目次
解説動画
棋王戦第3局
王将戦第1局
対局情報
渡辺 明 棋王(三冠)<後手>
本田 奎 五段<先手>
共同通信社
公益社団法人日本将棋連盟
(棋譜利用問い合わせ済み)
局面解説概要
序盤
27手目:形勢判断と候補手
互角:▲5八金右、▲6八金 など
△7四歩によって、後手の飛車の横利きが止まったため、
▲6四角と歩を取ることができるようにはなりましたが、
以下、△7三銀 ▲4六角 △7五歩 ▲同歩 △4五歩と、
後手の右銀や歩が手順に前進してくるので、主導権を握られやすくなります。
横歩取りと同じ要領なので、形勢が悪くなるという程ではないのですが、
まだ先手陣がまとまっていないこともあり、実戦的には避けたいです。
本譜は▲5八金右と上がりました。
この1手が入るだけでも、ある程度は強く戦えるようになります。
30手目:形勢判断と候補手
互角:△6三金
30手目で△4二玉のように
駒組みを進めていては、
1歩損のマイナスだけが残ってしまいます。先手が動いたのですから、
しっかりと代償を求めて、後手も動いていくことが重要です。
動き方としては、駒を前進させる手が基本になりますが、
△6三銀は▲7三角成があるので、消去法で△6三金が有力となります。
金が上ずるのは、部分的に少し悪い形ですが、
突破されなければ問題にならないので、以後、押さえ込みを強めに意識します。
中盤
38手目:形勢判断と候補手
△3九角、△6四金
38手目で△6四金は有力です。次に△5五金や△3三角という狙いがあり、
先手の5筋の位を負担にさせることができます。
本譜は△3九角と打って、
先手陣が「
角交換に5筋の歩を突くな」に反していることを
咎めました。
▲6六角と合わせることができるので、後手の馬は残りませんが、
先手がこの角打ちを嫌うならば、▲5八金右と上がったところで、
▲6八金と左金を上がり、右金は4九に残しておく指し方が有力です。
50手目:形勢判断と候補手
互角:△5四歩、△8六歩、△2五桂 など
「
馬の守りは金銀三枚」と言われる程の守備力があるので、
この局面は後手からの仕掛け方がかなり難しくなっています。
飛車を打ち込むならば△2七飛ですが、▲4六歩で桂取りは受かりますし、
2五に竜を作っても狭くて働きが弱すぎるので、見送るべきです。
本譜は△9四歩と突きました。
攻めとしては遅いですが、9筋は手薄なので確実性は高いです。
57手目:形勢判断と候補手
互角:▲7六銀、▲3六銀
9筋の端攻めが見えているので、先手はあまりゆっくりできません。
57手目は攻めを少しでも
手厚くするために、
▲7六銀や▲3六銀と駒を押し上げていく手が有力です。
本譜は▲5六馬と上がって、攻めへの更なる活用を図りましたが、
この馬に
紐が付いていないので、狙われる変化が生じてしまいました。
61手目:形勢判断と候補手
後手有利:▲9八歩
61手目で▲同香は△6五歩 ▲5七角と追い払われてから、
△9八飛~△9六飛成と香を取り返されたときに、
丁度、5六の馬取りになっているので、
手番を握られてしまいます。
よって、9筋は歩を打って受けるしかありませんが、
▲9七歩では簡単に香を吊り上げられてしまい、同様の変化となります。
本譜は▲9八歩と低く受けました。後手が同様の攻め方をしてきた場合、
△9六歩を打った段階で
歩切れになるので▲4八香の反撃が厳しくなります。
65手目:形勢判断と候補手
後手有利:▲8八玉
65手目で▲9七歩と突くと△同香成 ▲同香 △9六歩 ▲同香 △同飛が
やはり5六の馬取りになってしまいます。
よって、9筋を受けるならば、少し怖いですが▲8八玉と寄るしかありません。
本譜は▲7四歩と突いて攻め合いを選びましたが、
そもそも攻めあぐねていた場所なので、戦果は今一つでした。
終盤
75手目:形勢判断と候補手
後手優勢:▲6八玉
次の△9八飛成を受けるために▲9七歩と打っても
△8九成香と桂を取られてしまうと△9七飛成が生じますし、
さらに▲9六桂と打って飛車成りを受けても、後手の持ち駒が増えてきたので、
今度は△6四桂のような別の攻め筋が生じています。
ここまで端を崩されてしまった場合、
基本的には飛車の突破を諦めて、端を放棄した方が良いです。
本譜は「
玉の早逃げ八手の得」で▲6八玉と寄りました。
これで▲7八歩と
合駒をする含みも生じるので、
粘りやすくなります。
84手目:形勢判断と候補手
後手勝勢:△3四香、△3一香 など
84手目で△3五銀と逃げる手もありますが、本譜は△3四香と打ちました。
後手玉は安全なので、駒交換による多少の
駒損は気にする必要がなく、
むしろ持ち駒が増えれば攻め筋も増えるので有難いと考えます。
また目先の狙いとして△4六桂と打つ手が厳しいので、
▲4五馬と歩を取られないようにしておく意味合いもあります。
先手の守り駒が多いので、後手が食い付いていくのも一苦労ですが、
桂と歩をうまく使って、先手陣を崩しつつ、少しずつ
拠点を近づけます。
96手にて、先手の本田五段が投了し、
渡辺棋王の3勝、本田五段の1勝で、渡辺棋王がタイトルを防衛しました。
投了図以降、▲7五角や▲5七角と逃げても△4八歩と打てるのが大きく、
手数は長いですが、角や金を剥がされて先手玉は詰みとなります。
粘るならば▲7八歩ですが、好位置の馬に対して△4五歩と叩いて、
▲同馬には△2八飛、▲2八馬には△4八桂成~△5六桂打とすれば、
先手は徐々に受けが難しくなっていきます。
このとき、攻め合いの形ができていないことが大きく、
先手が粘っても手数が長引くだけで、逆転の見込みはありません。
本局では渡辺棋王の、
手厚く指された場合の対処法が非常に勉強になりました。
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王将戦第1局