目次
解説動画
棋王戦第1局
棋王戦第3局
対局情報
渡辺 明 棋王(三冠)<後手>
本田 奎 五段<先手>
共同通信社
公益社団法人日本将棋連盟
(棋譜利用問い合わせ済み)
局面解説概要
序盤
19手目:形勢判断と候補手
互角:▲2六飛
相掛かりで自分だけが
角道を開けている場合、
▲2六飛と引いて、横歩を取られないようにする指し方が無難です。
尚、▲2八飛と引いた場合、後手は一旦△7四歩と突いて、
▲8二歩に対する桂跳ねを用意してから△7六飛と横歩を取りますが、
この時、先手から角交換をすることができないので、
手得を生かした
急戦に持ち込みづらいのです。
相掛かりでは横歩取りと似た形になることも多いですが、
きちんと違いを認識しながら判断する必要があります。
31手目:形勢判断と候補手
互角:▲3七桂、▲2八飛、▲2六飛、▲4八金 など
31手目で▲3四飛と横歩を取れば、3二の金と6四の歩の
両取りになるので、
更なる
駒得は約束されますが、結論を言えば少し指しづらいです。
以下、△2三銀 ▲6四飛 △5五角 ▲3七角 △6四角 ▲同角で、
飛車角交換となった後、後手は△3三桂と跳ねやすいのに対して、
先手は▲3七桂と跳ねにくいという差があります。
形勢は互角ですが、打ち込みの隙が生じないように駒を動かしづらい状況で、
桂の跳ねやすさが違うという点は考慮したいです。
本譜はここで▲3七桂と跳ねました。
▲2九飛と深く引けば、飛車が狙われにくくなります。
41手目:形勢判断と候補手
互角:▲4八金、▲7七銀 など
先手は手順に右銀が前進したので手得をしていますが、
焦って攻めると自玉が薄いので反動がきつくなります。
41手目から▲4八金と▲7七銀の2手は欠かすことができません。
これで、先手が右桂を跳ねた後に△3七角や△3七桂と打たれたり、
先手玉が7九に追い込まれて詰まされたりする未来がなくなります。
50手目:形勢判断と候補手
互角:△1五歩、△3五歩、△6二玉 など
後手は早く△3三銀と上がりたいのですが、
▲3四歩と
叩かれる変化があるので、保留してきました。
対して△同銀は▲3五歩で銀が捕まるので、△2四銀や△4二銀ですが、
3四に先手の歩が残ってしまうと、△3三桂と活用しづらくなります。
本譜は△6二玉と寄りました。次に△4四歩と突けば、
3三~3四~4三というルートができるので、左銀を活用しやすくなります。
53手目:形勢判断と候補手
先手有利:▲6六角
53手目で▲4五歩と仕掛けると、先手玉が近いだけに反動が怖いです。
しかし、▲6九玉のようにゆっくりしていると△3三銀の活用が大きいです。
本譜は▲6六角と打ちました。▲4四角も狙いの1つですが、
9筋の端攻めを見せて揺さぶることで、後手の
駒組みを邪魔します。
持ち駒の角を先に手放すのはマイナス要素になりかねませんが、
打った段階で左右に2つの狙いがありますし、
△6五歩 ▲5七角と追い払われても、▲4五歩と仕掛ければ、
▲3五角や▲4六角と活用できるので、働きが悪化する心配はなさそうです。
61手目:形勢判断と候補手
先手有利:▲4五歩
先手は7九まで玉を移動できたので満足です。
こうなると9筋の位について、
先程は端攻めを見せて△8四歩と受けさせましたし、
今後は先手玉の広さに貢献してくれそうです。
これで過去に遡って▲9六歩と▲9五歩の価値が高まり、
先手の巧みな指し回しがハッキリと盤上に現れてきました。
ここから▲8八玉は△8五桂や△7五歩という攻めを呼び込んでしまうので、
そろそろ仕掛け時です。本譜は▲4五歩と突きました。
中盤
70手目:形勢判断と候補手
先手優勢:△6七歩成、△3三桂、△5四角 など
先手は戦力が6筋に集中しており、攻め方が分かりやすい反面、
後手は単に△4四飛としても▲4五銀で簡単に押し返されてしまいます。
今更△3三銀と上がっても、とても間に合う状況ではなく、
強いて指すならば△3三桂ですが、それでも速度の違いは明白です。
本譜は△5四角と打ちましたが、良い
勝負手でした。
目先の狙いである△3六角は、▲4五銀とすれば簡単に受かりますが、
△同角 ▲同桂としてから△4四飛とすれば、
▲4五銀や▲4五歩のように飛車取りで
弾かれることがありません。
後手は駒損をしましたが、大駒の働きが良くなりました。
正確に対応されると負けは早まりますが、勝率は高まったと思います。
79手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲6五銀、▲4七歩、▲5五銀 など
79手目で一旦▲4七歩と受けておく手は有力です。
角が活用しやすくなるので、受けただけの手にはなりませんし、
後手は飛車を
切る訳にもいかないので、活用に苦労します。
但し、△6八歩 ▲同飛 △5九銀と絡まれて、
先手玉周辺がごちゃごちゃするのは気持ち悪いですし、6筋の攻めも遅れます。
本譜は▲6五銀と踏み込みました。
終盤
87手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲5四桂
先手玉は△6八金からの
詰めろになっていますが、
▲6七飛と逃げても△6九銀と絡まれて、受けづらくなるだけです。
87手目で本譜は▲5四桂と王手をしました。
△同歩は▲2六角で王手竜取りがかかりますし、
△同金は▲5八飛と金を取る手が
▲6三銀 △同玉 ▲4一角からの詰めろになります。
よって、後手は△5一玉と逃げるしかありませんが、
手順に
拠点を作ることができました。
91手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲7三馬
先手玉は△6九飛からの詰めろになっていますが、
▲6八金打のように受けていては、攻め駒不足になります。
91手目は▲7三馬と引くのが
好手です。
△同金は▲6二金から詰みがあるので、6二に
合駒を打つしかありません。
このように「取ると詰む」という条件を満たしながら
攻め駒を相手玉に近づけていく手は、厳しくなることが多いです。
この▲7三馬と▲5四桂の2手は、少し見えづらいですが、
それ以外の手ではすべて逆転します。
よって、先手は12手前に攻め合いを選んだ時点で、
この辺りの変化を読み切っていたと推測できます。
94手目:形勢判断と候補手
先手優勢:△同玉
94手目で本譜は△4一玉とかわして、即詰みとなりました。
尚、△同玉と取れば、▲2五角で王手竜取りがかかるものの詰みはなく、
竜は取られますが、馬取りと桂取りが残っているので、意外と先は長いです。
97手にて、後手の渡辺棋王が投了し、
渡辺棋王の1勝、本田五段の1勝となりました。
投了図以降、△4一玉には▲6三馬~▲4二歩、
△4三飛には▲6二金 △同金 ▲同馬と左側から押していけば詰みます。
本局では本田五段の、
駒組み勝ちを目指した序盤の指し回しが非常に勉強になりました。
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