【将棋解説】
第33期竜王戦七番勝負第2局 豊島竜王vs羽生九段

目次

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対局情報

棋戦
第33期竜王戦七番勝負 第2局
対局日
持ち時間
8時間(2日制)
対局者
豊島将之 竜王<先手>
羽生善治 九段<後手>
戦型
角換わり(先手|早繰り銀、後手|腰掛け銀)
主催
読売新聞社
公益社団法人日本将棋連盟
(棋譜利用問い合わせ済み)
対局場所
愛知県:亀岳林 万松寺

局面解説

序盤

【将棋】第33期竜王戦七番勝負 第2局 豊島将之 竜王 対 羽生善治 九段の対局で22手指した局面
point
23手目:形勢判断と候補手
互角:▲7九玉、▲7八玉、▲5六歩、▲9六歩、▲7八金 など
23手目で▲3五歩と仕掛けると、△同歩 ▲同銀の後、
後手が1歩を入手したので、△8六歩 ▲同歩 △8八歩の反撃を食らいます。
以下、▲同銀に△5五角の飛車銀両取りが狙いです。
よって、先手は8八に利きを足すことで、これを受けておきます。

本譜は▲7八玉と寄りました。
▲7八金の余地を残して▲7九玉も有力です。

先に▲7八金と上がる手も自然ですが、この局面においては、
後手が△4四歩~△4五歩~△4六歩~△4七歩成としている間に、
先手が▲3五歩~▲3四歩~▲3三歩成と一直線に殴り合う変化があるので、
玉を と金のできる地点から先に離しておけば含みとして残すことができます。




【将棋】第33期竜王戦七番勝負 第2局 豊島将之 竜王 対 羽生善治 九段の対局で32手指した局面
point
33手目:形勢判断と候補手
互角:▲3六歩、▲5五銀 など
33手目で▲3五歩と打てば、3筋のを取ることはできますが、
打った歩が邪魔で4六の銀が攻めに使いづらくなります。

本譜は▲3六歩としました。早繰り銀に対して銀2枚で対抗してきた場合、
歩を控えて打ってから銀交換を狙うのが攻めの手筋です。



中盤

【将棋】第33期竜王戦七番勝負 第2局 豊島将之 竜王 対 羽生善治 九段の対局で43手指した局面
point
44手目:形勢判断と候補手
互角:△4三銀、△6三銀、△6二銀、△3六歩 など
次に▲5四歩 △同歩で「角交換に5筋の歩を突くな」に反する形にされると、
▲3四歩 △同銀に▲7一角~▲4四角成で馬を作られてしまいます。

本譜は△4三銀と打って、隙が生じないように先受けしました。
同様の意味合いで、△6三銀や△6二銀も有力です。
持ち駒の銀を自陣に手放すのは少し悔しいですが、
後手玉の堅さと△6五桂からの反撃に期待します。

他に、少し難しいですが、ここで△3六歩と垂らしておくことで、
△3七歩成~△3六歩を見せて、歩を渡しづらくさせる指し方もあります。



【将棋】第33期竜王戦七番勝負 第2局 豊島将之 竜王 対 羽生善治 九段の対局で49手指した局面
point
50手目:形勢判断と候補手
互角:△4二金左
49手目の割り打ちに対して、部分的には△4二金右と5二の金を玉側に寄せて、
▲3二銀成 △同金で玉の堅さを維持するのが基本的な指し方です。
但し、現局面の場合は▲6三角や▲7一角と打たれる隙が生じてしまい、
後手から仕掛ける前に先手玉の上部を開拓されてしまいます。
後手は、仕掛けの準備として、持ち駒を増やすために、
敢えて▲4一銀を打たせているので、そのまま攻め込まれると困ります。

