目次
解説動画
竜王戦第2局
竜王戦第4局
対局情報
読売新聞社
公益社団法人日本将棋連盟
(棋譜利用問い合わせ済み)
局面解説
序盤
22手目:形勢判断と候補手
互角:△7三銀、△8二飛 など
先手は7四の横歩を取りますが、
後手は
手得を生かして金駒や歩を前進させます。
先手はさらに3四の横歩も取ったので、
序盤から先手が2歩得の展開となりました。
38手目:形勢判断と候補手
互角:△5四歩、△6四銀 など
38手目で△5二金~△4一玉と陣形整備をする指し方も考えられますが、
「
三歩持ったら端に手あり」で▲1五歩 △同歩 ▲1三歩と、
先に先手から仕掛けられてしまう展開が気になります。
後手は主張である手得を最大限に生かすために、
積極的に攻めを見せて、局面の主導権を握りたいところです。
但し、△7四銀~△8五銀と棒銀で8筋突破を目指すのは、
▲4六歩~▲4五歩と角交換を含みに動く方が速いので、間に合いません。
本譜は△5四歩と突きました。
中央から動くことで、後手の銀が2枚共攻防に働きやすくなり、
先手からの角交換を防ぎつつ、先手の
玉頭に圧力をかけることができます。
中盤
50手目:形勢判断と候補手
互角:△4四角
50手目で△同香ならば、▲6四角と切ってから▲9五香で
二枚替えとなります。
「
二枚替えなら歩ともせよ」とは言いますが、
中盤では角と銀香くらいが実質的なボーダーラインです。
そして本局の場合は、その直後に有効な角の打ち場所がないうえに、
後手が
居玉で薄いことも加味すると、避けるべき交換になります。
本譜は△4四角としました。
2六飛型に対して部分的によくある角の飛び出しです。
先手の飛車を狭くして、5三に利きを足し、△2二玉の
含みが生じ、
角の1七への利きを生かして1筋から仕掛けることができるようになるなど、
後手にとってプラスの要素が多いので、是非指しておきたい手です。
59手目:形勢判断と候補手
互角:▲7九角、▲8八角、▲6四角
58手目の△9六歩に対する角取りの対応は悩ましいです。
▲8八角は左桂を跳ねるのと同時に角も活用できれば強いですが、
準備に手数がかかりそうですし、それまでは角の働きが悪いままとなります。
本譜は▲7九角と引きました。5七の銀を動かせば
角筋は通りますが、
好位置にいる後手の角とラインがズレているので、働きとしては弱いです。
▲8八角と▲7九角は
駒損を避けた有力な手ですが、逃げる位置が悪いので、
すぐに攻め込まれないように、相手の仕掛けを潰す指し回しが求められます。
尚、アマチュアの実戦的には▲6四角と
切ってみたいです。
△同歩に▲5六飛と
回れば、後手は
歩切れなので5筋を受けづらいですし、
歩切れの直接的な原因である△9六歩を
咎めていると考えることもできます。
大駒を渡す駒損の攻めは息切れや反撃が怖いですが、
押さえ込みに失敗して角の活用が間に合わずに大差で負けてしまう可能性は排除できます。
遠回りする受けが
最善手であったとしても、
その道中で間違える確率まで考慮すると近道の攻めの方が良い場合も多いです。
72手目:形勢判断と候補手
互角:△4一玉、△4二玉、△5二金 など
72手目は動き方の難しい局面です。△1五歩 ▲同歩 △1七歩と仕掛けても、
▲2四角と出ると
端に利いてくるので、活用のお手伝いになる恐れがあります。
陣形整備をするならば△4一玉や△4二玉が有力で、
玉を1つ移動しておくだけでも、
終盤の安全度はだいぶ変わってきます。
本譜は△5二飛と回りました。居玉で5筋から仕掛けるのは反動が大きいので、
△5五銀のように駒を
ぶつける手を狙っている訳ではありません。
歩を打たれる可能性が高い5筋を飛車でカバーして、
なるべく陣形を崩されないようにしながら、先手に動いてもらいます。
81手目:形勢判断と候補手
互角:▲7五歩、▲5六飛、▲8六角、▲7七角 など
次に△9七歩成があるので、▲8六角は有力な
攻防手ですが、
▲2四角がなくなることで△1五歩と玉側から仕掛けられる恐れがあります。
9七に利きを足しつつ▲2四角を含みに残すならば▲7九角ですが、
△6五銀 ▲同銀 △9九角成と成り込まれて、中途半端な受けとなります。
よって、先手玉から遠い9筋の突破を無理に防ごうとせず、
余裕のあるうちに反撃の準備を進めておいた方が良さそうです。
ここで▲7五歩と突く手は有力です。
