目次
エルモ囲いの基本形
下図がエルモ囲い(えるもがこい)の基本形です。
最小構成として、左金と左銀の配置が同じであればエルモ囲いと言えます。
エルモ囲いの特長
エルモ囲いは主に
対抗形の居飛車側で現れる囲いです。
玉の下に金がいるという点で
舟囲いと異なり、それが部分的にやや珍しい形です。
対抗形の居飛車側の囲いについて「
急戦は
舟囲い、
持久戦は
左美濃や
居飛車穴熊」
という概念が昔から根強く、部分的に度々登場する形ではあったものの、
2017年頃までは、最初からエルモ囲いを目指すということはほとんどありませんでした。
もちろん「エルモ囲い」という名前もなかったため、
「戦いの流れの中で生じる舟囲いの変形」という捉え方が多かったです。
その中でコンピュータソフトのelmo(エルモ)が高い評価値を出していることを機に、
目指すべき囲いの1つとして見直され、対抗形の急戦も増加しました。
完成するまでに手数がかからないことに加えて、その手数の割りに、
組みやすさ・各駒の働き・玉の広さ・陣形バランスがかなり優秀で、
囲いにかける1手あたりの価値の平均が、他の囲いよりもわずかに高いです。
先に攻めることを重視する現代将棋では、尚更評価されやすいと言えます。
右金と右銀の配置は状況に応じて変えます。
囲いにくっつけて堅さを重視することもできますし、
下図のように中央より右側に配置してバランス重視の陣形にすることもできます。
![「エルモ囲い」でバランスの良い陣形](../img/中級/エルモ囲い1-2.png)
囲いの耐久力自体はそれほど高くないので過信はできませんが、
左金が一段目にいることによって、陣形を突破された後でも
粘りに期待できます。
例えば、下図のように、左香を取られながら角を成り込まれて、
さらに
端から飛車を打たれたとしても、玉を
引いて逃げれば、
有効な
王手や
詰めろがかかりにくく、
寄せられるまでの時間を稼ぐことができます。
![「エルモ囲い」で攻め込まれた場合の粘り](../img/中級/エルモ囲い1-3.png)
また、囲いの右側から攻められた場合は、左金が奥まった位置にいて狙われづらく、
相手としては「
玉の守りの金を攻めよ」の実現が難しくなります。
エルモ囲いの評価
標準手数 | 8 手 |
横の耐久力 | 75 /100 |
斜めの耐久力 | 70 /100 |
上部の耐久力 | 65 /100 |
端の耐久力 | 65 /100 |
玉の広さ | 80 /100 |
玉の遠さ | 70 /100 |
囲いやすさ | 90 /100 |
陣形バランス | 80 /100 |
囲いの進展性 | 70 /100 |
※弊サイト独自の評価です。戦型や局面によって変動しますし、点数の合計が大きいからと言って必ずしも優れているということではありません。あくまでも目安としてお考えください。
エルモ囲いの前段階
舟囲いから組み替える場合もありますが、
右金の移動を保留してエルモ囲いの形を優先した方が無難です。
舟囲いは右金を上がる手(下図)が必須になりますが、
![将棋で「エルモ囲い」と言われる囲いを含んだ陣形](../img/中級/エルモ囲い1-4.png)
上図からエルモ囲いを組むと、右金が他の
金駒と連結していません(下図)。
![将棋で「エルモ囲い」と言われる囲いを含んだ陣形](../img/中級/エルモ囲い1-5.png)
自分の飛車が
自陣にいる間は良いのですが、
中終盤で飛車交換になり、相手から飛車を打ち込まれてしまう(下図)と、
金取りを受ける必要があり、
手番を失ってしまいます。
![将棋で「エルモ囲い」と言われる囲いを含んだ陣形](../img/中級/エルモ囲い1-6.png)
右金を二段目に上がることによって、上部からの攻めに対しては強くなるので、
プラスとなる局面も多いですが、相手の動きを見てから上がれば良いのです。
エルモ囲いからの進展
エルモ囲いは囲いの手数を省略して
急戦を狙っているため、
このまま戦いとなることが多いです。
主な相手の囲い
振り飛車で、比較的手数のかからない囲いであることがほとんどです。
エルモ囲いの主な弱点
角交換となる状況に注意が必要
エルモ囲いは、角に
紐を付けているのが玉と左金のため、
下図のように相手から角交換をされてしまうと少し対応に困ります。
![「エルモ囲い」の注意点1](../img/中級/エルモ囲い2-1.png)
▲同金は形が崩れて、
壁形となるうえに、一段金に戻しづらいです。
そして、▲同玉は相手の角打ちによって
王手がかかりやすくなります。
ある程度は仕方ない部分もありますが、
角交換やそれを狙われる
筋に注意しつつ、
駒組みを進める必要があります。
例えば、駒組みの段階で▲7七角と1つ上がっておけば、
相手からの角交換に対して、▲7七同桂や▲7七同銀と取ることができるので、
一段金の形を維持することはできます。
角頭を狙われると弱い
エルモ囲いは、玉のすぐ左上が
角頭という弱点でもあるため、
下図のように銀が出てくるだけで、突破が防ぎづらいです。
(「玉頭銀(ぎょくとうぎん)」という振り飛車の戦法です。)
![「エルモ囲い」の注意点2](../img/中級/エルモ囲い2-2.png)
あとは角頭に向けて、桂や香を
打つ、あるいはその
筋に飛車を
回ってくるだけです。
左銀を上がって(先手▲7七銀、後手△3三銀)相手の銀の進出を防ぐ手はありますが、
自玉の横が空いてしまうので囲いが弱体化してしまいますし、
自らの
角道を止めてしまうと
急戦を
仕掛けにくくもなるので指しづらいです。
駒組みの段階から、仕掛けを見せて相手の動きをけん制する指し回しが求められます。
上図の形から角頭を突破されてしまっても、中央方面へ玉を逃げることはできるので、
攻め合いに持ち込むことができる局面ならば、許容できる可能性はあります。
控えて桂を打たれると弱い
エルモ囲いは、下図のように
控えて桂を打たれてしまうと、
次に角銀
両取りの狙いが生じます。
![「エルモ囲い」の注意点3](../img/中級/エルモ囲い2-3.png)
左銀を上がれば(先手▲7七銀、後手△3三銀)相手の桂跳ねを防ぐことはできますが、
自玉の横が空くうえに
角道が止まってしまうので、
玉の右横の銀はなるべく動かしたくありません。
角を逃げておけば桂跳ね単発ならば脅威ではありませんが、別の攻めと絡むと厄介です。
また、相手の持ち駒に歩が複数枚あれば、
打った桂の
利きを生かして
端攻めをされる恐れも増します。
相手に桂を渡す場合には、そのタイミングが重要になります。
自分の持ち駒に銀がある場合には、
桂頭の銀でしっかりと受けることも多いです。