本譜は△4二金左と寄りました。守り駒が自玉から遠ざかってしまいますが、
先手からの攻めを遅らせるために、陣形全体のバランス維持を優先します。



【将棋】第33期竜王戦七番勝負 第2局 豊島将之 竜王 対 羽生善治 九段の対局で54手指した局面
point
55手目:形勢判断と候補手
互角:▲7三角
55手目で▲6六銀と逃げる手は自然に見えますが、
△8六歩 ▲同歩に△同飛~△7六飛を狙われると、
先手は歩切れで、▲7七歩と打つことができないので受け方が難しいです。

銀を逃げるならば、8筋の攻めに備えた▲8八銀の方が良いですが、
今度は8筋がになるので、△5七銀と逆側から攻められてしまいます。

よって、ここでは銀桂交換を受け入れて、
▲7三角から馬を作ることで駒損のマイナス分を補う手が有力です。

本譜は▲4五歩と突いて、
▲4四歩の取り込みを見せつつ、飛車の横利きを通しました。



【将棋】第33期竜王戦七番勝負 第2局 豊島将之 竜王 対 羽生善治 九段の対局で64手指した局面
point
65手目:形勢判断と候補手
後手有利:▲3四桂
先手は2六の飛車を早く活用したいのですが、65手目で▲3六飛と寄ると、
△2七角~△4五角成で後手玉の上部が手厚くなってしまいます。

このタイミングで▲2四歩の突き捨ても考えられますが、
△同銀と応じられると飛車に対する圧力が高まるので後回しにしたいです。

本譜は▲3四桂と打ちました。後手の△7六歩からの攻めは速いので、
王手をかけながら後手陣を崩し、手順に▲3六飛を実現して間に合わせます。



【将棋】第33期竜王戦七番勝負 第2局 豊島将之 竜王 対 羽生善治 九段の対局で75手指した局面
point
76手目:形勢判断と候補手
後手有利:△8九銀、△7五歩
先手からは▲2四歩、▲5四歩、▲4四歩のように攻め筋が多いので、
単に飛車成りを防ぐだけの△7二歩では攻守が交代してしまいます。
少し工夫するならば、△7五歩 ▲同飛 △7四歩と連打すれば、
▲同飛には△6六桂 ▲同歩 △5六角の王手飛車があるので受かります。

本譜は最短の寄せを目指して△8九銀と打ちました。
▲同玉とタダで取った場合は、△8七銀と上から押さえる手が厳しく、
△8八銀打までの詰めろで、かつ、7六の飛車取りになります。
よって、先手は玉を逃げますが、
後手は拠点ができたことを生かして、一気に追い込みます。




終盤

【将棋】第33期竜王戦七番勝負 第2局 豊島将之 竜王 対 羽生善治 九段の対局で85手指した局面
point
86手目:形勢判断と候補手
後手勝勢:△7六銀
86手目で△2六飛と逃げてしまうと詰めろになっていないので、
▲4四歩と攻め合いを挑まれて混戦です。

本譜は△7六銀と打って、△8七銀成までの詰めろをかけました。
さらに、先手の飛車の後ろへの利きを遮ったことで、
△7九角~△7八銀打のように、
先手玉の下から畳み掛けて攻めることができるようにもなっています。

▲8六歩と飛車を取られてしまうので、
寄せ切れないと負けてしまうリスクはありますが、
8筋で先手の駒が渋滞していて、
先手玉が逃げ出しづらい形になっていることを咎めます。



【将棋】第33期竜王戦七番勝負 第2局 豊島将之 竜王 対 羽生善治 九段の対局の投了図
96手にて、先手の豊島竜王が投了し、
豊島竜王の1勝、羽生九段の1勝となりました。

投了図以降、▲7八金に△同銀成とすれば先手玉に必至がかかります。

そして、先手は持ち駒に角を加えても、後手の5筋の防壁を崩したうえで、
広い後手玉を追いつめるまでには至りません。

本局では羽生九段のギリギリの寄せを読み切った踏み込みが非常に勉強になりました。


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