将来的に▲8六飛と回る含みが生じますし、
▲7四歩~▲7三歩成を受けるために、後手が△7三歩と受けてくれれば、
1歩減ることによって△1五歩からの端攻めが緩和されます。
本譜は▲2八玉と上がりました。
9筋から遠ざかることで横からの攻めに対する安全度は増していますが、
1筋の端攻めや坊主美濃の弱点である玉頭攻めを誘発しやすくなっており、
「入城したから安全度が高まっている」とは必ずしも言えません。
98手目:形勢判断と候補手
互角:△2六香
98手目で本譜は△2六香と打って、
王手をかけました。
先手は歩切れではあるものの、香合いができるので駒得は狙えませんが、
0手で好形の美濃を崩すことができる計算になります。
よって、すぐに香を交換しても後手に不満はないですが、
本譜は更なるプラスを狙い、2四の歩を伸ばして
拠点を残しました。
112手目:形勢判断と候補手
互角:△2一香
112手目で王手の誘惑に駆られて△2七香と打つと、
▲3九玉と引かれた後、攻め駒が少ないので、もう1押しがありません。
この場合、△2七歩成が実現しづらくなるうえに、
先手玉が2八から離れることで、拠点としての価値が下がることも痛いです。
ここは「
下段の香に力あり」で△2一香と打つ手が有力です。
△2七香よりも瞬発力は劣りますが、△2七歩成が実現するのは大きいです。
115手目:形勢判断と候補手
互角:▲2四歩
115手目で本譜は▲2四歩と打って、2一の香を吊り上げました。
後手からの△2七歩成に対しては受けになっていませんが、
現状では、後手が飛車を見捨てている間に△6五銀~△6六銀と銀を取り、
△2七銀と打ち込む攻めの方が2筋に香が残り続けるので厳しいです。
よって、目前に控えている飛車の入手後に▲2一飛と打つ手を見せることで、
後手に銀を取る余裕を与えないようにします。
とは言え、後手の△2七歩成からの攻めも、
銀を剥がしながら玉を引っ張り出すことができるのでとても厳しいです。
また、先手の玉飛接近が祟って、
小駒による王手飛車がかかる形となっています。
しかし、包囲網は張らせていないので、先手は玉の逃走を図ります。
終盤
138手目:形勢判断と候補手
先手有利:△4七桂成、△同飛成
138手目から「
玉は下段に落とせ」で△4九飛成 ▲同玉 △4七桂成とすれば、
「
金なし将棋に受け手なし」となりかねないのですが、
後手の持ち駒が少ないうえに、先手玉の周囲に張り付ける場所が少ないので、
飛車の代用が可能となり、▲1八飛と打てば横利きで受かります。
仮に後手の持ち駒に桂があれば、その後に△4六桂と打って寄り形となるので、
ギリギリ凌いでいると言えます。
先手は中段玉で上が抜けている箇所もあるので
基本的には
入玉を狙って、後手に包囲のための駒を使わせます。
本譜は後手が△7五歩と打って入玉ルートを潰すことに成功したため、
駒不足に陥ることはありませんでしたが、
先手は玉の広さを生かして
粘りつつ、
最後の反撃として寄せに踏み込むタイミングを計ります。
163手目:形勢判断と候補手
先手優勢:▲9四角
163手目から▲8七玉と上がって入玉を目指しても、
△5七竜と王手で金を取られてから金銀3枚で詰まされる手順があります。
そして次の△5七と も厳しいので、ここでは寄せを目指すしかない状況です。
本譜は▲5三銀と打ち込みました。
玉頭に作る
成駒は強力ですが、先に銀を渡したことで、
後手の戦力に1枚分の余裕が生じて△8七銀と捨てることができるようになり、
以下は▲8七玉と上がった場合と同一の手順で詰まされてしまいました。
結果的には、ここで▲9四角と打つ手がありました。
▲6一角成からの
詰めろなので、後手は受けるしかありませんが、
次に8五の香を成り込めば、打った角が7六や5八に利いてくるので、
絶好の攻防手になります。
172手にて、先手の羽生九段が投了し、
豊島竜王の2勝、羽生九段の1勝となりました。
投了図からは▲8九玉 △8八歩 ▲9九玉 △9八歩と、
8筋と9筋に歩を打って、金を温存できることが大きいです。
以下、八段目におびき寄せた玉に対して△8七金打と押さえて、
△7八銀成を実現してから、金と成銀のコンビで隅に追いつめれば詰みです。
本局では豊島竜王の少ない攻め駒で広い相手玉を追いつめる寄せ方が
非常に勉強になりました。
竜王戦第2局
竜王戦第4局