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解説動画
第31期竜王戦第7局
竜王戦第2局
対局情報
読売新聞社
公益社団法人日本将棋連盟
(棋譜利用問い合わせ済み)
局面解説
序盤
戦型は角換わり腰掛け銀で、
先手が2九飛&4八金型で、後手が8一飛&6二金型となりました。
研究され尽くしている形なので、
長時間の対局と言えども、ほぼノータイムで進みます。
42手目:形勢判断と候補手
互角:△5二玉、△6三銀、△6五歩 など
42手目では
手待ちの方針を一貫して、
△5二玉や△6三銀とする指し方は有力です。
本譜は△6五歩と突きました。先手玉が8八に上がると、
少し当たりが強くなるので、後手が動きやすいタイミングでもあります。
但し、
千日手含みの展開になることは多いので、
仕掛けるというよりも、少し動いて様子を見るという程度に考えておきます。
50手目:形勢判断と候補手
互角:△6三金、△6三銀
先手の4六角は好位置ですが、
後手にとっては角の打ち込みがなくなったというメリットがあります。
50手目では次の▲6四角を防ぐ必要がありますが、△6三金も△6三銀も有力です。
△6三金は8一の飛車との位置関係が悪くなるものの、
▲7二角と打たれることがないので問題ありません。
そして▲7二銀を狙って、先手が5五にどちらかの銀を
ぶつけてくれば、
△8六歩~△7五歩と仕掛けて戦いを起こし、玉の遠さを生かします。
本譜は△6三銀と引きました。駒を後退させるので消極的にも見えますが、
△5二金と寄って玉を堅くする含みが残ります。
53手目:形勢判断と候補手
互角:▲7七桂、▲6九飛、▲5五銀左、▲7九玉 など
)
先手は、後手からの角の打ち込みがあるため、陣形整備に制約がありますが、
後手には△2二玉と入城するプラスの手があります。
よって、53手目の局面では何か動いていきたい局面です。
最も激しいのは、▲6五銀直 △同歩 ▲7三角成と馬を作る手順ですが、
駒損をするうえに、継続する攻めがあまりないので、ややリスクが高いです。
本譜は▲7七桂と跳ねました。
桂交換になれば、6六の銀が動きやすくなり、
▲6六歩~▲6五歩と突けるようになって、
4六の角が攻めに働いてくるという構想があります。
65手目:形勢判断と候補手
互角:▲6六歩、▲6六銀、▲4七銀、▲6八玉 など
後手玉が堅くなったので、先手が一方的に攻め潰す展開は見込めません。
必ず厳しい反撃がありますので、事前に備えておく必要があります。
65手目は▲6六歩や▲6六銀として、上部を
手厚くすることで、
△6五桂のような狙いを消しておく手が有力です。
本譜は▲2四桂と打ちました。
矢倉崩しの手筋として、たまに出てくる桂打ちですが、
先手は歩切れなので端攻めなどと絡めることができません。
例えると、パンチを出した後に腕が伸び切ったままの状態となっているので、
以降は押さえつける位しかできず、戦い方としては少し損をしています。
尚、桂を打つならば、▲2六桂と
控えるのが手筋です。
この局面だと少し早い気もしますが、
歩の入手が見込めれば、▲3五歩 △同歩 ▲3四歩と
拠点を作ったり、
▲3四桂 △同銀 ▲3五歩で銀を捕まえたりする狙いがあります。
中盤
77手目:形勢判断と候補手
後手有利:▲9五歩、▲9九飛
77手目で▲6八玉のように手待ちをしていると、
△3三桂~△4四歩で4六の角を狙われたり、
△7二銀~△8三銀と棒銀に繰り替えられたりして、
後手の攻撃態勢が整ってしまい、先手がジリ貧になります。
先手としては、動き方の難しい局面ですが、動きを見せるしかありません。
ここから▲3五歩 △同歩 ▲同角と1歩入手できれば良いのですが、
△3六歩 ▲同銀 △3八角と打たれて、馬を作られてしまいます。
攻め込みを狙うのであれば、後手陣で手薄の9筋しかありません。
本譜は▲9九飛と
回りました。
攻め合いに望みを託すのであれば、先に▲9五歩と
突き捨ててから
飛車を回る方が確実ですが、これは後戻りができません。
単に▲9九飛は攻めが1手遅れる恐れがあるものの、
1歩を渡していない分、後手の攻め筋は減っています。
もし次の手で後手が攻めてきた場合、先手は受けに切り替えて粘ることで、
後手に攻め間違えてもらおうという方針です。
87手目:形勢判断と候補手
後手有利:▲2九飛、▲8四歩、▲7二歩 など
87手目で▲8四歩と突いて、▲7二歩 △同飛 ▲8三歩成を狙って、
後手の攻め駒にプレッシャーをかける手は有力ですが、
先手は持ち駒に1歩しかないので、完全に押さえ込むことは難しく、
また△2四歩と
質駒の桂を取られて戦力を補強されるとさらに忙しくなります。
本譜は▲2九飛と回りました。
▲9九飛と併せて考えると2手損しているようですが、
後手に動いてもらえたことに満足して、
