) ( 0:00/00:00:00)
25 6八玉(59) ( 0:00/00:00:00)
26 6四歩(63) ( 0:00/00:00:00)
27 9六歩(97) ( 0:00/00:00:00)
28 6三銀(62) ( 0:00/00:00:00)
29 9五歩(96) ( 0:00/00:00:00)
30 8一飛(82) ( 0:00/00:00:00)
31 5八金(49) ( 0:00/00:00:00)
32 6二金(61) ( 0:00/00:00:00)
33 7九玉(68) ( 0:00/00:00:00)
34 6五歩(64) ( 0:00/00:00:00)
35 3七桂(29) ( 0:00/00:00:00)
36 6四角打 ( 0:00/00:00:00)
37 2九飛(28) ( 0:00/00:00:00)
38 5四歩(53) ( 0:00/00:00:00)
39 1七角打 ( 0:00/00:00:00)
40 5二玉(42) ( 0:00/00:00:00)
41 3五歩(36) ( 0:00/00:00:00)
42 同 歩(34) ( 0:00/00:00:00)
43 同 角(17) ( 0:00/00:00:00)
44 4四銀(33) ( 0:00/00:00:00)
45 2六角(35) ( 0:00/00:00:00)
46 7五歩(74) ( 0:00/00:00:00)
47 同 歩(76) ( 0:00/00:00:00)
48 同 角(64) ( 0:00/00:00:00)
49 4五桂(37) ( 0:00/00:00:00)
50 6四角(75) ( 0:00/00:00:00)
51 3九飛(29) ( 0:00/00:00:00)
52 3三歩打 ( 0:00/00:00:00)
53 5六歩(57) ( 0:00/00:00:00)
54 7五歩打 ( 0:00/00:00:00)
55 5七金(58) ( 0:00/00:00:00)
56 9四歩(93) ( 0:00/00:00:00)
57 同 歩(95) ( 0:00/00:00:00)
58 7六歩(75) ( 0:00/00:00:00)
59 8八銀(77) ( 0:00/00:00:00)
60 8六歩(85) ( 0:00/00:00:00)
61 同 歩(87) ( 0:00/00:00:00)
62 同 飛(81) ( 0:00/00:00:00)
63 6八玉(79) ( 0:00/00:00:00)
64 4五銀(44) ( 0:00/00:00:00)
65 同 歩(46) ( 0:00/00:00:00)
66 2八角成(64) ( 0:00/00:00:00)
67 7九飛(39) ( 0:00/00:00:00)
68 6六歩(65) ( 0:00/00:00:00)
69 同 歩(67) ( 0:00/00:00:00)
70 8一飛(86) ( 0:00/00:00:00)
71 9三歩成(94) ( 0:00/00:00:00)
72 9八歩打 ( 0:00/00:00:00)
73 同 香(99) ( 0:00/00:00:00)
74 8六桂打 ( 0:00/00:00:00)
75 8三歩打 ( 0:00/00:00:00)
76 2七馬(28) ( 0:00/00:00:00)
77 6二角成(26) ( 0:00/00:00:00)
78 同 玉(52) ( 0:00/00:00:00)
79 8二歩成(83) ( 0:00/00:00:00)
80 3一飛(81) ( 0:00/00:00:00)
81 8三と(82) ( 0:00/00:00:00)
82 8五桂(73) ( 0:00/00:00:00)
83 8七金(78) ( 0:00/00:00:00)
84 9八桂成(86) ( 0:00/00:00:00)
85 7六飛(79) ( 0:00/00:00:00)
86 7四香打 ( 0:00/00:00:00)
87 7三金打 ( 0:00/00:00:00)
88 5三玉(62) ( 0:00/00:00:00)
89 7四金(73) ( 0:00/00:00:00)
90 同 銀(63) ( 0:00/00:00:00)
91 同 飛(76) ( 0:00/00:00:00)
92 6一飛(31) ( 0:00/00:00:00)
93 6五香打 ( 0:00/00:00:00)
94 4九馬(27) ( 0:00/00:00:00)
95 7三飛成(74) ( 0:00/00:00:00)
96 4二玉(53) ( 0:00/00:00:00)
97 7二竜(73) ( 0:00/00:00:00)
98 3一玉(42) ( 0:00/00:00:00)
99 6一竜(72) ( 0:00/00:00:00)
100 2二玉(31) ( 0:00/00:00:00)
101 5八銀(47) ( 0:00/00:00:00)
102 5九角打 ( 0:00/00:00:00)
103 6七玉(68) ( 0:00/00:00:00)
104 8八成桂(98) ( 0:00/00:00:00)
105 4九銀(58) ( 0:00/00:00:00)
106 8七成桂(88) ( 0:00/00:00:00)
107 3一銀打 ( 0:00/00:00:00)
108 投了 ( 0:00/00:00:00)
まで107手で先手の勝ち
名人戦第1局
名人戦第3局