あくまで自分からは崩れないという指し方です。
それでも後手が△2四歩と桂を取る可能性はありますが、
2筋を受けるために△2八歩と
叩く1歩が必要になり、戦力を削っています。
94手目:形勢判断と候補手
後手有利:△4四歩、△3三桂、△8七歩
後手は主導権を握ってはいるものの、盤上は7筋が渋滞気味で、
さらに持ち駒が少ないので、手の作り方が難しいです。
依然として△4四歩や△3三桂として、4六の角を狙いながら、
先手玉の4筋方面への逃走に備える指し方は有力ですが、
攻めとしてはやや遅いので、その間に7筋や8筋を制圧されてしまうと、
完全に攻めを
切らされてしまう恐れがあります。
本譜は△8七歩と打ちました。
狙いがハッキリと見えてくるのは少し先になりますが、
それが読み切れなかったとしても、
歩を打って拠点を作っておく手は、リスクが低いので指しやすいです。
103手目:形勢判断と候補手
互角:▲7六香、▲6八玉、▲2三歩成
103手目で▲7六香の
田楽刺しは有力ですが、
対して△8五馬も△8六歩も有力です。
先手の
駒得は確定しますが、後手の7一の飛車が働きやすくなるので、
自玉の
薄い現局面では少し指しづらいです。
本譜は「
玉の早逃げ八手の得」で▲6八玉と寄りました。
早めに▲4八玉まで指すことができれば、とりあえず一安心できます。
109手目:形勢判断と候補手
互角:▲9三香成、▲9二香成
109手目では▲9三香成~▲8二成香のように迫っていく手順が有力です。
本譜は▲2七香と打ちました。これで2筋の突破は確実ですが、
▲8九香のような受けもなくなったため、激しい攻め合いは避けられません。
120手目:形勢判断と候補手
互角:△7五飛、△6五歩、△7五馬
120手目で△6五歩&△7五馬という攻めは
先手玉の
こびんを狙っていて厳しい攻めなのですが、
▲7三歩~▲7二歩成で後手の飛車が取られるまでに先手玉を寄せ切らないと
後手が負けになるという分かりやすい条件になってしまいます。
ここは△7五飛と
浮いておくのが無難で有力です。
飛車の成り込みは残りますし、9五の香を取る含みもあります。
自玉の薄い将棋では、いつも以上に飛車を可愛がることが重要です。
終盤
130手目:形勢判断と候補手
先手有利:△3一香、△9七飛成
129手目の▲7七歩は△9七飛成~△6六馬という攻め筋を先受けしています。
ここで攻めるならば予定通りに△9七飛成が有力です。
一旦受けるならば△3一香と打つ手も有力です。
▲4二成香 △同玉 ▲6三成桂で駒損は拡大しますが、
3二の成香さえ盤上から消してしまえば、後手玉には広さが戻りますし、
あとで△3五歩と突けば打った香が攻めに働いてきます。
本譜は△同馬と取りましたが、
形が決まってしまったため、先手が攻めやすくなりました。
140手目:形勢判断と候補手
先手優勢:△2七歩、△2三歩 など
先手の2九の飛車が攻防によく利いているので、その働きを弱めるために、
140手目は△2七歩と
垂らすのが手筋です。
先手は2八に
金駒を打たれる訳にはいかないので▲同飛ですが、
受けに利かなくなっただけでなく、位置が悪いので先手玉を狭くしています。
そのため、△6六馬 ▲3八玉に△3九銀と絡むような攻め筋が生じます。
本譜は△3五歩と突きました。
3三の香を攻めに使いつつ、2四の角の先手陣への利きを遮っており、
油断のならない勝負手ですが、冷静に▲同角と取られてしまうと、
飛車の成り込みが1手早くなってしまいました。
先手は左右挟撃の態勢が整ったので、後手が粘る余地はなくなりました。
あとは先手玉が詰むかどうかの勝負です。
後手はなるべく先手が迷うような
王手をかけていきます。
157手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:▲5七玉
157手目で詰みを逃れるためには▲5七玉と引くしかありません。
▲4七玉では△5六角と打たれてしまい、2筋へ逃げる見込みがなくなります。
この「▲4七玉 △5六角」だけを考えて、
消去法で▲5七玉と指せる感覚は身に付けておきたいです。
この局面まで進んでしまったら、
▲5七玉で詰んでいるかどうかについて、先手は読む必要がないのです。
161手目:形勢判断と候補手
先手勝勢:▲3九玉
161手目で詰みを逃れるためには▲3九玉しかありません。
▲同玉は△5七銀と捨ててから△6六角、
▲3八玉は△4九角 ▲2八玉 △3九銀以下、詰みとなります。
下段玉は、上から押さえ込まれていると詰まされやすいのですが、
横から追われていると金駒を余計に消費させる効果が生じる場合があります。
173手にて、後手の広瀬竜王が投了し、豊島名人の1勝となりました。
本局では豊島名人の状況を悪化させない待機策と粘り方が非常に勉強になりました。
第31期竜王戦第7局
竜王戦第2局